
腹筋を100回やるくらいなら、まず種目を変えた方がいいです。実際、ある定番の自重腹筋トレーニングを週2回、10週間続けても、腹直筋の筋厚が有意に増えなかったという研究があります。
一方で、同じ研究でも別の方法でトレーニングしたグループでは腹直筋が明確に成長しました。つまり腹筋は、100回、200回と回数を増やす前に、何をやるかを選ぶことが重要です。
今回は、よく行われている腹筋種目を科学的なデータをもとにDからSまでランキングして、腹直筋を大きくするならどの種目を選ぶべきなのかを解説します。
CH1:腹筋とは何か
まず、今回ランキングする「腹筋」が何なのかを明確にします。一般的に腹筋と呼ばれているものは1つの筋肉ではなく、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋など複数の筋肉で構成されています。その中で、お腹の正面に並んでシックスパックを作っているのが腹直筋です。
そして腹筋を割って見せる方法は、大きく2つしかありません。腹直筋の上に乗っている脂肪を減らすか、下にある腹直筋そのものを大きくするかです。腹部の皮下脂肪の厚さは体脂肪率と強く関連していて、脂肪が厚くなるほど当然その下にある腹直筋の輪郭は見えにくくなります。
だから体脂肪を落とすことは重要です。ただ、「腹筋を割る=とにかく痩せる」だけではありません。腹直筋は他の筋肉と同じようにトレーニングによって大きくできます。実際、若い男性を8週間トレーニングさせた研究では、腹直筋の厚さが27%増加しています。
つまり同じ体脂肪でも、腹直筋そのものが厚い人の方が筋肉の凹凸を出しやすくなります。逆に腹直筋をほとんど鍛えていなければ、その薄い腹筋を見せるために、より多くの脂肪を落とさなければいけません。脂肪がある程度残っていても、腹直筋をしっかり大きくすれば、体脂肪をさらに落とさずに腹筋の見え方を改善することはできます。

そのため今回は、腹筋全体ではなく、このシックスパックを作る腹直筋をどれだけ大きくできるかで種目をランキングします。
CH2:腹直筋が成長する種目の条件
今回最も重視するのは、実際に数週間トレーニングを続けて、腹直筋がどれだけ成長したのかを測ったデータです。ただし、すべての腹筋種目で長期的な筋肥大研究が行われているわけではありません。そこで直接的な筋肥大データがない場合は、主に4つの条件から評価します。
1つ目は、腹直筋そのものに負荷をかけられること。脚や股関節を大きく動かしていても、その仕事を他の筋肉が担当しているなら、腹直筋にとって最高の種目とは限りません。
2つ目は、十分に大きな負荷をかけられることです。筋肉を大きくする中心的な刺激は、筋肉が力を発揮するときに受ける機械的な張力です。ただ動かすだけではなく、腹直筋そのものに大きな力を発揮させられるかを見ます。
腹筋についてのよくある誤解は不安定なフリーウエイト種目をやれば成長するという考え方です。例えばスクワットでは腹筋は体を支えるため勝手に成長する。ただこれは多くの科学的なデータによって否定されており腹筋を鍛えるためには基本的には直接的に狙う必要があります。
3つ目は、その負荷を長期的に増やせることです。重量を増やす、回数を増やす、より難しいやり方に進むなど、身体の成長に合わせてトレーニングも進歩させられる種目を高く評価します。
4つ目は、可動域の中で負荷が大きく抜けないことです。特に筋肉が伸ばされた位置でも負荷をかけられることは加点要素にします。最近の研究では長い筋長でのトレーニングが筋肥大に有利になる可能性が示されています。ある程度研究結果にはばらつきがありますが少なくとも筋肥大を妨げるリスクはないのでこの可動域で負荷がかかるところも見ていきます。
逆に、ほとんど評価しないのが「効いている感覚」です。お腹が焼ける、パンパンになる、翌日に筋肉痛が来る。こうした感覚が強くても、それ自体が大きな筋肥大を意味するわけではありません。パンプや代謝ストレスそのものが筋肥大を大きくするという考えも、現在の研究では支持されていません。
つまりこの動画では腹直筋に効く種目を紹介します。ただ「効く」と言った場合、それは一番キツく感じるという感覚的な意味ではありません。実際に腹直筋に刺激が入ってるという客観的な意味です。それでは最下位から見ていきます。
CH3:Dランク|プランク

