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お腹の脂肪を落とすなら、走るより歩いてください【科学】

お腹の脂肪を落とすために、毎日走っている人へ。そのランニング、本当に必要でしょうか。

多くの人は、長く走り、汗をかき、苦しい運動をするほど脂肪が落ちると考えています。しかし、何か月も有酸素運動を続けているのに、顔や腕は細くなっても、お腹だけがほとんど変わらない人は珍しくありません。

これは、努力が足りないからではありません。

お腹の脂肪には、ただ消費カロリーを増やすだけでは攻略できない仕組みがあります。そして、運動を激しくすればするほど有利になるほど、体は単純ではありません。

今回は、なぜ走っても腹の脂肪が残るのか。そして、苦しい有酸素運動を増やさずに、お腹の脂肪が落ちる状態を作る方法を解説します。

まずは、なぜ脂肪が全身から均等に落ちないのか。その仕組みから見ていきましょう。この動画が参考になったら高評価をお願いします。

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CH1 なぜお腹の脂肪は最後まで残るのか

体脂肪が減るとき、脂肪細胞の中に蓄えられている脂肪は、その場で直接燃えるわけではありません。まず脂肪酸として細胞の外へ放出され、血液によって筋肉などへ運ばれ、そこで初めてエネルギーとして使われます。この最初の工程が脂肪分解です。

そして、この脂肪分解を調節しているのが、脂肪細胞の表面に存在するアドレナリン受容体です。

覚えるべき受容体は2つだけです。1つ目は、脂肪分解を促進するβ受容体。これは脂肪細胞の扉を開くアクセルです。アドレナリンやノルアドレナリンがβ受容体に作用すると、蓄えられた脂肪が細胞の外へ放出されやすくなります。

2つ目は、脂肪分解を抑えるα2受容体です。こちらは脂肪細胞の扉を閉じるブレーキとして働きます。人間の脂肪細胞で、α2受容体が脂肪分解を抑えることは以前から確認されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6105967/

重要なのは、このアクセルとブレーキのバランスが、体のすべての場所で同じではないことです。腹部の皮下脂肪、内臓脂肪、太ももやお尻の脂肪では、受容体の数や感度、血流、ホルモンへの反応が異なります。

そのため、同じカロリー赤字を作り、同じホルモンが全身を流れていても、脂肪は全身から同じ速度では落ちません。一般的に脂肪分解は内臓脂肪で高く、腹部の皮下脂肪で中程度、太ももやお尻の皮下脂肪で低くなります。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8519504/

つまり、「腹にはα2受容体が大量にあるから、腹脂肪だけが完全にロックされる」というほど単純な話ではありません。しかし、脂肪がついている場所によって、脂肪を放出しやすい部位と放出しにくい部位があることは事実です。

さらに男性は腹部に脂肪を蓄えやすく、もともとの脂肪量も多くなりやすいため、脂肪が減り始めていても顔や腕より変化が遅く見えます。お腹だけが残っているように見えるのは、脂肪がまったく分解されていないからではなく、最初に蓄えられている量と、部位ごとの脂肪分解の反応が違うからです。

では、脂肪分解を促すβ受容体があるなら、蓄えられた脂肪が細胞の外へ放出されやすくなる大量のアドレナリンを出せばいいのでしょうか。ゆっくり歩くより、息が切れるまで走り、激しいインターバルトレーニングをした方が、脂肪細胞のアクセルを強く踏めるように思えます。

実際、運動中はアドレナリンやノルアドレナリンが増え、腹部の皮下脂肪でも脂肪分解が高まります。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2312732/

しかし、高強度運動で増えるのは、脂肪分解を促すホルモンだけではありません。ここで関係してくるのが、腹部の脂肪の原因として頻繁に語られるコルチゾールです。

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CH2 激しい運動は腹の脂肪を固定するのか

運動強度を上げると、アドレナリンだけでなく、ストレスホルモンのコルチゾールも増加します。

男性に最大酸素摂取量の40%、60%、80%でそれぞれ30分間運動してもらった研究では、運動強度が高くなるほど血中コルチゾールが上昇しました。体が楽に処理できる負荷を超えると、コルチゾールの分泌は明確に増えます。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18787373/

そして、慢性的にコルチゾールが高い状態は、腹部への脂肪蓄積と関係します。

そのため、「ランニングやHIITでコルチゾールが増えると、腹部のα2受容体が脂肪分解を止め、お腹の脂肪が落ちなくなる」という説明は、一見すると理にかなっているように見えます。

しかし、この説明には重大な間違いがあります。

運動によって一時的に上昇するコルチゾールと、長期間続く慢性的なコルチゾール上昇は同じものではありません。運動中のコルチゾール上昇は、体がエネルギーを確保し、運動の負荷に対応するために起こる正常な反応です。コルチゾールが一時的に増えたからといって、腹の脂肪が固定されるわけではありません。

最も分かりやすい証拠が、実際に高強度インターバルトレーニングを行わせた研究です。

39件の研究を統合したメタ解析では、HIITによって全身の脂肪だけでなく、腹部脂肪と内臓脂肪も有意に減少しました。特に体重が多い人では、内臓脂肪の減少が大きくなる傾向も確認されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29127602/

