筋トレによって筋肉を成長させて最短で外見を変えるためには、科学的に証明されている効果的なトレーニングが必要です。しかし、それと同じくらい重要なのが見た目に影響を与える筋肉を集中的に鍛えることです。
筋肉には成長することによって外見が大きく変わる筋肉もあれば、頑張って鍛えてもあまり見た目が変わらない筋肉もあります。この記事では科学的なデータを基に見た目に重要な筋肉とその鍛え方、最強種目について解説します。
上半身の中でも首にある僧帽筋の上部は最も外見が変わる筋肉といってもいいです。この筋肉はボディビルのポージングでも非常に目立つ筋肉であり、ステロイドを使用し始めると他の筋肉よりもはるかに速いスピードで成長する筋肉のひとつでもあります。
これは僧帽筋上部は非常に高いアンドロゲン受容体を持っているためです。
元UFCライトヘビー級のビトー・ベウフォートの例を見てもらえれば分かる通り僧帽筋上部の成長は外見的な大きな違いを生み出し、正面から見たときの外見だけではなく、後ろから見たとき、横から見たときにも非常に目立つ筋肉です。
僧帽筋は背中にある筋肉で主に上部、中部、下部の筋繊維に分かれますが、首のあたりにある筋肉は僧帽筋の上部だけです。この筋肉は肩甲骨の挙上によって収縮するため下から上に引っ張るデッドリフトのような運動によってこの筋肉は活動しますが、こういったロウのような種目は僧帽筋上部にとって最適ではないでしょう。
この部位を鍛えるベストエクササイズは下から上に引っ張るシュラッグです。ウエイトを持ちながら腕の力を使わず肩をすくませます。
ポイントとしては腕の角度です。僧帽筋の解剖学的な働きについて調査した研究では上部の筋繊維はニュートラルにした腕の角度よりも若干腕を上げた30度外転させた位置で引っ張るほうが理想的であることを示しています。
僧帽筋の上部は真下ではなく斜めに伸びていることを考えると筋繊維に沿って内側に引っ張るようにしたほうが理想的であることは確かに理にかなっています。
そのため、ダンベルのシュラッグよりもバーベルのほうが外転した状態で引っ張ることができるためおすすめです。
もうひとつのポイントとしては姿勢です。シュラッグを行うときは真っすぐ直立した状態で引っ張るよりもほんの少しだけお辞儀をするように前傾させたほうがメリットがあります。僧帽筋は先程解説した通り、体の後ろ側にある筋肉であるため真っすぐ垂直に引っ張るよりも体を傾けてわずかに前から後ろに引っ張る運動を加えたほうが僧帽筋にとって理想的な運動になります。
良くある間違いとしては重量にこだわりすぎてチートを使うことです。体が前傾しているのでデッドリフトのように上半身を起こす勢いを使ってウエイトを持ち上げていたり、腕を曲げて上腕二頭筋の力を借りて持ち上げないように注意が必要です。
イメージとしては肩を耳にくっつけるような感覚で引っ張りましょう。ストレッチをかけるためにもバーベルを下げたときは肩の力を抜いて肩甲骨を出来るだけ下に下げてから限界まで引っ張るようにするとこの筋肉の発達にとって理想的です。
高重量にし過ぎるとチートやフォームの崩壊を招くことがあります。まずは10rep以上持ち上げられる負荷でトレーニングしましょう。10rep以上できる負荷なら問題ないと思いますが、握力が先に疲れるという人はストラップ系のアイテムを使うのもいいでしょう。
三角筋中部は正面から見たときの外見にも影響し、横から見たときの外見では最も目立つ筋肉です。この筋肉を巨大化させることによってできる影は大胸筋下部と同じく肩を立体的に見せます。
一部のデータに基づくとショルダープレスでは前部と中部が同じくらい活動することを示していますが、ショルダープレス中に三角筋中部は収縮した状態を維持しているだけであるため、筋肉が疲労したり、パンプアップを感じるのは非常に簡単ですが、筋肉の成長効果について考えてみると非常に小さいものです。
筋肉を成長させるためにはゴムのように伸びたり縮めたりする必要があり、特に伸びた状態は重要です。そのため、ベストは手のひらを下に、肩を中立位置にした外転運動です。アップライトロウやサイドレイズが代表的ですが外転中にヒジを曲げたり腕を前に出すと三角筋中部の活動が大幅に落ちるためサイドレイズがおすすめです。
その中でもケーブルサイドレイズはストレッチポジションで負荷がかかるので中部のベストエクササイズです。
