筋肉を成長させるのにどれくらい筋トレすればいい?知らずに諦めないで!
2024年の10月4日、おそらくここ数年における筋肉の成長において最も重要なデータが公開されました。
フロリダアトランティック大学のジョシュアべランド博士によって行われたメタ分析では「特定の筋肉グループをどれくらい鍛えると筋肉の成長が最大化されるのか」について調査が行われました。
筋肉をもっと成長させたい?この質問に「イエス」の人は絶対にチェックするべきです。
この動画では超最新のデータを基に筋肉の成長を最大化させるためにはどれくらい筋肉を鍛えればいいのかについて解説します。普段よりも少しレベルが高い内容ですが、出来る限り簡単にわかりやすく解説していきます。視聴者の皆さんは100%完全に理解する必要はないので重要なポイントのみ抑えておけばOKです。
最新データとは
概要
フロリダアトランティック大学のジョシュアべランド博士によって行われたメタ分析では「特定の筋肉グループをどれくらい鍛えると筋肉の成長が最大化されるのか」について調査が行われました。
この研究がメタ分析ということが実はかなり重要です。
科学的なデータには少なからず偶然や誤差というものが出ます。例えば世界にある文献すべてを調査するとBro-splitの分割法のように週に1回各筋肉を鍛えると筋肉の成長が最大化することを示すデータは間違いなく存在します。
それではトレーニングは分割法がベストなのか。この研究ではそのような結果になったとしても、もしほかの研究のほとんどが分割法よりも全身法のように高頻度で鍛えたほうが成長するということを示していた場合、分割法がベストだと思いますか。
レビューやメタ分析はこういった特定のテーマに関する研究をまとめて分析するということ。簡単に言うと全体を見るため、たった一つの研究、ひとつのデータではわからないことまで調べることができます。
この科学的信頼性の図にある通り、レビューやメタ分析は科学的信頼性の一番上です。つまり、最近出たメタ分析というのは今までの科学的データにおける最も信頼性の高い答えが出るということになります。
メタ分析がどれほど重要か、そして信頼性の高いものを知っていただいたところでつい先日公開されたメタ分析を紹介します。
このメタ分析では先ほど紹介したように「どれくらい各筋肉を鍛えればいいのか」についての分析でしたが、どれくらい鍛えればいいのかというのは少し抽象的です。
筋肉が成長するまでのプロセスは筋線維がウエイトトレーニングによる機械的な緊張に適応することで起こります。つまり、どれくらい鍛えればいいのかというのはどれくらい機械的な緊張が必要ということを意味します。
この機械的な緊張を具体的に表した数値がVOLです。VOLはセット数、回数、重量をかけたもので例えばバイセプスカールを10kg 10回 3setやれば300kgとなります。
このVOLに最も影響するのがセット数です。トレーニングのセット数を倍に増やせばVOLも倍になり、10倍にすれば10倍になります。メタ分析はVOLの中でもセット数に注目して調査を行いました。
つまり、今日紹介するメタ分析、そしてこの動画では「各筋肉何セットやればいいのか」を解説します。
研究結果
トレーニングVOLを正確に測る方法として重要になるのが、フラクショナルセットです。この分析では分数計算法を使用してセットの計算をしたことが大きな強みです。
例えば上腕二頭筋は20setで筋肉の成長が最大化させるという結論になった場合、それはダンベルカールのように直接的に狙った種目のみのセット数なのか、それとも間接的に狙った種目も含まれるセット数なのか。
ダンベルロウを例にしましょう。ダンベルロウはほとんどの人が背中トレーニングだと認識しています。しかし、この種目で鍛えられるのは背中だけではないはずです。
肩関節は伸展するため肩にある三角筋後部も働き、ダンベルを引っ張るときに腕にある上腕二頭筋も働きます。つまり、ダンベルロウ3setやれば背中を3set鍛えたことになりますが、三角形後部や上腕二頭筋も3set鍛えたことにならないのか。
研究者はこういった補助的な役割をもつ筋肉への機械的な緊張を1/2のトレーニングボリュームと定義しました。
つまり、ダンベルロウ3setで言えば、背中は3setですが、上腕二頭筋や三角形後部については1.5setということです。こういった補助的に働く筋肉のほうが成長効果が低いのは理にかなっています。
