バーベルベンチプレスを超える腕立て伏せは存在します。
腕立て伏せは世界で一番有名なトレーニングのひとつであり、最もメジャーなトレーニングのひとつでもあります。しかし、ある研究チームが行った筋電図分析では腕立て伏せが大胸筋の活性化が最も低いことが示されたように、実はほとんどの人が知らない腕立て伏せの潜在的な落とし穴があり、これを理解して正しくやらないと腕立て伏せは全く効果の出ないトレーニングにもなります。
ただ、逆に大胸筋と腕立て伏せについて理解を深めてあることをするとベンチプレスを超える、大胸筋をより成長させる腕立て伏せをすることが可能であることを複数のデータは裏付けています。
この動画では科学的な根拠を基にベンチプレスを超える最強の腕立て伏せに必要な5つの超重要なポイントについて紹介します。これを見れば腕立て伏せの効果を劇的に増やすことができ、大胸筋の成長を大幅に増やすことができます。
腕立て伏せで使用される筋肉は主に4つです。
ひとつは大胸筋。これは肩関節に関わる筋肉であり、腕を閉じる水平内転や腕を上にあげる屈曲,下におろす内転で主に使用されます。特に大胸筋にとっては水平内転という運動が非常に重要な運動であることがメタ分析によってわかっているため腕立て伏せで大胸筋を構築するためには水平内転という運動を意識することは必要不可欠です。
フォームにもよりますが腕立て伏せでは体の向きとしてもやや下向きにプッシュをするため上部よりもやや下部の働きが強い可能性があります。
とはいってもいくつかの研究で下部はデクラインのプレス程度の下向きの運動ではほとんど変化がないことが示されている通り、腕立て伏せはやや下にプレスをしているといっても全体を鍛えていると考えたほうが明らかに適しています。
ふたつ目は上腕三頭筋、三つめは肩にある三角筋、そして腹筋がありますが、上腕三頭筋、三角筋、腹筋の仕事はあくまでも補助的な役割であるため腕立て伏せで鍛えられる筋肉は大胸筋と考えるのが自然です。
そもそも腕立て伏せ等の自重トレーニングで筋肉は効果的に構築できるのでしょうか。なんとなく自重よりもジムに行って鍛えたほうが筋肉が成長しやすい気がします。確かにジムに行くことは数えきれないほどのメリットがありますがだからといってジムに行かないと筋肉がつかないわけではありません。
筋肉を構築するためには、一般的には自重トレーニングは軽すぎて筋肉を鍛えるのに不十分と考えられています。筋トレの教科書としては6~12repが筋肉を成長させるのに効果的と考えられているため、自重トレーニングは比較的たくさんの回数で行われることが多く、多くのボディビルダーのトレーニングシーンを見ても高重量を持ち上げているイメージです。確かに高重量が大事なら自重ではではやや物足りない気がするかもしれません。
しかし、科学的なデータはこれに同意していません。最も信頼性の高いシステマティックレビューによると筋肉の成長効果は1RMの30~80%まではボリュームが同じなら筋肥大効果もほとんど変わらないことを示しています。これは大体の数字で言うと8~50repまでは筋肥大効果が変わらないことが考えられます。
実際、2017年の研究では最低1年の筋トレ経験を持つ18人の若い男性がベンチプレスグループと腕立て伏せグループに割り当てられ、週に2回8週間トレーニングを行いました。ベンチプレスと腕立て伏せは1RMの40%になるように負荷を調節し、潰れるまでトレーニングを行いました。
研究結果としてベンチプレス、腕立て伏せで最も活動する大胸筋と上腕三頭筋のサイズの増加は同様であることを示しています。
このように多くの研究では腕立て伏せとベンチプレスでは筋肉の成長効果はほとんど同じであり、腕立て伏せはほとんどトレーニング器具が
必要ありませんがジムでのベンチプレスと同じくらい筋肉を成長させる素晴らしい種目であることは間違いありません。
