三角筋中部を鍛えると、肩の外見は劇的に変わります。
前から見たときも、後ろから見たときも、体の印象を最も大きく変えているのはこの「肩の広がり」です。しかし、一生懸命トレーニングしているのに肩がほとんど変わらない人がいる一方で、数か月で肩のサイズや見た目が見違えるように変わる人もいます。
この差は才能や体質ではなく、肩の鍛え方の違いによって生まれます。三角筋という筋肉の性質を理解せずにトレーニングしても、肩はなかなか成長しません。逆に、正しく鍛えれば三角筋は短期間でも外見がはっきり変わります。
多くの人は、変わらない原因を
「重量が足りない」「回数が少ない」「下手糞だから」そう考えがちです。
でも実際は違います。 問題なのは、従来のサイドレイズ自体が三角筋中部の成長にとって重要な条件を満たしていないことです。
まずは肩がどんな筋肉か、どう動かせば鍛えることが出来るのかについて解説します。肩にある三角筋は上半身の中で最も巨大な筋肉です。
三角筋は前部、中部、後部に分けられますが肩の広がりを作るのは中部です。中部は三角筋の中でダントツで忘れてはいけない筋肉。これは外見的に重要であることと、前部や後部と違って中部を狙わなければ鍛えられないことが原因です。
ほとんどの場合、人の肩を見て「デカい」「あの人凄い」と感じるとき、中部のサイズ、特にこの影を見て判断しています。前部、後部は肩の印象、デカさにとってあまり重要ではありません。(博士の解説動画)
そして、中部は前部、後部と違って他の種目で鍛えられません。前部は胸トレ、後部は背中トレーニングで十分な刺激を受けますが、中部にはそれに相当する動きがありません。そのため、肩トレで前部・中部・後部を同じボリュームで鍛えると、ほぼ確実に中部の成長が遅れます。肩のバランスと外見を本気で変えたいなら、中部を優先する必要があります。
三角筋中部は肩関節の外転、つまり腕を真横に上げる動作で最も強く働きます。この動作に負荷をかけることで中部に機械的な緊張が生じ、成長が促されます。これが、肩の広がりを作るトレーニングの基本です。以降のパートでは、この外転動作を前提に、なぜ多くの肩トレが中部を十分に鍛えられていないのかを紹介していきます。
実は、適切なやり方で三角筋中部をトレーニングできている人は非常に少なく、多くの人が「効いている感」や「誰かが言っていたから」といった、正当な根拠のない方法で肩トレをしています。ここからは肩を鍛えてるのになぜか変わらない人がやってしまってる4つのミスについて紹介します。
高重量トレーニング自体が悪いわけではありません。ただし、肩トレで高重量ばかりを使うことには大きなリスクがあります。トレーニングで最も重要なのは筋肉を成長させることですが、その前提としてケガをしないことが必要です。2010年の調査では、1990年から2007年の17年間でアメリカだけでも約97万件のウエイトトレーニング関連事故が報告されており、別の研究では筋トレでのケガの30%以上が肩のケガであることがわかりました。
肩は最もケガが起こりやすい部位です。トレーニングは長期的に続けてこそ意味があります。1日で大量のセットをこなしても、ケガで止まれば成長は止まります。専門家のmenno henselmans博士も、安全に筋肉を成長させる方法として「反復回数を増やすこと」が有効だと述べています。
ある研究では、1RMの70%以下、つまり12回前後で限界に達する負荷では、関節や腱への負担が最小限になることが示されています。もちろん高重量を使ってはいけないわけではありませんが、肩トレの大半を高重量にするのはおすすめできません。
高重量は低重量よりも比較的負担が大きいことに加えてフォームが崩れたり、この後に話すように別の筋肉に刺激を逃がしてしまうテクニックを無意識に使ってしまいます。
中部を狙う場合、メインは15〜30回で限界に達する負荷にすることで、成長と安全性の両方を満たすことができます。
