分割法はもう古い。科学が証明した”全身トレーニング”の真実【筋肥大の最適解】

胸の日、背中の日、脚の日。この考え方、実はもう時代遅れです。
あなたの筋トレ、本当に効果が高いものですか?分割法と全身法、どちらが筋肥大に最適なのか。最新の研究で答えはもう出ています。分割法よりも全身法のほうが筋肥大効率が高いということが科学的に証明されています。
この記事では”なぜ全身トレーニングが最も合理的なのか””分割法が抱える問題点”について科学的なデータを基に解説していきます。
分割法の限界
まず最初は分割法が抱える問題点について紹介していきます。
分割法は1950年代以降に注目され始めたトレーニング法です。これはボディビルの大会やサプリメント、雑誌などに非常に強い影響力を持っていたウイダー兄弟が分割法を提唱したことで流行りました。
分割法というのはほとんどのひとが知っているように大胸筋を鍛える日だったり、押す筋肉を鍛える日を作るなど日によって鍛える部位を分割するという方法です。
実際これは今でもボディビルダーはじめ多くのトレーニーから強い支持を得ています。
しかし、最新の科学的な分析によって分割法という特定の筋肉を集中的に鍛えるトレーニングにはある2つの大きな欠点があり、これを考慮すると筋肉の成長にとって分割法は最適ではなく、筋肉の成長を最大化させる効果的なトレーニング法ではないということがわかりました。
分割法の大きな問題はボリュームの低下とジャンクボリュームの発生です。
科学者が分割法について大量のデータを基に分析を始めると分割法はトレーニングボリュームが低い傾向にあることがわかりました。
トレーニングボリュームというのはセット数、レップ数、そして重量をかけた数字でどれだけ筋肉を鍛えたかを表す数値だとイメージしてもらえれば正解です。トレーニングボリュームは筋肉の成長においてとても重要です。
2022年の2月までに公開された178件の研究、合計5097人の被験者を対象にした筋肥大、そして筋力についてのデータを分析した結果、筋肥大にはボリューム、筋力には強度が最も重要な数値であることがわかりました。
これ以外にもパンプや筋肉の損傷が筋肉の成長において重要だと聞いたことがある人も多いと思います。
しかし、フィットネスの世界的な権威であるブラッドシェーンフェルド博士も、パンプや筋肉の損傷については過大評価した間違った情報がインターネット上には流れているが、最も信頼性の高いモノは機械的な緊張のみであると話しています。
つまり、信頼性の高い文献によって筋肉の成長にとって重要な刺激は機械的な緊張のみであることが裏付けられています。この機械的な緊張の量を表したのがボリュームです。
話を戻しましょう。研究者たちが分割法についての研究データをチェックしていくと”分割法をしている人はボリュームが低い”ということが見つかったのでしょうか。
これは疲労の蓄積が原因です。
高頻度でトレーニングするというのは非常に長い休憩を途中でとることになります。例えば大胸筋トレーニングとして1週間に5setベンチプレスをするとしましょう。分割法で大胸筋の日を作った場合、月曜日にベンチプレスが集中することになります。セット間の休憩はほとんどのひとが2~3分で長い人でも5分です。
しかしこれを月曜から金曜まで毎日1setずつにしたとします。この場合、セット間の休憩時間は24時間になります。
セット間の休憩時間について、科学的なデータはほぼ一貫しています。それは休憩時間が長いほど筋肉の成長が促進されるというものです。これは1分で休憩するよりも3分で休憩したほうがパフォーマンスが回復するため次のセットで持ち上げられる回数が大きく低下しないことが原因です。
試してみると分かります。1分休憩より3分休憩のほうが、確実に回数が多くなる。つまりトレーニングボリュームが高くなるということです。
トレーニングセットが低くなってしまう最大の原因はこの疲労の蓄積です。胸の日に集中的に鍛えると大胸筋がどんどん疲労していき、パフォーマンス、つまりVOLが下がっていってしまいます。
その証拠にある研究では被験者に片脚のレッグプレスを全く同じセット数で行わせ、週1回9setで鍛える脚と週3回3setずつ鍛える脚に分けたところ、高頻度で行った脚はグラフを見ていただいたらわかる通りすべての週でトレーニングVOLが高く、週1回の脚は筋肉の成長が+1.8%だったのに対し、週3回で鍛えた脚は+4.1%の筋肥大効果でした。