大胸筋が爆発的に成長する腕立て伏せルーティンには重要なポイントが5つあります。科学的なデータにはベンチプレスも腕立て伏せも筋肥大効果は同じであることが示されていますが、実はいくつかの工夫をするだけでベンチプレスを超えられることが多くのデータによって示されています。
腕立て伏せでベンチプレスを超える方法、効果的なのがプッシュアップバーを使うことです。この器具を使うことによるメリットはいくつかありますが、最も大きなものは体をより深く沈められることです。
深く体が沈められることの何がいいのか。これは大胸筋が より強く伸ばされることを意味します。例えばある研究ではレッグエクステンションマシンを使用し被験者を3つのグループに分けました。ひとつは筋肉がストレッチする可動域のみを行うグループ。もうひとつは収縮する可動域のみを行うグループ。最後はこの2つを合わせた広い可動域で行うグループ。
結果として被験者の大腿四頭筋のサイズはストレッチポジションのみを行ったレッグエクステンションが最高の筋肥大であり、収縮可動域のみを行うグループが最悪であったことを示しています。
このように深く体を沈められると大胸筋が強く伸ばされ、筋肉の成長を促進させられる可能性があります。一般的なベンチプレスや腕立て伏せはバーが大胸筋に当たったり大胸筋が手と同じ高さ、床に触れる位置でストップしますが、ここで高さを出すと腕立て伏せの効果をより高めることができます。
一般的な常識として手幅がワイドのプレスは大胸筋,手幅が狭いプレスは上腕三頭筋と言われています。しかしこれには一貫した科学的証拠があるわけではありません。
2005年の研究では肩幅と同じ広さとワイド,ナローの腕立て伏せで比較したところ大胸筋と上腕三頭筋の活動が最も高かったのはナローでした。実は科学的な研究から手幅の広さや脚のスタンス幅で筋肉の活動はほとんど変わらないことがわかっています。しかしあまりに手幅が広すぎると体を持ち上げる距離が短くなり、大胸筋があまり伸び縮みしないことを意味します。
これは先ほど解説した通り、肩関節があまり外転せず、ストレッチが弱くなり筋肉が成長しなくなりますが、手幅が狭すぎても脇が閉じてフロントレイズのような肩関節の屈曲が非常に強くなります。レビューという科学的信頼性の最も高いデータでは、大胸筋が一番働くのは腕を閉じる肩関節の水平内転であることがわかっているため、手幅が狭く、ヒジが肩の横ではなく下に配置されると腕は閉じるのではなく上に上げる屈曲になります。これをすると大胸筋への負荷が大幅に肩に逃げることになるため、脇を閉じて腕立て伏せをすることは絶対に避ける必要があります。
広いとストレッチや可動域が無くなり、狭いと肩関節の水平内転が無くなり屈曲になることで肩に負荷のほとんどが逃げる。狭くしても広くしても大胸筋の成長に良くないように聞こえるかもしれませんが、可動域を確保しつつ、大胸筋に負荷を集中させる方法があります。
それは腕を内側に捻って肩関節を内旋させることです。大胸筋の意外と知られてない解剖学的な運動として肩関節の内旋があります。肩の運動と大胸筋の筋活動についての筋電図分析では肩を内旋させることで大胸筋の活動が増えたことを示しているため腕立て伏せでこの運動を加えることで大胸筋の活動が大きく増える可能性があります。
加えて指を内側に向けてプッシュをすると手幅を狭く、可動域やストレッチを確保しつつ、脇が外側に出るため大胸筋を強く働かせられます。内旋が追加されるのと同時に脇が開きやすくなって大胸筋にとって一番重要な肩関節の水平内転運動になります。先ほど紹介した腕立て伏せの手幅についての研究では最も筋肉を活動させたナローは手で三角形を作るように腕を内側に捻っていることがわかります。
注意点として内旋をやり過ぎると肩を痛める可能性があるので。
先ほど自重トレーニングでも刺激不足はないと解説しました。確かにその負荷で限界までやったときに50rep以下なら筋肉を成長させるのに十分です。しかし、その数字を超えてしまった場合、筋トレの効果は大きく落ちます。
三つ目のポイントは重量を追加すること。自重トレーニングの最も多い落とし穴はこれです。
