前回の動画で、“全身法が最強”ということを科学的に証明しました。
でも、実際にどうやればいいのか?──そこが一番知りたいですよね。
今回は、ダンベル2つと自重だけでできる“科学的全身メニュー”を紹介します。
時間はたったの60分。
これが、分割法よりも効率的に筋肥大を起こす最強の全身法”です。」
全身トレーニングがなぜ効果的なのか。それはセットの質を高い状態を維持でき、加えて筋肉の成長に何の効果もないジャンクボリュームの発生を防ぐことができるからです。
基本的に筋肉は高頻度で鍛えたほうが成長します。高頻度でトレーニングするというのは非常に長い休憩を途中でとることになります。例えば大胸筋トレーニングとして1週間に5setベンチプレスをするとしましょう。分割法で大胸筋の日を作った場合、月曜日にベンチプレスが集中することになります。セット間の休憩はほとんどのひとが2~3分で長い人でも5分です。
しかしこれを月曜から金曜まで毎日1setずつにしたとします。この場合、セット間の休憩時間は24時間になり完全に回復した状態で次のセットに移れます。
その証拠にある研究では被験者に片脚のレッグプレスを全く同じセット数で行わせ、週1回9setで鍛える脚と週3回3setずつ鍛える脚に分けたところ、高頻度で行った脚はグラフを見ていただいたらわかる通りすべての週でトレーニングVOLが高く、週1回の脚は筋肉の成長が+1.8%だったのに対し、週3回で鍛えた脚は+4.1%の筋肥大効果でした。
つまり、同じ努力量でも、刺激を分けた方が2倍以上成長できるということです。
全身トレーニングで最も重要になるのは種目の順番です。
全身トレーニングの利点はたくさんありますが、筋肉を鍛えながら休ませることができるのはかなり大きなメリットです。
筋トレ初心者の方が全身法をやるときにやってしまうミスが、同じ部位を連続で鍛えてしまうということ。例えば大胸筋を鍛えるベンチプレスの後にすぐ上腕三頭筋を鍛えてはいけません。なぜならベンチプレス中に上腕三頭筋は疲労しているのでこの種目の疲労を上腕三頭筋トレーニングで引き継いでしまいます。
そのため、大胸筋を鍛えた後は背中や脚を鍛えてベンチプレスで使った筋肉を休ませましょう。
考え方のイメージとしては筋肉を上半身のPushとPull、そして下半身のPushとPullに分けます。脚のプッシュはレッグプレスなどで使用される大腿四頭筋、プルはレッグカールで使用されるハムストリングをイメージしてください。この4つのタイプを順番に行っていくイメージです。
「つまり、“全身法”は筋肉を鍛えながら休ませる、最も効率的な方法なんです。」
全身法は科学が証明した筋肉を最も成長させるトレーニング法です。ポイントとして疲労を引き継がないためにも、前の種目で使用した筋肉を連続で鍛えないように意識することが重要です。
ここからは、具体的な全身トレーニングメニューを紹介します。
すべて自宅で、ダンベル2つがあれば実践可能です。
家トレの一番のメリットは自分勝手なトレーニングができることです。ジムでは複数の器具を独占するのはマナー違反ですが家トレなら好きにたくさんの器具を使用できます。
ベンチプレスは胸を厚くする種目──ですが、“肩を守りながら胸を伸ばす”ことが科学的に重要です。
大胸筋を鍛えるならダンベルのベンチプレスが最も効率的です。ダンベルのプレスはバーベルと違ってダンベルを限りなく下まで下げることができるので大胸筋を伸ばすことができます。筋肉を出来るだけ伸ばすことは最新科学で証明されている筋肉の成長を最大化させるポイントのひとつです。
30kg 40kgのダンベルを軽く持ち上げている人にはヒジを十分曲げておらず、90度になる位置で止めている人がかなり多いです。これでは筋トレ効果はかなり落ちてしまいます。
横から見たとき自分の肩がダンベルに隠れるほど脇を開くことが重要です。ダンベルを十分下まで下げていて脇を開いているのが大胸筋にとってベストなプレスです。3セット×10〜20回。もしダンベルがない場合は、腕立て伏せでもOK。ヒジを内側に集める感覚です。
懸垂は背中全体、特に広背筋を鍛えて背中の広がりを作る種目です。大胸筋上部をバーにくっつけるように体を持ち上げましょう。
懸垂は自宅で行う背中トレーニングとして最強の種目です。懸垂のグリップについては最新データでも証明されているように逆手でも順手でも筋肉の成長に大きな差はありません。ただ注意点として、グリップは肩幅と同じもしくはそれよりも狭くしてください。というのもワイドグリップは広背筋が伸びないため筋肉の成長効果が下がってしまう恐れがあります。
手幅は狭めにして必ず体を下げたときにヒジを伸ばして広背筋をストレッチさせます。ストレッチポジションでヒジが曲がっていて広背筋が伸ばせていない人もかなり多いので注意してください。反動を使ったりやストレッチをカットせずに8〜12回×3セット行います。
シシースクワットは大腿四頭筋すべてを鍛えます。つま先立ちになり、正座をするように足を曲げます。
