懸垂を超える”最強種目”|背中の広がりを最短で作る方法を科学的に徹底解説

筋トレ界では長年、背中の広がり最強種目は懸垂だと言われてきました。確かに懸垂は優秀です。

でも、背中の広がりに限れば最強ではありません。

むしろ構造的に、広背筋の成長を最大化しにくい弱点があります。

今回は解剖学と科学的なデータをもとに、懸垂を超える背中の広がり最強種目と、実際のメニューまでまとめて紹介します。

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解剖学

まず最初に理解してほしいのは、背中は一つの筋肉ではないということです。ただ今回のテーマは背中の広がりなので、ここでは広がりを作る筋肉に絞って解説します。

背中の広がりを作る中心は広背筋です。英語ではLatissimus dorsiと言います。これはラテン語で、latissimusは「最も広い」、dorsiは「背中」という意味です。つまり名前の通り、広背筋は背中の広がりを作る筋肉です。

広がりを作る筋肉としては、もう一つ大円筋という筋肉もあります。ただ大円筋は広背筋と比べるとかなり小さい筋肉で、働きもほぼ同じです。どちらも肩関節の内転や伸展を行う筋肉なので、基本的に同じ種目で同時に鍛えられます。つまり背中の広がりを考えるときは、実質的には広背筋を中心に考えれば問題ありません。

一方で背中の厚みを作る筋肉は別です。僧帽筋の中部や下部、そして菱形筋などがここに含まれます。

広背筋についての質問で、この筋肉は上部と下部があり、鍛え分けができるという話をよく聞きます。しかしこれについては、科学的な根拠はあまり強くありません。

研究では、肩関節の内転では下部がやや強く働き、肩関節の伸展では上部がやや強く働くというデータはあります。ただしその差は小さく、明確に鍛え分けられると言えるほどの差ではありません。

例えば広背筋の下部の発達が大きい人は鍛え分けというよりも遺伝が大きいと思います。

つまり広背筋は、上部と下部を別の筋肉として鍛え分けるというより、基本的には一つの大きな筋肉として考える方が現実的です。

背中の広がりを作るには、この広背筋をしっかり発達させることが重要になります。

背中の広がりを作る広背筋、大円筋は肩関節の内転によって働くため、懸垂は非常に適したトレーニングだと考えられます。ただ、懸垂はいい種目ではありますが、ベスト。最強種目ではないです。次のチャプターでは代表的な懸垂の問題点を紹介します。

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懸垂の問題点

まず最初に言っておくと、懸垂は非常に優秀な種目です。引っ張るプルトレーニングの王道と言われるのも理由があります。懸垂は広背筋を使うコンパウンド種目であり、背中だけでなく腕の筋肉も同時に鍛えられます。

研究では懸垂と非常に似た動きであるラットプルダウンとバーベルカールを比較したところ、上腕二頭筋の筋肥大はほぼ同程度だったという結果もあります。つまり懸垂は、背中だけでなく腕のトレーニングとしても非常に優秀な種目です。

ただし、広背筋という筋肉の構造と、懸垂という種目の物理的要素を考えると、懸垂には大きく2つの問題があります。

まず1つ目は、不安定性です。

懸垂は自分の体を空中で引き上げる種目です。そのため体を安定させるために多くの筋肉を同時に使います。例えば握力、前腕、上腕二頭筋、体幹など、さまざまな筋肉が関与します。

ここでよく言われるのが「不安定なトレーニングは多くの筋肉を使うから効果が高い」という考え方です。しかしこれはかなり誤解されています。

確かに不安定な環境では体を安定させるための筋肉も働きます。ただしそれらの筋肉は体を安定させる程度の力しか出していません。筋肉が成長するためには十分な強度が必要ですが、安定させるために働いている筋肉はそのレベルの負荷には全く達していません。

そして不安定さはパフォーマンスを下げ、単純にメインの筋肉への刺激を減らしてしまうだけのことが多いのです。基本的に筋肥大を目的としたトレーニングでは、不安定さはプラスというよりむしろマイナスに働くことが多いです。

マシンのラットプルダウンなどと比べると、懸垂は体が固定されていない分、広背筋への刺激を純粋に集中させにくいという特徴があります。つまり懸垂の不安定さは“広背筋トレーニング”としては非効率になることが多い。

そして2つ目が、より重要な問題です。負荷の方向です。近年の科学的データでは筋肉を最大まで伸ばすと成長効果が促進される可能性が高いことが認められています。例えばバーベルのベンチプレスよりもダンベルのほうがウエイトを下げることができ、これによって大胸筋が伸ばされるため筋肥大にとって有利です。

