プッシュダウンはもう古い。三頭がデカくならない“本当の原因

プッシュダウンはもう古い。三頭がデカくならない“本当の原因”


上腕三頭筋──腕の3分の2を占める最大の筋肉。それなのに、「三頭を鍛えているのに腕が太くならない」と悩む人が本当に多い。

実はその原因は 重量でも、回数でも、種目選びでもありません。

“肘と負荷の方向” がズレているからです。

例えば、ダンベルを1cm前に出すだけで“三頭”が眠るフォームになります。これが三頭が育たない“方向のズレ”です。

前回の肩トレ動画では、「方向が1度ズレるだけで効く場所が変わる」という話をしましたが、三頭は肩以上にその影響が大きい部位です。

今回は、
・なぜプレスでは三頭が大きくならないのか
・三頭の本当のストレッチポジション
・上腕三頭筋が成長しない人の共通点を紹介します

これらを、解剖学と最新データから徹底的に解説します。

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解剖学的な上腕三頭筋

上腕三頭筋はヒジ関節と肩関節にまたがる2関節筋です。構成するのは長頭と外側頭、内側頭です。実は4つ目の筋肉があるという報告もありますが、これは筋トレではほぼ無視してOKです。長頭だけ肩関節にまたがり、他のふたつはヒジ関節のみです。

働く運動は上腕二頭筋とほとんど逆。ヒジを伸ばすヒジ関節の伸展と腕を後ろに引く肩関節の伸展です。プルオーバーで背中ではなく上腕三頭筋が疲れると感じる人がいるのもこれが理由です。

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腕が太くならない人の共通点

上腕三頭筋は腕の3分の2を占める巨大な筋肉で、いくつかの研究では、三頭は二頭よりはるかに大きいというデータもあります。その中でも最も大きいのが“長頭”。つまり長頭がデカくならない限り、腕は太くなりません。

つまり、上腕三頭筋を成長させなければ太い腕は作れません。単純計算で上腕二頭筋や上腕筋のトレーニングがいくら完璧でも三頭筋の半分程度しか腕への影響はないんです。

 

特に上腕三頭筋の中でも長頭はほとんどのデータで一貫して内側頭や外側頭より筋肉サイズが大きいことがわかっています。

つまり、腕トレをしてるのに結果が出ないと悩んでる人は、トレーニングが上腕三頭筋にあまり効いていない可能性が高いということです。

特に長頭のトレーニングはとても複雑で、やり方次第では完全に成長が止まってしまうこともあります。

長頭だけが肩関節をまたぐため、腕の角度が数センチズレるだけで伸びなくなる筋肉だからです。

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上腕三頭筋をデカくするために必要なこと

それでは何をすれば上腕三頭筋がデカくなるのか。腕が太くなるのか。それに必要なことはたったのひとつです。

それはストレッチ。これがあなたの腕、上腕三頭筋のすべてを変えます。昔のトレーニングの常識では筋トレには収縮が大事というのが一般的でしたが、ストレッチポジションは筋肉の成長に最も重要な可動域であることはもはや明確です。

筋肉が伸びていないトレーニングは、弓を引かずに矢だけを飛ばそうとしている状態です。

弓は引けば引くほどエネルギーを蓄える。筋肉も同じで、伸びた位置は筋繊維と筋膜の張力が最大になります。だからストレッチの瞬間こそ、最も成長刺激が入る。

なのでストレッチがない三頭トレは「弓を引かずに数センチだけ動かして“飛べ!”と言ってるようなものです。」

これは大量の科学的データを分析したメタ分析でも証明済みで、これを無視すると腕トレの効果がリアルに半減します。逆にこれを意識すると腕トレの効果が別次元になります。

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科学的に正しい“伸ばす三頭トレ”の3原則

上腕三頭筋が伸びない最大の原因は、“ヒジと負荷の方向がズレること”です。そのズレを直すために必要なポイントは、この3つだけです。まずは“プレスがなぜ三頭を伸ばせないのか”を理解しましょう。

