「上腕二頭筋を鍛えているのに、腕が太くならない。」
そう感じていませんか。
実はこれ、筋肉の問題ではありません。
ほとんどの人が、“構造的に効かないフォーム” でカールをしているのが本当の理由です。
今日は、科学的に正しい
「上腕二頭筋がデカくなる3つの真実」 を解説します。は
この3つを理解すれば、
・重量は伸びているのに腕がデカくならない
・長頭が全然発達しない
・カールで肘が痛くなる
こういった悩みが、まとめて解決します。
まずひとつ目。
上腕二頭筋の長頭が全然デカくならない人は、そもそも長頭を伸ばせていません。
最新の研究では、筋肉は「伸ばされた位置」で成長しやすいことが分かっています。
例えばレッグエクステンションの研究では、背もたれを倒して上体をのけぞらせることで、 大腿直筋の成長が2倍以上になりました。 のけぞることで、大腿直筋がより強くストレッチされたからです。
同じことが上腕二頭筋にも当てはまります。上腕二頭筋には外側の長頭と内側の短頭があり、どちらも肘の屈曲に関わりますが、長頭だけは肩関節もまたいでいて、肩を前に上げると収縮、後ろに引くとストレッチされます。
つまり、上腕二頭筋の長頭をしっかり伸ばすためには、 腕を後ろに引く必要があるということです。肘が体の真横や、体の前に出たままのカールでは、長頭はずっと短縮したままになってしまいます。
長頭にとってインクラインカールが強いと言われるのはこのためです。
肘が体より後ろに来ることで、レッグエクステンションで背もたれを倒すのと同じ発想で、
長頭をストレッチさせることができます。
上腕二頭筋を太くしたいなら、「肘を後ろ」に置くことが絶対条件。
これだけで、同じ重量でも刺激がまったく別物になります。
実際の種目ややり方は、このあと後半で詳しく解説します。
ふたつ目の真実。
ほとんどの人のカールは、ストレッチポジションで負荷が抜けています。
レビュー論文でも、筋肉の成長を最大化するには
「最大まで伸ばした位置で、しっかり負荷をかけること」が重要だとまとめられています。
ですが、バーベルカールやダンベルカールでは、肘が体の横〜真下に来たストレッチポジションで、モーメントアームがほぼゼロになってしまいます。
重力は下向きですが、本来必要なのは腕に対して“横向き”の力です。
そのため、どれだけウェイトが重くても、この位置では二頭に負荷がかかっていません。
(博士の解説動画を入れる)
Milo Wolf博士が紹介していた研究では、
インクラインカールよりもプリチャーカールのほうが、
上腕の筋肉を大きく成長させていました。
強度曲線を見ると、
インクラインではストレッチで負荷がほとんどなく、
プリチャーではストレッチで負荷が最大になっていたからです。
上腕二頭筋をデカくしたいなら、 「ストレッチポジションで必ず負荷がかかる種目」を選ぶことが重要です。背中トレーニングでは上腕二頭筋が最適に鍛えられないのもこのため。背中トレーニングで上腕二頭筋が伸ばされることはほとんどありません。
そしてもうひとつ、ストレッチが抜ける大きな原因が **「肘を伸ばし切らないこと」**です。
これをやってしまうと、どんな種目を選んでも そもそも“ストレッチポジション”が存在しないフォームになります。 当然、上腕二頭筋はデカくなりにくいです。
ある研究では、被験者の片腕は収縮側の可動域だけ、
もう片腕はストレッチ側の可動域だけでプリチャーカールを行いました。
可動域の広さは同じですが、
収縮側は上腕二頭筋と上腕筋が約3.4%増加。
一方、ストレッチ側は約8.9%増加していました。
https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2021.734509/full
つまり、伸ばすレンジをしっかり使った方が、
筋肥大にはるかに有利だということです。
「肘を伸ばし切らない方が負荷が残る」と言う人もいますが、
実際には、肘をしっかり伸ばしたカールの方が
同じ重量でもはるかにキツいはずです。
これは“負荷を残している”のではなく、
**“負荷を逃がしている”**と考えた方が正確です。
しかも、このテクニックで筋肥大が有利になるというデータもほとんどありません。
もちろん、「肘を伸ばすと関節を痛めそう…」と不安な人もいると思います。
ですが、正しくコントロールしていればリスクはかなり低いです。
肘を痛める人の多くは、
扱いきれない高重量を使ったり、
勢いよくウェイトを落としているケースがほとんどです。
常に力を入れたまま、ゆっくり下ろす。
上腕二頭筋トレーニングでは、この“コントロール”が非常に大事です。
ストレッチで負荷がかからない種目を選ぶ。
肘を伸ばし切らず、中途半端な位置で止める。
このどちらか一つでも続けていると、
上腕二頭筋は一生デカくなりません。
3つ目の真実。
「グリップで鍛えられる筋肉が切り替わる」というのは、ほぼ迷信です。