ちなみに少し前までは高頻度トレーニングが優れている理由は筋タンパク合成の持続時間であると考えられていましたが、それは間違いでトレーニング効果の差はVOL差であるということがわかっています。
そして、分割法で筋肉を鍛えるとジャンクボリュームという最悪のボリュームが発生します。
ジャンクというのはゴミやガラクタを意味する言葉でジャンクボリュームというのは筋肉の成長に何の効果もないトレーニングボリュームです。つまり、皆さんが100setトレーニングをしてもそれがジャンクボリュームなら筋肉の成長は全く起こりません。
2025年の4月2日に公開された最新のメタ分析を紹介します。この分析では67件の研究、合計2000人以上の若い成人を対象に調査をした結果、1セッション、つまり1回の筋トレで同じ部位を鍛えるほど1setあたりの筋肥大効果が下がっていくことがわかりました。
https://sportrxiv.org/index.php/server/preprint/view/537
原因は疲労によるパフォーマンス低下です。この研究では、1回で11setを超えると筋肥大効果はほぼなくなると報告されています。つまり先ほど紹介したようにトレーニング効果というのはどんどん下がっていきます。例えば最初のセットは+10%であったのが2set目は+9,3set目は+8ということですが、これが11setになるとほぼ+0となってしまうということです。
「ジャンクボリュームの原因は筋肉の損傷です。よく“筋肉は壊すほど成長する”といわれますが、それは誤解です。損傷が深すぎると、修復にエネルギーが奪われ、成長が止まります。分割法のように集中的に鍛える方法は筋肉のダメージが激しいことがわかっています。
「つまり筋肉は少しずつ鍛えたほうがいいってこと?」と思った方。鋭いです。その通りです。
分割法で一気に集中的に鍛えると疲労の蓄積によるボリューム低下やジャンクボリュームの発生を招きます。この問題点すべて改善させたのが全身法です。そして実はこれ以外にも全身法を取り入れると数多くのメリットがあります。
全身法の実践的メリット
科学的なデータに基づくと分割法よりも全身法のほうが筋肉の成長が高いことは明白です。実際、最近行われたメタ分析では大量の科学的なデータを分析したところ大きな差はありませんでしたがトレーニング頻度が高いほど筋肉が成長することがわかりました。
先ほど紹介したように分割法はパフォーマンス低下による低ボリューム化とジャンクボリュームの発生があり、全身トレーニング法で各筋肉を毎日少しずつ鍛えるとジャンクボリュームなく、すべて質の高いセットで筋肉を鍛えることができます。
実際、高頻度トレーニングではなく全身トレーニングと分割トレーニングで比較した研究ではどうでしょうか。2018年の研究ではベンチプレスの平均重量が100kg以上の上級者を全身トレーニングを5日行うグループと胸の日から始まる分割トレーニングを5日間行わせたところ筋肉サイズは測定したすべての部位で全身法が優れており、約2倍の筋肥大効果であったことがわかりました。
この研究では被験者は同じ種目を同じ重量でこなしていたため、差ができた原因は頻度のみでした。
ただ、これ以外にも全身トレーニングにはメリットがあります。まずひとつ目、全身トレーニングは毎回のトレーニングの疲労を均一にバランスよく保ちます。
例えば分割法をしている人は辛いトレーニングが「脚の日」に集中することになり、逆に肩の日や腕の日はそこまで疲れません。
そしてもうひとつは柔軟性、仕事やプライベートのスケジュールによって「金曜日ジムにいけなくなっちゃった」ということもあるでしょう。こういった場合、分割法をしている人だと腕を1週間全く鍛えないことになってしまいますが、全身法だと1日休んだくらいで全体のバランスは崩れません。
そして最大のメリットとも言っていいですが、全身法はトレーニング時間がかなり短くなります。何年も全身トレーニングをやっている僕の体感ですが、20~30%ほどトレーニング時間は短くなります。これは種目間の休憩が必要ないのとスーパーセットが使えるためです。
例えばベンチプレスの後にダンベルフライをやるのと、ベンチプレスの後に懸垂をやるのとではベンチプレスとダンベルフライは同じ筋肉を鍛えるため休憩が必要ですが、ベンチプレス中に背中の筋肉はほとんど使われないため、休憩なしで懸垂を行うことができます。
