筋トレを頑張っているのに、体が変わらない人。かなり多いと思います。でもこれ、努力不足ではありません。原因はシンプルで、やるべきことの“優先順位”を間違えているからです。
筋肥大にはいくつも要素があります。フォーム、重量、回数、種目、サプリ、頻度…ただ、これらはすべて同じ重要度ではありません。そしてこの重要度、実はもう研究でほぼ決まっています。
今回は、実際に筋肥大の研究を行っているジョシュべランドjosh pelland博士の見解をもとに、「何が本当に重要で、何がそうでもないのか」をはっきりさせます。おそらく多くの人が重視しているものは、この中ではかなり下に来ます。
まず最初に、一番多くの人が勘違いしているのがこれです。
マインドマッスルコネクション
“効いてる感じ”があれば筋肉は成長すると思ってませんか。多くの人がここを基準にトレーニングしています。でも結論から言うと、それはほとんど関係ありません。
実際に研究者もこう言っています。
つまり、筋肉は“効いてると感じたかどうか”ではなく、“どれだけの負荷がかかっていたか”で成長します。実際最新の科学的なデータに基づくと効いてるから筋肉に刺激が入ってる。効いてないから筋トレできてないというわけではないことを示しています。
例えば、軽い重量でゆっくりやって強く効いている感じがあっても、負荷が足りなければ筋肥大の刺激としては弱いです。逆に、そこまで強い感覚がなくても、十分な負荷とボリュームがあれば筋肉は成長します。
ここがズレるとどうなるかというと、「効かせること」ばかりに集中して、本来一番重要な負荷やボリュームが疎かになります。効かせるフォームにすることで刺激が減る、回数だけ増えて負荷が弱くなる、こういう状態です。
これをやっている限り、どれだけ頑張っても筋肉は大きくなりません。
まずはこの前提を変えてください。“感じること”ではなく、“負荷をかけること”が筋肥大の本質です。
筋肉痛とパンプは「結果」であって「目的ではない」
筋肉痛やパンプがあると「効いた」と思っていませんか。これもかなり多くの人が基準にしているポイントです。でも結論から言うと、これも優先順位は高くありません。
筋肉痛はあくまでトレーニングの“結果”であって、筋肥大の条件ではありません。実際、同じトレーニングでも慣れてくると筋肉痛は出なくなりますが、それでも筋肉は成長します。逆に、筋肉痛が強く出ても成長していないケースも普通にあります。
パンプも同じです。パンプは血流が増えて一時的に膨らんでいる状態であって、それ自体が筋肥大を直接引き起こしているわけではありません。
実際パンプによる成長ホルモンが筋肉の成長に貢献しないというのは科学的なデータで明らかになっています。
つまり、筋肉痛やパンプを強く出すことに意味があるのではなく、必要な刺激が入った結果としてそれが出るだけです。
ここで多くの人がやってしまうのが、筋肉痛やパンプを“目的”にしてしまうことです。1回のトレーニングで筋肉痛を出したい、パンプさせたい、しっかり効かせたい。こう考えると、自然と「1日で1部位を徹底的にやる」という発想になります。
いわゆる、胸の日、背中の日、脚の日といった分割法です。
でもここで問題なのは、分割法で筋肉に刺激を入れるというよりも、達成感を得るために分割法をする。その前提になっていることです。しかし、感覚を重視するとほぼ間違いなく筋トレ効果は減ってしまい、体も変わりづらくなります。
実際に研究者も、1回のセッションでの刺激の増え方についてこう説明しています。
つまり、1回のトレーニングでどれだけやったかよりも、全体としてどれだけの負荷とボリュームを積み重ねたかの方が重要です。
にもかかわらず、「達成感を得る」ことを前提にすると、1回あたりの量が増えすぎて、後半は質が落ちます。そして回復にも時間がかかるので、結果的に頻度も下がります。最近の科学的データでは各部位は、6set以降目は筋肉の成長にほとんど貢献しないことを示しています。
例えば胸の日で15set筋肉を鍛えるなら半分以上は無駄になってしまうということ。
これが、筋トレを頑張っているのに体が変わらない大きな原因の一つです。断言してもいいです。感覚を求めると筋トレ効果は薄くなります
