誰しもあこがれる逆三角形の体を作るためには背中の広がりを作ることが必要不可欠です。そして背中の筋肉はあなたの後ろから見た外見を大きく変えます。しかし、一生懸命トレーニングしてもこの筋肉が成長しない人もいれば、数か月で背中の広がりの成長を感じることができる人もいます。
実は最新の科学的データなどで背中の鍛え方が大きく変わっています。今まで常識だった鍛え方や種目が否定され、新しい筋トレ法が確立されつつあります。
この動画では背中の広がりを作るおすすめの鍛え方と最強種目について紹介します。
背中の広がりは主に3つの筋肉から構成されています。広背筋、大円筋、小円筋です。とはいっても大円筋と小円筋は非常に小さい筋肉であるため背中の広がりを作る筋肉のほとんどは広背筋から構成されているといってもいいでしょう。
加えて、この3つの筋肉の解剖学的な運動は肩関節の内転と伸展であるため、広背筋にとって理想的な種目を行えば、大円筋、そして小円筋が成長しないということはなく広がりを作る全ての筋肉が成長します。
この動画では広背筋をメインに解説していきます。
広背筋は肩関節から体の後ろを通って背中にまたがっており、かなり広範囲にまたがっていますが、筋肉のサイズとしては上腕三頭筋や三角筋よりは小さく、おおよそ大胸筋と同じくらいです。大胸筋も広背筋ほどではありませんが広い範囲をカバーし、上向かって伸びている筋繊維を上部、横向きを中部、下向きを下部と分離して考え、実際、運動の向きを変えることで上部狙い、下部狙いとすることができます。
広背筋も上の方の筋繊維は横向きに近く、下の方の筋繊維はそれよりも下向きに近いため、大胸筋のように上部や下部などに分けることができる可能性があります。
2013年のカナダで行われた研究ではこのことを示しており、広背筋の筋繊維が上部と下部に分けられること。
そして、2007年のオーストラリアで行われた分析では広背筋を筋繊維の流れに沿って6つの領域に分けられることを示しています。
この結果からエクササイズの種類によって広背筋の特定の領域を狙って鍛えることができる可能性があることが考えられます。
例えば同じラットプルダウンでもグリップ幅で運動が異なります。肩幅以上に手幅を広げたワイドグリップの場合、脇が開くことで肩関節の内転運動に近くなりますが、クローズグリップや逆手でのラットプルダウンの場合、引っ張る運動中に脇が閉じることになるため内転よりも伸展運動のほうが強くなります。
この運動の変化が広背筋の筋繊維の活性化に差を与える可能性があります。
それではどういった運動をすれば広背筋の上部や下部を鍛え分けが出来るのでしょうか。
2008年のオーストラリアで行われた研究では広背筋の筋繊維を上部、中部、下部に分けて肩関節の伸展中の広背筋の活動を調べたところ広背筋上部の筋活動が有意に高いことがわかりました。加えて同様の方法で肩関節の内転について調査したところ、内転の場合は広背筋の中部や下部の筋活動が高いことがわかりました。
科学的なデータを参照するおtどうやら肩関節の伸展運動は下部よりも上部を活性化させ、内転運動は上部よりも下部を活性化させる傾向があるようです。
ただし、筋電図分析は実際の筋肥大ではないので科学的信頼性は不十分であり、その差も大きなものではないため、ワイドグリップのラットプルダウンが上部をあまり活性化させない。ナローは下部を全然活性化させないわけではありません。
ただし筋肉サイズのバランスを考えると内転運動と伸展運動の両方をトレーニングに組み込んだほうが外見的にも整ったものになる可能性があります。
背中の広がりが爆発的に成長するトレーニングルーティンには重要なポイントが3つあります。この3つのうちひとつでもクリアできていなければトレーニングの効果は正しいものと比べても良くて半分以下、悪いとほとんど意味のないものになります。
先程の解剖学的なチャプターで話した通り、広背筋には伸展の場合上部、内転の場合下部がより強く活性化される傾向があることを示しています。しかし実際ほとんどの人は背中トレーニングで伸展と内転の両方を使っています。
内転は一般的な垂直プルで使用され、伸展はロウトレーニングで使用されています。そのため、一般的なトレーニングメニューの場合伸展と内転の両方がありますが、ロウでは広背筋はあまり成長しない可能性が高いです。
