ベンチプレス100kgは多くのトレーニーにとってひとつの目標です。平均的な男性は20~29歳でも体重と同じ重さしか上げることができず、トレーニングレベルとしても体重70kg前後の場合ベンチプレス100kgは中級者から上級者へのステップアップといってもいいです。
ベンチプレスの統計を調べると225ポンド、おおよそ100kgのベンチプレスが出来る人はアメリカ全体の2.3%、ジムに通っている人の10.5%であるため、統計的にはベンチプレス100kgが持ち上げられる人はかなり優れているといってもいいでしょう。しかし、90%は100kgのベンチプレスを持ち上げられないように100kgに到達するのはそう簡単ではありません。
インターネット上にある科学的根拠のないものなど間違ったベンチプレス法をすると100kgは到底持ち上げられません。パーカーフィットネスのクライアントの方の中にも2~3年ベンチプレスが伸びていないという人は少なくないため、100kgいくために必ず正しいアプローチが必要になります。
この動画ではベンチプレス100kgに到達するために必要な3つのステップについて解説します。
ベンチプレスの運動で使用されている筋肉は主に大胸筋,上腕三頭筋,三角筋の前部です。
ベンチプレスは腕を開いてから閉じる運動であるため大胸筋が強く働きます。基本的には大胸筋がメインですがヒジの伸展があるため上腕三頭筋、水平内転に加えて肩の安全上、脇を少し閉じるため三角筋の前部も活動します。
2022年の研究では74人のパワーリフティングアスリートの最大重量と除脂肪体重の関係を調べたところ相関係数0.95というかなり深い関係が見つかり、筋力を伸ばしていくことは筋肉量を増やしてくれることに大きく貢献してくれることを発見しました。
科学的な筋肉の活動を調べた研究ではバーベルのベンチプレスは大胸筋を測定した種目の中で特に活性化していることがわかるため、別の研究でベンチプレスの最大重量が上がるたびに大胸筋のサイズが増えている現象が確認されたことは、ベンチプレスが大胸筋を強く活性化させる。そして筋力の向上は筋肉の成長と強い結びつきがあるコトを考慮すると非常に理にかなっています。
つまり、ベンチプレス100kgは筋トレ上級者の入り口でもありますが、100kg持ち上げることができれば必然的に厚みのある大胸筋があることを意味します。
しかしなぜ、トレーニングしている人はベンチプレス100kgを目標にするのか。そして、なかなかこの目標に到達できないのか。目標については最初にも紹介したように平均的な体重の人の場合、ベンチプレス100kgは中級者から上級者へのステップアップといってもいいため、これを目標にしますが100kg到達するまでに多くの人は一度は停滞期というものにぶつかります。
つまり、ベンチプレスがある時急に伸びなくなります。パーカーフィットネス自身としても90kgまでは3か月ほどで行けましたが、90kgから100kgまではかなりの時間がかかりました。この停滞期をどう乗り越えるか。そして停滞期にならないようにするかが非常に重要です。
次のチャプターではそのベンチプレスを伸ばす方法について紹介します。
筋力を伸ばすために最もおすすめの方法はトップセットを作ることです。2014年にブラッドシェーンフェルド博士が行った研究では10repの高回数グループと3repの低回数グループに被験者を分けたところ筋肥大効果はほとんど同じですが、筋力アップ効果については明らかに低回数グループのほうがが高いことがわかります。
科学的データとしては高重量のほうが筋力アップ効果が高いことを示しています。これは高重量ほど多くのモーターユニットを動員できるためです。注意点として高重量ほど多くのモーターユニットを動員しているため筋力アップに向いていることを理由に神経系トレーニングという高重量パーシャルレップという方法もありますが、あなたがパーシャルレップのベンチプレスで100kgを上げたいワケではない限り絶対におすすめしません。
そもそも可動域を減らしている時点で200kg扱おうが筋肉には200kg分の負荷はかかっていないためモーターユニットも200kg分動員されるわけではなく、可動域が半分ならその半分程度の負荷しか体にかかっていません。パーシャルレップによる筋力アップ効果の科学的信頼性はかなり低いため、何を試しても上がらないという場合以外やらないようにしてください。
