カッコイイ体の代表格でもある逆三角形を作るためには広背筋の広がりが非常に重要です。この筋肉の広がりを作ることで逆三角形の横のラインができるようになります。しかし、背中の広がりを作ることはそう簡単ではありません。背中についての解剖学的知識や科学的に裏付けられた鍛え方をする必要がありますが、それができている人はそう多くありません。
この記事では背中を広げるために絶対にやって欲しい7つの鍛え方について科学的なデータを基に解説します。
背中の広がりを作るためには3つの筋肉を鍛える必要があります。広背筋、そして大円筋、小円筋です。とはいっても小円筋はローテーターカフという非常に小さい筋肉であり、大円筋も広背筋よりははるかに小さい筋肉です。この部分のサイズとしてもほとんどの背中の広がりは広背筋から構成されていると考えてOKです。
広背筋が働く解剖学的な運動としては肩関節の内転、伸展、内旋の3つがあります。この運動で広背筋は働きますが大円筋もこの運動で強く活性化されるため広背筋狙いだからといって大円筋が遅れてバランスが悪くなるなどはなく広背筋さえ狙っていれば広がりの筋肉はほぼすべて強く活性化されます。
広背筋は人間にある筋肉の中でも非常に広い範囲をカバーし、背中から始まり脇の下に挿入されている筋肉です。
筋肉は腕を上にあげたときに伸ばされ、下に下げたときに収縮します。これは広背筋が肩関節の内転と伸展で最も活性化されることからもわかると思います。
スポーツサイエンティストのmike israetel博士は背中の広がりはロウなどの水平プルではなく、垂直プルで最も強く活性化されるため背中のトレーニングメニューではこの上から下に引っ張る種目を組み込む必要があると話しています。
ロウトレーニングなどの水平プルで広背筋を鍛えようとする人もいますが、解剖学的な観点からどう頑張っても肩関節の伸展範囲は90度しかないため背中の広がりを作るために効率的ではありません。
背中の広がりを作るときは内転、または伸展で上から下に引っ張る種目が必要です。
広背筋を鍛えるときは肩関節の内転に注目しましょう。特に広背筋トレーニングではラットプルダウンや懸垂など腕を横に出しながら下に引っ張る内転をメインにしたトレーニングが代表的です。
広背筋を鍛えるときに注意しなければならないのはグリップと手幅、広背筋トレーニングでは手幅を広げると広背筋といわれますが2017年の研究のように4つどのグリップでも広背筋の筋活動は変わらなかったことを示しているため、どのグリップを選択しても大きな差はない可能性が高いです。
基本的には皆さんのやりやすいグリップで構いませんが、おすすめとしては回内グリップで手幅を肩幅より少し広めの手幅がおすすめです。回内グリップは回外グリップのように逆手でやるよりも肩関節の内旋があるため広背筋をより強く活性化する可能性があります。
手幅についてはワイドもナローもそこまで大きな差はないと思いますが、ワイドにしすぎると体を持ち上げる距離が短くなり、筋肉の成長にとって非常に重要だと認められている可動域が狭くなります。そして過度に手幅を広げると手首が危険にさらされるため手首が硬い人はケガの原因になります。そのため、広背筋の成長にとっては極端なワイドは避けて肩幅よりも少し広めのグリップでトレーニングすることを推奨します。
背中の筋肉を成長させるためには、背中の筋肉を働かせるようにすることが非常に重要です。メチャクチャ当たり前に聞こえるかもしれませんが、背中は人間の背面にある筋肉であるため腕や脚の筋肉などとは違いトレーニング中にみながらトレーニングすることがかなり難しいです。
これによって背中の筋肉は特に筋肉が働いている感覚を感じにくいという人も少なくないため、「懸垂中に背中というよりも腕が先につかれる」などトレーニングで背中というよりも腕に頼ってウエイトを持ち上げてしまう人も多いです。背中を鍛えるためには背中の筋肉の活動を高めるテクニックが必要になります。筋肉を意識的に働かせる、効かせるようにするマインドマッスルコネクションは背中の筋肉の収縮を感じられない人に特におすすめの方法です。
2018年の調査でもこのテクニックは長期的な筋肉の成長にとってメリットがある可能性が示されているように、特に筋肉に効かせられない初心者の人にとっては非常に効果的です。
ラットプルダウン中の広背筋の活性化について調べた研究では被験者のラットプルダウン中にコーチが背中を触ることで広背筋の活動が上昇したように触りながら行うとより背中が働きやすくなります。
一人でやる場合はシングルアームで行うと触りながら行うことができます。腕に逃げてしまうという人は最初のウォーミングアップでこの種目をやって広背筋を動かす感覚をつかんでから懸垂やラットプルダウンをしたり、初心者の人はまずこの種目で背中を鍛えるのがおすすめです。