そして、効果的なスーパーセットを使うことができます。スーパーセットは休憩なしで連続で鍛えるものですが、拮抗筋や干渉しない筋肉群同士のスーパーセットはトレーニング効果を一切落とさず筋トレ時間を減らすことができます。
2023年の研究では、スクワット→ベンチを順番に行うグループと、交互に行うグループを比較しました。筋肥大効果は同じでしたが、交互に行った方はトレーニング時間が半分でした。(23と42)
同じ筋肉を鍛えるスーパーセットもありますが、これは筋肉の成長を減らす可能性が高いことがわかっているため分割法でスーパーセットを行うことは現実的ではありません。
つまり全身法には筋肉の成長以外にも現実的な数多くのメリットがあります。これほど科学的なデータが出ているのになぜ日本では分割法が指示されているのでしょうか。
分割法が支持される理由
科学的なメタ分析やレビューでは少なくとも”分割法が全身法よりも成長する”というデータは一切見つかっていません。つまり、分割法の科学的裏付けはゼロです。しかし、なぜ今でも分割法が支持されているのか。
それはひとことで言うなら安心感です。分割法は“やった感”が得やすいトレーニングです。集中的に筋肉を鍛えれば疲労感や追い込み感が強くなります。だから多くの人が“たくさん鍛えた=効果がある”と錯覚します。
しかし、科学的には筋肉を壊すことではなく効率的に機械的な緊張を与えることが重要です。まとめるなら分割法は感覚的な満足感重視のトレーニング。全身法は科学的効率を求めたトレーニングです。
それではよくあるトレーニング頻度や全身法、分割法についての質問に回答していきます。
分割法よりも全身法のほうが効果が高いですか。はいそうです。少なくともいえることは分割法が全身法よりも筋肉が成長するということはないです。つまり全身法を選んだほうがトレーニングが無駄になるリスクがありません。
分割法では成長しないということですか。そうではありません。分割法でも成長しますが、効率的ではありません。
高頻度でトレーニングすると回復できないのでは。これはよくある迷信です。筋トレ後の筋肉の回復は24時間あればほぼ間違いなく大丈夫。48時間空けないとダメとか同じ部位を連続で鍛えちゃダメというのは迷信です。
最低限の筋トレ頻度は?トレーニング頻度について言えることはとりあえず週1回は最悪であることは断言できます。ただ、グラフを見てもらったらわかるようにトレーニング頻度増加による筋肥大効果の向上は週3~4あたりでほとんど停滞します。なのでどうしても分割法で鍛えたいという人は週3~4のトレーニング頻度を確保できていれば分割法でも大きな問題はないでしょう。しかし、わざわざ低頻度で鍛えるメリットは全くないですし高頻度のほうがメリットがあるのは事実なので基本的には全身法をおすすめします。
全身法で効果があるか心配。全身法は“トレーニングした感”が少ないため、不安になる人も多いです。
でも、実際にはボリュームが高く、効果は確実に上がります。
全身法は初心者向けと聞いたことがあります。分割法は上級者向け、全身法は初心者向けというのは科学的な証拠と完全に矛盾しています。というのも高いボリュームが必要になるのは上級者であるため全身法は上級者向けです。
「分割法は感覚的に気持ちいい」これは正しく、僕自身も激しく同意できますが、筋肉の成長においては分割法は効果的なものではありません。全身法は感覚ではなく筋肉の成長を目的としている人にとって最適なプログラムだといえます。
この方法はセットの質を高めて1setあたりに獲得できるVOLを向上させ、筋肉の損傷によるジャンクボリュームの発生も防ぐことができます。
おすすめのトレーニング頻度としては高ければ高いほど効果も高くなりますが、最低でも3回は確保してください。
「んーでも全身法ってどんなトレーニングかイメージできない」という人も少なくないと思います。そういった方はパーカーフィットネスのチャンネルを登録して全身トレーニングメニューについての動画をチェックしてください。
また近日中に全身法の具体的なメニューも公開します。科学的に体を変えたい人は是非チャンネル登録をしておいてください。


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