最新の科学的データでは一般的なスクワットには致命的な問題があることがわかっています。これを考慮するとシシースクワットのほうが効果的です。
ある研究ではスクワットは大腿四頭筋の中で最も大きな大腿直筋をほとんど成長させることができないことがわかっています。というのもスクワットでは大腿直筋は全く働いていないからです。
股関節を伸展させ、のけぞった状態で行うことで大腿四頭筋のすべてを鍛えることができます。自重でもかなり強い負荷を入れることができます。つま先立ちになって体を開きながらスクワットをしますが、この種目は不安定でバランスを崩しやすいので何かにつかまりながら行いましょう。
必ずヒザは正座になるくらい曲げて大腿四頭筋を伸ばしましょう。10~15回3setで行います。
スティフレッグデッドリフトはヒザを伸ばした状態で背中を真っすぐに保ち、お辞儀をします。これでお尻とハムストリングを鍛えられます。
上半身のPushとPull、下半身のPushを鍛えたので次は脚のPullマッスルを鍛えます。ハムストリングス、そしてお尻を鍛えるのにスティフレッグデッドリフトは完璧です。今年公開された新しい研究ではシーテッドレッグカールの方が股関節が屈曲している。これによってハムストリングスがストレッチし筋肉がより成長することが判明しました。
ヒザを伸ばしてお辞儀をするようなイメージです。体が固い人は無理にダンベルを床まで下げる必要はありません。無理のない範囲でハムストリングスを伸ばしてお尻の力のみを使ってウエイトを持ち上げます。5~8回3setで行います。
ライイングダンベルサイドレイズは肩に最適な刺激を入れます。
ここから肩や腕を鍛えます。前回の動画でも紹介したように肩は中部を優先して鍛えるのが最善です。ダンベルを使った肩トレと聞くとダンベルサイドレイズを思い浮かべる人がほとんどですが、この種目は腕を下げたとき三角筋中部に負荷がかかりません。サイドレイズでは腕を下げたときに体に対して横向きの負荷が必要です。
体を横にすることでこの位置で負荷をかけることができます。ポイントとして腕を曲げたり前に出すと三角筋前部に負荷が逃げてしまうのでヒジを伸ばして真横にダンベルを持ち上げましょう。10〜20回を3set行います。
インクラインカールは腕を引きながらカールをすることで上腕二頭筋全体、オーバーヘッドトライセプスエクステンションは腕を耳の横に配置することで上腕三頭筋全体を鍛えます。
腕トレは拮抗筋スーパーセットを強く推奨します。特に家トレは。まずはインクラインカールで上腕二頭筋、終わったらすぐにオーバーヘッドトライセプスエクステンションで上腕三頭筋を鍛えます。
片方が休んでる間にもう片方を鍛える。これが最も効率的なトレーニングです。腕にある上腕二頭筋と上腕三頭筋はヒジと肩にまたがっている二関節筋なので肩関節も工夫が必要です。例えば最近の研究では上腕三頭筋トレーニングを体の前ではなく頭の上で行うだけで上腕三頭筋の成長が1.5倍になりました。
なので上腕三頭筋を鍛えるときは腕は頭の上に。上腕二頭筋を鍛えるときは腕は後ろに引いた状態で行いましょう。インクラインカールでは角度が直角に近いと腕を下げたとき負荷がかからなくなるので水平に近いベンチ角度で行いましょう。10〜20回を3set行います。
アブローラーは腹直筋を伸ばしてから背中を丸めるようにしましょう。
腹筋を鍛えるとき腹筋ローラーを使うのが最善です。プランクやクランチではストレッチポジションで負荷がありません。プランクは収縮した状態を維持し、クランチは背中がついた段階で負荷が無くなってしまいますが、腹筋ローラーでは腹直筋を伸ばした時に最大の負荷がかかります。
ヒザ立ちでも十分刺激は入るので無理せず自分に合った負荷で行いましょう。8~12回を3set行います。
全身法は1setあたりのVOLを高めながら、ジャンクボリュームの発生を抑制する最強のトレーニング法です。各筋肉3setって少ないと思う人もいるかもしれませんが、最新のメタ分析でもわかっているようにおおよそ各筋肉は1回5set以内を目安に抑えるのがベストです。
家トレの人はジムでトレーニングしている人よりも高頻度で鍛えられる可能性が高いのでおすすめはこのメニューを週5回です。そんなにやって回復大丈夫かと心配する人もいるかもしれませんが、実際いくつかのデータにも証明されているように高頻度トレーニングのほうが筋線維の損傷が小さく回復能力が高いです。
もちろん必ず紹介した順番で鍛えなければいけないわけではありません。例えば最初にスクワットをやっても懸垂をやってもいいです。ただ、同じ筋肉を2種目連続で鍛えるのは避けてください。
全身法は、時間がない人でも結果を出せる“科学的最短ルート”。
ダンベル2つ、自重だけで、 胸・背中・脚・肩・腕──すべてを刺激できます。
重要なのは、“どれだけ追い込むか”ではなく、
“どれだけ効率よく刺激できるか”。次回は、ジム環境で全身法を“最大効率”にする方法を解説します。
「家でも、科学を使えばジムを超えられる。それを証明するのがこのメニューです。」それではまた次回、科学的に鍛えましょう。