腕を降ろした時に出来るだけ体に対して横向きに力がかかるようにしましょう。ケーブルの位置が低すぎたり、マシンから離れるように体を傾けると体に対して下向きに力がかかるようになるためストレッチポジションでの負荷がゼロに近づきます。
良くある間違いとしては先ほど紹介したようにヒジを曲げたり腕を前に出すことです。10kgでのケーブルサイドレイズは相当上級者の人でない限りできません。その負荷でトレーニングしている人はストレッチポジションをカットしてるかヒジ、腕の角度に問題があります。
正しくやればベンチプレス100kg上げられるような人でも3kgの負荷で十分トレーニングになります。10rep以上できる負荷で10rep以上を目安にトレーニングしてみてください。
大胸筋下部は過小評価されがちな部位でもありますが、大胸筋の中でもかなり外見的に重要な部位です。大胸筋の外見はほぼ下部のラインによって決まるといっても過言ではなく、この下部を鍛えることによって出来る大胸筋のラインは胸をより立体的に見せ、この筋肉を強調します。
この部位を鍛えるときのポイントは大胸筋下部の向きを理解することです。
原因として下部は肩から肋骨に向かって伸びており、一番下の方の筋繊維はかなり直角に近い状態であるため、真横に腕を閉じる運動ではあまり活動しない可能性があります。
この筋肉を鍛えるときは下向きにプレス、プッシュ運動をしましょう。とはいっても一般的なデクラインプレス程度では不十分です。
2016年に行われた先ほどと似たEMG研究ではベンチ角度-15度のデクラインベンチプレスと0度のフラットベンチプレスでは大胸筋下部の筋活動は変わらなかったことを示している通り、腕を上から下に降ろす運動が強い種目が必要です。
この筋肉のベストエクササイズはバーディップス。ブレットコントレラス博士が行った大胸筋種目の筋電図分析ではこのディップスが最も大胸筋下部を活性化することを示しています。これはほぼ真下にプレスを行うため非常に強い内転運動が入るので大胸筋下部を成長させたいという人にはぴったりの種目です。
ディップで重要なポイントは体をやや前傾させること。僧帽筋の上部は真上に引っ張るよりも体の後ろにある筋肉であるため、少しだけ前から下に引っ張ったほうが理想的です。これと同じで大胸筋は体の前にある筋肉であるため、前傾させることで後ろから前にプッシュする運動が加えられることで大胸筋下部が強く活性化されます。
動作中ずっとこの前傾姿勢をキープすることが大事です。最初は前傾出来ていてもフィニッシュで体が垂直になってしまう人がかなり多いので最後まで気を抜かないでください。
まずはフォームが重要なので高重量に挑戦するのはあまりおすすめしません。最初はアシストマシンを使いながら8rep以上できる負荷で行うのがいいでしょう。マシンを使うと軽い重量で鍛えられるだけではなく膝の位置が固定されるため前傾姿勢が格段に維持しやすくなります。
良くある間違いとして高重量のディップスをしている人の中で体をほとんど下げていない人も少なくありません。最低でもヒジが90度になるまで体を下げて大胸筋下部を伸ばしましょう。
あなたが服を着ているとき、ほとんどの筋肉は隠れています。しかし、前腕は服を着ていても露出する筋肉であるため、ここを鍛えると劇的な外見の変化を期待できます。
前腕を効率的に成長させたい場合、外見を変えたい場合は腕橈骨筋を狙うのがベストです。多くの人はこの筋肉のサイズを過小評価しています。この筋肉は前腕の中では群抜いて巨大な筋肉であり、後部にある筋肉であるため前部よりもはるかに目立つ筋肉です。
多くのボディビルダーが握力トレーニングをしないのはこれが理由です。外見の差が出やすいのは前部ではなく後部、特に腕橈骨筋であるためこの部位を狙う人がほとんどですし、前部は握力に関わっているため普通のトレーニングでもある程度の筋力アップや筋肥大が見込めますが後部については他のトレーニングでは手首の伸展や指の伸展がほとんどないためこの部位を直接的に鍛えないと筋トレ歴10年以上でも後部のサイズだけほとんど筋トレ初心者時代と変わらないということもあり得ます。
腕橈骨筋を鍛えるためにはリバースグリップでヒジを曲げることです。人間の生体力学上、回内グリップにすることで上腕二頭筋は非常に不利な位置になりトレーニング中の活動は大きく落ちてその分腕橈骨筋の支配率が高くなります。前腕を鍛えるとき、バーの握りは回内グリップで持ちましょう。
