【肩トレ】科学的な三角筋の鍛え方
肩にある三角筋は体の外見的にも非常に重要な部位です。ジムに通ってる人のほとんどが肩のトレーニングを行っていますが間違った鍛え方により肩を痛めたり、時間を投資しているのになかなか筋肥大しないという相談を受けることも少なくありません。
この記事ではそんな肩の科学的な文献や博士号を持つ研究者の方の動画を基にに正しい鍛え方を紹介します。
解剖学的な肩の筋肉、三角筋
解剖学的な三角筋
肩には3つの部位があります。ひとつは体の前面にある三角筋の前部は肩関節の屈曲におもに関与します。腕を前面に持ち上げるフロントレイズが完全に肩の屈曲です。
ふたつ目は三角筋の中部、肩関節の外転におもに関係し、腕を横に上げるサイドレイズが代表的な運動です。三つ目は三角筋の後部、これはリアレイズのように肩の水平外転、腕を前から後ろに引っ張る運動。そしてフロントレイズの逆、上から下に上を下げる肩関節の伸展に関わる筋肉です。
回旋腱板も肩にある
これに加えて肩のトレーニングでは4つの回旋腱板も働きます。これら3つは筋肉のサイズにはあまり貢献してくれないのでトレーニングではできるだけ三角筋に刺激が入るように工夫が必要です。
さらには肩の筋線維は遅筋繊維と速筋繊維がほとんど1:1であることが多くの研究で示されていますがこの辺は個人差があります。
しかし、速筋繊維は高重量、遅筋繊維は高回数などといった筋線維の分布を見て鍛え方を変えるのは科学的な信頼性がほとんどありません。部位に関係なく高回数も高重量も筋肥大効果は一緒というが今の科学の常識です。
肩にある三角筋の鍛え方
肩はケガしやすい
三角筋には3つの部位がありますが全ての種目で等しく刺激が入っているわけではありません。
そのため、三角筋の前部の種目と中部,後部の種目のボリュームを同じにするのは間違いでありバランスの良いセット数はバランスの悪い肩につながります。
この3つの部位の不均衡によって肩のケガのリスクが高くなる可能性があり、2011年の肩のインピンジメントについての研究ではウエイトトレーニングのケガの36%は肩で起こっていると報告されています。
肩は非常にデリケートな関節、筋肉であるため注意が必要です。バスキーたちのEMG分析の記事では肩は脚よりもはるかに弱いため軽い重量で適切なフォームで行うことが重要であるということが示されています。フォームが適切なものであれば高重量低回数でやろうと思っても普通はそこまで重い重量を持てません
肩の筋肉の大きさの差
マイケルガンディル博士によるとボディビルダーとトレーニングをしていない一般的な人の肩の筋肉の大きさを調べたところボディビルダーは一般男性の5倍もの三角筋前部をもっていることがわかりました。
しかしながら、中部は3倍の大きさ、後部については10~15%程度であることが報告されています。
この原因については他のトレーニングで入る刺激が前部とその他の筋肉では全く違うからです。
三角筋前部が他の中部や後部と違って発達しやすくトレーニングボリュームが必要ないのはプレスのおかげです。これらの種目が大胸筋にとってだけでなく非常に三角筋前部にとっても良い種目だからです。
バスキーたちの筋電図分析によると前部のトレーニングとしてよく使用されるフロントレイズはフラットなベンチプレスと同じくらいの刺激しか肩に入れられないことがわかっています。いうまでもなくインクラインのプレスには勝てるはずがありません。さらには悲しいことにダンベルサイドレイズにすら負けています。
断言してフロントレイズは非常に効率の悪いトレーニングであるためおすすめしません。やってる人の多さと効率の悪さから考えるとトレーニングの中でも最悪の種目と言ってもいいでしょう。科学的な権威であるブラッドシェーンフェルド博士もほとんどの人はフロントレイズを肩のためにやるべきでないと主張しています。
この理由は分かりますよね。フロントレイズやるくらいだったらベンチプレスやったほうが大胸筋や上腕三頭筋のトレーニングにもなりますし明らかに効率的です。
前部とは違い、三角筋の中部と後部は多くのトレーニングボリュームが必要です。特に後部は背中で鍛えられるから前部と同じくあんまりトレーニングしなくていいでしょと思いがちですが背中による刺激はないものと考えていいでしょう。
ジャンク(無駄な)ボリューム
