2021年の9月に行われたレビュー研究では健康的な成人の筋トレが体脂肪率などに及ぼす影響について調べた研究を分析した結果、筋トレの脂肪燃焼効果は20週間、半年ほどで1.5ポンド、体脂肪率を-1.46%減らすことがわかりました。
この結果について「あれ、意外と少ない」と感じる人も少なくないと思います。ただしこれは一般的な筋トレの場合です。実は少しの変更で筋肉の成長効果を一切妨げることなく脂肪の落ち方を2倍、3倍と増やすことができます。2倍3倍というのは大げさではなく実際に研究データを見ると脂肪燃焼効果が何倍にもなっています。
この記事では脂肪燃焼速度を加速させる筋トレ法について解説します。この動画がいいと思っていただけたら是非高評価をお願いします。
筋トレのダイエット効果について多くの人が誤解している点がいくつかあります。
ひとつ目は代謝、アフターバーン効果です。筋トレすると代謝が上がって脂肪が落ちやすくなると信じられています。確かにEPOCというアフターバーン効果のようなものは科学的データでも確認されています。
例えばこの2006年の研究ではトレーニング後被験者のアフターバーン効果が15~38時間確認されました。その数値は基礎代謝の9~11%であり体重維持カロリーが2000kcalの人なら筋トレ後200kcal消費することを示しており、大きなものではありませんが1か月ほど続けるとかなりのカロリー消費になります。
しかし、この研究で使用されたトレーニングメニューは被験者に1回60setのトレーニングを指示しており、あまり現実的ではなく、脂肪燃焼効果について調べた31件の研究を分析したレビュー研究ではアフターバーン効果が明らかな脂肪減少を説明できる可能性は低いと示されているようにこの筋トレ後のアフターバーンに過度な期待をしたりこの効果を高めようとするのは脂肪燃焼にとってあまり効率的とは言えません。
そして、もうひとつの迷信について1996年の古い研究では38人の断食した被験者は腹部の血流とおなかの体脂肪量に負の相関関係があり、腹部の血流が高い状態はおなかの脂肪を優先的に燃やす可能性があることを示しています。
つまり腕トレをしたら腕の脂肪、脚をトレをしたら脚の脂肪が優先的に落ちる可能性があるコトを示していますがその後の大量の研究でいわゆる部分痩せの考え方は否定されています。2022年1月公開の最新の部分痩せについての研究では1158人を対象にした結果、部分痩せを裏付ける証拠はなく「局所的な筋力ト11レーニングはその部分の脂肪組織に影響を与えない」ことを明確に示しており、研究者は「部分痩せに対する一般的な信念は、おそらく希望的観測と、人気の向上を求めるインフルエンサーや広告の増加に関心を持つの売り手などの便利なマーケティング戦略に由来している。」
と示しています。このようにインターネット上には脂肪燃焼について科学的裏付けのない情報がかなり多くあるためダイエットはかなり失敗する人が多いですが、多くのデータに示されているダイエットの答えとしてはカロリー消費がほぼ全てを決めるということです。
つまり、腹筋トレーニングよりもスクワットのほうが多くのカロリーが消費されるためお腹の脂肪は落ちやすく、アフターバーン効果を高めるよりも如何にトレーニング中にカロリーを消費するかが重要です。カロリーを消費するためには筋トレよりも有酸素運動のほうが効率的ですが有酸素運動では筋肉はつきません。
次のチャプターでは筋トレ効果を一切落とさず科学的根拠を基に多くのカロリーを消費する筋トレ法について解説します。
2017年に行われた研究では58人の男性を対象にハーフスクワット、インクラインレッグプレス、レッグエクステンション、フラットベンチプレス、ラットプルダウン、トライセプスエクステンション、バイセプスカールという代表的な8種目を指示したところある共通点が見つかりました。
