筋肉の成長についてはいまだに意見が割れています。多くの場合、インフルエンサーと科学者の答えは大きく異なり、「重さが重要なのか」「パンプが重要なのか」「筋肉の損傷が重要なのか」。具体的によく知らない人もいると思います。
ただ、筋肥大のメカニズムを知れば、何が重要なのか、何が重要でないかを判断することができ、間違った情報、アドバイスに振り回されることもなくなります。
最新の科学的なデータ、世界的な博士であるブラッドシェーンフェルド博士のインタビューを基に筋肥大のメカニズムと筋肥大を起こすためにどれくらい鍛えればいいのかについて徹底的に解説します。
参考になったら是非高評価をお願いします。
まず、筋肥大というのはどういった現象を指すのか。フィットネス研究の世界的な権威であるブラッドシェーンフェルド博士は筋肉が成長するメカニズムについて次のように答えています。
筋肥大とは何か。まず定義からいきます。筋肥大とは、筋組織のサイズが増えることです。では、その「サイズが増える」とは具体的に何を意味するのか。体に何が起こると筋組織のサイズが増えるのか。それは、筋線維の中にあるサルコメアの増加です。サルコメアとは筋肉の最小収縮単位であり、力を生み出す基本構造です。つまり筋肥大とは、サルコメアが増える現象のことを指します。
サルコメアの増え方には主に二つのパターンがあります。一つは並列方向の増加、もう一つは直列方向の増加です。並列方向とは、サルコメアが横に並ぶように増えることです。では実際の筋肥大で主に起きているのはどちらなのか。現在の研究で最も強く支持されているのは、並列方向の増加です。筋肉が太くなるのは、サルコメアが横方向に増えるからです。これが筋肥大の中心的メカニズムです。
直列方向の増加も理論上は起こり得ます。特定のストレッチ条件や固定条件では、直列方向の追加が確認された研究もあります。しかし通常のレジスタンストレーニング、ウエイトを持ち上げる行為でどの程度それが起こるのかは、まだ明確ではありません。起こるとしても限定的、あるいはトレーニング初期に限られる可能性が高いと考えられています。
ここまでをまとめると、筋肥大とは筋線維が太くなることであり、その正体はサルコメアの増加であり、主に並列方向に増えるということです。まずはこの構造を理解することが、トレーニングを正しく設計するための出発点になります。
筋肥大のメカニズムは、ここ数年で急に分かったものではありません。スポーツ科学と筋力トレーニングの専門家たちは、数十年にわたって骨格筋肥大の仕組みを議論してきました。
1998年、フィットネスライターのライル・マクドナルドは著書の中で、当時の研究をもとに筋肥大に必要な4つのメカニズムを提唱しました。それは、機械的な緊張、代謝、遠心性筋活動、そしてホルモン反応です。当時としては、非常に的確に研究をまとめたものでした。
その後、2010年に大きな転換点が訪れます。ブラッド・ショーンフェルドが「筋肥大のメカニズムとレジスタンストレーニングへの応用」というレビュー論文を発表しました。この論文で彼は、レジスタンストレーニングによる筋肥大刺激を三つに分類しました。機械的張力、代謝ストレス、そして筋損傷です。このレビューでは既存の文献を徹底的に調査し、それぞれがどのように筋肥大に関与しているのかを、研究に基づいて整理したのです。この三分類は、その後の筋肥大議論の中心になりました。
しかし、ここで終わりではありません。ライルが四つのメカニズムを提示してから、そしてブラッドが三分類にまとめてからも、研究は進み続けました。たとえば「ホルモン仮説」。トレーニング後のテストステロンや成長ホルモンの急上昇が筋肥大を決定するという考え方は、現在ではほぼ否定されています。これは主にスチュアート・フィリップスらの研究によるものです。
つまり、筋肥大の理解はアップデートされ続けてきたということです。そして今、当時よりもはるかに信頼性の高い徹底された研究を行っています。
では現在の科学的理解では、何が本当に重要なのか。機械的張力、代謝ストレス、筋損傷。この三つは同じ重みなのか。それとも優先順位があるのか。
ここから、その核心に入っていきます。
まず最も重要なのは機械的張力、機械的な緊張です。筋線維が強い力を発揮し、その力がサルコメアにかかること。これが肥大の核です。機械的な力はメカノトランスダクションと呼ばれる仕組みで化学シグナルに変換され、最終的にタンパク質合成を促します。つまり、サルコメアを増やす直接的なスイッチが入るのは、機械的張力がかかったときです。
ここで誤解してはいけないのは、「重い重量=機械的張力」ではないということです。軽い重量でも、限界近くまで行えば、十分な張力は発生します。重要なのは重量そのものではなく、筋線維にどれだけ強い張力がかかっているかです。
さらに重要なのが、伸ばされた位置での張力です。筋肉が長い状態で力を出すと、能動張力に加えて受動張力も発生します。
能動張力に加えて受動張力。この二つが重なることで、サルコメアへの刺激はより強くなる可能性があります。したがって、ストレッチ可動域を削ったトレーニングや、収縮だけで終わる動きは、肥大効率という観点では不利になりやすいと言えます。
これが筋肉の成長においてストレッチポジションが重要である理由です。トレーニングで筋肥大に貢献するふたつの刺激を同時に入れることができます。
では代謝ストレスはどうか。パンプや乳酸の蓄積が重要だと言われることがありますが、現時点での科学的な証拠は一貫していません。
代謝ストレスが何らかの形で関与する可能性は否定できませんが、機械的張力と同列に扱えるほど強い証拠はありません。つまり、パンプはあってもよいが、パンプそのものを目的にする必要はないということです。
筋損傷についても同様です。筋損傷はサテライト細胞を活性化するなどの反応を引き起こしますが、「壊すほど大きくなる」という単純な図式は支持されていません。
