【背中トレ】広背筋を爆発的に成長させる正しい懸垂のやり方
懸垂は自重で出来る最も代表的な種目です。家トレの人でダンベルしかトレーニング道具がないという人はほとんどの部位はダンベルがあればトレーニングができますが広背筋についてはダンベルではあまり強く活性化できないため、ジムに通ってない人はこの種目のマスターが特に重要です。
しかし、懸垂には間違った情報もインターネット上では非常に多く存在しており、懸垂をしていても広背筋を強く活性化できないという人も少なくありません。
この記事では背中の筋肉を効率的に成長させる懸垂のグリップや手幅フォームなど正しいやり方について紹介します。
解剖学的な懸垂
懸垂ではどの筋肉が働く?
まずは解剖学的に懸垂がどの筋肉を活性化するかです。広背筋でまずメインになるのは肩関節の内転。腕を下に下げる動作です。この運動には背中にある広背筋が強く関与します。加えてフィニッシュでは肩甲骨を寄せるため菱形筋や僧帽筋などの肩甲骨の内転に関与する筋肉、加えて肘を曲げるため肘の屈曲に関与する上腕二頭筋、腕橈骨筋、上腕筋もアクティブになります。
最後に体をまっすぐにするために腹筋もアクティブになります。
ロウではストレッチの問題がある
背中のトレーニング、特にロウのような水平プルの種目では可動域とストレッチの問題があります。ダンベルロウなどは肩関節の伸展を使って広背筋を活性化しますが、可動域はほぼ90度しかなく人間の最大ROMの半分程度しかありません。さらにロウでカットされているのは可動域の中でも最も重要なストレッチポジションです。
可動域と筋肥大についての研究をまとめたレビューペーパーではストレッチさせる部分が可動域にあると筋トレ効果はより高まり、最悪でも同じであることを示しています。
理由としてはまだはっきりしていませんが、ひとつの理由として筋肉がストレッチしている時こそが筋肉に最も負荷がかかっているポイントであることが考えられています。例えばスクワットでは一番深くしゃがんでから持ち上げるときが最もつらく、ベンチプレスだとある程度バーが持ち上がった状態よりもバーを大胸筋にタッチさせてから持ち上げるのが一番しんどいと感じるはずです。逆にスクワットで半分しかしゃがまなかったりストレッチをなくしたトレーニングのほうがはるかに重い重量を扱えるはずです。
つまり筋肉に最も機械的緊張がかかっているのはストレッチポジションであるため、ロウトレーニングのようにこの部分を制限することは筋肉の成長を大きく制限します。
しかし、懸垂では広背筋にスタートポジションで強い力をかけることができるため筋肉の成長にとってプラスに働く可能性がかなり高いです。
背中と腕をかなり高いレベルで活性化させる
筋肉の活性化を調べた研究では、ぶら下がって体を持ち上げる懸垂の2つのバリエーションが広背筋の活性化が測定した種目の中で最も強いことが示されています。
加えてこの種目は腕もかなり高いレベルで活性化させます。2015年の研究では懸垂によく似たラットプルダウンとバーベルカールで被験者の上腕二頭筋のサイズを調べたところラットプルダウンはバーベルカールと同じ筋肥大効果であることが示されています。
さらに2022年の4月に発表されたレビューペーパーでは10件の研究を調べたところ腕の筋肉は懸垂のようなコンパウンドトレーニングでもダンベルカールのようなアイソレーショントレーニングでも有意な差がないことを示しています。
そのため、懸垂は背中だけではなく上腕二頭筋もかなり高いレベルで活性化させて、多くの筋肉を効率的に構築します。
懸垂のフォーム
ワイドは広背筋?