この記事で特に持ち帰ってほしいのはジャンクボリュームという単語です。日本だとあまりこの言葉は意識されていませんがサイエンスを重視するフィットネス先進国では常識ともなってる単語です。
例えば1日でサイドレイズを10set20setやるとします。その場合トレーニングが終わった時には肩は上がらなくなるくらい疲れていてパンパンに張っているかもしれません
これをフィットネス後進国の日本だと「いい追い込みだねー」「ナイスパンプ」ってまるでいいコトのように言われるかもしれません。しかし、科学的に証明されていることは完全に逆です。
一度に多くのボリュームをこなすことはジャンクボリュームにつながります。さっき言ったようなトレーニングで大量にやるのはかなりの疲労をもたらします。例えば10setサイドレイズをやるとき1set目は20repできても最後の10set目の回数はどうなっていますか。これが日本だといいと考えられてますが科学的には疲労状態でのトレーニングは回数や重量の低下をもたらすためあなたがどれだけきついと感じても筋肥大にとって刺激不足になります。
半分程度がジャンクボリュームになるためどんなデカい人がやっていても科学的なデータや被験者のサイズの変化などを見るとかなり悪いトレーニングとなるという現実があります。そのため、これはどの部位にも言えますが出来るだけ高回数で分割して1日でやるセット数を少なくするのがおすすめです。
肩のおすすめトレーニング
三角筋前部おすすめ種目
三角筋前部のおすすめの種目はショルダープレス。前部はプレス以外の選択肢はありません。ショルダープレスについては科学的な筋電図分析ではほぼ一貫してフロントレイズやベンチプレスなどよりも優位に高い三角筋前部の活性化を示しています。
バーベルやダンベル、マシンなどさまざまなバリエーションがありますがそこまで大きな差はないようです。ただ、個人的にはグリップの快適さや安全性などを考えるとダンベルのショルダープレスをおすすめします。
三角筋の筋活動を高めるテクニックとして代表的なのが立った状態で肩を鍛えることです。ボディビルダーは座った状態でショルダープレスを行うことを好むかもしれません。しかし、筋電図分析によると立った状態でショルダープレスを行うことで三角筋全ての部位の筋活動が高くなることを示しています。
2013年の研究では立った状態でショルダープレスを行うことで前部は+8%,中部は+15%,後部は+24%筋活動が高くなったことがわかりました。
デメリットとしては扱う重量が10%下がるため、筋肥大効果よりも動画映えや承認欲求を優先させるエゴリフターたちには嫌われるやり方ですが効率的に鍛えたい人にとっては魅力的なやり方です。この原因として立った状態で安定感がなくなるため重量が落ちますがバランスをとるため筋活動が高くなったと示されています。ショルダープレスの人気のやり方としてスミスマシンやマシンでのショルダープレスがありますがこれは安定感を強めるので立った状態で行ってもほとんどメリットが無いように考えられます。
類似した研究ではベンチプレスのスミスマシンとフリーウエイトではマシンを使うことで三角筋中部の活性化が半分程度になっていることを示しています。そのため、安定したショルダープレスは三角筋全体を活性化させるために非効率的なトレーニングになりえます。
もうひとつおすすめの種目としてじゃっかん研究不足ではありますがアーノルドプレスです。三角筋中部と前部で一般的なショルダープレスよりも優位に高い筋活動を示しています。この種目も立った状態で行うといいかもしれません。
三角筋中部おすすめ種目
三角筋中部のおすすめの種目はサイドレイズです。これにもケーブルだったりダンベルだったりバリエーションが複数ありますが筋電図分析によるとあまり違いはないようです。サイドレイズは科学的な研究によると最初の30度までは三角筋中部よりも回旋筋腱板の棘上筋がアクティブであり60度から三角筋中部の活動が優位になり三角筋中部の可動域の限界までアクティブになります。日本だと違うマシンで応用しますが、こういったマシンのサイドレイズマシンは三角筋中部にとって非常に理にかなっています。その逆で例えばインクラインダンベルサイドレイズでは重力が最もかかる場所は棘下筋が非常にアクティブな位置であるため三角筋中部にとっては良い種目ではありません。