むしろ損傷が大きすぎると回復が遅れ、トレーニング頻度が落ち、長期的な刺激量が減ります。過度な損傷はプラスどころかマイナスになり得ます。
ここまでを整理すると、優先順位は明確です。第一に機械的張力。特に十分に動員された筋線維に、強い張力がかかること。代謝ストレスや筋損傷は、あったとしても補助的な位置づけです。中心ではありません。
つまり筋肥大を最大化するために考えるべきことは、「どれだけパンプしたか」でも「どれだけ筋肉痛になったか」でもありません。ほとんどの科学者が話すように「パンプや代謝ストレスを重視するインフルエンサーと現実は対照的であると答えています。」
VOLを最大化する方針で結果的にパンプや軽度の損傷が付いてくるなら問題ありません。しかし、それらを目的にしてはいけません。
筋肥大を最大化したいなら、目指すべきは「どれだけ疲れたか」ではなく、「どれだけ有効な張力を積み重ねられたか」です。ここから具体的に、どれくらいの量が必要なのかを解説していきます。
それではどれくらいトレーニングが必要なのか。結論から言うと、ほとんどの人は思っているより少ない量で、筋肉はしっかり成長します。
ある程度の個人差はあるにしても一週間で各筋肉数セットずつでも最高の筋肥大が100%だとすると半分以上の筋肥大効果が受けられます。これは最新のメタ分析によっても明らかです。
セット数と筋肉の成長効果についてのメタ分析ではット数と筋肉の成長効果についてのメタ分析ではセット数は多ければ多いほど成長しますが、それには収穫逓減の法則がありました。簡単に言うと毎週5setよりも毎週10setのほうが効果は高いです。
しかし、効果が二倍というわけではないんです。例えば5setは5%筋肉が成長するとしたら10setは9%。つまり、セット数に対しての筋肥大効率は少し悪くなり、これは永遠に続きます。なのでメタ分析でもわかってるように筋肥大効率が最もいいのは毎週0setから5setにあげたときです。
なので最小限のトレーニング量で筋肉を成長させたい人は毎週5setでOKです。
ただ、潜在的なポテンシャルの80%以上を受け取りたい人は毎週20set近いトレーニングボリュームが必要です。ただしこの量を確保しようとするとやり方次第では週4〜5時間になることもあります。多くの人にとって、運動継続の最大の敵は“時間”です。
ではここまでを踏まえて、実際にどう設計すれば筋肥大が起きるのか。具体的なトレーニング設計を紹介します。
筋肥大は、機械的張力の総量で決まります。つまり最優先は総張力量を増やすことです。重要なのは「量」と「質」の両方です。
まず一つ目の軸が、VOLを最大化することです。総張力量を増やすには、たくさんのセットをこなせばいい。長い時間ジムにいればいいと思っていませんか。実は同じセット数やトレーニング時間でも獲得できるVOLを増やす方法があるんです。
まず高頻度トレーニング。同じセット数でも頻度を分けたほうが、すべての週でトレーニングボリュームが高くなり、筋肥大も大きかったという研究があります。週1回9setで脚を鍛えた場合と、週3回3setに分けて同じセット数を行った場合を比較すると、高頻度側の筋肥大は約2倍以上でした。
これは週3回グループは4set目と7set目の前に24時間の休憩が入るのでパフォーマンスが完全回復するためです。これによって9set連続で行う脚よりも筋肉が成長します。
そしてもうひとつは干渉しない筋肉のスーパーセット。2023年の研究ではスクワットとベンチプレスを交互に行ったグループは、順番に行ったグループと筋肥大効果は同等でしたが、トレーニング時間は約半分でした。つまり、確保できるトレーニング量が2倍になったのと同じです。
これによって同じセット数、時間でも多くのトレーニングボリュームが確保できます。
そしてもうひとつはトレーニングの質。ブラッドシェーンフェルド博士も話していたとおり、ストレッチポジションで負荷をかけること。これによって能動的な張力と受動的な張力の両方がかかります。
筋肉の成長はサルコメアが増えることによっておこります。簡単にいうとウエイトを持ち上げる行為。これによってサルコメアが並列的に増えます。そして、筋線維がストレッチする。これによってサルコメアが直立的に増えます。
つまり、筋肉が最大まで伸びてそこで負荷のかかる種目はサルコメアが増える2つの方法を同時に行えるということです。
逆に言うとダンベルカール。バーベルベンチプレスなど筋肉が最大まで伸ばせない。または伸びても負荷がかからない種目は受動的な張力による並列的なサルコメアの増え方しか起こすことはできません。それが悪いわけではありませんが、同時に引き起こせた方が明らかに効率的です。
筋肉が成長する原因はサルコメアの追加です。これに最も貢献する刺激は機械的張力、機械的緊張です。なのですべての人に共通して言えることは「機械的な張力を最大化すること」。パンプなどの代謝ストレス、筋肉の損傷は信頼性の高い刺激ではありません。
ただし、特にパンプは筋肉の成長に悪影響になることもないです。なのでブラッドシェーンフェルド博士も話していましたが、トレーニングの最後にパンプ狙いの鍛え方をするのも筋肉の成長を促進しうると答えています。ただし、VOLや機械的な張力を一切落とさないことが重要。ストレッチ可動域のない収縮可動域だけをやったり、腕の日を作って集中的に鍛えるのは本末転倒です。
ここでパーカーフィットネスがおすすめしたいのが、低負荷高回数トレーニング。これなら一切のデメリットなしで筋肉に代謝ストレスを与えることができます。
もちろんまだ効果が明らかになっていない筋肥大の要素も存在しています。しかし、これが最新の科学的データによって導かれた筋肉が成長するメカニズムとそのためにやるべきことです。