例えばシーテッドロウの運動を見ると腕がおおよそ自分の前方にある状態から後ろに引っ張ります。つまりおおよそ可動域は90度程度しかありません。そしてその可動域のほとんどは収縮ポジションです。筋肉がウエイトトレーニングの負荷を最も受けるのは筋肉が伸びた位置で、ここで負荷をかけると筋肉が大幅に成長することを多くの科学的データは示しています。
特に最近発表されたIUSCAが選ぶフィットネス業界に最も影響を与えた記事としてmilo wolf博士のロングレングスパーシャル法が2023年の最優秀記事に選ばれているように近年の科学的データはストレッチポジションの時代といってもいいです。
内転は自分の頭の上から下まで180度あり、ストレッチポジションは頭の上に位置しているため、ロウのようにストレッチポジションをカットするのは広背筋の成長にとって間違いなく良くないでしょう。
つまり、広背筋を成長させるための伸展はロウでは不十分であるためしっかりストレッチのかかる伸展種目を用意する必要があります。
筋肉は機械的な緊張に適応していくと成長しますが同時に反応しづらくもなります。そのため、より多くの機械的な緊張を与えるために多くのトレーニングボリュームが必要になりますが、そのためには最大筋力を伸ばしていくことが重要です。
2022年のアメリカで行われた研究では繰り返し回数を増やす、または扱える重量を増やすことは筋肉の成長にとって等しく効果的であることがわかりました。例えば懸垂の回数が増えたり、より重いウエイトを背負って出来るようになればその1kg、1rep分多くのトレーニングVOLを確保できたことを意味します。
プログレッシブオーバーロードについては中級者以上の人ならほぼ全員知っているかとは思いますが、基本的にはベンチプレスやスクワットなどが一般的であり、背中トレーニングでのプログレッシブオーバーロードを意識している人はそう多くありません。
ただ、背中トレーニングでもプログレッシブオーバーロードを意識すると背中の成長が見違えて変わります。
スマホのメモアプリでも、紙のノートでもいいので自分の持ち上げた重量や回数を記録してトレーニングをする前にそれを見るのがおすすめです。ただし、重量や回数にこだわりすぎてフォームが崩れないように注意してください。あくまでも正しいフォームがあってこそのプログレッシブオーバーロードです。
特にストレッチポジションは筋肉に最も負荷のかかる位置であるため、裏を返せばここをやらなければ筋肉にかかる負担を減らすことができます。高重量を扱いたいがためにこのポジションをカットするのは絶対避けましょう。
筋力を伸ばす方法としては最もおすすめなのが高重量を扱うこと。2023年のシステマティックレビューでは178件の研究を分析したところ、筋力の発達においてはトレーニング強度が最も重要であることを示しています。つまり、出来るだけ重いウエイトを扱ったほうが伸びやすくなります。
フォームが崩壊したりチートを使わないと上げられないということがない負荷でおおよそ3~8rep程がおすすめです。
背中の筋肉を成長させるためには、背中の筋肉を働かせるようにすることが非常に重要です。背中は人間の背面にある筋肉であるため腕や脚の筋肉などとは違いトレーニング中にみながらトレーニングすることができません。
これによって背中の筋肉は特に筋肉が働いている感覚を感じにくいという人も少なくないため、筋肉の活動を高めるテクニックが必要になります。筋肉を意識的に働かせる、効かせるようにするマインドマッスルコネクションは背中の筋肉の収縮を感じられない人に特におすすめの方法です。
2018年の調査でもこのテクニックは長期的な筋肉の成長にとってメリットがある可能性が示されているように、特に筋肉に効かせられない初心者の人にとっては非常に効果的です。
ラットプルダウン中の広背筋の活性化について調べた研究では被験者のラットプルダウン中にコーチが背中を触ることで広背筋の活動が上昇したように触りながら行うとより背中が働きやすくなります。
一人でやる場合はシングルアームで行うと触りながら行うことができます。最初のウォーミングアップやこの部位になかなか効かせられない人は是非この種目をやってみてください。
