腕に血管を浮き立たせたいなら筋トレをただ頑張るだけでは不十分です。多くの人がパンプで一時的に血管を出そうとしますが、あれは見せかけにすぎません。
腕の筋肉を鍛えるとき「太くしたい」と考える人と同じくらい「血管を浮き立たせたい」という人もたくさんいます。これはボディビル用語でvascularといい血管の浮き出た腕を求めるひとは少なくありません。
しかし、実は多くの人がこの血管を浮き立たせる方法について誤解しており、間違った方法や非常に短期的にしかメリットがない方法をやってしまう傾向にあります。
この記事では科学的なデータを基に筋肉に血管を浮き立たせる方法について3つの要素に分けて紹介します。
血管を浮き立たせる方法について代表的なものは「低負荷高回数」と「体内の水分量を減らす」ことでしょう。
確かにこれは間違った方法ではないと思います。例えばトレーニングをすると普段よりも血管が浮き出た状態になりますが、これは筋トレによって疲労している筋肉に酸素や栄養を供給するために血管が普段よりも太くなるためです。
そのため、低負荷高回数トレーニング、または収縮に重点を置いたトレーニングをすることでパンプや筋肉を低酸素状態にすることで血管を浮き立たせることは理にかなっています。
そして、体内の水分量を減らすことも効果的な方法です。人間は脱水症状になると体内の水分を再吸収するように信号を送るため血液に多くの水分が流れ、血管が強調される可能性があります。これ以外にもカリウムの補給やサウナに入ることで血管の拡張、皮膚と静脈の間にある体液が失われることによって一時的に血管が目立つようになります。
それではこのパンプや体内の水分量を減らす方法はあなたの腕にある血管を目立たせることになるのでしょうか。
いいえなりません。これらの方法はすべて短期的な解決策にしかならないためです。
例えば視聴者の方の中でボディビルのコンテストがあってこの日に血管を強調させたいなど、特定の日に重要なシーンがある場合こういった方法は効果的だと思います。
しかし、こういったルーティンをしても長期的にあなたの腕に変化が起こるとは考えにくいです。
例えば筋肉を低負荷高回数で追い込むことによって酸欠状態にして血管を強調させるという方法は確かに効果がありますが、これは筋トレしてるときにしか効果がありません。つまりジムから出て数時間たてばこのドーピング効果は終わります。
その証拠にパンプアップによって筋肉は膨張してサイズが大きくなることは事実ですが、これが長期的な筋肉の成長に役立ち、実際に筋肉サイズを増やすことを示す十分なデータはありません。加えてパンプについての科学的レビューでもこれが血管を拡張したり血管を浮き立たせるという証拠は見つかっていません。
そして数多くの研究データに示されているようにウエイトトレーニングは酸素やエネルギーをたくさん必要とする運動ではありません。人間のアナボリックウインド、ゴールデンタイムについて調べた研究では各筋肉8setの全身トレーニング。おそらく2時間以上はかかるようなトレーニングでも体内のグリコーゲンストアの消費量は40%以下であり、どれだけハードな脚トレでも消費するカロリーは200~300kcalほどです。
加えて一般的に高回数トレーニングであってもウエイトを持ち上げている時間は1setあたり1分ほどであるため、筋肉が酸欠状態になる可能性もかなり低いでしょう。
実際、マラソンランナーのような非常に高い持久力が必要になる競技でも血管が浮き出ていない人も少なくありません。
加えて体内の水分量を低く設定することも非常に危険です。
人間の体は多くの水で構成されています。一般的な成人の場合、体重の50~60%は水分によって構成されているため、この水の量が少し減るだけで多くの問題が起こります。脱水症状の度合いによっては筋肉のけいれんやめまい、最悪は命にかかわるなど深刻な症状が現れます。
そのため健康にとっても体内の水分量を減らすのは非常に危険です。
そもそもウエイトトレーニングでも低い水分量を維持することはデメリットしかありません。専門家によると体内の水分量がわずか2%減るだけで脳が収縮し、集中力と神経筋のパフォーマンスが低下することを指摘しています。
そして最近の研究では体内の水分量が筋肉の成長や維持においても大きな問題がある可能性を示しています。
2022年の研究では大規模な調査が行われ23か国、生後8日から96歳までの5602人を対象に必要な水分量というのを調査しました。
この研究によると体内の水分量を維持するためにどれくらいの水を飲むべきであるのかを決定するためにいくつかの要因があることがわかりました。必要な水の量を導き出すための大きな要因として筋肉量が重要であることを報告しています。