2023年の2月6日に公開された最新の研究では19人の若い女性の腕をAとBに分け、Aの左腕はプリチャーカールの最初の可動域0~68度を行い、Bの右腕は68~135度の最終可動域を行いました。画像を見てもらえばわかると思いますがBの最終可動域グループのほうが重いダンベルを扱うことができました。視聴者の皆さんの予想としてもダンベルを下まで降ろさないカールのほうが2倍近くの重量を扱えることが予想できると思います。
にもかかわらず上腕二頭筋の成長は軽い重量で0~68度のプリチャーカールを行った腕のほうが優れていました。これは重量が扱いやすいやり方よりも軽い重量でもいいので丁寧にトレーニングをしたほうが効果が高いことを意味します。
近年の膨大な数のデータで筋肉は伸びている部分で一番負荷がかかり、成長することを示しています。これは多くのシステマティックレビューによって証明されていることであり、非常に強い科学的信頼性があります。
背中トレーニングでも広背筋を伸ばすステップが必要です。必ず鍛えたい部位が伸びている瞬間があるのかを意識しましょう。広背筋トレーニング、垂直プルで非常に多いミスがストレッチ不足。懸垂でのこのポイント、ラットプルダウンでのこのポイントで広背筋は最大限まで伸びるため、トレーニング中は必ずこの瞬間を意識して筋繊維が伸びているのを感じましょう。
良くあるミスはこの部分をカットしていること。肘を伸ばし切る前に次のレップに挑戦してしまうことです。懸垂、ラットプルダウンでは肘を伸ばし切って背中を伸ばす必要があるにもかかわらず肘が伸びる寸前で止めてしまうと最も重要なストレッチ部分をカットしてしまうことになります。
負荷を残すという言い方をされることもありますがこういった鍛え方よりも必ずトレーニングでは肘を伸ばし切って筋繊維を伸ばしてからウエイトを引っ張るようにしましょう。
広背筋を鍛えるときは単純に上から下に引っ張る意識だけでは不十分です。広背筋は肩から背中に向かって伸びている筋繊維です。そのため、肩をすくませることでも肩はこの筋肉はある程度伸ばすことができ肩甲骨の上下でもこの筋肉を働かせることができます。
つまり、引っ張る動作と同時に適切な肩甲骨の運動をすることで広背筋をより強く活性化することができます。まずはストレッチポジションで肩甲骨を上にあげて広背筋をストレッチさせます。ストレッチは先ほど話したように筋肉の成長にとって非常に重要な要素であるため単純に腕を上に上げるよりも肩を伸ばすことで背中が広がってストレッチが強くなります。そしてバーを下に下げるのと同時に肩甲骨を下に下げて収縮を強めます。
背中トレーニングが腕に逃げてしまうという人のほとんどはこの肩甲骨の運動が正しくなく、頑張って引っ張ろうとしたときにフィニッシュで肩がすくんでいて広背筋の力を消してしまっていることが多いです。肩がすくんで広背筋がフィニッシュで伸ばされると背中の力が無くなり、ウエイトを持ち上げる力が腕の筋肉に集中することになるからです。
広背筋を鍛えるときは単純にバーを下げたり上げたりするだけでなく肩甲骨も同じように動作させて広背筋をより強く活性化させると背中の広がりがもっと成長しやすくなります。
肩関節の伸展を使って広背筋を鍛える最も大きなメリットはバリエーションの追加です。最新の種目数と筋肉の成長について調べた研究をまとめて分析したレビューペーパーでは筋肉の成長のためには多すぎないある程度のバリエーションで鍛えることが必要であることを示しています。
ラットプルダウンと懸垂のように内転の種目でバリエーションをつけるのも効果的ですが、もっといい方法があります。
代表的な広背筋を鍛えるトレーニングはほとんどが内転を使ったものですが、広背筋は伸展によってもかなり強く活性化され、2014年のある筋電図分析では広背筋は肩関節の伸展中に最大の筋活動が達成できることが確認されています。伸展は無視されがちな広背筋の解剖学的な運動ですが非常に強力であり、必ず広背筋トレーニングで取り入れるべき運動です。
フィットネス研究者のmenno henselmans博士は広背筋トレーニングでは伸展と内転の両方を使用する必要があると解説しています。
伸展はベントオーバーロウなどでも使用されていますがこれらの種目にはストレッチポジションがありません。ほとんどの場合90度程度しか可動域がなく、伸展の最大可動域の半分、なおかつカットされるのはストレッチポジションで筋肉の成長に最も重要な可動域です。そのため、ロウトレーニングはラットプルや懸垂よりも広背筋にとって非常に効率が悪い種目です。
伸展のおすすめはラットプレイヤー、ラットプルダウンでナローグリップにすれば脇が閉じて伸展運動になりますがこの種目では広背筋がストレッチしません。ナローグリップは一貫して上向きで物理的な負荷は下から上にまっすぐですが伸展でストレッチを入れるためには体に対して横向きに力がなければいけません。