ヒジを限界まで曲げる

プレス系をやってるから上腕三頭筋は大丈夫というのは大きな誤解です。JMプレスは「顔の前に下ろすナローベンチ」です。

普通のベンチより肘を深く曲げられるため、三頭に強いストレッチがかかります。

重要なのはベンチプレスそのものではなく「肘がどれだけ深く曲がるか」です。ほとんどのプレス種目は、肘が90度で止まるため長頭が伸びません。

ワイドグリップのベンチプレス、ナローグリップのベンチプレスではバーベルを下ろした時にヒジが90度になる位置で止まってしまいますが、この種目はほぼ限界まで肘を曲げることができます。

これと同じで腕立て伏せで上腕三頭筋を鍛えたい場合は手を顔の前において行ったほうが腕は成長しやすいでしょう。

もちろんどんなに最高の種目をやっていてもヒジを十分曲げていなければ意味がありません。ヒジは曲げ切らず筋肉に緊張を残すトレーニング。たくさんの研究でもわかっているようにこのテクニックは何の意味もなくむしろ筋肉の成長を妨げます。

上腕三頭筋を伸ばすためには限界までヒジを曲げる。例外はありません。大した違いには見えないかもしれませんが、これが超重要です。

曲げた位置で負荷をかける

もうひとつ重要なのはそこで負荷をかけること。ただヒジを曲げればいいわけではありません。

例えばこの代表的な腕トレ種目であるダンベルキックバックを見てください。ダンベルは“真下への重力だけ”なので、肘を曲げた位置で負荷が消えます。三頭に必要なのは、肘に対して垂直の負荷です。

そしてオーバーヘッド系では、必ず“横から”ではなく“下から引っ張る”方向を作ることが重要です。ケーブルが横にあると、長頭が伸びる位置で負荷が抜けてしまいます。

これと同じで非常に人気のプッシュダウンも体を起こしながらやると刺激が入らない方向になってしまいます。前傾させたほうが効果は高いでしょう。

キックバックをする場合、ケーブルを使用して引っ張る向きを調節するとストレッチポジションで負荷がかかります。ケーブルのキックバックかダンベルのキックバックか。使用する器具が違うだけで筋トレ効果は全く違うでしょう。

長頭を伸ばす

最後におそらく最も重要なのは長頭を成長させること。先ほど紹介したように上腕三頭筋の長頭は3つのうち最も巨大な筋肉。ここをデカくすることが上腕三頭筋のサイズ、そして腕のサイズに大きく影響します。

そのために重要なのはもちろん伸ばすこと。最近発表された研究ではレッグエクステンションの背もたれを倒すと大腿直筋の成長が2倍以上になりました。大腿直筋というのは上腕三頭筋の長頭と同じく2関節筋でヒザと股関節にまたがっています。つまり、背もたれを倒すことで体がのけぞるようになり、大腿直筋が強く伸ばされます。

これが腕にも完全に当てはまります。上腕三頭筋の長頭は肩関節の伸展。ということは腕を後ろに引く運動で収縮します。なので長頭を伸ばすためには腕を限りなくあげる必要があります。

このときも、負荷の方向は“下から”が絶対条件です。横方向のケーブルでは長頭は伸び切らず、ストレッチの刺激が大きく落ちてしまいます。

この位置をオーバーヘッドといいますが、上腕三頭筋の長頭を鍛えるためには常にこの位置で鍛えましょう。最新研究では、ケーブルエクステンションを「体の前」vs「頭の上」で比較しました。結果は、オーバーヘッドのほうが三頭全体で約50%成長が大きく、特に長頭で顕著でした。

これは体の前でのプッシュダウンは長頭が常に収縮した位置で固定されるため長頭の成長効果が低いんです。

上腕三頭筋ではオーバーヘッドで鍛えられているかどうかで長頭の成長スピードが全然違います。

この3つ──「肘を深く曲げる」「曲げた位置で負荷をかける」「長頭を伸ばす」。この3つが揃わない限り、三頭は絶対に伸びません。

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実践 完全版メニュー

ここからはいよいよ実際に「何をやれば三頭がデカくなるのか」を具体的にみていきます。

みなさんがこれまでやってきた三頭トレとは、動きも刺激もまったく変わります。

今日の3原則──

①肘を深く曲げる

②曲げた位置で負荷をかける

③長頭を伸ばす

この3つをそのまま形にした種目を紹介します。

オーバーヘッドトライセプスエクステンション(EZバー)