このデータに基づくと筋肉の成長や維持においてどれくらい水を飲むかが影響することが考えられます。
そのため、パンプや体内の水分量を減らすことは血管を浮き立たせる方法であることは事実ですが、それは非常に短期的な作用で、せいぜい数時間でその効果は消えてしまい、長期的にあなたの腕に血管を浮き立たせるものではありません。
それでは何をすれば腕に血管を浮き立たせることは可能なのでしょうか。
腕に血管を浮き立たせるためには主に3つの要素が必要になります。この3つが完全に機能したとき、あなたの腕は大きく変わります。もちろんこれは長期的に血管を浮き立たせるものであって、寝ているときや筋トレしていないときでも腕の血管を目立たせるために重要です。
まずこれは残念なお知らせですが、この血管というのは遺伝的、つまり個人差が大きい要素です。例えばボディビルダーの中でも血管が浮き出ている人とそうではない人もいます。
ウエイトトレーニングをすればすべての人は筋肥大量に差はあるにせよ筋肉は成長します。ただ、筋肉のつき方やどんな形になるかについては遺伝的な要因も少なくありません。
代表的なのが上腕二頭筋です。上腕二頭筋にはピークといって山のように盛り上がっていることを指す言葉があります。インターネットで「上腕二頭筋 ピーク」と調べるとかなりの量の鍛え方がヒットすると思いますが、ブラッドシェーンフェルド博士も話している通り、上腕二頭筋は遺伝的な要因が非常に強い部位でもあり、menno henselmans博士もピークなどを気にするのは現実的ではないと話します。
例えばアーノルド・シュワルツェネッガーは素晴らしい上腕二頭筋のピークがありますが、セルヒオ・オリバのピークは彼ほどあるわけではありません。これは上腕の長さにあります。肩幅が狭い人は大胸筋の厚みが構築しやすいように、同じトレーニングをしても上腕が比較的短い人は長い人よりも意識せずともピークが作られる傾向にあります。
つまり血管の太さには個人差があり、目立ち方は人によって異なることを理解していていただきたいです。とはいえ、だからといって絶対に血管が浮き出ない人はいません。この後紹介する血管を浮き立たせるための2つの要因を抑えておけば遺伝を超えて血管を強調することは可能です。
血管を浮き立たせるために最も重要なのは体脂肪率です。おそらく体脂肪率が高い状態で血管を浮き立たせることは不可能です。例えば健康診断で採血をするとき、太っている人は血管が見えづらくなります。
皮膚と血管の間には皮下脂肪があり、これは柔らかく、筋肉が血管を覆っています。例えば太っている人の腹筋が見えないのも、この皮下脂肪が凹凸を無くしてしまっているからです。
低い体脂肪率を維持することは血管を浮き立たせるのに特に効果的であり、そして永続的に効果がある方法です。大体の目安としてほとんどの男性の場合体脂肪率15%を下回ると腕の静脈がより謙虚に見えるようになります。
体脂肪を低くすると血管が浮き出るのと同時に筋肉も非常に目立つようになります。逆にどれだけトレーニングをしていても、体脂肪率が高いと腕の血管が浮き出る可能性は非常に低いです。
体脂肪を落とすためには毎日カロリー赤字を作ることが最も重要です。そのためにも運動をして食事管理をしましょう。おそらく腕に血管を走らせたい人はウエイトトレーニングをしてるはずなので、意識するべきは食事制限です。
基本的にカロリー赤字を作るときたくさん運動をするよりもある程度の運動をして食事制限をするのがおすすめです。というのも人間はカロリーを大量に消費させることはできません。例えばフルマラソンをしても消費出来るカロリーは2000~3000kcalであり、どれだけ頑張って運動しても消費出来るエネルギーには限りがあります。
そのためまずは食べる量を減らしたり、低カロリーのものを選ぶようにしましょう。
血管を浮き立たせるためには筋肉を成長させることが重要です。血管を浮き立たせるために重要になるのは、低い体脂肪率と筋肉量です。というのも筋肉を成長させるとたくさんのエネルギーを要求することができるからです。
ストロングバイサイエンスのグレッグ博士によると細胞内がエネルギー不足になると筋肉の成長が停止するようです。筋肉は成長や維持のためにたくさんの栄養が必要になります。これによってダイエットとしては代謝が増加するというメリットもありますが、筋肉にたくさんの栄養や酸素を供給するために血管が膨張することにもなります。