この種目ではストレッチ部分で体を前傾させたときに体に対して横向きの力がかかるため広背筋がかなり強くストレッチします。一度ナローグリップのラットプルダウンとラットプレイヤーで広背筋のストレッチの違いを感じてみてください。間違いなくラットプレイヤーのほうが広背筋が伸ばされるのを感じると思います。
筋力と筋肉量にはかなり密接な関係がありこれはかなり多くのデータによって証明されています。例えばベンチプレスと大胸筋のサイズについてはかなり強い相関があり、ベンチプレスの筋力が伸びるのと同時に大胸筋のサイズも増加していることがわかります。
ベンチプレスやスクワットで重量を追加して自分の筋力を上げようとする人は多いと思いますが意外と背中のトレーニングでは正しい種目でプログレッシブオーバーロードを意識できている人はあまり多くありません。
背中の広がりをつけたい場合は懸垂の重量を追加することを強く推奨します。筋トレの代表的な種目BIG3はベンチプレスとスクワット、デッドリフトであるため、ベンチプレスは胸、スクワットは脚ということになってデッドリフトは背中と思いがちですが、少なくともデッドリフトは肩関節の伸展がごくわずかしかないため広背筋にはほとんど刺激は入っていないためこの種目の重量をどんどん追加しても広背筋は成長しないでしょう。
そしてラットプルダウンマシンも広背筋にとっては素晴らしい種目ですがラットプルダウンは引っ張るのと同時に背中を45度下げると広背筋の活動が11%増えることが示されています。しかし、問題なのは高重量になるとこの背中を後ろに下げる運動に頼ってウエイトを引っ張ってしまっている人がかなり多いことです。特に重量に挑戦するときはギリギリのレップを扱うため無意識にこの勢いに頼ってしまう場合がかなり多いです。
懸垂はチートが他の種目よりも圧倒的に使いづらく、単純に背中の力だけで体を持ち上げることができます。背中の広がりを作るときは懸垂をどんどん伸ばしていくのがおすすめです。自重だと軽すぎるという人は加重ベルトを買ってトレーニングするのが良いと思います。
背中の広がりを作るためには広背筋にフォーカスするのがおすすめです。広背筋を鍛えるときは上から下に引っ張る運動が必ず必要です。
おすすめの種目としては懸垂とラットプレイヤー、懸垂は肩関節の内転を使って広背筋を鍛え、ラットプレイヤーは肩関節の伸展を使って広背筋を鍛えます。この2つの運動バリエーションによって懸垂とラットプルダウンなど内転運動のみで広背筋を鍛えるよりも筋肉の成長が促進されます。
必ずスタートポジションで肘を伸ばし切り、広背筋を伸ばすことが必要です。ストレッチを意識して他の人のトレーニングを見るとラットプルダウンや懸垂でちゃんと広背筋を伸ばしていない人がかなり多いことに気が付くはずです。スタートで肩甲骨を上にあげて広背筋を伸ばし、引っ張るのと同時に肩甲骨を下に下げて広背筋を収縮させます。
きつくなってくると肩がすくみやすいことに注意してください。肩がすくんで肩甲骨が上がってる状態で引っ張っても広背筋はほとんど収縮しません。一度ワンハンドのケーブルプルで肩をすくませたまま引っ張ると広背筋の収縮がほとんどないのが分かると思います。
背中トレーニングが苦手な人はマインドマッスルコネクションを使いながらトレーニングするのがおすすめです。ただし、この効かせるテクニックは過度にやりすぎると逆効果になるため筋トレ上級者で背中を意識しなくても鍛えられる、腕が先に疲れるということはないという人は過度に筋肉に効かせる意識をする必要はありません。
そして、懸垂のプログレッシブオーバーロードも非常に重要です。懸垂でどれくらいの重量が何回上がったかを記録して次回はそれを超える意識が非常に大切です。ただし、頑張りすぎるとフォームも崩れやすいので無理はし過ぎないように注意が必要です。
科学的なデータでは高頻度で3~6setずつ、ちょっとずつ鍛えたほうが筋肉が成長しやすく回復能力も高いことがわかっているため、週に1~2回で背中をトレーニングするのではなく週5回4setずつなどこまめに鍛えましょう。背中の筋肉は大きいからオフが必要、毎日鍛えてはいけないというのは迷信です。
むしろ毎日、出来るだけ高頻度で鍛えたほうが筋肉は成長します。広背筋は懸垂などの背中トレーニング以外で鍛えられることがほとんどないためおすすめとしては1週間で20set以上を確保するのがいいと思います。トレーニングでは高重量低回数と低重量高回数を使い分けてトレーニングしましょう。
20rep以上の高回数トレーニングには非常に多くのメリットがあるので是非取り入れてください。詳しいメリットが知りたい人はパーカーフィットネスの他の動画に詳しく解説されています。