オーバーヘッドのトライセプスエクステンションは、長頭を含めた上腕三頭筋全体を鍛える代表的な種目です。長頭を伸ばすためにも、腕は耳の横で固定しましょう。EZバーは手首への負担が少ないため安全に強度を上げられます。

ポイントとして、フラットベンチで行うとストレッチポジションで負荷が抜けやすいので、ベンチをインクラインにして「下方向の負荷」が入る角度にするのが効果的です。

オーバーヘッドトライセプスエクステンション(ケーブル)

そしてこれをケーブルで行うのも非常に効果的です。ケーブルは刺激の向きを調整できるので、上腕三頭筋のような“方向の影響が大きい筋肉”には特に相性が良いです。

必ず“横から”ではなく“下から引っ張られる位置”にセットしてください。横方向のケーブルは、長頭が伸びる肘の角度で負荷が抜けてしまいます。個人的にはロープグリップを推奨しますが、どんなグリップでも問題ありません。肘に違和感が出ない角度で調整してください。

フレンチプレス

フレンチプレスは、オーバーヘッド系の中でも特に三頭を深く伸ばせる理想的な種目です。体を垂直にすることで“完全に下方向の負荷”を作れ、長頭が最も伸びる軌道になります。

ダンベルは1つよりも2つで行ったほうが肘のストレスが少なく、ほとんどの人にとって安定しやすいです。
必ず、肘を曲げ切って三頭を最大限伸ばしましょう。

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よくある間違った腕トレ

次に、ほとんどの人がやってしまう「三頭が伸びないフォームの癖」をまとめて確認します。これを直すだけで刺激が一気に変わります。特に、肘が前に流れる・負荷方向のズレ・浅い可動域──この3つは三頭トレの“成長ブレーキ”なので、必ず押さえておきましょう。

さっき紹介した最強種目でも起こりやすいです。

ヒジを曲げ切らない

上腕三頭筋トレーニングで特に多いミスがこれです。三頭の種目で肘を曲げ切らないのは基本的にメリットゼロです。何度も言うように、この“底のストレッチ”が最も重要で、ここをサボると効果は半減します。

特にフレンチプレスで高重量を扱っている人に非常に多い傾向です。「曲げ切ると肘を痛めそう」と感じる人もいますが、三頭で肘を痛める原因のほとんどは重量の選択ミスです。負荷を軽くするだけで肘の負担は大幅に減ります。

長頭を収縮させる

腕を伸ばしきったまま、体の前で三頭トレをするほど長頭は“伸びません”。筋肉というゴムがずっと短くなっている状態だからです。

おそらく、多くの人は「プッシュダウンのほうが効いてる感じがする」と思うはずです。でもその“効いてる感覚”は、長頭が働いているというより 短い位置で張っているだけ のことが多いです。

実際には、感覚よりも“伸びているかどうか”が成長を決めます。長頭を含め三頭全体を本気で伸ばしたいなら、腕は頭の上です。

横から引っ張る

これは特に多いミスです。オーバーヘッド状態で必要な負荷方向は“下”。横から引っ張ると、長頭が最大限伸びている位置で負荷がかからなくなる ため、ストレッチの刺激が消えてしまいます。

必ず、ケーブルは“下方向から引っ張られる角度”に調整してください。

ヒジを開きすぎる

三頭トレで肘を開きすぎると、動作が外側方向に逃げてしまい、長頭の関与が大きく減ります。長頭の線維方向は肩から肘へまっすぐ走っているため、肘が開くほど軌道がズレます。

完全に閉じる必要はありませんが、「開きすぎない」ことが非常に重要です。

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Q&A

最後に、三頭トレで必ず出てくる質問をまとめて解説します。

長頭の感覚が分からない、肩が痛い、家トレでの代替、プッシュダウンの方向など──

実際によく聞かれる疑問だけを厳選しています。

ここを押さえると、あなたの三頭トレの完成度が一気に上がります。

Q1|オーバーヘッドが肩に痛みが出る場合はどうすればいい?

