人間の体の中で最も目立つ筋肉のひとつでもある前腕は効率的に成長させるのが非常に難しい筋肉でもあります。なぜなら前腕には多くの筋肉がありますがそのうち8割ほどは非常に小さい筋肉で、たくさん鍛えても前腕の外見にはほとんど影響のない筋肉であるからです。
間違った部位を狙うと成長させるのにかなりの時間がかかり、正しい解剖学的な知識があれば前腕の中でも巨大な筋肉を狙って最短で前腕を太くすることができます。
この記事では科学的なデータから前腕をデカくするために絶対に狙うべき3つの筋肉とその筋肉の鍛え方、おすすめの種目やトレーニングプログラムについて徹底解説します。
前腕の筋肉というのは基本的にはヒジから手首をまたがっている筋肉を指します。前腕といっても前腕筋があるわけではなく、大量の筋肉がヒジから手首にかけて存在しています。Tシャツを着たときに外に出る筋肉は前腕と首くらいであるためこの前腕を成長させることはある意味どの筋肉を鍛えるよりも外見的な印象を大きく変えます。
前腕の筋肉を鍛えるときに最も重要なのが大きな筋肉を鍛えることです。2021年の前腕についてのデータを見ると前腕は前部と後部に分けられヒジと手首に20モノ筋肉が存在していると示されています。ここで重要なのは20個のうちどの筋肉に注目する必要があるかです。
例えば肩にある筋肉でいうと代表的な三角筋以外にも棘下筋や小円筋、肩甲下筋などの筋肉も実は存在していますが、三角筋以外の筋肉は非常に小さく鍛えても外見にはほとんど影響が出ないためボディメイクのためには三角筋を集中的に鍛えるのが最も効率的です。
これと同じことが前腕にも当てはまります。非常に小さい筋肉を頑張って1年間鍛えても成長する量はわずかであるため腕の太さにもほとんど影響しないため、前腕にある大きな筋肉を狙って鍛えるのが最善です。
2007年の研究では若くて健康的な被験者10人を磁気共鳴画像法を用いて上半身の筋肉サイズについて調べたところこのようなグラフが得られました。かなり多くの筋肉が測定されましたが前腕の筋肉はどれだと思いますか。
実はこの右側の部分です。全部とは言いませんが前腕のほとんどの筋肉がこの右側に該当しています。前腕は非常に小さい筋肉が多い部位です。上半身の中で最も大きな三角筋(380.5)は最も小さい前腕の筋肉(4.4)の約85倍のサイズの違いがあります。
そのため、前腕トレーニングは大きな筋肉を狙ったトレーニングか。小さい筋肉を狙ったトレーニングかで前腕の成長効果が全く違います。もし、前腕を鍛えているのに変わらないと悩んでいるならもしかするとそれは小さい筋肉を狙っているからかもしれません。
前腕の筋肉は前部と後部に分かれており、前部は解剖学的には前腕屈筋といわれるように指を閉じる運動と手首を内側に閉じる運動によって強く活性化されています。前腕の前部の中で際立って大きな筋肉はグラフを見てもらったらわかる通りFDPとFDSです。FDPは深指屈筋、FDSは浅指屈筋と呼ばれる筋肉のことを指します。
このヒジから指の先端にかけて伸びている筋繊維のふたつが働く運動は前部が働く運動とほとんど同じです。
ひとつは手首の屈曲、もうひとつは指の屈曲、ただし注意点としてこの筋肉は第2指から第5指、つまり人差し指から小指の屈曲のみに関係し、親指の屈曲には働きません。指を閉じる運動によって活性化されるためバーベルを握ったり握力を使う運動やハンドグリップを握る握力トレーニングによってこの筋肉は活動し、2015年の調査によると握力と前腕屈筋、つまり前腕の前部のサイズには正の相関関係がみられ、握力が強い被験者ほど前腕の筋肉が大きい傾向にあるようです。
握力を使う筋肉はグリップサポートナシのトレーニングをすると前腕の筋肉を働かせることができるので前部を狙って鍛えなくても筋肉が落ちたりすることはなく、筋肉が増える可能性も十分にあります。
ただし、2004年の研究によると前腕を狙った種目がない一般的な全身トレーニングでも前腕は成長していっましたが、全身トレーニングに加えて前腕のアイソレーショントレーニングを追加させたグループはより成長しており、すべての測定値で大幅な前腕の力の向上を示しているように、前腕の筋肉は直接的にトレーニングしなくても筋肉がある程度は構築できる可能性がありますが、それが最適ではありませんし、握力を使うトレーニングはいくつかの問題点があるのでチャプター3で紹介する種目をするのがおすすめです。
前腕の後部は解剖学的には前腕伸筋と呼ばれるように前部と逆の運動、指を開く運動と手首を外側に伸展させる運動ですが腕橈骨筋と呼ばれる筋肉のみヒジ関節と手首の関節にまたがっている筋肉であるためダンベルカールのようにヒジを曲げる運動にも働きます。
後部のトレーニングでは腕橈骨筋に集中してトレーニングすることが最善です。先程の研究で示されているように腕橈骨筋は前腕の筋肉の中でもかなり巨大なほうであり、特に後部の中では群を抜いています。
さらに後部は外見的にも前部よりも重要な筋肉であり、前部よりも圧倒的に人の目に触れやすい筋肉です。前部は握力に関係しているため多くのウエイトトレーニングでも活性化されますが後部はほとんど活性化されないため前腕トレーニングで絶対に後部を無視してはいけません。
腕橈骨筋はヒジ関節と手首の関節にまたがる筋肉であるため後部を鍛えるときは指関節の伸展ではなく肘関節の屈曲と手首の伸展の2つを使って鍛えましょう。
前腕を最短で成長させるための最強種目は2つあり、前部用と後部用があります。