しかし、懸垂にはこのストレッチに問題があります。

懸垂では重力は常に真下に向かっています。つまり腕にかかる負荷は基本的に真上方向になります。しかし広背筋の主な働きの一つである肩関節内転は、肩関節を軸にした円運動です。

腕は肩を中心に円を描くように動くため、広背筋が大きく伸ばされた位置では腕は頭の真上の位置にあります。この状態で広背筋に負荷を入れるためには、腕に対して横方向の負荷が必要になります。

ところが懸垂では、負荷は常に真上方向です。つまり広背筋が大きく伸ばされた位置では、力の方向が広背筋の働きと完全には一致していません。

簡単に言うと、広背筋の動きに対して負荷の方向が合っていないのです。

これが、懸垂が優秀な種目ではあるものの、背中の広がりを最大化する種目とは言い切れない理由です。

では広背筋の広がりを最大化するには、どんな種目が必要なのか。次のチャプターでは、懸垂よりも広背筋の構造に合った背中の広がり最強種目を紹介します。

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最強種目

ではここから、懸垂の問題点を解決させた最強種目を紹介していきます。

まず1つ目の問題は、不安定性でした。懸垂は体が空中にあるため、広背筋だけでなく多くの筋肉が関与します。その結果、広背筋を限界まで追い込む前に別の要素が先に疲れてしまうことがあります。

この問題を改善する最もシンプルな方法がラットプルダウンです。

ラットプルダウンでは太ももをパッドで固定することができます。体がしっかり固定されるため、体を安定させることにエネルギーを使う必要がありません。

つまり懸垂よりも広背筋への刺激を集中させやすいというメリットがあります。

しかしラットプルダウンでも、もう一つの問題は残ります。それが負荷の方向です。

ラットプルダウンでも重りは上にあるため、負荷の方向は基本的に真上になります。つまり広背筋が大きく伸ばされたストレッチポジションでは、負荷の方向が広背筋の動きと完全には一致していません。

この問題をさらに改善した種目がクロスボディプルダウンです。

クロスボディプルダウンでは、ケーブルを片手で持ち、腕を体の前から斜め下に引き下ろします。この動きでは、負荷の方向が横方向に近くなります。つまり広背筋の主な働きである肩関節内転と、負荷の方向がより一致します。

そのため広背筋の広がりを作るトレーニングとして非常に合理的な種目です。ケーブルマシンから1m程離れて少し高い位置から引っ張ります。この種目を行うとラットプルダウンや懸垂よりもはるかに強い広背筋のストレッチを感じるはずです。

このクロスボディプルダウンでは下方向に引くというよりも横向きに引くというイメージです。体の回転など勢いを使って引っ張らないでください。丁寧に行うことが重要です。

広背筋には内転と伸展という運動がありますが、伸展を使うのもおすすめです。伸展を使う種目はクローズグリップのラットプルダウンやダンベルロウなどがありますが、これらの種目もストレッチポジションに問題があります。

ロウでは腕が前に出た状態から下に引っ張るため、そもそも広背筋が伸びる可動域すら存在しません。

伸展を使った最強種目はプルオーバーです。クロスボディプルダウンでは片腕ずつしか行えないため、片方の広背筋しか鍛えることができませんが。プルオーバーなら同時に両方の筋肉を鍛えることができます。

プルオーバーにはダンベルとケーブルがありますが、どちらにもメリットがあります。

まずケーブルは自分にとって最適な持ち方が出来ることです。ロープグリップやストレートバーといったバリエーションがあり、好みによって変えることができます。そして重量調整が非常に楽です。ピンを挿すだけで重量を変えられるのでドロップセットやプログレッシブオーバーロードが非常に楽です。

ケーブルを使うときは必ず腕と背中が水平になるまで開いてください。そしてここで真上に負荷がかかっていることが重要。これによってストレッチポジションでの負荷が最大になります。

対するダンベルは強度曲線が筋肉の成長に非常に好ましいといった特徴があります。この種目は収縮位置での負荷が弱く、ストレッチポジションで負荷が最大になります。多くの科学的なデータでもわかっているように背中トレーニングのほとんどはストレッチポジションでの負荷が弱く、収縮位置で負荷が最大になります。

そのため、この強度曲線は非常にまれです。これが筋肉の成長を促進させる可能性があります。

 