2018年の研究では上腕二頭筋カールとレッグプレス被験者は持ち上がらなくなるまでウエイトトレーニングを行いましたが、60rep近い回数ができた20%のグループだけ半分程度しか筋肉を成長させることができませんでした。
このようにあまりにも軽すぎると筋肉が成長するのに不十分な可能性があります。
2011年の研究では腕立て伏せのバリエーションと負荷の調査を行った結果、一般的な腕立て伏せは体重の64%、膝立ちの場合は49%でプッシュを行っていることを示しました。つまり体重60kgの人だったら普通の場合は38kg、膝立ちの場合は30kgでプッシュを行っていることになります。
実際これはベンチプレスをやったことがある人ならわかると思いますが、上級者向けの負荷ではありません。筋トレをほとんどしたことが無くても1回は上がると思いますし腕立て伏せを半年ほど続けていけば30回40回は余裕で出来るようになってしまいます。自重トレーニングですぐに停滞してしまう人は90%このパターン、レベルが上がっているのにそのレベルに合わせた負荷になっていないからある時点を境に成長しなくなります。
その場合は負荷を上げましょう。最も簡単で効果的なのはバックパックやウエイトを背負ってトレーニングすること。これをすれば単純に可動域全体で余計な要素を加えることなく負荷を上げることができます。
科学的にほとんど意味がないと証明されいてるのがテンポを変えるコト。
確かに60回出来る種目をゆっくりやれば30回が限界になるため回数だけを見ると筋肉を刺激できる範囲にあるように見えます。しかし、ブラッドシェーンフェルド博士のテンポと筋肥大効果についてのレビューにある通り努力量が同じならテンポはほとんど関係ありません。つまり、60回以上出来る負荷でゆっくりやって30回が限界だとしてもそれは60回で筋トレしてるのと同じ効果になります。
加重できるかどうかが筋肉が成長する腕立てかほとんど効果のない腕立てかを分ける大きなポイントになるといっても過言ではありません。
腕立て伏せで大胸筋を最短で作るためには正しいフォームやテクニックも重要ですが、おそらく最も重要なのが自分の力を伸ばすことです。
2022年の研究では74人のパワーリフティングアスリートの最大重量と除脂肪体重の関係を調べたところ相関係数0.95というかなり深い関係が見つかり、筋力を伸ばしていくことは筋肉量を増やしてくれることに大きく貢献してくれることを発見しました。
ベンチプレスについての研究でもこの種目の筋力と大胸筋のサイズにはかなり強い関係がみられ、ベンチプレスが強いイコール大胸筋がデカいという関係があることがわかっているため、腕立て伏せの力を伸ばすと筋肉がより成長する可能性が高くなります。
筋力を伸ばすために最もおすすめの方法はトップセットを作ることです。トップセットというのは強度が最も高いトップのセットを作るということです。
例えば1set目は自重のヒザ立ちで行って、次はヒザを羽化した腕立て、そして最後は膝をつかない加重という3つの段階を踏んで鍛えるといった本気を出すセットは1setだけというメニューがおすすめです。
トップセットを作ることによるメリットは1setに全力が出せるため自分の最大重量を扱うことができます。これによって最大限のモーターユニットが動員されるため筋力が伸びやすくなります。そして、1setに全力を出すため最小限の倦怠感でトレーニングができます。
高重量と低重量はボリュームが同じ場合筋肥大効果は同じですが、筋力は高重量のほうが優れている傾向が強いため、出来るだけ高重量で鍛えると筋力が伸びやすくなります。そして、筋力と倦怠感は深い関係があります。よくあるのが頑張って限界までのセットをたくさんやることです。しかしこれは逆効果です。停滞期の原因としてかなりの割合で精神的、肉体的に疲れており、疲労によってパフォーマンスが停滞していることがあります。