つまり、「激しい運動をするとコルチゾールによって腹脂肪がロックされる」という説明は間違いです。HIITでもランニングでも、エネルギー赤字を維持すれば、お腹の脂肪は減少します。

では、なぜ脂肪を落としたい人に、走るより歩くことを勧めるのか。

本当の問題はコルチゾールではなく、激しい運動のあとに起こる補償です。

運動で500kcalを消費しても、必ず500kcal分だけ体脂肪が減るわけではありません。運動後に食べる量が増えれば赤字は小さくなります。疲労によって、その後の立つ、歩く、家事をするといった日常活動が減る人もいます。特にこれは運動強度が高いほど大きくなります。

過体重または肥満の成人を24週間追跡したランダム化比較試験では、運動によって予想されたほど体重が減らなかった主な原因は、代謝が壊れたことではなく、食欲と摂取カロリーが増えたことでした。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31172175/

もちろん、ランニングをすると全員の食欲が増え、全員の活動量が下がるわけではありません。問題は、運動強度を上げれば上げるほど、計算どおりに脂肪が落ちるとは限らないことです。

ここに歩くことの最大の強みがあります。

歩行は1分当たりの消費量ではランニングに負けます。しかし、筋肉痛や強い疲労をほとんど残さず、食後や移動中にも追加できます。筋トレと日常活動を崩さず、1週間、1か月と運動量を積み上げられる。これが、歩行が脂肪減少に強い本当の理由です。

ただ何となく歩くだけでは、体を変えるほどの運動量にはなりません。ここからは、脂肪減少の効果を最大化する3つの歩行ルールを紹介します。

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CH3 ルール1 食後10分で血糖値を抑える

1つ目のルールは、食事が終わったら10分間歩くことです。

朝食、昼食、夕食のあとに10分ずつ。まとめて30分歩くのではなく、食後に分けて歩いてください。息が切れるほど速く歩く必要はなく、普段より少し速い程度で十分です。

食事から摂取した糖質は、ブドウ糖として血液中に入り、血糖値を上昇させます。するとインスリンが分泌され、糖を筋肉や肝臓へ運ぶと同時に、脂肪細胞から脂肪を放出する脂肪分解を抑えます。

しかし、食後すぐに歩くと、筋肉はインスリンとは別の経路を使って、GLUT4という糖の入口を細胞表面へ移動させます。これによって、座っているときより血液中の糖を筋肉へ取り込み、運動のエネルギーとして使いやすくなります。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15294032/

2型糖尿病の成人41人を対象にした研究では、好きな時間に1日30分歩く方法と、朝食、昼食、夕食のあとに10分ずつ歩く方法を比較しました。

その結果、合計の運動時間は同じでも、食後に10分ずつ歩いた方が、食後血糖は全体で約12%低くなりました。特に炭水化物の摂取量が多かった夕食後では、約22%低下しています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27747394/

さらに、食事前や食後しばらく経ってから運動するよりも、食べ終わったあとに早く歩き始めた方が、食後血糖を抑えやすいことが示されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36715875/

ただし、血糖値が大きく上がった分だけ体脂肪が増え、血糖値を下げた分だけ脂肪がつかなくなるわけではありません。

食後にインスリンが増え、脂肪分解が一時的に抑えられるのは正常な反応です。減量中でも食後には脂肪が蓄えられますが、その後にそれ以上の脂肪を放出して使えば、1日全体では体脂肪が減ります。最終的に脂肪が増えるかどうかを決めるのは、数週間にわたる摂取カロリーと消費カロリーの差です。

それでも、食後歩行は体重管理に有利です。食後の糖を筋肉で使い、血糖値の上昇を抑えながら、歩いた分だけ消費エネルギーも増やせます。

さらに、食後10分歩行には2つのメリットがあります。

1つ目は、運動を忘れにくくなることです。「時間があるときに歩く」のではなく、「食事が終わったら歩く」と決めれば、食事そのものが運動開始の合図になります。3食後に10分ずつ歩けば、1日30分、1週間で210分の歩行を確保できます。

2つ目は、食べ過ぎを防ぐ行動ルールになることです。食後に歩く予定があれば、苦しくなるまで食べることを避けやすくなり、食べ終わったあとも食卓に残って追加で食べ続ける習慣も終わらせやすくなります。

これは食後歩行によって食欲ホルモンが必ず下がるという意味ではありません。「食べ終わったら歩く」と決めることで、食事を終える明確な区切りを作るということです。

最初から3食すべて行う必要はありません。まずは最も食事量が多く、その後に座って過ごしやすい夕食後だけ10分歩いてください。慣れたら昼食後、最後に朝食後を追加します。