ここまでで共通しているのは、「重要ではない指標を基準にしてしまっている」という点です。次はほとんど意味のない要素を過大評価してしまっている点です。
RIR管理
もうひとつ体が変わらない原因。それが追い込み不足です。ただしこれは、気合いの問題ではありません。正確には「RIR管理ができていない」という問題です。
筋肥大はボリュームで決まりますが、そのボリュームが有効になるかどうかは、どれだけ筋線維を動員できているかで決まります。
筋トレでは、最初からすべての筋線維が使われているわけではありません。回数を重ねて限界に近づくにつれて、より多くの筋線維が動員され、最終的にほぼすべての筋線維に強い張力がかかるようになります。
つまり、追い込んだ方が筋線維は多く動員され、筋肥大に有利になります。
2005年日本で行われた研究では被験者にラットプルダウンを10repギリギリできる重量で5rep終了時点で30秒のインターバルを挟んで残りの5rep行うと、10rep連続で行い限界までラットプルを行ったグループの1/3しか筋肉が成長していませんでした。

適切な追い込みは最新の科学的メタ分析でも明らかになってるように筋肉の成長において非常に重要です。
ただし、ここで重要なのは「追い込み不足=限界までやれ」という話ではないということです。筋線維の動員は、限界に近づくにつれて増えますが、あるラインでほぼ頭打ちになります。
そのラインが、おおよそ限界の1〜3回手前、つまりRIR1〜3です。
この範囲まで到達できていれば、ほぼ最大限の筋線維が動員されている状態になります。逆に、それより手前でセットを終えてしまうと、動員される筋線維が少なく、刺激として弱くなります。
そしてここが最も重要です。人間は自分の限界を過小評価する傾向があります。つまり、「もう無理」と思っても、実際にはまだ数回できるケースが多いです。
その結果、多くの人がRIRを正しく認識できておらず、実際にはかなり余力を残した状態でトレーニングを終えています。
だから必要なのは、「潰れるまでやること」ではありません。
正解は、「次の1回で潰れるだろう」と思えるレベルまで追い込むことです。
この状態であれば、ほぼ最大限の筋線維を動員しながら、余計な疲労は抑えることができます。
一方で、毎回潰れるまで追い込むとどうなるか。疲労が大きくなり、その後のパフォーマンスが落ち、トレーニング頻度も下がります。さらにケガのリスクも大幅に上がります。
つまり、限界までの追い込みはむしろ逆効果になりやすいです。
筋肥大を最大化するために必要なのは、「どれだけやったか」ではなく、「どこまで追い込めているか」です。
そしてその最適解が、RIR1〜2。この管理ができているかどうかで、同じトレーニングでも結果は大きく変わります。
サプリではほとんど変わらない
最後に、多くの人が期待しすぎているのがサプリメントです。
プロテイン、BCAA、EAA、プレワークアウトなど、いろいろありますが、これらで筋肥大が大きく変わることはほとんどありません。
もちろん全く意味がないわけではありません。ただし、その影響はかなり小さいです。
サプリメントを意識しすぎると何が悪いのか。それはもっと重要な要素を過小評価してしまうこと。
多くの専門家はサプリメントの重要性についてこう答えています。チェリーオブサンデー。簡単に言うとパフェに乗ってるサクランボくらいしか価値がないということ。

つまり、サプリで劇的に変わるのではなく、あくまで土台となるトレーニングがあって初めて意味が出ます。
例えば筋トレ後は絶対プロテイン。筋トレ中はEAA。筋トレ前はプレワークアウト。というようにサプリメントに大量のお金や時間を割いていたとしても分割法で鍛えていたら本末転倒です。
サプリメントはクレアチン。そしてプロテイン。これだけでOK。このふたつで90点以上あります。
サプリメントよりもトレーニング。これがズレると、体が変わらないと「サプリを変える」「新しいものを試す」といった方向にいってしまい、本来一番重要なトレーニングの質やボリュームが改善されません。
ここまで見てきたものは、こだわっても筋肥大への影響が小さいものです。効いてる感、筋肉痛、パンプ、分割法、重量、サプリ。どれも完全に無意味ではありませんが、優先順位は高くありません。