ここで一つ質問です。最近行ったベンチプレスの重量と回数は覚えていますか。多くの人は答えられるはずです。では、最近行ったサイドレイズの重量と回数はどうでしょうか。おそらく、記憶が曖昧な人が多いと思います。しかし、筋肉の成長には進行性の過負荷、つまり徐々に強度を高めていく意識が不可欠です。
2011年の研究では、重量や回数を段階的に伸ばしていくことが、男女ともに筋力と筋肥大を高めることが示されています。
肩トレではこの意識が抜けがちですが、サイドレイズでプログレッシブオーバーロードを意識するだけで、三角筋中部の発達は大きく変わります。重要なのは、重量だけでなく回数でも成長を確認することです。同じ重量で1回多くできれば、それは確実な進歩です。メモアプリやノートに前回の重量と回数を記録し、それを超える意識を持つことが、中部を成長させるための前提になります。
科学的に見て、筋肉の成長を最大化する条件として「非標的筋の関与を最小限にする」ことがレビューで明確に示されています。つまり、狙った筋肉以外に負荷を逃がさないことが最重要です。
三角筋中部の場合、多くの人が無意識に負荷を前部に逃がしています。肩の筋肉は非常に繊細で、腕の位置が少しズレるだけで刺激が別の部位に移動します。サイドレイズ最大のタブーは、腕を前に出すこと、そして肘を曲げることです。
特にこれは高重量意識が強い人に良く見られます。例えばかなり重いダンベルもヒジを曲げて腕を前に出すと軽く感じます。しかし、これは筋肉に負荷が入ってる証拠ではありません。
これを行うと動作はフロントレイズに近くなり、三角筋前部への負荷が大きく増えます。中部を狙うなら、例外なく腕を真横に上げ、肘を伸ばす必要があります。人間は無意識に腕を前に出しやすいため、意識としては「やりすぎなくらい真横」に上げる感覚が必要です。腕を一切前に出さないサイドレイズこそが、本当の三角筋中部トレーニングです。
ダンベルサイドレイズなら適切なフォームであれば5kgのダンベルで十分トレーニングになります。10kg以上の重量が簡単に扱えるなら、フォームを一度チェックしてみてください。
筋肉の成長を最大化する条件として、レビューでは「筋肉が完全に伸びる可動域を採用すること」も示されています。肩の広がりを作る最強の種目として、多くの人がダンベルサイドレイズを挙げますが、この種目には大きな欠点があります。(博士の解説)
それは、筋肉が伸びている位置でほとんど負荷がかからないことです。
肩関節の外転は一見まっすぐ腕を上げているように見えますが、実際には円運動です。そのため、ストレッチポジションでは横方向の力が必要になります。しかし、一般的なダンベルサイドレイズやアップライトロウでは、負荷は常に垂直方向にしかかからず、ストレッチポジションではほぼ負荷がありません。
こうした種目は、筋肉を最大限成長させにくい可能性が高いことが、近年の科学的データから示されています。この後のパートでは、三角筋中部を本当に成長させるために、ストレッチポジションで最大の負荷をかけられる種目について解説していきます。
ここまでを踏まえて、科学的に最適化された肩トレを紹介します。
三角筋中部を最短で成長させたい場合、最も重要なのはストレッチポジションで十分な負荷をかけることです。
まずダンベルで行う場合、三角筋中部を伸ばす最も簡単な方法は体を傾けることです。
体を傾けることで、腕が完全に下がった位置、つまりストレッチポジションで重力による物理的な負荷がかかるようになります。ポイントは傾きの角度です。中途半端に傾くと負荷のピークは可動域の中間に移動するだけで、ストレッチポジションでの負荷は弱いままです。おすすめは地面とほぼ平行になるライイングサイドレイズ。これにより、三角筋中部が最も伸びた位置で負荷を最大化できます。
この種目ではヒジを伸ばし、腕を完全に真横に上げます。上まで持ち上げる必要はありません。負荷がかかるのはおおよそ30〜45度までなので、そこまでで十分です。上部で負荷が抜けることは問題ではありません。重要なのは、伸びた位置でどれだけ負荷をかけられているかです。