トップセットというのは強度が最も高いトップのセットを作るということです。トップセットを利用した最も有名なプログラムはDelormeプログラム、このトレーニングはトーマスデローム博士によって生み出され、実はかなり長い歴史があります。これが生まれたのは1940年代の第二次世界大戦後、アメリカ兵のリハビリテーションとして開発され、80年後の今に至るまで多くの研究が行われました。
パワーリフティングコーチのダンジョン氏によるとDelormeプログラムは300件のケースで筋肥大と筋力アップの素晴らしい効果を発見したようです。パーカーフィットネスも90kgから100kgの10kgでかなり停滞していましたが、この方法で100kgを超えることができました。
簡単に言うとこれは3set構成、ウォーミングアップを2setして頑張るセットは1setだけというものです。
まず最初に自分が上げたい重量を決めておきます。この場合100kgを1rep持ち上げたいとします。1set目は目標重量の50%の重量を5rep持ち上げます。つまりこの場合50kgを1repです。そしてそのあと2set目は75%を5rep持ち上げます。75kgを1repということになります。最後の3set目は目標重量を持ち上げます。100kg1repですね。
Delormeプログラムのようにトップセットを作ると1setに全力が出せるため自分の最大重量を扱うことができます。これによって最大限のモーターユニットが動員されるため筋力が伸びやすくなります。そして、1setに全力を出すため最小限の倦怠感でトレーニングができます。
筋力と倦怠感は深い関係があります。よくあるのがベンチプレスがなかなか上がらないから頑張って高重量のベンチプレスを限界まで何セットもやることです。しかしこれは逆効果です。停滞期の原因としてかなりの割合で精神的、肉体的に疲れており、疲労によってパフォーマンスが停滞していることがあります。
最新の筋力アップについての研究を分析したレビューペーパーによると過度の追い込みは強い倦怠感を引き起こし、筋力アップに悪影響を及ぼすことが示されています。5×5プログラムのように5set高重量で激しい追い込みをすると非常に強い疲労があるため、筋力アップに悪影響が出る可能性があります。
トップセットのように全力を出す1setを作る方法は筋肥大にはあまり効果的ではないのでベンチプレス以外の胸トレに使用することは推奨しませんが、筋力アップには非常におすすめです。
多くの人はバーベルがどういう風に持ち上がるかをあまり意識しないかもしれませんが、実はこれを改善させるとケガのリスクを大幅に減らし、より重いウエイトが持ち上げやすくなります。
デッドリフトやスクワットではウエイトは真っすぐ上方向に持ち上げることが推奨されているためベンチプレスでも真っすぐ上にあげたほうがいいのかと思いがちですが実際そうではありません。トーマスマクマフリン博士が膨大なベンチプレスリフターを調査した結果をまとめたベンチプレスガイドによるとベンチプレスが停滞するリフターと伸び続けるエリートリフターにはバーパス、つまりバーベルの軌道に大きな差がありました。
ベンチプレスが停滞してしまうリフターは一度真っすぐ持ち上げてから顔の前に移動させていましたが、伸び続けるリフターは最初に顔の前に移動させてからまっすぐ上に持ち上げていました。
このバーパスの違いによって起こる違いは肩の負担です。停滞するリフターはまず最初にある程度真っすぐバーを持ち上げます。しかしこれは肩から遠い位置でベンチプレスの最もつらい部分をこなしていることを意味します。最初にまっすぐ上げるとスタートの時よりも肩から距離が離れていることがわかります。
逆にエリートリフターはベンチプレスの最もつらい部分を肩から近い位置で行っています。最初に斜めに持ち上げれば肩とバーベルの距離はあまり変わっていないことがわかります。これによって肩にかかる負担が全く違うため、エリートリフターのほうが大胸筋のみを使って重いウエイトを持ち上げやすくなります。
この軌道を意識するとベンチプレスの最初の部分がかなり楽に感じられると思います。これは今まで使っていた力の弱い肩の筋肉から力の強い胸の筋肉に負荷が移動するためです。
ベンチプレスをするときはこのバーベルの軌道を意識しましょう。最初はぎこちないかもしれませんが、そのうち慣れてくるはずです。誰かと一緒にやっている人は横から見てもらったり一人でやってる人は携帯のカメラを真横においてチェックしてみてください。この軌道の調整はフリーウエイトでしかできないのでパーカーフィットネスは出来るだけベンチプレスはフリーウエイトをおすすめしています。