そして筋肉の成長は短期的ではなく、永続的なエネルギー要求にもなります。例えばパンプによる血管の膨張はウエイトトレーニングをしていることが前提でたくさんのエネルギーが必要になり、血管が浮き出るようになります。
しかし筋肉を成長させれば常にたくさんのエネルギーを体に要求できるため、血管を拡張できます。例えば前腕の血管が浮き出ている人は前腕をトレーニングしている傾向が非常に強く、前腕がデカい人をイメージするのもこのためです。前腕の筋肉量を増やせばその分、生理学的な要求が大きくなり血管が拡張される可能性があります。
それではどういったトレーニングをすると血管が浮き出るようになるのか。
前腕の効果的なトレーニング法を知りたい人はパーカーフィットネスの動画をぜひ見てください。この動画では握力トレーニングの効果がなぜ低いかや前腕を鍛える最強種目、そして筋トレ法を紹介しています。
パンプによる血管の拡張については同意できませんが、筋肉の成長という意味では低負荷高回数のトレーニングは腕に血管を浮き立たせるために効果的だと考えられます。
2016年の調査ではこの理論を裏付けており、筋トレ経験のある被験者が25~35回の高回数トレーニングと8~12回の低回数トレーニングで8週間筋トレを指示したところ高回数トレーニンググループのほうが研究期間でより多くのトレーニングボリュームを確保できたことを示しています。
低重量高回数グループの合計ボリュームはベースラインから+31305kgの値を確認しましたが高重量低回数グループは+10714kgだけでした。
加えて大規模なレビューでは2022年の2月までに公開された178件の研究、合計5097人の被験者を対象にした筋肥大、そして筋力についてのデータを分析した結果、筋肥大にはボリュームが最も重要な数値であることがわかりました。
つまり、先ほどの研究データを基にするとトレーニングボリュームの高かった低負荷高回数グループは筋肉の成長も高いことが考えられます。これを考えると前腕を低負荷高回数で鍛えるのは血管を目立たせるために非常に有効であることが考えられます。
しかし、収縮を重視するトレーニング法はおすすめしません。プリチャーカールでヒジを伸ばしていなかったり、直立したフリーウエイトカールのように腕が伸びた状態で負荷がかからないトレーニングは筋肉の成長効果が低いです。
その証拠に収縮ポジションのみの部分可動域とストレッチポジションのみの部分可動域について調査した8つのデータではそのうち7つがストレッチポジションのみの部分可動域を支持しており、残りのひとつは両グループ違いはなく、収縮可動域グループを支持する研究はなかったため、ストレッチ可動域のほうが筋肉の成長にとって重要度が高いことはほぼ疑いようありません。
腕に血管を浮き立たせたいと思っている人は少なくありませんが、かなり多くの人がパンプや体内の水分量を減らすなど短期的な方法に頼っています。しかしこの方法ではトレーニングを終えてジムに帰っている間に効果はなくなってしまいます。
腕の血管を浮き立たせるためには3つのポイントを押さえておく必要があります。
まず、これには遺伝的な要因が比較的強いことを忘れてはいけません。そのため、あなたが「これくらい血管出したい」といっても完全に理想通りにはならない可能性もあります。とはいえ、それが不可能を決めるわけでもありません。
適切なやり方であればどんな人でも腕の血管を出すことは可能です。
そのためにはまず低い体脂肪率を維持しましょう。ほとんどの専門家や科学的データでは低い体脂肪率を維持することが血管を浮き立たせるのに最も重要であるという答えで一貫しています。「全然血管が見えない」という人は自分の皮下脂肪がどれくらいあるかチェックしてみてください。
とはいえ、ボディビルコンテスト直前のビルダーのように極限まで体脂肪を落とさないといけないわけではありません。血管を出すためには最低でも体脂肪率15%。力を入れなくても腹筋が割れるくらいまで皮下脂肪を落とせば十分です。
この体脂肪率は外見的にも健康的にも非常にいい体脂肪率なので、15%を維持することは現実的で多くのメリットがあります。
そして筋トレも重要です。前腕の筋肉が成長すれば生理学的な要求の増加によって血管が膨張する可能性があります。これは例えるなら交通量が多く車がたくさん走る道路が狭いと渋滞につながるため、広くする必要があるのと同じです。
なので前腕を鍛えましょう。ただし、パーカーフィットネスの前腕の鍛え方についての動画にもある通り、前腕を鍛えるときに握力トレーニングをするのは最大のミスです。ただ無心に前腕を鍛えればいいわけではなく、筋肉の成長に効果的な種目やトレーニング法をする必要があるので概要欄にあるこの動画をチェックしてください。