筋肉をつけたい。そして脂肪も落としたい。そのためには筋肉をつけてから脂肪を落としたほうが良いのか。脂肪を落としてから筋肉をつけたほうが良いのか。短期間でボディメイクをするためにはそのどちらでもありません。
最短ルートは筋肉をつけながら脂肪を落とすことです。脂肪を落としながら筋肉をつけることは比較的簡単だと思われがちですが、実はそうではありません。しかし、不可能でもありません。
正しいやり方をしないと脂肪を落としながら筋肉をつけることはできません。脂肪は落ちたけど筋肉がかなり減ってしまった。筋肉は付いたけど脂肪が全然落ちなくていつもと変わらない。この動画では脂肪を落としながら筋肉をつけるための重要な3つのステップについて科学的なデータを基に紹介します。
筋肉をつけながら脂肪を落とすことを一般的にはRecomposition、略してリコンプといいます。これは体の脂肪と筋肉の比率を変える。もう一度作り直すという再構成の意味があります。
脂肪を落としながら筋肉をつける体の再構成は熱力学の観点から矛盾しています。
例えば筋肉の構築と脂肪の燃焼についての考え方の最も主流なものは筋肉をつけるためには余分なカロリーを摂取する必要があり、脂肪を減らす場合はカロリーを不足させる必要があるというものです。
これはエネルギーの観点から理にかなっています。逆に脂肪を落とすことは自分が体重を維持できるエネルギーを不足させて体が機能するために必要なエネルギーを脂肪を分解することで補ってもらいます。
これにより脂肪の燃焼と筋肉の構築はエネルギーを増やしながら減らすという風に不可能のように見えます。しかし、そう単純ではありません。
2013年の研究では被験者に600Cal(kcal)余分に与えても筋肉の量が大幅に増加するということはなく、体脂肪だけが3倍以上増加したことを示しているようにカロリーの足し算引き算のみで筋肉が増えたり落ちるわけではありません。
そのため、筋肉を増やしながら脂肪を落とすリコンプは真の意味で矛盾しているわけではないため不可能ではありません。
まず最初に解説したいのは比較的簡単にリコンプができる人です。これから紹介する3種類の人たちは健康的な食生活と筋トレ。この2つを意識していれば簡単にボディメイクができます。
まずは筋トレ初心者。筋トレを始めたての人はウエイトトレーニングによって筋肉が大幅に増える可能性が高く、トレーニングによる脂肪燃焼効果も顕著です。
そして、体脂肪25%以上とかなり多くの脂肪がある人。2000年に行われた研究では筋トレ経験のほとんどない、体脂肪率26%の警察官を対象にウエイトトレーニングプログラムを開始した結果。12週間で9.3ポンドの脂肪を失い、8.8ポンドの筋肉量を増やしました。
そして、アナボリックステロイドなどの薬物を使用している人はそうでない人よりも簡単に大量の筋肉をつけられ、脂肪を燃やすことができます。
こういった人は特別なことをしなくてもリコンプが可能ですが、この動画では筋トレ中級者以上で脂肪の量も減らしたいけど25%とメチャクチャあるわけではなく、薬物を使用していないナチュラルのトレーニーの人を対象にしています。こういった人はリコンプができるのか。
実際、科学的な研究でもかなり多くの被験者でリコンプが確認されており、こちらのサッカー選手を対象にした研究では174kg以上のスクワット、131kg以上のベンチプレスができる被験者でも体の再構成が見られました。
さらにはIFBBに参加している女性選手の一部でもこちらの研究によるとコンテスト準備期間に筋肉が増えることがあるようです。
そして2020年の先ほど紹介したクリストファーバラカット博士の研究では「体の再構成: 訓練を受けた個人は筋肉を構築し、同時に脂肪を失うことができますか?」というタイトルでリコンプについて直接データをレビューしました。
その結果、「体脂肪率が比較的高いトレーニングを受けていない被験者の場合、リコンプが数え切れないほど記録されています。しかし、より体脂肪率の低い個人や筋トレ経験がある人にとってもリコンプは可能である」ということを示しています。
そのため、リコンプは筋トレ経験が豊富でも、脂肪を落としたいけどメタボの人のようにあるワケではないという人でも可能です。この次のチャプターではリコンプの具体的な方法について解説します。
当たり前ですが筋肉を増やすためにはトレーニングが必要です。ウエイトを持ち上げる習慣がないとどれだけ最高な食生活をしていても筋肉を増やすことは不可能でしょう。
さらに筋肉を成長させることで基礎代謝が上がり、トレーニングすることによる消費カロリーによって脂肪燃焼を助けることができます。筋肉は安静時に1ポンド当たり推定6Cal(kcal)を毎日消費するため、筋肉をつけてそれをトレーニングによって動かすことで消費されるカロリーが上がり、食事制限がわずかに楽になる可能性があります。
そして、2021年の9月に行われたレビュー研究では健康的な成人の筋トレが体脂肪率などに及ぼす影響について調べた研究を分析しました。結果として20週間で1.5ポンドの脂肪をウエイトトレーニングで減らす効果があるコトがわかりました。基礎代謝量も筋トレによる消費カロリーも燃焼される脂肪の量を大きく左右するわけではありませんが、プラスになることは間違いありません。
筋肉を成長させるためには筋トレが必要ですが、脂肪を落とすためにはカロリーをカットする必要があります。脂肪を燃焼させるためには消費カロリーを上げるか摂取カロリーを下げる方法がありますが、効率的なほうは圧倒的に摂取カロリーを下げる方法です。
スティーブクックさんの10000Cal(kcal)チャレンジで食事制限と有酸素運動の格差が明確に表れてるように、1時間有酸素運動に費やしても5分で食べられるお菓子によってそれは台無しにできます。
