筋肉の成長に効果的な筋トレ法は多くあります。例えば胸トレや肩トレのように1日でひとつの部位を20setと集中的にやるよりも大胸筋3set、肩3setと毎日ちょっとずつ鍛えたほうが筋肉が成長しやすいというのは多くのデータで証明されています。
しかし、筋トレ効果そのものを上げることができるのでしょうか。ダンベルカールを同じ回数、同じ重量、同じセットでも効果の違いを生み出すことはできるでしょうか。
結論から言うと出来ます。筋肉が成長しやすい環境を体の中で作ることによって一緒にトレーニングしているトレーニング仲間の間でも差が出ることを科学的なデータは示しています。
この記事では筋肉が成長しやすい体を作るために意識しなければいけない2つのあるもの。そしてその2つを強化するための筋トレ法について科学的なデータを基に解説します。
2022年の9月に行われたカナダの研究では、被験者は自分の両足をAとBに分けて鍛え方をそれぞれ分けました。Aの脚は最大心拍数の50%のサイクリングトレーニングを45分間行うトレーニングを週3回、6週間実行し、Bの脚は6週間何も実行しませんでした。
次の10週間で両方の脚をスクワット、レッグエクステンション、レッグプレス、レッグカール、カーフレイズの下半身トレーニングを実行しました。トレーニング期間後、被験者の筋肉のサイズを測るとサイクリングを実行した脚のほうがそうでなかった脚よりも速筋繊維と遅筋繊維のサイズが優れている傾向がありました。
筋肉の成長が優れていた被験者の脚を分析するとあるものが増加していることを発見しました。
2017年のカナダで行われた研究では22人の男性を対象にあるものの増加が外側広筋における速筋繊維の成長を促すことを示しました。
続いて2019年の別の研究では年配男性を対象にした結果。これが高かった被験者のほうが外側広筋の筋肥大効果が優れていることがわかりました。
そのあるものとは...毛細血管です。筋肉の成長が優れていた被験者の筋肉を調べたところ毛細血管の密度が高いことがわかりました。毛細血管は隠れた筋肥大ファクターのひとつである可能性があります。この血管は筋繊維に酸素やホルモンを供給するパイプのようなもので、この毛細血管を強化することで筋肉の成長効果が促進されるのは確かに理にかなっています。
毛細血管を拡張することで筋肉へのホルモンと酸素の供給と衛星細胞の強化によって筋肉がより成長しやすくなります。
そしてもうひとつは1つの細胞の中に100~2000個程度存在するといわれています。
2018年の研究では被験者に12週間のウエイトトレーニングを指示したところ、最高の筋肥大効果を経験した被験者はこの物体が筋肉中に多い傾向にあることを示しました。
そして2017年のレビューではこの物体の体積と機能が細胞の増加に関連していることを示しています。
その物体とは...ミトコンドリアです。ミトコンドリアは筋肉繊維内の構成要素であり、筋収縮などのエネルギーを生成するうえで重要な役割を果たし、トレーニングのパフォーマンスの低下を緩和させ、インターバル間の回復においても役割を果たします。
さらに筋肉を大きくするためには多くのエネルギーが必要なプロセスですがミトコンドリアはこの筋肥大プロセスを助けることもできます。
毛細血管とミトコンドリアを意識することで筋肉がより成長しやすい環境を作ることができます。この2つに差がある人が同じトレーニングをすると筋トレVOLや時間が全く同じでも筋肉のサイズが大きく変わる可能性があります。
次のチャプターでは毛細血管とミトコンドリアを強化するためのトレーニング法について紹介します。
Strong by scienceのグレッグ・ナックルズ博士は筋肉が成長するにつれてタンパク質等の物質が遠くに移動するため、細胞内のエネルギーが枯渇する可能性があること。このエネルギー不足を回避するために毛細血管密度の増加は理にかなっていると示しています。
毛細血管密度とミトコンドリアを強化する方法は2つあります。
