【2024年総まとめ】筋トレの常識を変えた最新科学的データを一気に公開!
2024年もパーカーフィットネスは数多くの科学的データを取り上げてきました。今回はその締めくくりとして、今年発表された筋肉の成長において非常に重要な研究を紹介していきます。
もちろん今までに紹介したデータだけではなく数日前に公開された超最新データ、そしてこのチャンネルでまだ紹介したことのない興味深い科学的研究も含まれているのでぜひチェックしてください。
この動画を見れば一発でトレーニングの科学をリフレッシュすることができます。皆さんの知識のアップデートに役立ち、来年はもっと筋肉を成長させたりボディメイクをする上でのヒントになるはずです。この動画が少しでも気に入っていただけたら是非高評価をお願いします。
可動域
本格的なボディビルコンテストが始まって100年近くがたとうとしていますが、今までの常識として筋肉の成長には全可動域、FullRangeOfMotionが最適だと考えられてきました。ダンベルカールではヒジを最大まで伸ばしてからこれ以上曲がらない限界まで曲げて、スクワットでは深くしゃがんでからヒザがロックするまで伸ばすことが正しいとされてきました。
しかし、ここ数年の間でこれを揺るがす「ロングレングスパーシャル」について多くのデータが発表されています。
ロングレングスパーシャルというのは筋肉が伸びた状態にフォーカスした狭い可動域です。例えばプリチャーカールならフルレンジモーションではヒジを完全に伸ばした状態から完全に上腕二頭筋が収縮する位置まで行いますが、ロングレングスパーシャルはおおよそ90度になるまで行います。
実際に研究者がこのふたつを比較したデータを改めて調査してみると驚くべきことがわかりました。全可動域フルロムと部分可動域ロングレングスパーシャルの比較を行ったところ5件中4件がロングレングスパーシャルのほうが有利であることを示しました。
もうひとつの研究は両可動域に差はなく、ショートレングスパーシャルよりもロングレングスパーシャルのデータと同じでフルロムグループを支持するデータはありませんでした。
2023年の3月に公開された最新のメタ分析の著者であるmilo wolf博士はロングレングスパーシャルにかなりの自信を持っているようです。
ただしこれは2023年までの話です。このロングレングスパーシャルについて2024年は多くの研究が行われました。
そもそも紹介したデータは「筋トレ未経験者」、そして「下半身の筋肉」にフォーカスした研究がほとんどであったため、「上半身の筋肉」かつ「筋トレ経験者」を対象にしたデータはほとんどありませんでした。
ここで2024年の9月に公開された新しい研究を紹介します。この研究ではトレーニング経験のある被験者に上半身トレーニングプログラムを指示して、ロングレングスパーシャルとフルロムグループに分けました。
トレーニング内容は以下の通りで大胸筋、背中、上腕三頭筋、二頭筋を鍛えるものでした。結果はこのグラフにある通り筋肉の成長率はほぼ同じであり、研究者はトレーニング経験が豊富なリフターの場合ロングレングスパーシャルとフルレンジモーションに違いはないと結論付けました。
ということはロングレングスパーシャルは意味ない?それは違います。
まず、これはトレーニング経験者かつ上半身の筋肉でトレーニング効果を比較した初めての研究です。今後の研究でより良い設計のデータであったり、問題点を改善した素晴らしいデータが出る可能性があります。
そして、最も大きな点はロングレングスパーシャルがフルレンジモーションに負けているわけではないことです。これは今までのデータと一致しており、パク博士はロングレングスパーシャルで鍛えることは非常に安全な賭けであると答えています。
特に筋肉が伸びた位置、ストレッチポジションをカットしたりここで負荷がかからない種目を選ぶことは賢明ではありません。おそらく世界で初めてサイドレイズを調べた数日前12月17日に公開された研究ではダンベルサイドレイズとケーブルサイドレイズを比較しました。筋肉量の絶対的な増加量としては不十分でしたが、ケーブルサイドレイズはダンベルのものより40%近く三角筋中部を成長させたことを示しています。