ただし、より安定して三角筋中部を成長させたい場合、最もおすすめなのはケーブルサイドレイズです。ケーブルはストレッチポジションでの負荷をコントロールしやすく、再現性が高いのが大きなメリットです。ケーブルの高さは腕を下げた位置と同じか、やや低めに設定してください。
非常に最近行われた研究では、被験者にダンベルサイドレイズとケーブルサイドレイズを行わせ、筋肥大効果を比較しました。この研究では全体のトレーニング量が少なかったため、結論としては両グループ同等と報告されましたが、筋肥大の比率を見るとケーブルサイドレイズはダンベルサイドレイズよりも40%以上大きな成長を示していました。
フォームの注意点として、腕を体の横で止めないことが重要です。体とわずかに交差する位置まで下げることで、三角筋中部のストレッチポジションを確保できます。また、ぜひ試してほしいテクニックが「体の後ろでレイズする」ことです。(解説)
多くの人はサイドレイズを体の前で行いますが、この位置では肩が内側に回転しやすく、ストレッチが三角筋中部ではなく後部に逃げてしまいます。腕を体の後ろに配置すると肩は中立的な位置で固定され、三角筋中部が真横を向きます。この状態でレイズを行うことで、ストレッチポジションでも収縮局面でも中部に負荷を集中させることができます。
肩に痛みや違和感がない人は、このフォームを強く推奨します。ライイングサイドレイズでもケーブルサイドレイズでも同様です。結果として、腕が前に出る、ヒジが曲がるといったフォーム崩れも起こりにくくなり、三角筋中部を狙ったトレーニングが安定します。
ここまでの内容をまとめます。肩の広がり、肩を変えたいなら、やるべきことは非常にシンプルです。狙う筋肉は三角筋中部。前部や後部ではありません。そして中部を成長させるために最も重要なのは、完全な外転を使うこと、そしてストレッチポジションで十分な負荷をかけることです。
まず種目です。メインはケーブルサイドレイズ。家トレの人はライイングダンベルサイドレイズを使ってください。どちらもストレッチポジションで負荷が最大になるように設定します。
フォームはヒジを伸ばし、腕を完全に真横。可能であれば腕は体の後ろでレイズしてください。これによって肩が中立的な位置で固定され、三角筋中部に負荷が集中します。
回数設定はこうです。最初の1セットはやや重めの負荷で8〜12回。これは筋力を伸ばすためのセットです。続く2〜3セットは重量を落として15〜30回。フォームを崩さず、限界まで行ってください。高重量セットは1セットで十分です。
ただし、サイドレイズの場合、高重量で肩が痛くなる人も少なくありません。そういった人は無理に重さを追う必要はありません。重量ではなく回数を伸ばしてください。同じ重量で1回多くできれば、それは確実な進歩です。
トレーニングのセット数は胸や背中と同じくらい必要です。おすすめは1週間で15セット。1日3セットを5日行う、または5セットを3日行うなど、週に3回以上を目安にしてください。
この15セットという数字を「多い」と感じる人もいると思います。しかし、三角筋中部は大胸筋や背中のトレーニングでほとんど活性化されません。肩関節の外転運動は、中部狙いの種目以外ではほぼ使われないからです。だからこそ、意識的にボリュームを確保する必要があります。
三角筋中部のトレーニング量を増やすことは特に効果的で、多くの視聴者から「目に見えて変わった」という報告をもらっています。1週間で10セット程度では、多くの人にとって不十分です。
そして必ずやってほしいのが記録です。サイドレイズの重量と回数を毎回メモしてください。面倒なら1セット目だけでも構いません。これだけでプログレッシブオーバーロードが明確になり、成長速度が変わります。
最後に、やらなくていいこともはっきりさせます。重すぎる重量で反動を使うサイドレイズ、腕が前に出るフォーム、ヒジを曲げる動作、ストレッチを潰した可動域。これらはすべて、三角筋中部を狙ううえでは不要です。
肩の外見を変えたいなら、狙う筋肉を決め、正しいフォームで、ストレッチポジションに負荷をかけ、高頻度で続ける。それだけで肩の広がりは確実に変わります。