最新の筋力アップについての研究を分析したレビューペーパーによると過度の追い込みは強い倦怠感を引き起こし、筋力アップに悪影響を及ぼすことが示されています。5×5プログラムのように5set高重量で激しい追い込みをすると非常に強い疲労があるため、筋力アップに悪影響が出る可能性があります。
ベンチプレスを超える腕立て伏せ、最後に重要なポイントはバリエーションです。
自重トレーニングではほとんどやる種目というのが各筋肉1つほどに固定されてしまいます。最新の筋肥大と種目数のレビューペーパーによると多すぎると逆効果になりますが、筋トレはある程度のバリエーションで鍛えると筋肉の成長が促進されるようです。
例えば2021年の研究では大胸筋のトレーニングとしてフラットバーベルベンチプレスのみをやっていた被験者よりもインクラインベンチプレスやデクラインプレスなど3種類でトレーニングしていた被験者のほうが筋肉が成長していたことを示しています。
腕立て伏せも普通のバリエーションだけじゃなくて脚を上げて大胸筋上部を狙った腕立て伏せにしてみたり台に手を置いた腕立て伏せで下部を狙ってみたりバリエーションを持たせるとより成長しやすくなります。
ここからは実際の最強の腕立て伏せメニューを紹介します。
まず最初は肩関節の動的ストレッチが終わったら腕立て伏せのウォームアップセットを行います。動的ストレッチは腕を前後左右に10回ずつ振る程度で十分です。
動的ストレッチが終わったらまずは目標の重量と回数、例えば体重70kgで10kg加重の合計80kg、10回持ち上げる場合、大体半分程度の負荷でウォームアップセットを行います。
筋トレレベルにもよりますが加重の腕立て伏せが目標のセットの場合、自重の膝立ちの腕立て伏せがウォームアップセットとしてはおすすめです。ポイントとしてはウォームアップであるため絶対につかれるまで行ってはいけません。少しの疲労もなく、筋肉が温まるくらいまで行いましょう。
そして、1~2分休憩したら本番のトップセットを行います。ウォームアップは2~3set行ってもいいですが、動的ストレッチは行っていますし、たくさんするほど筋肉が疲労するので1set程度で十分だと思います。
フォームとしてはプッシュアップバーを最低でも真横、もしくは少しだけ内側を低くします。これをすることで肩関節が内旋し、腕立て伏せ中に脇を開くようになります。プッシュアップバーの使い方としてはほとんどの場合、縦向きに置かれていることが多いですがこれをすると脇が閉じて肩関節の屈曲運動になるため必ず横向きに置きましょう。
注意点として肩関節が内旋すると肩のインピンジメントが発生するリスクが高くなるため、人によっては肩が痛む場合があります。そういった場合は横向きにするか痛まない程度に内旋させるのがおすすめです。
体を深く沈めて大胸筋が床に触れるか触れないかまで下げます。完全に大胸筋を床につけると負荷がかからなくなるため、大胸筋のストレッチポジションで負荷がかからなくなるため注意してください。
トップセットが終わったら3分程度の休憩を取り、数セット腕立て伏せを行います。高重量は筋力を伸ばしますが筋肉の成長にとってはあまり効果的ではないため、ここで終わらせるのはおすすめしません。トップセットは3~8repがおすすめですが、低重量高回数のほうが圧倒的に筋肉は成長しやすいのでトップセット後の腕立て伏せは15~30repほどがおすすめです。
これを2分の休憩をとって3~5set行います。
このルーティンを出来るだけ毎日行いましょう。これは科学的な研究から筋トレ頻度は高いほうが筋肉が成長しやすいということがわかっているためです。
そして、角度のない腕立て伏せだけではなくデクラインで行う日、インクラインで行う日の3つのタイプで行いましょう。
週5回、5set腕立て伏せを行えば1週間で25setとなるため、大胸筋の成長にとって十分すぎる機械的緊張がかかります。ベンチプレスを超える腕立て伏せをしたい場合は今日紹介した5つのポイントとこのメニューを絶対に守ってください。そうすれば大胸筋のサイズが劇的に変わります。