カールでよく言われるのが、
「手のひらを上に向けると上腕二頭筋狙い」
「手のひらを下やニュートラルにすると上腕筋狙い」
という考え方ですが、科学的にはかなり怪しいです。
回外グリップ・回内グリップ・ロープを使ったニュートラルグリップを比較した研究では、
上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋の筋活動に大きな差はありませんでした。
他の研究でも、ほぼ同じ結果が報告されています。
多くの人は「二頭に効く種目=上腕筋にはあまり効かない」「上腕筋に効く種目=二頭にはあまり効かない」 とイメージしていますが、 実際の答えはこうです。
グリップによって筋活動が劇的に変わることはない。
上腕二頭筋にとって最高の種目は、上腕筋や腕橈骨筋にとっても基本的に最高の種目である。
上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋は、「肘を曲げる」カール動作すべてで強く働きます。
そしてもうひとつの迷信が、**「上腕二頭筋を鍛えるときは、常に回外グリップが最適」**という考え方です。
ほとんどの人は、二頭を鍛えるときに手のひらを上に向けた回外グリップを選びますが、実はストレッチを重視するなら、回内やニュートラルの方が有利な場面もあります。
(博士の解説動画)
Menno Henselmans博士の説明では、
上腕二頭筋は
・肘の屈曲
・手首の回外
・肩の屈曲
これらで収縮する、と整理されています。
ということは、ストレッチポジションではこの逆をやればいい。
肘を伸ばし切って、腕を後ろに引き、手のひらは下に向ける。
こうすることで、上腕二頭筋は最も長く伸ばされます。
逆に、手のひらを上に向けたままカールすると、筋肉はずっと収縮寄りのポジションにとどまり、ストレッチ刺激が入りにくくなります。
回外グリップや、肘を伸ばし切らないカールは、「効いている感」は強くなりますが、多くの研究で、“効いた感=実際の筋肥大” ではないことが分かっています。
なので、感覚よりもストレッチがしっかりかかるフォームを優先した方が、上腕二頭筋の成長には効果的です。
もう一度まとめると、上腕二頭筋にとって最高の種目は、上腕筋や腕橈骨筋にとっても基本的に最高。この3つは一緒に鍛えられます。 そして、ストレッチポジションでは手のひらを下にした方が、上腕二頭筋がしっかり伸びる、ここだけは必ず覚えておいてください。
ここからは、今話してきた3つの真実を実際の種目に落とし込んでいきます。方針はシンプルで、**「ストレッチポジションでちゃんと負荷が残る種目だけを選ぶ」**ことです。
ケーブルのカールは、上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋をまとめて鍛えるうえで、かなり理想に近い種目です。
ストレッチポジションが重要だと分かってきた現代の筋トレでは、ケーブルマシンは本当に相性が良いツールです。
ベンチを90度に立てて座った状態で、ケーブルのハンドルをつかんでカールを行います。
ベンチがない人は、膝立ちで体を固定して行うのもOKです。
これだけで、上腕二頭筋を効果的に鍛えるための条件がほとんど揃います。
まず腕を後ろに引くことができます。これによって長頭が伸びます。さらに肘が伸びた位置で、腕に対して斜め〜横向きの力がかかるので、ストレッチポジションでしっかり刺激が乗ります。最後はニュートラルグリップ、または回内グリップにすることで上腕二頭筋がより強く伸ばされます。
回内グリップのほうがストレッチは最大ですが、このグリップを使うと前腕も内側に回ってしまうのでカールがやりづらくなります。ニュートラルグリップで十分です。
セットアップには少し意識するべきポイントがあります。
それは、腕を後ろにさげて肘を伸ばしたときに、ケーブルの引っ張る方向がどうなっているかです。
ストレッチポジションで、ケーブルの力の向きが腕とほぼ一直線になってしまうと、
肘関節まわりのモーメントアームがほぼゼロになって、負荷が抜けてしまいます。
これはダンベルカールで「前腕がまっすぐ下を向いている位置」だと楽になるのと同じです。
逆に、ケーブルの引っ張る方向が腕に対して“横向き”に近いほど、
ストレッチポジションで強い負荷がかかります。
なので、ボトムポジションで
「腕とケーブルが斜めに交差しているか」
を必ず確認してください。
そのためにも、ケーブルの位置は少し高めにセットして、
下ろしたときに腕とケーブルが一直線にならないように調整しましょう。
ケーブルマシンがない人はインクラインカールをしましょう。確かにインクラインカールは研究でもわかっているように効果は低いですが、やり方次第で上腕二頭筋最強種目にできます。それは角度をゆるやかにすること、またはベンチを水平にすること。
