腕立て伏せをしているほとんどの人は自分のフォームが間違っていることに気づいておらず、大胸筋の成長にかなりの時間がかかります。
腕立て伏せは世界で一番有名なトレーニングのひとつでもあります。しかし、最近公開された筋肉の成長を最大化させる方法についてのレビューにも示されているように、実はほとんどの人が知らない腕立て伏せの潜在的な落とし穴があり、これを理解して正しくやらないと腕立て伏せは全く効果の出ないトレーニングにもなります。
ただ、逆に大胸筋と腕立て伏せについて理解を深めてあることをするとベンチプレスを超える、大胸筋をより成長させる最強の腕立て伏せをすることが可能であることを複数のデータは裏付けています。
この動画では科学的な根拠を基に最強の腕立て伏せについて紹介します。これを見れば腕立て伏せの効果を劇的に増やすことができ、大胸筋の成長を大幅に増やすことができます
腕立て伏せで使用される筋肉は主に4つです。
まず腕立て伏せでメインになる運動は腕を閉じることです。これは解剖学的には肩関節の水平内転と呼ばれ、この運動によって働く筋肉は大胸筋、そして肩の前側の筋肉、三角筋の前部です。そして、この種目はヒジが曲がった状態から伸ばす運動があります。これによって収縮する筋肉は腕にある上腕三頭筋です。
そして最後は腹筋です。大胸筋、三角筋、上腕三頭筋、この3つはベンチプレスや腕立て伏せをはじめとしてプレストレーニングのほとんどで活動しますが、腕立て伏せはベンチプレス以上に腹筋を働かせることができます。
腕立て伏せはプランクのように姿勢をキープすることで腹筋も働きます。研究データによると腕立て伏せはベンチプレスと比較して腹筋の活動が51%多いことを示しています。
しかし、腕立て伏せで効果的に成長する筋肉は大胸筋と三角筋前部です。上腕三頭筋はオーバーヘッドのように肩を屈曲させた状態で鍛えたほうがはるかに効率が良く、腹筋もプランクのような運動ではベストではないため、上腕三頭筋や腹筋を鍛えるために腕立て伏せをするのはおすすめしません。
トレーニング経験がある人の場合、大胸筋を成長させたい場合は腕立て伏せよりもベンチプレスやフライを優先させたほうが良いということを聞いたことがある人は多いと思います。
確かになんとなく自重よりもジムに行ってバーベルのベンチプレスを行ったり、マシンでのフライをしたほうが筋肉が成長しやすいイメージであったり、ボディビルダーがバーベルやダンベルのベンチプレスをしているシーンはよく見ますが、腕立て伏せをしているシーンはなかなか見ません。
これによって腕立て伏せは非常に過小評価されがちですが、実は科学的な事実を見ると腕立て伏せはこれらのジムトレーニングに引けを取りません。
2023年7月に公開された最新の研究では自重トレーニングとバーベルトレーニングについて信頼性の高いデータが得られました。30~60歳の被験者はスクワット、ベンチプレス、デッドリフトをはじめとしたバーベルフリーウエイトトレーニンググループとそれに近い9種目の自重トレーニングを行うグループに分けられ、全身トレーニングを週2回、8週間実行しました。
筋肥大効果を測定したところ筋肉の成長効果は両グループでほとんど同じでした。
しかしこの研究は被験者がすべて筋トレ初心者であり、トレーニング経験のある人の場合はどうでしょうか。
2017年の研究では最低1年の筋トレ経験を持つ18人の若い男性がベンチプレスグループと腕立て伏せグループに割り当てられ、週に2回8週間トレーニングを行いました。ベンチプレスと腕立て伏せは1RMの40%になるように負荷を調節し、潰れるまでトレーニングを行いました。
研究結果としてベンチプレス、腕立て伏せで最も活動する大胸筋と上腕三頭筋のサイズの増加は同様であることを示しています。
このように多くの研究では腕立て伏せとベンチプレスではトレーニング経験に関わらず筋肉の成長効果はほとんど同じであり、腕立て伏せはほとんどトレーニング器具が必要ありませんがジムでのベンチプレスと同じくらい筋肉を成長させる素晴らしい種目であることは間違いありません。
腕立て伏せで最も重要なのがフォームです。実はこの種目ほど間違ったフォームが広まっている種目はなく、他の筋肉に負荷を逃がしたり、大胸筋の成長にとって非常に効率の悪いフォームが多いです。おそらく「腕立て伏せをやってみてください。」というと、80%近い人は間違ったフォームで腕立て伏せをします。