まず最初にやるべきは重量を軽くすること。高重量だと関節の安定が崩れやすく、痛みにつながります。
それでも痛みがある場合は、腕をやや前に出して角度を弱くしてOKです。軽いオーバーヘッドでも長頭は伸ばせます。

Q2|プッシュダウンは三頭に効かないってこと?方向がズレると何が起きる?

体を前傾させればストレッチポジションで負荷がかかるので、外側頭・内側頭には理想的です。

ただし、長頭は肩関節を跨ぐため“完全に縮んだまま”になり、成長刺激はほぼ入りません。

Q3|ダンベルのキックバックは完全にダメなの?ケーブルと何が違う?

キックバックはストレッチで負荷がかからず、長頭が完全に縮まるため三頭全体の成長刺激が弱いです。ケーブルなら負荷方向を「下」に作れるので、ストレッチが入って効果が大きく違います。

Q4|長頭を伸ばしている“感覚”がどうしても分かりません。チェック方法は?

無理に感覚をつかむ必要はありません。オーバーヘッドで肘を曲げ切っていれば、解剖学的に長頭は必ず伸びています。感覚よりも“フォームが正しいかどうか”を優先してください。

Q5|三頭は週にどれくらいの頻度で鍛えるべき?長頭は疲労しやすい?

目安としては週3〜5回がやりやすいです。三頭は胸・肩トレでも使われるため疲労が溜まりやすい筋肉です。

細かく分けて刺激したほうが回復と成長のバランスが取りやすくなります。

Q6|家トレ勢でも長頭をストレッチさせる方法はありますか?

あります。椅子に座ってダンベルのフレンチプレスを行いましょう。家でも長頭のストレッチポジションを確実に作れます。

Q7|オーバーヘッドで肘が開いてしまいます。どうやって安定させればいい?

人間の解剖学上完全に閉じて引っ張るのは難しいです。なのでほどほどに閉じるくらいでOKです。

Q8|三頭の高重量トレ(太くする用)はどう組み込めばいい?

高重量は必須ではありません。研究でも低重量でも成長することが分かっています。特に三頭は肘の負担が出やすいので、扱いやすい重量で可動域を優先しましょう。

Q9|プレス種目(ベンチ・腕立て)は三頭の成長にどれくらい影響しますか?

長頭はほぼ働きませんが、外側頭・内側頭への刺激はあります。

ただ、肘が90度以上曲がらないためストレッチが作れず、成長効率は高くありません。

Q10|三頭が伸びているときの肘の位置はどこが正解?

肘が十分に曲がり、腕が頭より上にあるポジションです。

肘が頭の真横〜やや前で固定されていれば、長頭は確実に伸びています。

今日解説した内容は、三頭をデカくするための本質です。

上腕三頭筋は
・腕の3分の2を占める最大の筋肉
・さらに“長頭”が最も大きく、ここが育たないと腕は太くならない

そして長頭は肩関節をまたぐため、
角度が数センチズレるだけで伸びなくなる“繊細な筋肉” です。

だからこそ必要なのは、この3つだけ。

✅ ① 肘を限界まで深く曲げる

ストレッチが入らない三頭トレは効果がほぼ半減します。

✅ ② 曲げた位置で負荷をかける

特にオーバーヘッドは“横”ではなく必ず下方向から
これができないと長頭が伸びません。

✅ ③ 長頭を伸ばす

長頭こそ腕を太くする中心。
オーバーヘッド系を正しい方向で行うことが絶対条件です。

この3つが揃えば、三頭の成長スピードは本当に別物になります。

Parker Fitness

今までの失敗,そして成功から科学的な文献を基にすると筋肉の付き方が全く違うことに気づきました。 それを皆さんにも経験してほしくYoutubeなどで科学的なアプローチで効果的な筋トレ法を紹介しています。