筋トレと相性のいい有酸素運動
2019年のメタアナリシスによるとウエイトトレーニングは全ての原因による死亡率の21%の減少に関連し、有酸素運動と組み合わせたウエイトトレーニングは40%の死亡率の減少に関連することが示されています。
有酸素運動は筋トレ前、筋トレ後どちらが効果的でしょうか。今の日本の常識となってるのが筋トレ後の有酸素運動。もしあなたが筋トレ後にランニングなどの有酸素運動をしてるなら今すぐにやめてください。
有酸素運動は使い方次第で筋トレのメリットを非常に小さくします。
有酸素運動が筋トレの効果を低下させる理由
エネルギー不足
まず有酸素運動が筋トレの効果を減少させる理由のひとつではエネルギー不足です。筋肉が成長するためにはエネルギーが必要です。そして有酸素運動を行うこと10分間ランニングするのもエネルギーが必要になります。そのため有酸素運動をすることで筋肥大に使われるエネルギーが少なくなってしまうことを意味します。
しかし筋肥大は摂取エネルギーが多ければ多いほど筋肥大するというわけではありませんし減量中のようにエネルギーが体重維持カロリーよりも不足しているからといって筋肥大できないわけではありません。たんぱく質を十分摂取している人だったり栄養素の質が高い食生活をしている人にとってこれは大きな問題ではありません。
一番大きな干渉効果
問題はそこではありません。一番の問題は干渉効果です、
ウエイトトレーニングを行っている人が特定の有酸素運動を行うウエイトトレーニングの利益である筋肉の強さとサイズを低下させます。しかし、ウエイトトレーニングによる有酸素運動の筋持久力低下を示す証拠はありません。
つまり有酸素運動は筋力とサイズの向上を妨げますがウエイトトレーニングは筋持久力の適応を妨げません。
有酸素運動が筋トレの効果を薄める干渉効果
1980年に正式に発表された
干渉効果について言及している人は多くはありませんが1980年にロバートヒクソン博士によって正式に発表されました。パワーリフターだった彼は上司であるジョンホロッシー教授と毎日走っていました。しばらくするとヒクソン博士は筋力トレーニングを行っているにも関わらす筋肉のサイズと強さが減少していることに気づきました。
ここで彼は自分の研究室で研究を行いました。23人の被験者を筋力トレーニンググループ、持久力トレーニンググループ、筋力+持久力トレーニンググループの3つに分けられました。
筋トレグループは週に5回、10週間の下半身トレーニングを行いました。持久力グループは週に6回持久力トレーニングを行いました。6日のうち3日はランニングで他の3日はサイクリングでした。
筋トレ+持久力グループは両方のルーティーンを実施しました。
10週間のトレーニング後、筋力グループではスクワットの1RMが平均で44%増加しましたが筋力+持久力グループは平均で25%増でした。筋トレグループと筋トレ+持久力グループの筋トレメニューは全く同じであるため持久力トレーニングが何らかの影響を与えたことを示しています。
この研究データでは筋力+筋持久力トレーニングを組み合わせたグループは研究期間である10週間のうち7週間目で筋力アップ効果がピークに達したことがわかります。この時点で筋力アップ効果は33%でした。その後急激に効果が低下し、最終的には25%になりました。
筋肉量についてはわずかに筋トレのみのグループを支持していますが、有意な差がありませんでした。しかしこの測定法はメジャーで巻いて周囲の長さを測るといった精度が悪い方法であるため信頼性は高くありません。
干渉効果の主な原因
2012年のメタアナリシスでは有酸素運動とウエイトトレーニングを不適切に組み合わせると筋肉の成長が約31%低下し、筋力の向上が18%低下することが示されています。
ヒクソン博士の研究から既に40年以上が経過していますが有酸素運動が筋トレの効果を妨げる現象は科学が存在を認めています。しかしこの干渉効果の具体的なメカニズムは未だに明らかになっていません。
現在この有酸素運動の干渉効果の原因として考えられているのは3つです。
1..体の適応
2.回復時間の延長
3.倦怠感
体の適応
1つ目の体の適応は100m走選手とマラソン選手の違いによく似ています。筋トレで目指すべきなのは体の適応です。100m走とマラソン選手の体の違いは良く取り上げられています。ウエイトトレーニングと持久力トレーニングは100m走の選手とマラソンランナーを同時に目指しているみたいなことです。パワーリフター兼ボディビルダーとは違い、適応する体が大きく異なります。
適応する体の間で綱引きしてるようなものです。
この適応の違いは筋トレ上級者ほど顕著になります。100mランナー型の体になっているためです。
逆に初心者の方の場合は体がどっちにも適応していないので干渉効果が小さい傾向にあります。
回復時間の延長