ダンベルロウとダンベルカールの上腕二頭筋の成長効果について調べた研究ではダンベルロウはダンベルカールの半分ほどしか上腕二頭筋が成長していないことを発見しました。ダンベルロウに限らず、ラットプルダウンや懸垂など皆さんが背中トレーニングと認識している種目ではほとんどの場合、背中の筋肉の限界によって反復が終わるはずです。
大胸筋トレーニングでも同様にほとんどの場合、上腕三頭筋よりも大胸筋が先に疲れます。
つまりこの段階で腕の筋肉は追い込み不足が起こっています。科学的データから筋肉の成長を最大化させるためにはある程度限界に近づく必要があるため、補助的に働く筋肉が直接的に狙っている筋肉ほど成長しないことは自然です。
この研究ではフラクショナルセットの概念を持ち、補助的に働く筋肉を1setあたり0.5setとカウントしました。
その結果、メタ分析によると各筋肉毎週40setを超えても筋肉の成長効果は上がり続けることを発見しました。
一般的な常識
筋トレの世界で最も関心のあるトピックのひとつにどれくらいのセット数を行う必要があるのか。そして、どれくらいのセット数が筋肉の成長にとってベストであるのか。があります。筋トレする人なら誰しもこのことについて興味を持ちますが、インターネット上には様々な意見があります。
「各筋肉1週間で20set以上やるとオーバートレーニングだ」という人もいれば一方では「20set以上やってもオーバートレーニングにはならない」と考える人もおり、一部の人は「限界までハードに追い込んでいれば10setくらいでも十分成長する」とも考えています。
イメージとしてはこのようにまずは筋トレのセット数が上がっていくのに比例して筋肉の成長効果も上昇しますが、どこかのラインでこの筋肥大効果が頭打ちになる。もしくは低下していく。こういったグラフを誰しも一度は見たことがあると思います。
オーバートレーニング状態というのは大体2種類に定義されます。ひとつはモチベーションが低下したり、関節を痛めてケガをするなど、筋肉の成長や回復に直接的には関係しないオーバートレーニング。
もうひとつは筋肉が傷つきすぎる。回復できないから成長しなくなる。というように直接的に筋肉に問題が生じるオーバートレーニング。
まず、モチベーションやケガなど間接的なオーバートレーニングについて。これは存在しますし、注意するべきですが、直接的なオーバートレーニングについては十分な証拠はありません。
確かにいくつかの科学的データでは筋肉の損傷が大きいと成長効果が大きく損なわれることを示しています。これは筋肉の合成能力が筋肉の構築ではなく修復に使用されるためです。しかし、その損傷量も徐々に小さくなっていきます。みなさんもウエイトトレーニングを始めたばかりのころは毎日筋肉痛があったと思いますが、1か月もすればほとんどなくなっていくはずです。
つまりトレーニング経験がある程度ある人にとって筋肉が成長しないほど損傷することはありません。
2015年の研究では48人の男性を対象に毎週6,18,32セットの上腕二頭筋トレーニングと毎週9,27,45setでの上腕三頭筋トレーニングをしてもらいました。結果として上腕二頭筋と上腕三頭筋ともに最もトレーニングを行った被験者のほうが筋肉を成長させることができ、その差は一目瞭然。30set 45setを行ったグループの筋肉の成長率は異常でした。
この研究は6か月間も続き、被験者はトレーニング経験の豊富な軍人でした。
しかしこれは以前からセット間の休憩時間が原因である可能性があるという考えがありました。筋トレのセット数が高いほど筋肥大効果も高いということを示した研究は60~90秒と比較的短い休憩時間をとっている被験者がほとんどでした。
つまり短い休憩時間というのは持ち上げられる重量や回数が大幅に低下するため、40setやっても筋肉が成長し続けたとしてもそれは長い休憩時間の20setとそれほどVOLとしてはそれほど違いがない可能性があります。
しかし、実際にメタ分析を行ったジョシュ博士によると休憩時間によって研究結果が左右されるということはなく1分間と3分間の休憩時間では同様の増加率であったようなので、長い休憩時間でも短い休憩時間でもたくさんのセットをやればたくさん筋肉は成長するということです。
「30setでも40setでも効果が上がり続けるなんて知らなかった」
「20set以上やるとやりすぎだと思ってた」
