今回は結構有名なミッドレンジ種目,ストレッチ種目,コントラクト種目に分ける筋トレメニューPOF法について科学的な論文を基に僕の考えだったり皆さんにやってほしい効率的な筋トレメニューなのかについて解説します。
POFというのはpositions of flexionの略で筋トレメニューの組み方のようなものです。根底にあるのはブラッドシェーンフェルド博士の研究で筋肥大、筋肉の成長には3つの刺激が必要で、機械的緊張、筋繊維の損傷、代謝ストレスと示されています。
なので機械的緊張のミッドレンジ種目、筋繊維の損傷であるストレッチ種目、代謝ストレスであるコントラクト種目で筋トレの種目を三つに分けてトレーニングする方法です。ちなみにブラッド氏がPOF法を広めたわけではないと思います。彼自身筋トレメニューの組み方でPOF法は使っていないので
大胸筋を例にするとミッドレンジ種目がベンチプレス、ストレッチ種目がダンベルフライ、コントラクト種目がケーブルフライという感じです。
このPOF法は根底に科学的研究があるためとても信頼性の高い筋トレメニューだと考えることができます。しかし、Dr.mike氏の大胸筋の記事には大胸筋は水平プレス、傾斜プレス、分離の3つが重要と説明しています。
水平プレスはベンチプレス、分離はケーブルフライ、傾斜プレスはインクラインダンベルプレスでストレッチを意識すれば一応POF法にもなりますがPOF法については触れられていません。この科学的な根拠があるにもかかわらずPOF法を推奨している人は正直言って多くありません。これについて解説します。
POF法については良いトレーニングメニューの組み方だとは思います。実際に初心者の方にも筋肥大のメカニズムが分かってもらえますしわかりやすいトレーニングメニューと思いますが僕がトレーナーでパーソナルトレーニングを受けてくれるお客さんにPOF法を教えるかといわれたら教えません。
実はPOF法というメニューの組み方には問題点が2つ存在します。POF法をやればもちろん筋肥大すると思いますがベストではないと思います。
1つ目のPOF法の問題点、それは刺激の重要性です。
POF法について初めて知った方は「あ、ミッドレンジとストレッチとコントラクトが同じくらい重要なんだ」と思ってしまいます。僕もPOF法やってた頃はそう思ってました。実は機械的緊張、筋繊維の損傷、代謝ストレスには優先順位があってしかもそれが結構デカいんですよね。
インターバルの記事でインターバルを短くして追い込んでパンプを狙うより長く休憩して筋肉を休ませてボリュームを確保したほうが筋肥大すると話しました。つまり機械的緊張のほうが代謝ストレスよりも重要だということです。
そしてこちらの研究ではレッグエクステンションで最初のほうのストレッチが強くかかる部分の可動域でやるグループと最後のほうの収縮が強くかかる可動域でやるグループとのふたつ比較しました。行った可動域はストレッチ側が90°から40度収縮側が0度から50度なので可動域は同じです。
結果としてストレッチ側のほうが収縮側よりも大幅に筋肥大していました。
数字で言うと追加された筋肉束はストレッチ側は29%、収縮側は15%でほぼ2倍。成長した筋肉の断面積はストレッチ側は53%で収縮側は18%でおよそ3倍。POF法をすると同化ホルモンと考えられているIGF1の値が上がるといわれていますがこの値はストレッチ側は+31%,収縮側は+7%でおよそ4.5倍でした。
つまりブラッド氏の3つの刺激は重要度、筋肉の成長への貢献度がかなり違います。
研究ではストレッチによる筋肉の損傷も筋肥大とは無関係であると結論付けられています。被験者は筋肉の損傷の多さに関係なく筋肥大したようです。
他の研究でも筋肉の損傷ナシでも筋肉の成長が起こると示されています。ただこれは不可欠ではないという意味でストレッチがあるとより筋肥大する可能性を残しています。
矛盾があるためまだまだ研究が必要ですが、間違いなく一番重要なのは機械的緊張です。
そしてこの機械的緊張は筋繊維の緊張なので筋トレをしていれば満たせます。つまり筋肉の刺激のストレッチ,収縮の必要性は研究によってバラバラであるため信頼性が高くありません。ストレッチ種目、コントラクト種目を敢えて作って刺激を狙う必要はないと思います。
インクラインサイドレイズのように可動域を犠牲にしてストレッチを狙うよりストレッチが弱い普通のサイドレイズの方が可動域が広いので機械的緊張が強いです。そのためインクラインサイドレイズ3setサイドレイズ3setよりもストレッチが弱くても普通のサイドレイズ6setをおすすめします。
三角筋前部でもショルダープレスなどのプレス系のみ、ストレッチ種目コントラクト種目は作らずにいわゆるミッドレンジ種目のみで構成するのがおすすめです。
そしてPOF法の問題点2つ目は種目の選び方です。これは先ほどの刺激の重要度の違いにも共通していますがミッドレンジ種目、ストレッチ種目、コントラクト種目でわざわざ各刺激ごとに種目を分ける必要があるのかです。
僕は最初に紹介したブラッド氏の研究を否定するつもりは一切ありません。筋肥大には機械的緊張,筋肉の損傷,代謝ストレスが必要というのは納得できます。
しかしPOF法の場合、わざわざストレッチ種目のようにストレッチのために1種目使います。これをする必要があるとは思いません。例えばダンベルフライには劣りますがベンチプレスでもスタートの部分はストレッチが入ってますし最後の部分では弱いですが収縮が入っています。
ブラッド氏の研究の3つの刺激はある程度の刺激の強弱はありますがベンチプレスでもすべて満たしているとも考えられます。しかもケーブルフライだったら広い可動域でしっかりやれば強いストレッチと強い収縮の両方が入れられますしね。
つまりどの種目でもしっかり下げてストレッチはできるだけ入れるべきですししっかり最後まで可動域をとって収縮させるべきです。これをしていればわざわざストレッチ種目、収縮種目を入れることなく3つの刺激が入れられます。