一般的に言われる常識としてはワイドな方が広背筋の活性化が強くてナローだと腕といわれます。
本当にそうでしょうか。この研究では懸垂で使うグリップと筋肉の活性化について調査を行いました。4つの様々なグリップについて広背筋の活性化に有意な差はないことが示されています。ただし、ワイドな回内グリップのみわずかに僧帽筋の中部の活動が優れていました。
次に2010年の研究ではラットプルダウンのワイドグリップとナローグリップで広背筋の活動に有意な差はないことが示されています。
さらには2014年の研究ではナローミドルワイドの3種類で筋電図分析をした結果広背筋に有意差はないことを示しています。
おそらく懸垂のグリップ幅についてはワイドでもナローでも広背筋の活動はほとんど変わらないでしょう。しかし、ワイドにすることで可動域が極端に減り自分の体が持ち上がる距離や筋肉のストレッチと収縮が弱くなります。さらにはグリップがかなり窮屈になることから手首のケガのリスクも増えます。
フィットネスの科学者であるmenno henselmans博士は可動域の観点からほとんどのトレーニングでは肩幅に近い手幅が最適であると話しています。
懸垂やラットプルダウンでワイドが好まれているのはおそらくベンチプレスのワイドグリップと同じく重量が扱えるからだと思います。可動域を減らすことで沢山の重量が扱えるようになります。これは可動域を制限するための正当な理由ではありません。おすすめのグリップ幅としては肩幅の1.5倍、こぶし1つぶんくらいの広さが筋肥大にとって効果的でしょう
回内グリップVS回外グリップ
グリップについては手のひらを下にした回内グリップもカールのように手のひらを上に向ける回外グリップも筋電図分析には差がありませんでしたが、背中の筋肉を鍛えるためには回内グリップ、上腕二頭筋を鍛えるためには回外グリップがおすすめです。
先ほど紹介した2つの研究では回内グリップのプルアップのほうが回外グリップのチンアップよりも僧帽筋の活動が高いことが示されており、別のEMG研究でも回内グリップのほうが僧帽筋の活動が強いことがわかります。
これは回内グリップの懸垂の方が僧帽筋にとって都合のいい解剖学的な運動になるためです。
ある程度広いグリップのほうが懸垂運動が上から下に引っ張る運動はもちろんですが、外から内側に力がかかるため僧帽筋の活動が増えるためです。
逆に回外グリップのチンアップは上腕二頭筋には有利な運動になります。これは回外グリップと回内グリップのバイセプスカールの違いのように手のひらを上に向けたほうが上腕二頭筋が強く働くためです。しかしながら、ほぼ間違いなく懸垂の手幅は狭くなり、肩幅以下になるため真っすぐ上から下のみの運動になります。そのため、僧帽筋の活動が弱くなります。
懸垂は広背筋を鍛える種目であるため最終的には自分の好きなやり方がベストだとは思いますが、背面の筋肉を効率的に鍛える場合は回内グリップで肩幅よりやや広い程度のグリップを推奨します。親指を上に引っ掛けるように持つサムレスか握りこむように持つサムアラウンドかは大きな問題ではないので好きなほうでOKです。
必ずストレッチをかける
正しい懸垂は必ず広背筋にストレッチをかけましょう。このポジションがないと筋肥大効果は半分になるといっても過言ではありません。ここで筋繊維に最も張力がかかっているため、例えばゴムチューブを使った懸垂は筋力アップには効果的に働く可能性がありますがゴムのアシストによってストレッチを弱めてしまうため筋肥大にとってはあまり理想的ではありません。
広背筋の成長のためには持ち上げるときに肩甲骨を下に下げて持ち手が自分の真上ではなく斜め上に見えるようにしましょう。肩関節の内転は広背筋もそうですが大胸筋も使用されます。この内転運動が大胸筋に効くか広背筋に効くかを決めるのは物理的な負荷の向きです。
ケーブルクロスオーバーのように後ろから前に引っ張ると体の前面にある大胸筋が活性化され、前から後ろに引っ張ると背中が活性化されます。持ち手が斜め上に見えるとすこし前から後ろに引っ張られることになるため背中が強く働くことになります。
そのまま体を持ち上げて大胸筋上部がバーにつくまで引っ張ります。持ち上げるときに背中が丸まらないように注意が必要です。この運動をすると収縮とストレッチを同時にかけて筋肉に負荷を与えながら逃がしているようなものです。
フィニッシュでは背中が斜めに一直線またはややそっているくらいがベストです。そしてまたストレッチポジションに戻ります。
特に多い間違いは肘を伸ばし切らずストレッチを殺すこと、そして大胸筋上部をバーにくっつけないことです。これをすれば簡単に重い重量を扱えますが賢いトレーニング法ではありません。
自重での懸垂が簡単すぎると感じたら加重ベルトにダンベルやウエイトプレートをひっかけて負荷を上げましょう。加重ベルトは全然高いアイテムじゃなく、安かったら1000円代で変えるので買っておいて損はないと思います。
そしてある程度の回数ができるようになってきたら負荷を上げることが重要です。自重の懸垂は腕立て伏せほど簡単に40repとか50rep上がるようにはなりませんが10回上がるようになったら負荷を増やすとプログレッシブオーバーロードにより筋肉がもっと効率的に成長するようになります。
正しいやり方をすれば間違いなく懸垂は広背筋を成長させます。特に家トレの人はこの懸垂ができるかどうかで成長率は段違いに変わるので必ず懸垂ができる設備を設置しましょう。
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