と思った視聴者の方もいると思いますが、そもそも一般的に考えて「ある一定のセット数以上やると逆効果になる」と感じるのが少し不自然です。
例えばトレーニングの知識がある程度ある人なら収穫逓減の原則というのをご存じだと思います。簡単に言うとトレーニングによる筋肉の成長効果は下がるということ。つまり、トレーニング初心者と上級者では同じトレーニングをしても獲得できる筋肉量に違いがあります。
これは筋肉が機械的な緊張に適応してしまう、少し意味は違いますが慣れてしまうためです。
つまり、20setでずっと鍛え続けるとトレーニング効果はどんどん下がっていくため、より強い刺激を入れるためにも30set、40setで鍛える必要があるというのは理にかなっています。そして、先ほど紹介したように筋肉には耐性がつくためどんどん損傷しづらくなるため、たくさんトレーニングしても深く損傷することが無くなります。
つまり、筋トレ歴半年の中級者の人と、3年の上級者の人、10年の超上級者の人が同じ20setが上限ということは明らかに不自然です。menno henselmans博士も主張している通り、トレーニング経験がある程度ある人の場合、筋肉が傷付きすぎて成長しないトレーニングボリュームを確保する前にヒジを痛めたり精神的な疲労感に襲われたり、別の問題が起こります。
結論から言うとオーバートレーニングについての情報の99%は根拠のないデタラメです。あなたのトレーニングが無意味になったり逆効果になることはありません。
最高のセット数
それではここからメタ分析によって判明した最高のトレーニングボリューム、セット数について解説します。
「え、さっき言って通り40set以上でも成長し続けるからやればやるほどいいんでしょ」
確かにそれは正解か不正解で言えば正解です。しかし、絶対に抑えるべき、知っていただきたいポイントがあるので紹介します。
まず筋肉の成長率については収穫逓減の傾向がありました。
ジョシュ博士が話している通り筋肉の成長率が最も高いのは0setから5setに増やした場合であり、5setから10setに増やす場合は成長率が前者よりもわずかに落ちるということです。つまり、セット数と筋肉の成長率について効率というものを考えると最も効率的なのは一週間で5setの場合です。10から20setに増やすと筋肉の成長効果の増加率は50%上昇しますが、20から30setにすると40%と少し下がります。
勘違いしないでほしいのは毎週5setが筋肉の成長率が最も高いわけであり、最も筋肉を成長させるわけではありません。
グラフにもある通り右側に近づくにつれて筋肥大の増加率というのは減少していくのがわかります。つまりこの筋肥大増加率が落ちていくことを考えるとジョシュ博士も話している通り、ある点を境に増加率がほぼ0になる位置があると推測できます。
ただし、少なくともこの分析ではそのポイントを発見できなかったため各筋肉40setや50setで増加率が0%になってしまうことはなく、このグラフの傾きを見てもこのグラフの傾きを見ても100set近いセット数までは筋肉の成長効果は上がり続けるでしょう。
とはいえ、どれくらい筋トレをすればいいか目安を教えてほしいという方に推奨できるのが、毎週各筋肉11-18setです。とりあえず筋トレ経験が3か月以上ある人の場合、筋トレはこのセット数から始めるのがいいでしょう。
そして筋力は筋肥大よりもこの傾向がはるかに強いことがわかりました。このメタ分析では筋力を最大化するトレーニングボリュームというのも調査されていましたが、筋力については毎週1setでほぼ十分であり、5set以上トレーニングする必要はほとんどないことがわかりました。
それではこの素晴らしいデータを踏まえてどういったトレーニングをするべきか。パーカーフィットネスがおすすめするトレーニング法を知りたい方に向けて解説していきます。
まず筋肉の成長において、トレーニング経験がある程度、目安として半年以上ある人にとって逆効果になったり、無意味になるトレーニングボリュームは存在しません。
例えば「明日ジム行けるけど明日トレーニングすると20set超えちゃうからあえて行くのやめとこ」という行為は無意味です。ウエイトトレーニングができるならすればするほど筋肉は成長する可能性が高いです。
メタ分析には毎週4setがトレーニングボリュームと成長率の関連性が最も高く、その後どんどん効果が減っていき、30~42setが最低であることを示していますが、それでも成長効果は明らかに停滞しておらず、右肩上がりです。