さらに有酸素運動は干渉効果というものがあり筋肉の成長を妨げます。多くの研究でランニングなどの強度はかなり強く筋肉の成長を妨げることはわかっていましたが、HIITのような高強度の形態とLISSのような低強度のような形態はまだ研究不足でした。しかし、最新のメタ分析によるとHIITはLISSよりも筋肉の成長を妨げるということがわかりました。そのため筋肉の成長と脂肪燃焼を両立させるためには有酸素運動よりも食事制限をおすすめします。
それではどれくらいのエネルギーをカットすればいいのか。これについてもメタ分析による信頼性の高いデータが出ています。同じく2022年のメタ分析ではカロリーのカットは除脂肪体重の増加を若干弱めましたが完全に鈍化させたわけではなかったことに加えて1日当たり500Cal(kcal)を超えるカットは避けるべきであると結論付けました。
500という数字はその人の体重などにもよりますが極端に太っているわけではないリコンプが難しい人には当てはまると思います。
タンパク質は筋肉の成長を促すだけではなく分解を抑制します。2018年のブラッドシェーンフェルド博士の研究では高たんぱく食を摂取した被験者は1kgの脂肪を落として筋肉を獲得したことを示しましたが低たんぱく質グループは筋肉を増やすことができませんでした。
基本的にはレビューペーパーには毎日体重1kgあたり1.6g以上のたんぱく質が推奨されているため最低でもこの量を推奨しますがこのデータはリコンプをしている人が対象ではありません。カロリーが不足している人は普通の人よりも多くのたんぱく質が必要な可能性があるため、体重1kg辺り2.0g以上のたんぱく質を毎日摂取することを推奨します。
低カロリーのプロテインサプリメントや高たんぱくの食品などを摂取してタンパク質を多く稼ぐと効率よくタンパク質摂取量を増やすことができます。
最後におすすめのリコンプルーティンについてまとめて紹介します。
プロボディビルダーで研究者でもあるエリックトレクスラー博士のリコンプのガイドとしては5つのことが挙げられています。
リコンプが成功しやすい人は
このうち2つは動画の視聴者の人には当てはまらず、最後のひとつは増量についてのポイントであるため1と4に注目しましょう。トレーニングでは最低でも各部位1週間で10set以上を確保するようにし、筋トレ経験者の場合は多くのボリュームが必要になるので週に2~3回のトレーニングは最低でも必要になります。
プログレッシブオーバーロードも必ず意識しましょう。減量してるからといって重量がどんどん落ちるのを許容していくと筋肉の減少が促進されたり成長が制限されてしまう可能性があります。最低でも維持で、むしろ挙げられる重量を増やすくらいの意識をするのがおすすめです。
そして、減量率を低くすること。これが筋肉の損失にとって非常に重要です。500Cal(kcal)を超えるカットは好ましくないといいましたが、500Cal(kcal)のカットが最適というわけではありません。カロリーのカットが少ないほど筋肉が成長し、分解される量が減ります。
これについては皆さんの目標と緊急性が重要です。当然ですが500kcalの上限に近いほど脂肪も落ちやすくなります。リコンプで脂肪燃焼と筋肥大、自分にとってどれくらいの割合なのかを一度考えてみてください。
例えば 7:3で脂肪燃焼に重きを置きたい場合。その場合は300~400kcalのカットがおすすめです。
大体の目安と1kg痩せるために必要な期間を載せておきます。
割合 | kcalカット | 1kg体重が落ちる目安 |
1:9 | 100kcal | 6か月 |
3:7 | 100~200kcal | 4か月 |
5:5 | 200~300kcal | 3か月 |
7:3 | 300~400kcal | 2か月 |
9:1 | 400~500kcal | 1か月 |
自分の体重維持カロリーをウェブサイトなどで計算してそこから目的に合ったカットをしてください。カットが少ないほど脂肪は落ちにくいですが筋肉の維持も簡単で成長しやすいことを忘れないでください。逆にカットが大きいほど脂肪も筋肉も落ちやすくなります。
具体的な食事制限プログラム。PFCバランスについては最も重要なのはタンパク質。これを体重1kgあたり2.0g摂取します。
そして、炭水化物と脂質について、2022年の8月に発表されたレビューペーパーではトレーニングを行っている被験者は低脂質でも低糖質でも筋肉量、体脂肪量、パフォーマンスにおいて同じ効果がありました。
そのため、脂質と炭水化物の割合はそこまで重要ではありませんが、脂質を極端に制限する低炭水化物ダイエットはテストステロンが下がることが研究によってわかっているため最低限の脂質は確保することを推奨します。
例えば体重70kg、体重維持calが2500calだとするとまず最初はここからカロリーカットをします。ここでは500kcalにして体脂肪が最も燃えやすく、筋肉量を維持できるぎりぎりの2000kcalに設定します。そして次は一番重要なたんぱく質を計算します。70×2.0=140gのたんぱく質が必要になります。タンパク質は1g4kcalであるため560kcalとなり、残ったカロリーは1440kcalとなります。そして次は脂質の計算です。多くのマクロバランスの推奨として目標摂取カロリーの最低20%を確保する必要があるため2000kcalの20%、つまり400kcalを脂質で埋めます。そして最後に残った分が炭水化物摂取の目標になります。
1.目標カロリー計算
2.必要なタンパク質を計算(体重1kgあたり2.0g)
3.必要な脂質を計算(目標kcalの20%)
4.残った分を炭水化物に当てる
大まかな計算の流れはこのようになります。このマクロバランスとトレーニングをすればボディメイクの最短ルート、リコンプができるようになります。重要なポイントとしては、すぐに効果は得られないことは覚悟してください。体重計の数字は数週間は変わりませんが、3か月続けていけば間違いなく効果が表れるはずです。