特に広背筋を鍛えるときは正しいフォームが重要で、持ち上げることばかりに意識が行くと背中が成長しなくなります。
かなり多いミスは高重量のラットプルダウンできつくなったら肩がすくんでしまっていることです。これでは広背筋が伸びる運動と縮む運動の両方がかかるため、広背筋が活動しなくなります。背中を鍛えるときは特に、まずは持ち上げることよりも広背筋をうまく動かすことを意識してください。それが簡単にできるようになったら徐々に持ち上げることに集中していくのが効率的です。
ここからは背中の広がりを作る最強種目を内転種目と伸展種目に分けて解説します。
伸展を使った種目はラットプレイヤーが一番おすすめです。プレイヤーというのは祈りの方のプレイで動作中に祈っているような体制になることがこの名前の由来です。伸展というとラットプルダウンをクローズグリップで行ったり懸垂を逆手で行ったほうが効果的のように感じるかもしれません。
しかし、伸展は頭の上から肩関節を軸にした円運動であるため、ストレッチポジションでは上向きよりも体に対して横向きの力が必要ですが、クローズグリップのラットプルダウンや懸垂では真っすぐ上向きにしか力がないため最適な伸展種目ではありません。
ラットプレイヤーを正しく行うためにはいくつかのポイントがあるので必ず押さえましょう。
まずはストレッチポジションで広背筋を伸ばすために上半身を動かす必要があります。直立した状態ではストレッチポジションで負荷がかからないため水泳選手の飛び込みのように上半身を横向きにします。この時、非常に重要なポイントですが、ケーブルの負荷が真上にかかっているようにしましょう。それをすると最高のストレッチがかかるため広背筋が理想的に伸ばされます。
ラットプレイヤーが正しくできている場合ほぼ間違いなくクローズグリップのラットプルダウンよりもかなり強いストレッチを感じるはずです。
ケーブルマシンと体の距離が遠すぎたり、ケーブルの設定位置が低すぎると上向きではなく横向きの力がかかるため、クローズグリップのラットプルダウンのように負荷の向きが体と一直線になることから広背筋が理想的な向きで伸ばされなくなります。マシンの位置が低いことのメリットはないためとりあえずよっぽどのことがない限り一番高い位置に設定するのが無難です。
そして、マシンとの距離は1m程度、上向きの力を入れるためにも出来るだけ近づくのが理想的ですがストレッチをかけるときに手がマシンに当たらない位置が現実的にはベストです。
そして肩関節を伸展させて広背筋を収縮させます。この状態で引っ張るとケーブルが頭に当たってしまいますし、上方向の力が必要なのはストレッチポジションだけであるため引っ張るのと同時に上半身を起こして地面と垂直にします。
ラットプレイヤーはこれを繰り返します。この種目は肩関節の伸展を使うためグリップが広い狭いなどは関係ありません。ロープでもストレートバーでもやりやすい、三角筋後部に逃げないやりやすい持ち方で構いません。
そして立ち上がった状態でも座った状態でも正しくできていれば構いませんが、立つとケーブルマシンとの高さができずストレッチポジションで上向きの力が弱くなったり、最大まで腕を屈曲させられない可能性があるので座って体を低くしたほうがおすすめです。
加重の懸垂ができる人でも正しくストレッチをかけていれば20kgあれば十分なトレーニングになります。パーカーフィットネスは大体15~17kgくらいでトレーニングしています。かなり強いストレッチを感じられるはずなので、実際やってみてあんまりストレッチ感ないなと思ったらストレッチポジションでしっかり上向きに負荷がかかっているか確認してください。
そういった場合はケーブルの高さが不十分だったりマシンから離れすぎてる可能性が高いです。そしてヒジを過度に曲げたりする必要はないのでロックさせる必要はありませんが軽く曲げる程度で行いましょう。
立った状態で行っている人に特に多いですが、体と腕が一直線になる位置で止めています。ただ、これは少し不十分です。
肩が痛いなど問題がない限り腕が頭よりも後ろになるまで腕を上げましょう。
肩関節の内転を使って広背筋を鍛える種目は、回内グリップのワイドなラットプルダウンや懸垂が代表的です。ただ、最新のデータを見るとそれは理想的ではないかもしれません。