最下位のDランクはプランクです。最初で紹介した「10週間続けても腹直筋が成長しなかったトレーニング」が、このプランク系を中心とした自重の体幹トレーニングです。

大学男子サッカー選手28人を、ホイールを使うグループ、自重で体幹トレーニングを行うグループ、何もしないグループに分け、週2回・10週間トレーニングさせました。自重グループは通常のプランク、仰向けのプランク、サイドプランク、プッシュアップを各セット限界まで行い、途中から片腕や片脚を上げて難易度も上げています。それでも腹直筋の筋厚は有意に増えませんでした。
ここで重要なのは、プランクで腹筋を使っていないわけではないことです。腹直筋には当然力が入ります。しかし「腹筋に力が入っている」と「腹直筋が大きく成長する」は別です。
プランクにはふたつのデメリットがあります。まずひとつは強度の弱さ。筋肉が成長するためには刺激が入ることはもちろん、その刺激がある程度強くなければいけません。例えば1分以上姿勢を維持できるプランクはその刺激は非常に弱いです。
そしてもうひとつは筋肉が伸び縮みしないこと。プランクは中立的な姿勢を維持してるだけで筋肉が伸びも縮みもしません。これでは腹筋が成長するのに必要な刺激は入りません。
つまり、腹直筋を大きくする今回のランキングではDランクです。ほぼすべての人にプランクという種目はお勧めできません。
CH4:Cランク|レッグレイズ・シットアップ

Cランクはレッグレイズとシットアップです。どちらも腹筋の定番ですが、大きな欠点があります。動作のかなりの部分が腹直筋ではなく、股関節を曲げる動きだからです。

まずレッグレイズ。脚を持ち上げると腹筋に強烈な感覚があります。しかし脚を上げる動作そのものを行うのは、主に腸腰筋や大腿直筋などの股関節屈筋です。シットアップとストレートレッグレイズを比較した研究でも、レッグレイズでは股関節屈筋の活動が大きく、腹直筋の活動はシットアップより低くなりました。
さらに15人がクランチ、シットアップ、レッグレイズを行った研究では、腹直筋の厚さの変化はクランチがレッグレイズより36.4%大きくなりました。長期的な筋肥大を測った研究ではありませんが、脚を大きく動かしている割に、腹直筋そのものの動きは小さいことが分かります。
これはハンギングレッグレイズでも基本は同じです。ぶら下がれば難しくなりますが、股関節から脚を上げるだけなら動作の中心は股関節屈曲です。ただし最後に骨盤まで丸めて、骨盤そのものを肋骨側へ持ち上げれば話は変わります。
そしてCランクもう1つがシットアップです。シットアップはレッグレイズより腹直筋を使えます。18人のトレーニング経験者が通常のシットアップと、背骨を丸める動きを強調したシットアップを比較した研究では、通常型では股関節屈曲と大腿直筋の活動が大きく、背骨を丸める動きを強調した方が腹直筋の平均活動は高くなりました。
ただしシットアップはやり方によりますが、基本形は上半身をかなり高い位置まで上げます。これをするとレッグレイズと同じ動作が起こりやすく、下半身に負荷が抜けます。
つまりこのCランク種目の科学的なデータを見るといくつか腹筋トレーニングで重要なポイントがわかります。まず腹直筋を鍛えるためには背中を丸めることが重要です。脚を上げるといった行為は股関節屈曲であり、これは大腿四頭筋など下半身の筋肉が働く運動です。
そして、状態は高い位置にあげるほど脚に負荷が逃げます。基本的に腹筋を鍛えるときは顔を少し上げる程度で十分です。
Cランクも基本的に腹直筋を成長するのにおすすめする種目ではありません。次はBランクです。
CH5:Bランク|クランチ・リバースクランチ・マシンクランチ

Bランクは、床クランチ、リバースクランチ、マシンクランチです。この3種目はCランクまでと違って、腹直筋そのものを狙う能力はかなり優秀です。

まず床クランチ。15人がクランチ、シットアップ、レッグレイズを比較した研究では、腹直筋の短縮と厚さの変化が最も大きかったのがクランチで、厚さの変化はレッグレイズより36.4%大きくなりました。
リバースクランチも優秀です。普通のレッグレイズが脚を股関節から上げるのに対して、リバースクランチでは骨盤そのものを肋骨側へ巻き上げます。25人を対象にした研究でも、リバースカールは下部腹直筋で非常に高い筋活動を示しました。
そしてマシンクランチなら、このクランチ動作にさらに大きな重量を加えられます。つまり、この3種目は腹直筋を狙えていないからBランクなのではありません。問題は、腹直筋のどの位置に強い負荷がかかるのかです。
床クランチでは、背中が床についているスタート位置では上半身の多くを床が支えているため、腹直筋への外部負荷はかなり小さくなります。そこから肩甲骨を浮かせていくほど重力に逆らう必要が増えるため、腹直筋が縮んだ側ほど負荷が大きくなります。
つまり、腹直筋が伸びている位置ではほぼ負荷がなく、縮んだ位置ほど負荷が強い。現在の筋肥大研究では、筋肉が伸ばされた位置でも高い張力をかけることが有利になる可能性が示されているため、この負荷曲線は理想的とは言えません。
リバースクランチも腹直筋はしっかり狙えますが、自重では外部負荷を細かく増やしにくいという弱点があります。
マシンクランチなら重量は簡単に増やせます。しかし多くの機種では、身体を戻したときにウェイトスタックが先に下まで戻り、腹直筋をさらに伸ばしても負荷が増えません。つまり機種によっては、床クランチと同じようにストレッチ側では軽く、収縮側で強い負荷がかかります。
だからこの3種目はBランクです。腹直筋はしっかり狙える。しかし、負荷の大きさや負荷曲線にまだ改善の余地がある。 上位の種目は、ここをさらに改善します。
CH6:Aランク|アブローラー