次は回復の延長、有酸素運動はランニングなどが主なやり方です。結局のところランニングでも脚の筋肉は使われているためそれで疲れてしまうということですね。筋肉はダメージから回復してから成長すると思ってください。回復時間が長いとその分筋肉が成長する時間が減ります。
倦怠感
3つ目は倦怠感、これは2つ目の回復時間の延長に似ていますが、筋トレを週に3回やってる人に有酸素運動ルーティーンを加えさせると必然的に運動する機会が増えます。これが精神的な疲労だったり体がだるくなってりします。
それでは各運動と筋トレの組み合わせについて科学的な研究を基に紹介します。
筋トレ効果を薄めないおすすめの有酸素運動
最初は筋トレとHIITを組み合わせです。HIITトレーニングは激しい運動と短い回復を交互に繰り返します。つまりこれは1つ目の干渉効果の原因である体の適応の問題はありません。HIITはマラソンよりも100m走に近いためウエイトトレーニングと似た運動です。
しかし、2,3番目の疲労についてはどうでしょうか。2016年の研究ではウエイトトレーニングと長時間行うサイクリング,HIITの組み合わせについて比較しました、結果としてHITTトレーニングもほぼ長時間のサイクリングと同様にレッグプレスの強度増加に減少効果をもたらしました。
しかしながらベンチプレスの筋力については干渉効果が確認できませんでした。筋力については局所性があり下半身の有酸素は上半身の筋力には影響しない可能性があります。
下半身の筋力についてはHIITグループよりも長時間やる有酸素運動のほうが干渉効果が弱いことを示しています。
しかし、この研究はウエイトトレーニング前にHIITと有酸素運動を行っているため理想的な方法ではありません。HIITのほうが強度は高いのでレッグプレスの1RMが落ちたのは当たり前といえば当たり前です。
2012年のメタアナリシスではウエイトトレーニングとランニングの組み合わせよりもウエイトトレーニングとサイクリングを組み合わせるグループのほうが干渉効果が小さく、下半身の強度とサイズの向上効果が大幅に高いことを示しています。ランニングは筋トレをしている人にとってはお世辞にも良い選択肢ではありません。
さらにはこの研究では有酸素運動の頻度やその時間が多ければ多いほど筋トレの効果に負の影響をもたらすことが示されています。
有酸素運動で減量したい人にとって最も干渉効果を抑える方法は筋トレと別の日に有酸素運動を行うことです。例えばこの研究では筋トレ直後のサイクリングよりも筋トレ24時間後のにサイクリングを行ったグループのほうが2倍近く筋肥大効果がありました。
まず重要なのは筋トレしない日に有酸素運動をすることです。そして有酸素運動を行う時間です。出来るだけ短いものを採用しましょう。ほとんどの研究が有酸素運動の形態をランニングまたはサイクリングでしか試していませんが科学的な研究から大体の干渉効果が強い有酸素運動、弱い有酸素運動の傾向がわかります。
HIITについては僕は肯定的です。2016年の研究ではレッグプレスの強度が低下していますが筋トレ前に行っているので筋力が落ちて当たり前です。
加えて2018年のレビュー研究ではHIITは長い持久力トレーニングよりも負の影響を与えにくいことが示されています。
そして非常に最近の2021年のレビューではHIITの中でも特に強度の高いHIITは干渉効果が弱いことが示されています。この研究で特にRSTレジスタンススプリントトレーニングとSITスプリントインターバルトレーニングが支持されています。
干渉効果は小さいですが低強度の有酸素運動と比べて体の適応には問題ありませんが疲労は考慮しなければいけないと思います。HIITってしんどいトレーニングですから倦怠感は人によっては感じる場合があり、直接的に筋トレの効果を妨げないにしても疲労により筋トレの質に悪影響を与える可能性はあります
干渉効果の最も大きな原因は体の適応であるためHIITは低強度で長時間やる一般的な有酸素運動よりもはるかに干渉効果が小さいことを示しています。
体の適応が最も大きいと考えればHIITの中でも強度の高いモノが支持されたり、低強度で長時間やるランニングが干渉効果がとても強いかという理由がわかると思います。
重要なコトは筋トレしない日にやることと、HIITをすること、特にHIITの中でも強度の高い運動をすることです。
毎日筋トレをやってる人は筋トレしない日が無いのでタイミングが分からないと思いますがそーゆー場合は筋トレの頻度を減らすか有酸素運動と筋トレの時間を出来るだけ話してください。例えば朝トレーニングして夜有酸素運動って感じですね。おすすめの有酸素運動の頻度としては週に1~3回です。
結局のところ干渉効果を減らす方法はありますがゼロにするためには有酸素運動をやめるしかありません。
減量の方法としては食事制限もありますからそっちのほうが効果的の場合もあります。
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