ストレッチポジションで負荷のかかる種目というのが前提でフルレンジモーション、そしてロングレングスパーシャルを組み合わせるのがおすすめです。
追い込み
筋肉の成長のために限界まで追い込む必要がありますか。ある特定の状況では限界まで追い込んだほうが筋肉は成長する可能性が高いです。2024年の1月に公開された研究では最高の設計でこのトピックを調査しました。トレーニング経験が平均7.7年で被験者はすべて最低でも1回ボディビルコンテストなどの競技経験のある上級者で片脚のレッグプレスとレッグエクステンションを8~12repで行いました。
片方の脚は限界まで追い込み、もう片方の脚は限界までは挑戦せず、レッグプレスは2rep余力を残しレッグエクステンションは1rep余力を残しました。
余力についての推定には用意された計算モデルを使っており、事前研究ではこのモデルによる余力の推定がかなり正確であることがわかっています。
結果として大腿四頭筋の成長は限界まで行う脚が6.96%、余力を残す脚が6.98%と同様であったことから筋肉の成長において限界まで行う必要がないことが示されていますが、この研究では追加して、トレーニングセットが少ない場合は限界まで追い込んだほうが筋肉が成長する可能性が高いことを認めています。
同じ年の12月、つい先日公開された研究では4.4年のトレーニング経験を持つ被験者は限界までトレーニングを行うことでより筋肉を成長させたことを示しています。上腕二頭筋以外はすべての部位で限界までトレーニングするグループのほうが優れており、トレーニング経験が豊富な人でもハードに追い込むメリットがあることを示しています。
この原因はセット数です。この研究では被験者は毎週広背筋を4set、大胸筋を2set、大腿四頭筋を6set、上腕二頭筋と上腕三頭筋を2setと少ないトレーニング量でした。トレーニングを限界まで行うことの最大のデメリットは疲労です。限界までの追い込みは余力を残すものよりも疲労が強く、次のセットでのパフォーマンスが大きく低下する傾向にありますが、これは行うセットが多いほどデメリットが強くなります。
しかし、単一のセットとしてみるとそもそも限界まで追い込むと1~2rep余分にできるためたくさんのボリュームを実行できるため、効果が高いと予測できます。
つまり、トレーニングでは1日で同じ部位を3set未満しか鍛えない場合、そしてその日のトレーニングの最後の種目の場合、限界まで追い込む時の疲労というデメリットが出るまでにトレーニングが終了するため、限界まで行ったほうが効果が高くなる可能性があります。
ただ、3set以上を同じ部位を鍛えたり1週間で10set以上その部位をトレーニングする時などある程度のセット数が各筋肉にある場合は少し余力を残したほうが科学的なデータを見ると筋肉の成長がより良くなります。
セット数
筋肉を成長させるためにはどれくらい鍛えたらいいのか。2024年の10月4日、おそらくここ数年における筋肉の成長において最も重要なデータが公開されました。
フロリダアトランティック大学のジョシュアべランド博士によって行われたメタ分析では「特定の筋肉グループをどれくらい鍛えると筋肉の成長が最大化されるのか」について調査が行われました。
その結果、メタ分析によると各筋肉毎週40setを超えても筋肉の成長効果は上がり続けることを発見しました。
一般的にトレーニングのやりすぎは逆効果になります。これはトレーニング量が多すぎると筋肉が深く損傷して多くの筋タンパク合成が修復に使われるためです。しかし、これは筋トレ初心者の人が40setやったり、セット数をいきなり2倍にするなど極端にトレーニング量を増やす場合にのみ起こります。
トレーニング経験が豊富な人は筋線維に耐性がついており40set、50setやっても逆効果になることはほとんどないでしょう。
ただし、セット数には効果が高いものと低いものがあることをこのメタ分析は明らかにしています。
まず筋肉の成長率については収穫逓減の傾向がありました。