にもかかわらず、多くの人はここに時間と意識を使っています。だからトレーニングは頑張っているのに、体が変わらないという状態になります。
では逆に、何を追えばいいのか。
体が変わる人は何が違うのか。
答えはシンプルで、ちゃんと追うべきものを理解しているかどうかです。
ここから、その“本当に重要な要素”を整理していきます。
筋肥大はこの3つでほぼ決まる
ここからが本題です。筋肥大を決めている本当に重要な要素は多くありません。結論から言うと、大きく分けてこの3つです。
まず種目選択です。これはどの筋肉にどれだけ負荷が乗るかを決める要素で、ここを間違えるとそもそも狙った筋肉に刺激が入りません。同じ「胸のトレーニング」でも、種目によっては肩や腕に逃げてしまい、胸にはほとんど負荷がかからないこともあります。
実際に研究者も、種目選択の重要性についてこう説明しています。
つまり、「どれだけ頑張るか」よりも、「何をやるか」の方が重要であるということです。
種目について大事なのは解剖学的な働きにのっとっているか。例えば大胸筋を鍛えるときにフロントレイズをするのは好ましくありません。サイドレイズをするのに腕を前に出すのは解剖学的に三角筋中部にとって最適ではありません。
必ず狙った筋肉が必ず狙った筋肉が最大限働く運動になってるかどうか。
そして、ストレッチポジションで負荷がかかるか。ダンベルカールのように解剖学的な運動に沿ったトレーニングでも腕を下ろした時に負荷がない種目は受動的張力がかからないので、筋肉の成長効果が減ってしまいます。
なのでダンベルカールよりもプリチャーカール。サイドレイズよりもケーブルサイドレイズのほうが種目として優れています。
次に進歩性過負荷です。これはトレーニングの中で、重量・回数・セットなどを少しずつ伸ばしていくことです。筋肉は同じ刺激では慣れてしまうので、成長するためには負荷を更新し続ける必要があります。
ここができていないと、どれだけフォームを意識しても、どれだけ効いている感覚があっても、筋肉は大きくなりません。
そして最後がボリュームです。どれだけの量のトレーニングを積み重ねているか。1回のトレーニングでやり切ることではなく、週単位・月単位でどれだけの刺激を積み上げているかが重要になります。
ただし、VOLは量よりもまずは質です。この点についても研究者はこう説明しています。
つまり、ただ量を増やせばいいのではなく、自分にとって適切な量を理解して、まずは質を高める。それを継続的に積み重ねることが重要です。10setやっていたのを20setにすることはいいことですが、それよりも分割法をやめて全身法にする。ちゃんと追い込むといったトレーニングの質を変えるほうが重要です。
これが、先ほどまでの「効いてる感」や「筋肉痛」と決定的に違う点です。あちらは感覚ですが、こちらは直接的に筋肉の成長を決める要素です。
体が変わらない人の原因
ここまでで、何が重要で何がそうでないかははっきりしたと思います。筋肉を効率的に成長させるためには重要なものを追うことが大事。でも実際には、多くの人が逆のことをやっています。
効いてる感を追い、筋肉痛を求め、パンプを重視し、1回でやり切ろうとして分割法になり、感覚やサプリに意識が向く。
これらに共通しているのは、「分かりやすい」ということです。感じる、痛い、重い、パンプする。どれもその場で実感できます。だからいいものと考えてトレーニングを疑いづらくなってしまいます。
一方で、科学的な結論として筋肥大に本当に重要なものは分かりにくいです。種目が適切か、先週より伸びているか、ボリュームが適切か。これは感覚ではなく、記録と積み重ねでしか判断できません。
例えば間違いなく分割法よりも全身法のほうが筋肉は成長しますが、感覚としては分割法のほうが確実に優れているように感じるはずです。
だから多くの人は、分かりやすいものを優先してしまい、結果的に優先順位がズレます。
そしてそのズレが、「頑張っているのに変わらない」という状態を生みます。


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