ひとつは有酸素運動。最初に紹介した被験者の脚を分けて片方は事前に有酸素運動を行わせた研究では、筋肉の成長が優れていた被験者の脚の毛細血管密度が有酸素運動によって拡張されていたことを示しました。有酸素運動は筋トレ直後や直前にやると筋肉の成長を大きく妨害しますが、筋トレとは別の日、つまりオフの日に行うと筋肉の成長を妨害しないどころか促進させてくれる可能性があります。
しかし、有酸素運動で筋肉を構築するのはやや遠回りだと思います。ミトコンドリアや毛細血管密度の増加効果はありますが有酸素運動では直接的に筋肉を成長させることができないため短期間では筋肉のサイズに大きな影響が出ない可能性が高いです。
さらにこの毛細血管密度とミトコンドリアの強化は局所的な部位でしか起こりません。例えば有酸素運動といったらランニングやウォーキング、サイクリングなどほとんどのトレーニングが脚を動かすものです。下半身を使った有酸素運動でミトコンドリアと毛細血管密度の増加は下半身でしか起こらず上半身にはメリットがありません。
そのため、筋肥大のために有酸素運動をするのはあまりおすすめしません。
最もおすすめの方法は高回数トレーニングをすること。科学的なデータは筋持久力がミトコンドリア、毛細血管密度に深い関係性があることを示しています。
2019年のカナダの研究では1RMの30%でのトレーニングと80%でのトレーニングはボリュームを同じにしたところ筋肥大効果がほとんど同じであることがわかりましたがミトコンドリアのタンパク質含有量は1RMの30%と低重量高回数のほうが優れていました。
そして2019年の研究では1setあたり8~12repのトレーニングと20~25repのトレーニングでは毛細血管形成において20~25repのトレーニングを行った被験者のほうが優れている傾向にありました。
科学的データによって1RMの30~80%の範囲においてはボリュームが同じ場合、筋肥大効果は変わらないことが証明されています。しかし、これは12週間以下の研究を基にしたものです。長期間被験者を拘束しておくことは不可能であるためこれはある意味仕方ないことではありますが、長期的にみると高回数でトレーニングしてミトコンドリアと毛細血管を強化しておくことは筋肉が成長しやすい体を作り、トータルの筋肉量に大きなメリットをもたらす可能性があります。
2003年のアメリカで行われた研究では9か月間トレーニングを被験者に指示したところ8~10repと固定させたグループよりも8~10repに加えて12~15repと高回数のトレーニングを取り入れたグループのほうがはるかに除脂肪体重の増加が高いことがわかりました。
さらには高回数でトレーニングすることは有酸素運動と違い脚だけではなく腕や肩など上半身のミトコンドリアと毛細血管の強化ができ、当然ですが高回数トレーニング自体で筋肉を直接的に成長させることができます。この二つを強化したい場合は基本的には高回数トレーニングがおすすめです。
科学的なデータでは1RMの30%を下回ると筋肥大効果が大きく落ちることが示されているためおすすめとしては30~40repの範囲でトレーニングするのがおすすめです。
筋肉が成長しやすい体を作るためには、毛細血管とミトコンドリアを意識して鍛えるのがおすすめです。これは複数の研究で筋肉のサイズとの繋がりが確認されており、その働きを考えると確かにそれは理にかなっています。
効率的にこの2つを鍛えるためには筋持久力にフォーカスすること。有酸素運動と高回数トレーニングによって筋持久力を上げることができますが、高回数トレーニングのほうがミトコンドリアと毛細血管を強化しながら筋肉も直接的に成長させることができます。
各部位のトレーニングの1/3から1/2程度、30~40repの高回数トレーニングを取り入れてみましょう。大胸筋20setなら7~10set高回数トレーニングがおすすめです。この動画が良いと思っていただけたら是非高評価をお願いします。