食後10分歩けば、血糖値を抑え、消費量を増やし、運動を習慣化し、食べ過ぎも防ぎやすくなります。

しかし、食後10分だけでは、普段ほとんど動かない人の活動量はまだ不足します。そこで2つ目のルールでは、日常生活の中で歩数を増やします。

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CH4 ルール2 現在の歩数に2,000歩を追加する

2つ目のルールは、いきなり1日1万歩を目指すことではありません。

まずスマートフォンで、過去1週間の平均歩数を確認してください。そして、その数字に2,000歩を追加します。普段3,000歩なら5,000歩、6,000歩なら8,000歩が最初の目標です。

脂肪を落とすために重要なのは、理想的な歩数を一度だけ達成することではなく、現在より多い活動量を毎日維持することです。

1日の消費エネルギーは、基礎代謝とトレーニングだけで決まりません。立つ、歩く、家事をする、通勤する、階段を上るといった、運動以外の活動でもカロリーを消費しています。これをNEAT、非運動性活動熱産生と呼びます。

NEATが太りにくさをどれほど左右するのかを調べた有名な研究があります。16人の非肥満成人に、維持カロリーより毎日1,000kcal多く、8週間食べてもらいました。

全員が同じように過食したにもかかわらず、脂肪の増加量には約10倍の差が生まれました。その差を強く説明したのがNEATです。過食後に立つ、歩く、細かく動く量が増えた人ほど、余ったカロリーを消費し、脂肪が増えにくくなりました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9880251/

日常の歩数と長期的な体重増加にも関係があります。26〜36歳の成人1,155人を約5年間追跡した研究では、一貫して1日1万歩以上歩いていた人と比べ、途中から1万歩未満に減った人は2.6kg、一貫して1万歩未満だった人は1.6kg多く体重が増加していました。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28068968/

これは、1万歩を下回った瞬間に太るという意味ではありません。重要なのは、日常の歩数が減り、低い活動量が何年も続くと、少しずつ体重が増えやすくなることです。

反対に、減量中は歩数を増やした人ほど結果が良くなります。18か月間の減量プログラムでは、10分以上連続して行う中強度以上の歩行が1日1,000歩多いごとに、約0.33kg多く減量していました。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5970037/

買い物では入口から離れた場所に車を停める。電話中は座らずに歩く。エレベーターではなく階段を使う。ジムに着いたらウォームアップとして歩く。このような短い歩行を1日の中に分散させれば、新しく長時間の有酸素運動を行わなくても達成できます。

まずは今の歩数から2000歩増やす。これが2つ目のルールです。

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CH5 ルール3 速度ではなく傾斜を上げる

3つ目のルールは、平地歩行に慣れたら、速度を上げて走るのではなく、傾斜を上げることです。

同じ速度で歩いても、坂道では体を前へ運ぶだけでなく、重力に逆らって上へ持ち上げる必要があります。そのため傾斜が大きくなるほど酸素摂取量と消費エネルギーが増加し、短い時間でも平地より高い運動強度を作れます。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12183501/

傾斜0%、5%、10%のトレッドミル歩行を比較した研究でも、傾斜が大きくなるほど下半身の筋活動と代謝コストが増加しました。つまり、歩く時間をこれ以上増やせない人でも、傾斜をつければ同じ30分の負荷を引き上げられます。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4504736/

さらに、同じ程度の代謝負荷になるよう設定した研究では、速い平地歩行よりも、速度を落として傾斜をつけた歩行の方が、膝への衝撃と一部の関節負荷を小さくできました。走ると膝が痛くなる人や、体重が重い人でも、傾斜歩行なら衝撃を抑えながら運動強度を上げられます。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21200344/

最初から傾斜12%で行う必要はありません。まず傾斜5%、会話を続けられる速度で20分間歩いてください。余裕が出たら速度ではなく傾斜を少しずつ上げます。最終的な目安は傾斜8〜12%、20〜30分、週2回です。

息が大きく乱れ、会話もできないレベルなら負荷が高すぎます。最初に話したように高強度の有酸素運動には食欲増加と疲労によるNEATの現象リスクがあります。

可能なら傾斜をつける。これが3つ目のルールです

CH6 12週間で腹の脂肪を落とす完成プラン

最後に、ここまで紹介した3つのルールを、無理なく生活に定着させる12週間の計画にまとめます。

1〜4週目は、過去1週間の平均歩数を確認し、そこに1日2,000歩を追加してください。同時に、最も食事量が多い夕食後だけ10分歩きます。基本的に10分歩けば約1000歩なので夕食後のウォーキングとエレベーターではなく階段を使う意識が必要です。

歩くスピードについては気にしなくて大丈夫です。まず歩くことが重要です。

5〜8週目は、夕食後の歩行に慣れたら昼食後も追加し、可能なら朝食後も10分歩きます。3食後に10分ずつ歩けば、1日30分、1週間で210分の歩行を確保できます。これだけで3000歩は稼げます。

歩数は8,000歩を一つの目安にしましょう。歩数を達成するだけでかなり痩せやすくなります。

9〜12週目は、ここまで作った歩数と食後歩行を維持したまま、週2回、20〜30分の傾斜歩行を追加します。

最初は傾斜5%程度から始め、徐々に上げていきましょう。歩く行為は過小評価されがちですが実はHIITやランニングを超えます。

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