ラットプレイヤーと一般的なラットプルダウン、そして懸垂を比較すると広背筋のストレッチ感はまず間違いなくラットプレイヤーのほうが強いでしょう。原因としてラットプルダウンではウエイトを真下に引っ張っているように見えますが、実際は肩を中心にした円運動を使用しています。
つまり、内転運動のストレッチポジション、上部では横向きの力が必要ですが、ワイドに開いたラットプルダウンは既にある程度広背筋が収縮した状態から始まることになります。
そのため極端なワイドグリップにすると広背筋のストレッチがほとんどかからなくなります。こういった垂直プルでワイドにすると広背筋が使用されるとよく言われますが、実際科学的な根拠はなく極端なワイドグリップのメリットはひとつもありません。
ただし、内転運動で広背筋を鍛えるときはある程度手幅を狭くしても横方向の力がないので広背筋のややストレッチ不足が起こります。
このレベルでは絶対に悪い、かなり悪いというほどではありませんが、
実際懸垂の様にぶら下がるよりも少し横向きに引っ張ったほうが広背筋のストレッチを感じられ、筋肉の成長が促進される可能性があります。
これが内転のストレッチポジションには横向きの力が必要である証拠です。
この状態から引っ張るシングルアームのケーブルラットプルダウンを行うと広背筋に最大のストレッチがかかり、多くのデータに示されているように広背筋の成長が促進される可能性があります。
まずはグリップを使用してもいいですが、ケーブルのヘッドをそのままつかむやり方がおすすめです。身長などにもよりますが、ケーブルは一番高い位置に設定するのがいいでしょう。まず最初に腕を外転させて広背筋を伸ばします。マシントレーニングすべてに言えることですが、動作中にウエイトが完全に下に降りて負荷が無くなるのは絶対にNGです。1rep毎にガシャンガシャン音を鳴らしてる人もいますが、これをするとストレッチが0になることもありますが、器具を壊す原因にもなります。
そしてこのまま真横に腕を下げます。注意点としてビハンドネックのように真横に引っ張ると肩のケガの原因になるため一般的なラットプルダウンのように体の少し前で引っ張るようにしてください。
そして腕が肩の高さになるまで引っ張ります。この可動域はLongLengthPartial、いわゆるLLP法のトレーニング理論に基づいています。これは簡単に言うとストレッチのかかるフルロムとストレッチのかかるパーシャルロムではパーシャルロムのほうが成長効果が高い可能性があるというものです。
そのため、肩関節の内転は180度ほどありますが完全に下まで下げる必要はなく肩の高さまで腕を下げれたら十分です。
ヒジは軽く曲げる程度でラットプルダウンのように曲げる必要はありません。そして、自分の体は出来るだけ垂直にしてストレッチポジションで横向きの力をかけるようにしましょう。体をケーブル側に傾けすぎると横方向の力がどんどんなくなっていくため広背筋を伸ばす力が弱くなります。
筋トレ経験者でもまずは10kg程度で始めて慣れてきたら重量を増やしていくといいでしょう。
筋トレメニューとしては全身トレーニングでラットプレイヤーをやる日、ラットプルダウンをやる日の交互で行うのがおすすめです。科学的データに示されているようにラットプレイヤーだけでも下部が全く成長しないということはありませんが、バランスのためにも伸展種目と内転種目を取り入れたほうがいいでしょう。
セット数としてはこの2つの種目で毎週10~15setを目標にしてください。ただ、筋トレレベルによってはもっとボリュームを追加したほうが筋肉が成長する可能性があるので15set以上行ってもらっても全く問題ありません。
紹介した2つの種目は正しくやればかなり強い広背筋のストレッチがかかります。LLP法の筋肥大理論はまだ証拠は十分ではありませんが、ストレッチアリとナシではアリのほうが筋肥大が高いというのは非常に強い証拠によって保護されているため、ストレッチポジションで負荷をかけることを避けるのは絶対にやめましょう。
特にシングルアームのケーブルラットプルダウンは懸垂や一般的な両手で行うものよりもはるかに強いストレッチがかかるため、筋肉の成長が促進される可能性が高いです。無理に高重量を扱う必要はありません。軽くても正しく、そして広背筋を伸ばせていれば背中の広がりは劇的に変わります。