Aランクはアブローラーです。腹直筋への負荷だけで見れば、今回の種目の中でもトップクラスです。
大学男子サッカー選手28人を対象に、週2回・10週間トレーニングさせた研究では、プランクなどを行った自重グループでは腹直筋が有意に成長しなかった一方、ホイールを使ったトレーニンググループでは腹直筋の上部・中央・下部すべてで筋厚が有意に増加しました。
ただし、この研究はアブローラー1種目だけではなく、ホイールを使った複数のエクササイズを行っています。それでも、実際に腹直筋の成長まで確認されているのはかなり強いデータです。
そしてアブローラーの強みは、負荷のかかり方です。身体を前へ伸ばすほど、体重によって作られるレバーアームが長くなり、腹直筋への要求も大きくなります。実際、肩の角度を変えてアブローラーを比較した研究でも、身体をより伸ばしたポジションほど腹直筋の筋活動が高くなっています。
つまり床クランチとはほぼ逆で、腹直筋が伸ばされたポジションに近づくほど負荷が強くなります。現在の筋肥大研究でも、筋肉が伸ばされた位置で高い張力をかけることは筋肥大に有利になる可能性が示されています。
ただし弱点は、負荷が強すぎることです。アブローラーはダンベルのように重量を細かく調整できず、基本的な負荷は自分の体重と身体をどこまで伸ばすかで決まります。そのため、初心者や体重が重い人では、膝コロでも正しいフォームで1回できないことがあります。
つまりアブローラーは、腹直筋への負荷設計だけならほぼ100点です。ただ、その強い負荷を誰でも扱えるわけではありません。だからAランクです。
そして次のSランクは、アブローラーのように強い負荷をかけながら、その負荷を初心者から上級者まで細かく調整できます。
CH7:Sランク|ケーブルクランチ

Sランク、今回1位にするのがケーブルクランチです。ただし、一般的なやり方ではなく、ケーブルを背中側から背負って行います。
アブローラーは腹直筋への負荷が非常に優秀でした。しかし負荷が自分の体重に大きく依存するため、初心者や体重が重い人ではそもそも正しいフォームでできないことがあります。ケーブルなら重量を自由に変えられるので、この弱点を解決できます。
ただし、よく見るケーブルクランチはマシンに向かい、頭の上からロープを引いて身体を丸めます。このやり方では、身体を起こしたスタート位置でケーブルの力の方向と身体が近くなり、腹直筋が伸ばされた位置では負荷が弱くなりやすい。そこから身体を丸めるほど負荷が強くなるため、収縮側に偏った負荷曲線になります。
そこで、マシンに背を向けてロープを肩の後ろに背負います。プーリーは頭より少し上に設定します。こうするとスタート位置でも後ろから身体を引っ張られるため、腹直筋が伸ばされた位置から強い負荷を受けられます。
つまり、アブローラーの「身体を開いた位置ほど負荷が強い」という長所を残しながら、その負荷を自分の筋力に合わせて自由に調整できます。
フォームで重要なのは、股関節ではなく背骨を動かすことです。シットアップのようにお尻を後ろへ引いて股関節から折れ曲がるのではなく、背中を丸めながら自分のお腹を見るようにします。
戻すときも腰を大きく反らす必要はありません。背中が真っ直ぐになるところまで戻せば十分です。後ろから引かれるので腰が反る方向に力はかかりますが、コントロールできる重量で中立位まで戻すだけなら、過度に心配する必要はありません。現在腰に痛みがある場合だけ、この種目で無理に負荷をかけないようにしてください。
腹直筋そのものを動かせる。伸ばされた位置でも強い負荷をかけられる。そしてその負荷を初心者から上級者まで細かく調整できる。この3つが揃っているため、背負い式ケーブルクランチをSランク、1位にします。
プランクを100回、100秒続けるより、正しいフォームでアブローラーやケーブルクランチを1回やる方をおすすめします。
腹筋は、ただ鍛えればいいわけではありません。どの種目を選ぶか、そしてその種目をどうやるかで、腹直筋への刺激は大きく変わります。
適切な種目を、適切なやり方で行う。これが腹筋を大きくするために一番重要です。

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