8種目のエネルギーコストを調べたところラットプルダウンはバイセプスカールよりも約20%多くのカロリーを消費し、ハーフスクワットはレッグエクステンションよりも約35%多くのカロリーを消費することがわかりました。傾向として複数の筋肉を同時に鍛えるコンパウンドトレーニングはバイセプスカールのようにひとつの筋肉しか鍛えない種目よりもエネルギー消費が大きいことを示しています。
おおくのカロリーを消費させるためには一度に多くの筋肉を働かせた方が効率的にカロリーを燃焼させられる可能性があります。
2023年の2月に公開された最新のメタ分析ではアイソレーション種目とコンパウンド種目の筋肥大効果について複数の研究をまとめて分析した結果、筋肉の成長についてはどちらの種目でも同様であることを示しています。もちろんこれはすべての種目が同じというわけではありませんが、コンパウンド種目のみで筋トレメニューを構築しても腕の筋肉の成長率が大幅に落ちるわけではないため、筋肉をつけながら脂肪を落とすことができます。
筋トレ中に多くのカロリーを燃焼させるためにはウエイトをたくさん持ち上げる必要があります。
2011年の研究では被験者に様々なベンチプレストレーニングを行わせ消費されるカロリーを分析したところ、被験者のベンチプレスの重量が下がるほどセットで消費されるカロリーが増えることがわかり、低負荷高回数の持久力タイプのベンチプレス(1RMの37、46、56%)は高負荷低回数の筋力タイプ(70、80、90)よりも脂肪燃焼効果が約2倍であることがわかりました。
この理由は主にトレーニングボリュームの差です。負荷と回数についての関係を見ると低負荷高回数トレーニングのほうが多くのVOLを確保できる傾向にあります。研究者は脂肪燃焼効果に加えて被験者が行ったトレーニングVOLについて調べたところ、高負荷の筋力グループは253Jであるのに対し筋持久力グループは462Jと1.8倍以上であることがわかりました。
トレーニング量が違うことは1時間のランニングと2時間のランニングと同じで多くの運動を行ったことを意味するため脂肪燃焼効果に大きな影響をもたらします。さらにトレーニングVOLはほぼ筋肥大効果とも直結するため脂肪も多く燃焼させるのと同時に多くの筋肉を獲得することができます。
脂肪燃焼効果を増やしたい場合は20rep以上の高回数でウエイトを持ち上げるようにするのがおすすめです。
2016年の研究では最低2年の筋トレ経験のある男子ラグビー選手を対象に全身トレーニングとスプリットトレーニングを行わせました。結果として除脂肪体重はスプリットトレーニンググループは平均して+0.4%だったのに対し、全身トレーニンググループは+1.1%で2倍以上の差がありました。そして体脂肪の量はスプリットトレーニンググループは-2.1%だったのに対し、全身トレーニンググループは-5.7%でこれも2倍以上の差がありました。
科学的なデータを見ると高頻度の全身トレーニングは分割法よりも筋肉の成長効果だけではなく脂肪燃焼効果も倍増させる可能性が高いことを示しています。これは高回数トレーニングと同じくトレーニングVOLが高いためです。
この理論は非常に単純です。ベンチプレスをやった後にダンベルフライをやるとベンチプレスの大胸筋の疲労によってダンベルフライのパフォーマンスが落ちますがベンチプレス後に懸垂をすると背中の筋肉はベンチプレス中にほとんど使われないため疲労の影響をほとんど受けることがないため高いパフォーマンスを発揮できます。
全身トレーニングは科学が認めている最強の筋トレ法でもあるため、脂肪燃焼だけではなく筋肉の構築も分割トレーニングよりもはるかに高いです。
いかがだったでしょうか。コンパウンドトレーニング、高回数トレーニング、全身トレーニングは脂肪の燃焼を大げさではなくリアルに倍増させますが、実際これに気付いている人は少なく、特に高回数トレ、全身トレは科学的証拠が十分であるにもかかわらずまだまだマイナーの筋トレ法です。
しかし、この3つのトレーニングをするために買わなければいけないものなどあなたの負担は一切ありません。誰でも簡単に今から実行できます。