10setトレーニングしていた部位を40setでトレーニングすれば筋肉の成長効果は2倍以上になるためトレーニングは積極的に行いましょう。
しかし、セット数というのはトレーニング時間とほぼ比例するため「じゃあこれから各筋肉40setでやりましょう」と言われてそれができる人はほとんどいないと思います。
ここまではトレーニングに上限はないことを伝えましたが、ここから先はいかに効率的にトレーニングボリュームを上げる方法を紹介していきます。
まずコンパウンドトレーニングを積極的に取り入れると効率的にボリュームを確保できます。この分析ではコンパウンドトレーニングの腕や肩のセット数を0.5setとカウントしていました。例えばチェストフライをやるよりもベンチプレスを行ったほうが上腕三頭筋のボリュームも稼ぐことができます。
そして、ドロップセットや拮抗筋のスーパーセットを使うと短い時間でたくさんのボリュームを稼ぐことができます。これらのトレーニングテクニックは科学的に効果が認められています。ただ注意点としてドロップセットは筋肉の損傷も大きくなるので頻繁に使用することは避けましょう。
腕や肩のアイソレーション種目で取り入れるのがいいと思います。
そしてかなり重要なポイントですが、現実的な時間効率を考えると集中的に鍛える部位を作ったほうがいいでしょう。例えば脚の筋肉は週に1~2回のウォーキングやランニングで筋力や筋肉量をほとんど維持することができることを示しているように筋肉は構築するよりもそれを維持するほうがはるかに簡単です。
つまり、一週間で大胸筋20set、大腿四頭筋20setトレーニングしていて大胸筋の成長に停滞を感じている筋トレ中級者、上級者の人は脚のトレーニングをやめる。もしくは1週間で3set程度に減らし、大胸筋を40set近いボリュームで鍛えることで筋肉の成長スピードが大幅に上がるため大量の筋肉を獲得できます。
実際、すでにトレーニングレベルの高かったボディビルダーのジェイコブさんは上腕二頭筋と上腕三頭筋を30setトレーニングすることで腕のサイズを劇的に増やしました。
ほとんどの場合、トレーニーのセット数は各筋肉20set前後であることが多いです。これはトレーニング経験がある人にとっては十分ではない場合があり、セット数を大幅に増やすことでこれを改善できます。
特に成長させたい筋肉や停滞を感じている筋肉は30set以上で鍛えてみてください。
ただし、大量のトレーニングボリュームを確保することには注意が必要です。最も大きな問題はケガのリスクが大幅に上がります。
例えば大胸筋を40setトレーニングする場合、効率を考えるとベンチプレスなどコンパウンドのプレストレーニングをすると上腕三頭筋も同時に鍛えることができます。しかし、動画の中盤で解説したように関節の痛みなどのケガのリスクという意味でのオーバートレーニングは存在します。
40setでトレーニングするとヒジが痛くなったり肩を痛めたりするリスクが増えるため、ケガに注意してください。
この場合、おすすめなのが低重量でトレーニングすること。menno henselmans博士によると関節や腱は1RMの70%以上で鍛えると負担が大きくなるため、これを下回る負荷で鍛えればケガのリスクをかなり低くできます。
そして筋肉の損傷にも注意する必要があります。例えば今まで20setトレーニングしていた人が急に40setで鍛えると筋肉がそのボリュームに適応していないため激しく損傷してトレーニング効果を損なう可能性があります。
トレーニングボリュームを増やす量にもよりますが、準備期間を作って少しずつ増やしましょう。おすすめなのが毎週+5setずつです。20setから40setにする場合、25setの週、30setの週というように5setずつ一週間で増やしていくと問題なくトレーニングボリュームを増やせます。
加えて筋肉を深く損傷させないためにもトレーニングを分散させましょう。データにも示されているように分割法のほうが筋肉の損傷が大きくなります。これは適切なボリュームの場合、筋肉の回復時間は24時間で終わるため、分散させて高頻度で鍛えたほうが完全に回復した後にトレーニングができるためです。
そのため、40set行うなら1日8setを週5回というように分散させると問題なくトレーニングができます。
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