それほどYoutubeやSNSでは間違ったやり方が推奨されています。
最新の筋肉の成長を最大化させるためのテクニックについてのレビューでも非標的筋の関与を最小限にして狙った部位に負荷を集中させることが推奨されています。
腕立て伏せで重要なポイントは3つです。まずは手幅。
ベンチプレスはじめ多くのプレストレーニングでは手幅が広いと大胸筋に負荷が集中し、狭いと大胸筋に負荷が集中するため、腕立て伏せでは手幅を広げたほうが大胸筋が成長するといいます。しかし、これは大きな間違いです。研究データは一貫した結果を示しておらず、多くの研究者はこのワイド=大胸筋という情報を支持していません。
そして、実はワイドにすることで大胸筋にかかる負荷が弱くなります。というのも大胸筋は腕を閉じる運動によって最も強く活動します。これはこの筋肉についての科学的レビューで証明済みですが、過度なワイドグリップにするとヒジが手よりも内側に配置されることになります。
これは腕立て伏せのプッシュ運動が外から内への負荷の向きではなく、外側に押し出すような方向になり、これは大胸筋がうまく使えないことを意味します。そして、ワイドにすることで可動域が狭くなり大胸筋があまり伸び縮みしないことになるため、筋肉の成長効果が大幅に下がります。
大胸筋を効果的に鍛える腕立て伏せをしたい人は必ず、体を下げたときにヒジが手よりも外側に配置されるようにフォームを調節する必要があります。ヒジが外側に配置されることで外から内側に向かうプッシュ運動になるため、大胸筋の働きが最大化されます。
そして、最も誤解されているのがお尻の高さ、腕立て伏せではお尻を下げて体を一直線にするのが理想的であり、お尻を上げるのはチートや間違いと考えられていますが、実はお尻は上げたほうが効果的に大胸筋を鍛えられます。
これは上半身の角度です。腕立て伏せではお尻を下げるほど上半身は下から上への向きになり、お尻を上げると上半身は地面と平行になったり、それ以上にすると上半身が上から下への向きになります。
大胸筋を効率的に成長させたい人は、お尻を少しだけ上げて上半身を地面と平行にするのがベストです。理由は大胸筋全体が最も強く働くためです。ベンチプレスにはインクラインのタイプ、水平のタイプ、デクラインのタイプがありますが、どのタイプが大胸筋を最も活性化させるでしょうか。
実は水平タイプです。実は角度をつけることには大きなデメリットがあることを専門家のmenno henselmans博士は指摘しています。
角度をつけることの一番大きなデメリットは狙った部位以外の大幅な筋活動の低下です。例えばベンチプレスのベンチ角度と大胸筋の活動について調べた研究ではベンチ角度を30度にすると大胸筋上部の活動が最大まで上がり、フラットなベンチ角度0度のプレスの約20%ほど大胸筋上部の活動が上昇していることを示しています。
しかし、中部と下部を見てみると筋活動はほとんど半分になっていることがわかり、上部の活動率の上昇よりも下部、そして中部の活動率の低下のほうがはるかに大きいことを示しています。
インクラインプレスやデクラインプレスを全否定するわけではありませんが、大胸筋を効果的に成長させたい人は100%真横に水平内転を行うのがベストです。そのためにも体は一直線にするとやや下向きのプッシュになることで大胸筋上部の活動が大幅に落ちる可能性があるので、少しだけお尻を上げて上半身を地面と平行にしたほうがをつけたほうがはるかに効果的です。
そして、おそらく最も多いミスが脇を閉じて腕立て伏せをすること。これは最悪のフォームです。ほとんどの腕立て伏せのフォームを解説している動画やサイトでは脇を閉じてヒジが体のすぐ横にある状態で腕立て伏せを行っています。
しかし、最初にも話した通り大胸筋が最も働く運動は肩関節の水平内転であることが証明済みです。脇を閉じるとヒジが手の下に配置されます。つまりこれは内側ではなく下から上にプレスをしているということです。これは水平内転ではなく屈曲という運動になり、フロントレイズに近くなりますが、この運動で働く筋肉は大胸筋、ではなく三角筋前部という肩の筋肉です。