ベンチプレス100kg行きたいのに伸びないという人から相談をもらうときにまず最初に聞くことはベンチプレスをどれくらいの頻度で行っているかです。ほとんどの人は週に1~2回しかベンチプレスをしないといいます。これはボディビルの一般的な常識であるトレーニングを部位ごとに分ける分割法が主流であるため大胸筋を鍛えるのがそもそも週に1~2回ということが深く関係していますが、分割法のような低頻度トレーニングは筋肉の成長、そして筋力アップについてメリットはほとんどないということが科学的に証明されています。
高頻度でベンチプレスをやることでまず練習量が増えることです。特異性の原則によってベンチプレスをする機会が単純に増えるだけで筋力アップ効果にメリットがあるコトが示されています。そして、高頻度でベンチプレスをすることでVOLが増えること。
2018年に行われた研究では中級者トレーニー28人に週3回、週6回の頻度でパワーリフティングプログラムを実行してもらったところスクワットの1RM以外は全て週6回グループのほうが優れており、週3を支持したスクワットについてもその差はほぼゼロです。
そして週5回の高頻度全身トレーニングと週1回の低頻度分割トレーニングについて調べた複数の研究でも筋肥大効果については圧倒的に高頻度グループのほうが優れていることを示していますが、筋力アップについても高頻度トレーニングのほうが優れている傾向にあり、最低でも低頻度と同じであることがわかる通り、高頻度でベンチプレスを行ったほうが重量が伸びる可能性はかなり高いです。
多くの専門家はベンチプレスを伸ばすためには週3~5回の頻度で行うことを推奨しています。
ベンチプレスではトップセットを作ったトレーニングプログラムをおすすめします。肩の動的ストレッチが終わったらベンチ台に行き、まずはウォーミングアップセットを行います。基本的にはウォーミングアップでどれくらいの重量を扱うか、そしてセット数は個人に任せますが、重すぎると本番のセットに行く前に疲れてしまうのでおおくても3set程度、軽い重量でかなり余裕をもって終わらせることをおすすめします。
ウォーミングアップセット中にバーベルの軌道の確認をしておくのがいいでしょう。
ウォーミングアップセットが終わったら3分以上の休憩を取り、疲労が抜けた状態で本番セットを行います。
肩甲骨を寄せて胸を張り、適度なブリッジを作ります。手幅はワイドでも構いませんが、広すぎると肩や手首を痛める可能性があるためあまり広げすぎないようにしましょう。
バーベルを大胸筋下部のあたりに降ろしてから顔か肩の前に斜めに持ち上げて、そのあと真っすぐ持ち上げます。高重量になるとバーベルの軌道を意識してる余裕がないこともあるのでウォーミングアップセットでしっかり意識しなくともこのバーパスでウエイトが持ち上げられるように練習しましょう。
普段のベンチプレスよりもラックとの距離を少し空けるのがおすすめです。これは近いと持ち上げた時にバーベルラックとバーベルが接触しやすくなるためです。
100kgを目標にしている人が100kgで本番セットを組むのは潰れるリスクが非常に高く危険であるため最低でも3rep以上できる重量がおすすめです。計算上90kgが5回できれば100kgが1回上がるので90kg5回を目指してみてください。
リフトをゆっくりやったり爆発的に早く行う方法もありますが、最新のレビューペーパー、そしてブラッドシェーンフェルド博士が話すようにこのやり方は科学的信頼性が高いものではないため真っ先にやるべきものではなく、今日紹介した3つをまずは行って、それを試しても上がらなかった場合のみ検討してみてください。
さらにDUPプログラムといってトレーニング回数をバラバラにすると筋力アップ効果が促進される可能性があります。例えば月曜日は95kg3回、火曜日は90kg5回、水曜日は80kg8回目標というように負荷に変化をつけながらやってみてください。
ベンチプレス100kgは筋トレ中級者から上級者へのステップアップであり、筋トレレベル上位10%に入ったことを表す基準でもあります。今日の動画で紹介した3つのポイントを守れば筋トレ初心者の人でも半年、早い人だと3か月ほどで100kgに到達できます。最後にこの動画がいいと思っていただけたら是非高評価をお願いします。