効果の低いインクラインカールはストレッチポジションで腕が地面に対して垂直になってしまうこと。でも水平にすれば腕を引いても地面と垂直になってしまうことはありません。これによってストレッチポジションで負荷がかかるようになります。
ここまでの話をまとめると、
・肘は常に体の後ろに置くこと
・肘をほぼ伸ばし切ってストレッチレンジをサボらないこと
・ストレッチポジションでは手のひらは下〜ニュートラルにすること
この3つさえ守れていれば、どのカール種目を選んでも、
上腕二頭筋・上腕筋・腕橈骨筋をまとめてしっかり鍛えることができます。
じゃあ次に、どれくらいやれば実際に二頭は太くなっていくのか、ボリュームと頻度の目安をシンプルにお話しします。
科学的なデータを見ると、週あたりの合計セット数が同じなら、1日にまとめてやるよりも、2〜5日に分けて少しずつやったほうが成長しやすい傾向があります。
なので、「腕の日に10セットまとめてやる」よりも、
1日2セットを週5日 のように、小分けにした高頻度スタイルのほうが効率は高いです。
目安としては、1週間で合計8〜12セット。
上腕二頭筋は背中トレーニングでもかなり使われているので、
胸や背中ほどガンガンセット数を盛らなくても大丈夫です。
例えば、
・1日2セットを週4〜5日
このくらいから始めてみてください。
今日のフォームと種目がしっかりできていれば、むやみにセット数や種目数を増やさなくても、十分に腕は太くなっていきます。まずはこのボリュームを基準にして、そこから自分の体に合わせて微調整してみてください。
ここまでの内容を踏まえて、**「これを続けていると、二頭が一生デカくならないトレーニング」**を3つピックアップします。自分が無意識にやっていないか、チェック用として聞いてみてください。
ひとつ目は感覚を重視したフォームです。残念ながら筋肉に効いてる感覚が強い種目というのは実際は筋肉に効いてない可能性が高い。というのも効いてる感の正体はパンプで収縮が強いほどパンプも強くなります。でも実際に筋肉に効かせるなら感覚を犠牲にしてもストレッチを優先させましょう。
ヒジを伸ばし切らなかったり、収縮した位置で負荷が最大になる種目は効いた感が強くはなりますが実際には筋肉に効いていません。
もうひとつはチートを使うカール。扱う重量を増やすことは筋肉の成長において重要です。ただ、高重量のカールは上半身の勢いを使いがちです。特に一般的なダンベルカールは10kg扱うことができる人は少なくないですが、ストレッチポジションで負荷がかかる種目10kgは相当難しいです。あくまでコントロールできる勢いを使わない重量を使いましょう。
もうひとつは、大量の背中トレーニングをした後にカールをすることです。
最近のメタ分析では、フラクショナルセット(背中トレでの二頭のような“ついでの刺激”)が11セットを超えてくると、それ以上増やしても効果が頭打ちになってくる、というデータがあります。
なので、背中を10セット以上やったあとに、そこからさらに腕をガッツリ足しても、
それは筋肉を成長させるというより“おまけの刺激”になってしまう可能性が高いです。
できれば、今日話したような二頭のメイン種目は、
「背中とは別の日に5セット鍛える」
「背中を鍛えたら後半に二頭を2〜3セットだけ」
など、ジャンクボリュームにならない形でちょっとずつ分けてあげるのが理想的です。
インクラインカールを週4〜5日入れてもいいですし、ケーブルカールと交互に行うのもOKです。1回あたり2〜3セットを、高頻度で分けていくイメージで行いましょう。
ということで、今回は
上腕二頭筋がデカくならない原因と、その解決になる3つの真実を解説しました。
最後にもう一度だけ、ポイントをまとめます。
真実1:長頭は、肘を後ろに引かないと一度も伸びない。
肘が体の前に出っぱなしのカールでは、長頭はずっと短縮したままです。プリチャーカールは短頭にとってはかなりいい種目ですが、長頭の成長効果はかなり低いです。 肘を体より少し後ろに置くだけで、同じ種目でも刺激がまったく変わります。
真実2:ストレッチポジションで負荷が抜けるフォーム、種目は、捨てる。
伸ばした位置で楽になってしまうカール、
そして肘を伸ばし切らず中途半端な位置で止めるカール。
このどちらかひとつでもあると、二頭は一生デカくなりません。
しっかり伸ばして、伸びたところで「ちゃんとキツい」フォームに変えていきましょう。
真実3:グリップで鍛えられる筋肉が切り替わる、というのはほぼ迷信。
回外だから二頭だけ、ニュートラルだから上腕筋だけ、ということはありません。むしろ常識とは真逆の回内グリップやニュートラルグリップのほうがすべての屈筋を効果的に鍛えられる可能性が高い。
上腕二頭筋にとって良い種目は、上腕筋や腕橈骨筋にとってもだいたい良い種目です。
なので、手の向きにこだわり過ぎるよりも、 ストレッチ条件と肘の位置を優先する。ここを間違えなければ、腕はちゃんと太くなっていきます。