実際、これはケーブルクロスオーバーで裏付けられています。この研究では高い、中間、低い位置から引っ張るケーブルクロスオーバーで大胸筋の筋活動を測定したところ一番下から引っ張るケーブルクロスオーバーは大胸筋上部、中部、下部全てで筋肉の活動が低いことがわかっています。これは大胸筋は腕を閉じる運動に働き、上に上げる運動にはほとんど関わらないことを考えると理にかなっています。
大胸筋を効果的に鍛えるためには、外から内へ力を伝えるようにしましょう。そのためには腕は広げすぎず脇を開いてヒジは下ではなくそこに配置します。そして上半身に角度がつくと他の筋肉に負荷が逃げる可能性が高いのでお尻を上げて上半身を地面と平行にします。
腕立て伏せをしてるのに大胸筋が成長しない人には共通点があります。この大きな落とし穴は負荷です。
2018年の研究では上腕二頭筋カールとレッグプレスを被験者は持ち上がらなくなるまでウエイトトレーニングを行いましたが、60rep近い回数ができた20%のグループだけ半分程度しか筋肉を成長させることができませんでした。
このようにあまりにも軽すぎると筋肉が成長するのに不十分な可能性があります。
2011年の研究では腕立て伏せのバリエーションと負荷の調査を行った結果、一般的な腕立て伏せは体重の64%、膝立ちの場合は49%でプッシュを行っていることを示しました。つまり体重60kgの人だったら普通の場合は38kg、膝立ちの場合は30kgでプッシュを行っていることになります。
実際体重にもよりますが筋トレをほとんどしたことが無い人でも1回は上がると思いますし、腕立て伏せを半年ほど続けていけば30回40回は余裕で出来るようになってしまいます。自重トレーニングですぐに停滞してしまう人は90%このパターン、レベルが上がっているにも関わらず、そのレベルに合わせた負荷になっていないため強度不足になり、ある時点を境に成長しなくなります。
負荷を上げる方法として片腕で腕立て伏せを行う方法もありますが、この種目はおすすめしません。例えばボディビルダーでも片腕の腕立て伏せができない人もいます。これはmenno henselmans博士が指摘しているように単純な筋力よりもバランス感やテクニックのほうが重要性が高い種目であるため、筋肉の成長にとってあまり機能的ではありません。
腕立て伏せで負荷を上げる方法は主に2つあります。ひとつは単純にウエイトを背負って行うこと。そしてもうひとつはテンポを変化させること。例えば腕立て伏せが30回できてもゆっくりやれば10回が限界になるため負荷が上がっているように見えます。
このうち、やっても意味がないのがテンポを変更させること。素早く爆発的に腕立て伏せをしたりゆっくりと効かせながら腕立て伏せをするボディビルダーやトレーナーは少なくありませんが、milo wolf博士が話している通りこれには意味がありません。
確かに60回出来る種目をゆっくりやれば30回が限界になるため回数だけを見ると筋肉を刺激できる範囲にあるように見えます。しかし、ブラッドシェーンフェルド博士のテンポと筋肥大効果についてのレビューにある通り努力量が同じならテンポはほとんど関係ありません。つまり、60回以上出来る負荷でゆっくりやって30回が限界だとしてもそれは60回で筋トレしてるのと同じ効果になります。
特に素早く行うとテンポのスイートスポットである2~8秒よりも速いテンポになるため筋肉の成長効果が大きく落ちる可能性があります。
腕立て伏せのレベルを上げるためには、シンプルにウエイトを背負ってトレーニングしましょう。
これをすればデメリットゼロで腕立て伏せの強度を上げることができ、トレーニングレベルが上がってもずっと大胸筋を成長させることができます。
腕立て伏せでベンチプレスを超える方法、効果的なのがプッシュアップバーを使うことです。この器具を使うことによるメリットはいくつかありますが、最も大きなものは体をより深く沈められることです。
深く体が沈められることの何がいいのか。これは大胸筋が より強く伸ばされることを意味します。膨大な数の研究で筋肉に一番負荷がかかっている場所は収縮した位置ではなく、ストレッチポジションであることがわかっています。
一般的なベンチプレスや腕立て伏せはバーが大胸筋に当たったり大胸筋が手と同じ高さ、床に触れる位置でストップしますが、ここで高さを出すと腕立て伏せの効果をより高めることができます。
より筋肉がストレッチすることは筋肥大効果を大幅に上昇させる可能性があります。つい最近行われた新しい研究では大腿四頭筋をより強く伸ばすレッグエクステンションをした被験者は大腿四頭筋の成長が2.7倍になっていることがわかりました。