前部のトレーニングで重要なのは浅指屈筋と深指屈筋を狙うこと。この2つの筋肉は親指以外の指の屈曲と手首の屈曲が重要です。握力トレーニングでは手首の屈曲がないのでダンベルリストカールがおすすめです。
ベンチ台に前腕を置いて手首だけ外に出します。一般的なリストカールはダンベルを握って手首だけを屈曲させますがそれでは前部の筋肉を最大限使えないため指の関節を使うためにもダンベルを指先に向かって転がします。スタートでは出来るだけ指先にダンベルを転がして落ちる寸前で手首を屈曲させるのと同時に握りこみます。
このトレーニングは筋肥大にとって重要な要素がすべて入っています。
近年の科学的なデータでは筋肥大は広い可動域とストレッチが重要であることを示しています。スタートポジションでは手首を限界まで伸展させることで前腕の筋肉がストレッチし、指も開いて伸展させることで前腕の筋肉が伸ばされます。
握りこむ状態を維持する握力トレーニングはじめ多くの前腕トレーニングにはこのストレッチがないためこれは大きな差になります。手首を伸展させて前腕を伸ばしても指が完全に屈曲しているため、これは収縮とストレッチを同時にかけているようなもので筋肉のストレッチを大きく減少させます。
このリストカールはスミスマシンでやると一番やりやすいです。バーの軌道が固定されていてやや斜めになっているため向きを合わせるとダンベルが落ちる心配をしないで前腕の前部を鍛えることができます。ヒジを90度曲げた状態を維持して手首と指を曲げます。ジムの混み具合など見ながら試してみてください。
注意点としてはダンベルを握りこむときにヒジを曲げて上腕二頭筋の筋肉を使わないでください。ヒジから手首まではしっかりベンチ台につけて固定させ、スミスマシンではヒジを90度に保った状態を維持して曲げたり伸ばしたりしないようにしましょう。
腕橈骨筋はヒジから手首にまたがる筋肉であるため一般的なカールトレーニングでも活性化されていますが、バイセプスカール等の手のひらを上向きにしたカールでは上腕二頭筋にウエイトの負荷は集中し、腕橈骨筋は眠ったままです。この筋肉を強く活性化させるためには手のひらを下にする回内グリップか手のひらを向かい合わせにするニュートラルグリップでカールをするのが効果的です。
この筋肉を狙った代表的な種目はハンマーカールがありますが、この種目はダンベルを下に下げたときに重力による負荷が無くなり、腕橈骨筋のストレッチが無くなるため、筋肉の成長にとって効果的であるとは考えづらいです。
基本的にはヒジを伸ばした時に負荷がかかり、回内グリップのトレーニングなら効果的ですがここではリバースグリップのEZバープリチャーカールを紹介します。プリチャーカールは腕を斜め横向きに設定するためヒジを伸ばした時にも前腕に負荷がかかるフリーウエイトカールでは数少ないストレッチのかかる種目です。
EZバーのこの部分を握ってカールを行います。腕の角度は横過ぎると上部での負荷が無くなってしまうため自分の体から少し前に出して肩関節の屈曲角度45〜30度程度がおすすめです。サムレスグリップで親指を上にかけてカールを行います。腕橈骨筋を活性化させる重要なポイントとしては手首の伸展です。普通の回内グリップカールでは腕橈骨筋のヒジ関節の屈曲しか使用できませんがスタートで力を抜いて手首を曲げてフィニッシュで自分の正面に手のひらを向けるようにすると手首の伸展が加えられるため腕橈骨筋がより強く働くようになります。
注意点としては必ず前腕がパッドに触れるまでウエイトを下に下げましょう。プリチャーカールをしているほとんどの人はヒジを伸ばし切るまでウエイトを下げていません。これはストレッチのカットと可動域の縮小を意味するため筋肉の成長を間違いなく妨げています。
どのトレーニングでも広い可動域とストレッチを忘れずトレーニングしてください。正しいリバースグリッププリチャーカールはウエイトプレートなしでも十分トレーニングになります。
前腕は3つの筋肉。深指屈筋、浅指屈筋、腕橈骨筋が巨大であるため成長しやすい筋肉です。この部位を狙いましょう。
前腕を鍛えるときはトレーニングの最後に鍛えるのがおすすめです。最初に前腕を鍛えると他のトレーニング、特に背中のトレーニングで背中が限界に近づく前に握力が限界。というように十分な背中トレーニングができない可能性があります。
筋肉は高頻度でトレーニングするほど成長することを多くの科学的なデータは示しているため、出来れば毎日3setずつでもいいので前腕を鍛えるとかなり成長しやすくなります。月曜日は前部、火曜日は後部というように交互にトレーニングするのもおすすめです。
前腕トレーニングは疲労が非常に小さいため、かなり限界に近いレベルまで追い込んでも問題のない可能性が高いです。高回数でトレーニングすると高いボリュームと毛細血管とミトコンドリアを強化できるため筋肉の成長にかなり大きなメリットがあります。前腕は筋力よりもボリュームを優先したほうが良いと考えているため前腕トレーニングではパーカーフィットネスのおすすめとしては30~40rep出来る重量を限界までやるトレーニングをするとかなり短い時間で筋肉を成長させられると思います。
スピードをつけて素早くやるよりもコントロールさせながら1rep2〜3秒は最低でもかけるのが効果的です。特にストレッチポジションで筋肉が十分伸びているか確認するのは非常に重要です。正しく丁寧にを忘れずトレーニングしてください。重量はそこまで重要ではありません。成長しやすい大きな筋肉を効果的な方法で鍛えると短期間で前腕を成長させることができます。