腕橈骨筋を活性化させる重要なポイントとしては手首の伸展です。普通の回内グリップカールでは腕橈骨筋のヒジ関節の屈曲しか使用できませんがスタートで力を抜いて手首を曲げてフィニッシュで自分の正面に手のひらを向けるようにすると手首の伸展が加えられるため腕橈骨筋がより強く働くようになります。
良くある間違いとしてはストレッチポジションで負荷のかからない種目を選択すること。前腕のトレーニングではハンマーカールやリバースグリップカールが一般的ですが、腕を垂直にしたフリーウエイトカールではストレッチポジションで負荷がかからないため筋肉の成長効果が大きく落ちる可能性が高いです。マシンを使うか、腕を傾けるようにしましょう。
そしてヒジを伸ばし切らないこと。プリチャーカールに特に多いですが、ヒジを伸ばし切らないと腕橈骨筋のストレッチが弱くなり、筋肉の成長が妨げられます。ほとんどの場合、ストレッチポジションを確保すると扱える重量が半分程度になるので一部の重いダンベルを見せびらかすことが目的のトレーニーにはこういった鍛え方は嫌がられますが、実際筋肉に最も負荷がかかるのはストレッチポジションです。
いくら潰れるまで追い込んでいても、辛い可動域から逃げていることには変わりません。
この種目は腕の末端の筋肉であるため、かなり限界に近いレベルまで追い込んでもデメリットがありません。20rep程度できる低重量を潰れるまで持ち上げるか、潰れる寸前まで行うのがベストです。
背中の広がりのほとんどを構築する広背筋は後ろから見たときの印象の8割を決めるといっても過言ではありません。この筋肉は背骨のあたりから脇の下に挿入されている筋肉であり、上から下に引っ張ることでこの筋肉は働きます。
背中のトレーニングでは上から下に引っ張るプル系の種目、そして前から後ろに引っ張るロウ系の種目に分類されますが広背筋の解剖学的な働きは上から下への運動であるため背中のロウトレーニング全般ではこの筋肉はあまり成長しないと考えていいでしょう。
この部位のベストエクササイズはいくつかありますが、ラットプルダウンはかなりおすすめの種目です。バーを上から下に引っ張ることで広背筋を鍛えることができます。
注意点として、ジムに行くとラットプルダウンマシンの近くにいろいろなグリップが存在しています。ボディビルダーやトレーナーの多くはこのグリップを使い分けて広背筋の下部や上部などの鍛え分けができると考えていますが、実際そのような科学的データはほとんどありません。
懸垂中のグリップを比較した研究では一般的な回内グリップをはじめとしたいろいろなグリップや手幅で広背筋の筋活動を測定したところ、全てのグリップで広背筋は等しく活動することがわかっているように基本的にグリップによって広背筋の成長が大きく変わることはありません。
ただし、解剖学的な観点から見るとクローズグリップなど手幅狭くしたラットプルダウンは避けたほうがいいでしょう。広背筋は僧帽筋の上部と同じように真っすぐ伸びている筋繊維ではないため筋肉の向きに沿った手幅が最適です。加えてクローズグリップやリバースグリップのプルは肩関節の内転ではなく伸展運動に近くなります。しかし、ラットプルダウンを伸展運動と考えるとストレッチポジションで広背筋に負荷がないため、一般的な回内グリップで手幅は肩幅より少し広くしたものがベストだと考えられます。
良くある間違いとしてはヒジを伸ばし切らずストレッチをカットすること。最短で成長させるためには必ず広背筋が十分伸びる可動域が必要であるため、ヒジが伸びる前に次のレップに行くことは非常にもったいないです。
加えてラットプルダウンでは背中を傾けると広背筋の活動が増えることを示していますが、その反らせる運動を使ってウエイトを引っ張らないように注意が必要です。
高重量になるとこういったミスが起こりやすいのでコントロールできる負荷で10rep以上をおすすめします。
いかがだったでしょうか。外見にとって非常に重要な筋肉は僧帽筋の上部、三角筋中部、大胸筋下部、腕橈骨筋、広背筋です。筋トレ初心者の人はまず最初にこの5種目を毎日3setずつやるようにすると1か月もあれば外見に変化が訪れるはずです。最後にこの動画がいいと思っていただけたら是非高評価をお願いします。