プッシュアップバーを使うことで大胸筋がより強く伸ばされるとこれに匹敵する効果があります。
プッシュアップバーを使う時に最も注意しなければならないのが起き方です。一般的にこの器具は縦向きに置かれることが多いですが、それをすると脇が閉じて屈曲運動が強くなることで大胸筋にかかるはずの負荷のほとんどが逃げます。
プッシュアップバーを最低でも真横、もしくは少しだけ内側を低くします。これをすることで肩関節が内旋し、腕立て伏せ中に脇を開くようにヒジが外側に配置されるようになります。
ここからは実際の最強腕立て伏せメニューを紹介します。
まず最初は肩関節の動的ストレッチを行います。動的ストレッチは腕を前後左右に10回ずつ振る程度で十分です。
筋トレ前に入念なウォームアップをする人もいますが、最新の科学的データに示されているようにそれがトレーニングパフォーマンスを向上させたりケガを予防させる可能性は低いでしょう。時間効率のためにもウエイトトレーニングのウォームアップに時間をかける必要はなく、基本的には2~3分の動的ストレッチで十分です。
筋肉の成長を最大化させたい人が絶対にやってはいけないことは胸の日を作って腕立て伏せを10set、20setやることです。これは筋肥大効果がかなり低く、それよりも3setを毎日行ったり、5setを週に4回行ったほうがはるかに成長効果が高いことを科学的なデータは示しているため、出来るだけ高頻度で少しずつ腕立て伏せを行いましょう。1日当たり3~5set腕立て伏せをすれば十分です。
別の分析では1日で8set以上行うと筋肉の成長が停滞する可能性があることを示しているため多くても8set以内に抑えるのがいいでしょう。
プッシュアップバーを真横に配置してヒジを外に出します。お尻を上げて上半身を地面と平行に保ちましょう。プッシュアップバーを使うと高さが出るため、より高い位置までお尻を上げる必要があります。
このまま体を沈めますが、1repに最低でも2秒以上は必要です。体を下げたときに少し一時停止するのも効果的である可能性があります。そして、レビューに示されているように、体を下ろす動作は持ち上げるスピードよりも遅いほうが筋肉が成長する可能性が高いため、レップ全体に2秒以上で体を下ろすフェーズに1秒以上かかる必要があります。
胸が地面に接触してしまうと大胸筋が伸びていても負荷が無くなってしまうため、大胸筋は地面に接触する寸前でストップさせましょう。大体の目安ですが、着ている服が地面に触れる感覚です。
この5つのポイントを(肘 プッシュアップバー 寸前 テンポ おしり)意識して腕立て伏せをすると大胸筋にとって最高のトレーニングができます。このうちひとつでも間違えると効果は半減するので全て守りましょう。
特にヒジを外に出すことは多くの人がミスするポイントです。脇を閉じたほうが効く、パンプがあると主張する人もいますが、その感覚は筋肉の成長に何の価値もありません。効率的に成長させたい人は必ずストレッチポジションでヒジが横にある状態で下向きに力を入れるようにしましょう。これが出来なければ水平内転が無くなり大胸筋のトレーニングにもなりません。
これを限界の1~2回手前で終わらせ、複数のセットを行います。
そして、腕立て伏せで大胸筋を最短で作るためには正しいフォームやテクニックも重要ですが、自分の力を伸ばすこともかなり重要です。
2022年の研究では74人のパワーリフティングアスリートの最大重量と除脂肪体重の関係を調べたところ相関係数0.95というかなり深い関係が見つかり、筋力を伸ばしていくことは筋肉量を増やすことに大きく貢献することを発見しました。
最も簡単でおすすめの方法は1set目の腕立て伏せの重量や回数を記録しておいて次のトレーニングする直前に確認しましょう。例えば自重で10回であったら今日は11回持ち上げる、または加重を追加するように意識するだけで腕立て伏せの効果は大きく変わります。
週5回、5set腕立て伏せを行えば1週間で25setとなるため、正しいフォームができていれば大胸筋の成長にとって十分すぎる機械的緊張がかかります。最高の腕立て伏せをしたい場合は今日紹介した5つのポイントとこのメニューを絶対に守ってください。そうすれば大胸筋のサイズが劇的に変わります。