ジョシュ博士が話している通り筋肉の成長率が最も高いのは0setから5setに増やした場合であり、5setから10setに増やす場合は成長率が前者よりもわずかに落ちるということです。つまり、セット数と筋肉の成長率について効率というものを考えると最も効率的なのは一週間で5setの場合です。10から20setに増やすと筋肉の成長効果の増加率は50%上昇しますが、20から30setにすると+40%と少し下がります。
グラフにもある通り右側に近づくにつれて筋肥大の増加率というのは減少していくのがわかります。つまりこの筋肥大増加率が落ちていくことを考えるとジョシュ博士も話している通り、ある点を境に増加率がほぼ0になる位置があると推測できます。
ただし、少なくともこの分析ではそのポイントを発見できなかったため各筋肉40setや50setで増加率が0%になってしまうことはなく、このグラフの傾きを見てもこのグラフの傾きを見ても100set近いセット数までは筋肉の成長効果は上がり続けるでしょう。
とはいえ、時間とトレーニング効果の両方を考慮した効率的なセット数はどこか。
トレーニング効果が高いセット数はおおよそ毎週各筋肉11-18setであるため、ほとんどの人はまずこのトレーニングセットを目指すのがいいでしょう。ただ、2015年、筋トレ経験豊富な被験者を対象にした研究に示されているように30set、40setでトレーニングすると筋肉が爆発的に成長する人も少なくありません。停滞を感じている人やもっと成長させたい人におすすめです。
「逆効果になるから」とトレーニング量を制限したりする必要はなく、筋トレはすればするほど成長します。
今後に期待のデータ
紹介した3つ以外の研究を簡単に紹介していきます。これはまだ先ほどのデータよりも信頼性の高いものではないため頭に入れておくくらいで大丈夫です。
つい最近行われた研究では興味深い筋肉の生理学的現象がわかりました。この文献では筋肉がお互いに競争し合うことがわかりました。例えば上腕二頭筋のみを鍛えるか、全身を鍛えながら上腕二頭筋を鍛えたとき、筋肉の成長はどうなるでしょうか。
この研究では上腕二頭筋のみに集中したほうが全身を鍛えるよりも筋肥大効果が高いことがわかりました。そのため、もしも集中的に成長させたい部位がある場合はほかの部位を鍛えることを中断したほうがいいかもしれません。
しかし、これはカロリーやタンパク質不足になるとこの傾向が強くなることもわかりました。
例えばいくつかの文献では20gのホエイプロテインが筋タンパク合成を最大化し、40gのホエイプロテインに追加のメリットがないことを示していますが、こういった研究のほとんどは鍛える部位が一つしかなく最近公開された研究では全身を鍛える被験者はミルクプロテインを100g摂取しても筋タンパク合成反応の増加が有意に高く、これは12時間後でも高い状態にあることがわかりました。
つまり、タンパク質やカロリーが十分な場合ほかの筋肉を鍛えても問題にならない可能性が高いです。
もうひとつ新しい研究では部分痩せの可能性というのを発見しました。
研究者は被験者を2つのグループに分けました。ひとつはトレッドミルで45分間走り続けるグループ。そして、27分間のトレッドミルに加えて腹直筋を鍛えるマシンクランチと腹斜筋を鍛えるマシントレーニングの2つを行いました。
この研究の素晴らしいところは被験者の消費カロリーを同じにしてたことです。実は今までの研究では消費カロリーを同じにする研究はほとんどありませんでした。
10週間後、両グループはほとんど同じだけの体脂肪量を失いましたが、トレッドミルに加えて腹筋トレーニングを行っていたグループのほうがお腹周りの脂肪が落ちていることを発見しました。そして、興味深いことにトレッドミルのみを長時間行っていたグループは腹筋を追加したグループよりも脚の脂肪がより落ちていることを示しています。
ただしこれは部分痩せの効果を肯定した数少ない研究であり、レビューではこの部分痩せの効果は強い言葉で否定されています。部分痩せについては基本的には不可能と今は思っていただいてOKで来年の研究に期待です。
コメント