ケーブルのサイドレイズならスタートの部分でも負荷をかけることができるためストレッチを入れるためにはインクラインダンベルサイドレイズではなくケーブルのサイドレイズを行いましょう。
加えて2014年の研究ではダンベルサイドレイズで複数のバリエーションで比較しました。ひとつ目はエンプティカンエクササイズ。これはフィニッシュで小指を上げるものです。そしてもうひとつはフルカンエクササイズこれはフィニッシュで親指を上に上げます。
研究結果としてEMGではエンプティカンエクササイズをすることで三角筋中部の活動が優位でした。親指を上にしたり脇が閉じている状態でサイドレイズを行うと三角筋中部の活動が大幅に減少します。ダンベルサイドレイズのおすすめのやり方はダンベルを持つときにあえて小指側を空けて持つことです。これによりエンプティカンムーブメントを強くすることができます。
座った状態もたった状態もおそらく筋肥大効果はほとんど変わりませんが個人的に座った状態では脚の下にダンベルが通せるためより広い可動域をもたらします。
三角筋後部おすすめ種目
最後は後部のトレーニング。リバースペックデックマシンが効果的です。筋電図分析では測定したトレーニングの中で優位に高い三角筋後部の筋活動を示しています。回内グリップでトレーニングする人が多いですが2013年のjournalに掲載された研究では回内グリップよりもニュートラルグリップのほうが後部と中部の筋活動が高くなることを示しています。
これはニュートラルグリップにすることでフェイスプルのように肩を後ろに回転させる回転動作が加わったためだと考えられています。
最新の研究である2021年のメタ分析では完全なる可動域がパーシャルレップをよりも筋肥大する可能性が高いことを認めています。科学的にはこういった結論が出ていますので重量にはこだわらずにまずは可動域やフォームを優先させることです。全くダンベルを持ち上げていなかったり逆にほとんど下げてないトレーニングは非効率的なトレーニングとなります。科学的な証拠からよく言われれている負荷を抜かないトレーニングは筋肥大効果が薄いことが示されています。サイドレイズ以外のショルダープレスでもしっかり下げてしっかり上げることを意識しましょう。
おすすめのセット数頻度
後部>中部>>>>前部
筋肉痛や疲労はある程度考慮する必要があります。mike israetel 博士の推奨では肩のトレーニング頻度としてはおすすめは前部は週に2回程度、中部と後部は週に3~6回です。中部と後部は高頻度でやったらマジで変わったとコメントで報告してくれる人も結構いるので肩がデカくならないと感じている人は試してみてください。
ボリュームについて、mike israetel博士は前部は8set、中部と後部はそれぞれ20setを推奨しています。
しかし、少し前のガイドラインでは肩の日や肩は前部と中部後部3つのボリュームがほとんど同じでした。michael gundill博士で調査されたボディビルダーはこのガイドラインに従っていると思いますので、ボディビルダーの肩の大きさの不均衡さを考えると後部を特に鍛えて中部は次、そして前部は大胸筋トレーニングをやっているのなら1週間で数セット程度、もしくは時間をかけたくない人は後回しにするのもアリだと思います。
mike israetel 博士の推奨では前部は6~8set、中部と後部は16~22setですが、パーカーフィットネスの推奨するガイドラインでは後部は20~25set,中部は10~15setです。理由としてこれは肩の筋肉のバランスや筋電図分析にある通り後部は筋肥大しづらく、後部のトレーニングは中部も高いレベルで刺激してくれるためです。中部の筋電図分析ではサイドレイズの2つがトップですがそれに近い値がリバースペックデックマシンで記録されています。バスキーたちのemg分析でもそうですよね。同じ種目が中部にとっても強い刺激を入れることがわかってます。つまり後部にとってはもちろん中部にも強い刺激を与えます。
しかしその逆はなくダンベルサイドレイズなどの中部の種目は後部はあまり活性化されないため後部を優先させるべきだと考えています。
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