プルオーバーをするときはヒジをロックさせる必要はありませんが、伸ばして行うことで広背筋に負荷が集中します。そして必ず腕を18度開いてください。

広背筋を鍛えるうえで、視聴者の皆さんに絶対に取り入れてほしいトレーニング法があります。それがロングレングスパーシャルです。ロングレングスパーシャルとは、筋肉が最も伸ばされた可動域だけを使って行うパーシャルレップのことを指します。

これは広背筋と相性がぴったりです。

科学的なデータに基づくと、この方法は部位によっては筋肥大を大きく促進する可能性があります。特に、広背筋のような筋肉の長い部位ほど効果が高い傾向が示されています。

https://www.ecss.mobi/DATA/EDSS/C28/28-3269.pdf

 

ダンベルのプルオーバーではダンベルが顔の前にあるとき負荷はほとんどありません。なのでわざわざここまで持ち上げる必要がありません。

そして広背筋は引っ張り過ぎると逆に活動が減ってしまうという特徴があります。

多くの人が「最後まで引き切る」「限界まで背中を収縮させる」ことが大事だと思っていますが、背中トレーニングではこれは逆効果です。

2013年の広背筋に関する研究では、広背筋を含む背中の筋肉は、ある角度を超えると筋活動が一気に低下することが示されています。目安は肘が90度前後。この角度を超えると、主役は背中から腕に切り替わります。

つまり、背中トレーニングで最後まで引き切れば引き切るほど、背中ではなく腕で動いている時間が増えるということです。だからロングレングスパーシャルが最適です。

クロスボディプルダウンではヒジが90度になる位置。おおよそ手が顔の前に来るまで引っ張れば十分。プルオーバーでも90°。ケーブルでは腕が顔の前に来るまで、ダンベルではそもそも負荷がないので45度程度まで引っ張れば十分です。

これ以上引っ張ってもあまり意味がありません。

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最強メニュー

では最後に、背中の広がりを作るためのメニューについてまとめます。

まず重要なのはトレーニング頻度です。最近の研究では、筋肉は高頻度で刺激を与えるほど成長しやすいことが示されています。つまり一日に大量のセットをまとめて行うよりも、頻繁に刺激を与える方が効率的です。

よくあるのが「背中の日」を作って、一日に20セット以上まとめて行うトレーニングです。しかしこれは効率がいいとは言えません。むしろおすすめなのは、毎日3〜5セット程度の背中トレーニングを行う方法です。

このように頻度を上げることで、高いパフォーマンスを維持して週あたりのトレーニング量を自然に増やすことができます。筋肉をある程度しっかり成長させるためには、週あたり10セット以上は必要だと言われています。おすすめは15セット程度です。

そして背中トレーニングを行うときに相性が良いのが、大胸筋トレーニングです。

実際、ある研究ではベンチプレスの前にシーテッドロウを行うことで、ベンチプレスのパフォーマンスが向上したという結果が報告されています。つまり背中と胸は、トレーニングを組み合わせることで相乗効果が生まれる可能性があります。

そのためおすすめなのは全身トレーニングです。例えば大胸筋を鍛えたあとに背中を鍛える、あるいは胸と背中をスーパーセットで行う方法です。

具体的な例としては、ダンベルプレスを行ったあと、すぐにダンベルプルオーバーを行うという組み合わせです。これによってトレーニング効率を高めることができます。ジムの混み具合を見て挑戦してみてください。

一方で注意点もあります。

背中の厚みを作るロウ系種目と、広がりを作るプル系種目を連続で行うことはあまりおすすめしません。なぜなら三角筋後部や上腕二頭筋など、両方の種目で使われる筋肉が多く、疲労が重なりやすいからです。

では今回紹介した広背筋トレーニングの特徴を整理します。

クロスボディプルダウンは、引く動作の中で広背筋を鍛える種目です。肘を曲げる動作が入るため、上腕二頭筋も同時に鍛えることができます。

一方でプルオーバーは、肩関節伸展を使って広背筋を鍛える種目です。両側の広背筋を同時に鍛えることができるという特徴があります。

つまりこの2つの種目は、それぞれ違う特徴を持ちながらも、どちらも広背筋を効率よく鍛えることができる優れた種目です。

また前のチャプターでも説明しましたが、背中トレーニングでは引っ張りすぎる必要はありません。背中のトレーニングはチートを使いやすい種目が多いので、反動を使いすぎず丁寧に動作を行うことが重要です。

Parker Fitness

今までの失敗,そして成功から科学的な文献を基にすると筋肉の付き方が全く違うことに気づきました。 それを皆さんにも経験してほしくYoutubeなどで科学的なアプローチで効果的な筋トレ法を紹介しています。