2022年の7月31日に公開された非常に最近の研究では被験者を筋トレ頻度週1回と筋トレ頻度週5回の2つに分け、筋肉の成長率を調べました。トレーニングのセット数や種目は両グループ全く同じであり、異なるのは頻度だけでした。
結果として週1回のトレーニンググループは筋肉のサイズが+8%、週5回グループは+10.4%でした。このように科学の進歩とともに筋トレの頻度が高いほど筋肉は成長しやすいことが多くのデータによって明らかになっています。
しかし、高頻度のトレーニングには現在否定的な考えもあり、その中でも科学的な説得力がなく、ほとんど偏見ともいえるものも多くあります。この動画では筋トレ頻度の代表的な迷信について紹介します。
高頻度トレーニングの迷信、ひとつ目は上級者向けではないという考えです。特にトレーニングルーティンについては上級者は分割法、初心者は全身法と考えている人が多いです。確かにボディビルダーのトレーニングルーティンはほぼ各筋肉週に1~2回の分割法で一気に同じ部位を10~20set行うものが大半であるため、上級者ほど分割が適していると考える人が多いです。しかし、これは少し考えてみると全く違うことがわかります。
筋トレ頻度が高いほど筋肉が成長しやすいということは科学によって示されています。この原因は高頻度のトレーニングのほうが筋トレのボリュームが高い傾向にあるからです。そして低頻度の分割法のほうが同じセット数なら、トレーニングボリュームが低い傾向にあります。
なぜならセットが分割出来るからです。例えば1日で同じ部位5setのトレーニングよりも5日で1setずつのトレーニングのほうが持ち上げられる回数は多いことがおそらくみなさん予想できると思います。これは5set一気にやると疲労により2set目以降の回数がどんどん減ります。
しかし、1setずつにすれば月曜の1set目と火曜の2set目に24時間の休憩時間があるためほぼ最高のパフォーマンスができます。簡単に言うと2~3分の休憩か24時間の休憩かどっちがパフォーマンスが高いかということです。
つまり、各筋肉をちょっとずつ鍛えたほうがパフォーマンスは高いということがわかります。これを大胸筋ちょっとずつ、背中ちょっとずつ、腕ちょっとずつとなっていったのが高頻度全身トレーニングです。
あれちょっと待ってって思う人もいるかもしれません。例えば1日で5setを5日で1setずつに変えてパフォーマンスが高いのはわかるけど大胸筋1setやった後に背中の1set分が来るから1日の合計セット数は変わらないから結局パフォーマンスは高い状態を維持できないんじゃないかと思う人もいるでしょう。
確かに1部位5setを一気にやっていたのが5部位1setになるのと同じで1日にでやる合計のセット数は変わりません。しかし、全身法は筋肉の局所性を利用しているためパフォーマンスの低下を最小限にしています。
2022年公開のレビューペーパーでは「抵抗運動後に疲労が蓄積するという証拠はありますか?」という大胆なタイトルで筋トレの疲労と回復について調査した結果、筋肉の疲労にはかなり強い局所性があることがわかりました。
つまり、ベンチプレスをやってからダンベルのプレスをするか懸垂をしてからダンベルのプレスをするかどっちがダンベルプレスのパフォーマンスが高いと思いますか。ほとんどの人が懸垂をしてからダンベルプレスをしたほうがパフォーマンスが高いことがわかります。これは懸垂で使われる筋肉はダンベルプレスでは使用されないためです。
これにより1日全体のセット数は同じでも色んな部位をちょっとずつやったほうがパフォーマンスを維持できることがわかります。
めちゃくちゃ単純ですがこれがメリットです。実際これは机上の空論ではなく科学的なデータによって証明されています。
最新の2021年のレビューペーパーではより大量の筋肥大と頻度についてのデータを分析したところ、高頻度のほうがパフォーマンスが損なわれにくく、VOLが高いため筋肥大効果も高いためトレーニング頻度は高ければ高いほどメリットがあるということが示されています。
トレーニングボリュームが高いというのは初心者よりも上級者のほうがはるかに大きなメリットになります。筋肉というのは上級者になればなるほど成長しにくくなります。これは最初は少しのトレーニングで筋肉を構築する反応を出していた体が、どんどん筋トレの負荷に慣れていって反応しづらくなるからです。
その証拠にフィットネスの研究者であるmenno henselmans博士が研究チームと行ったレビューによると筋トレ初心者は大体1週間で10set程で筋肥大効果が最大になるのに対して、経験者は30set以上でも筋肥大効果が上がり続けることを示しています。
上級者になるとパンプを追い求める人が多くなりますが科学的なデータを見るとパンプの筋肥大効果はゼロまたはほんのわずかであるため、分割法で筋肉をパンパンに張らせてもあまり意味がないことがわかります。
高頻度のトレーニングは筋肉の構築に多くのVOLが必要になる上級者ほど高頻度の全身法が適しているため、上級者は低頻度の分割法、初心者は高頻度の全身法という考えは完全に逆です。高頻度ほどボリュームが高くなって筋肉が成長しやすくなります。
そして最も多い考えが高頻度は回復できないというものです。高頻度で鍛えている人の誰しも一度はいわれたことがあり、高頻度トレーニング否定派のおおよそ9割はこの問題を上げます。
しかし、プロナチュラルボディビルダーのjeff nippardさんがいうように高頻度でも回復はできます。確かに週1回の分割法でやっていたトレーニングを5日にしたら回復の問題が出る可能性は高くなります。しかし考えてみてください。この場合は頻度が多くなったから回復できないというよりは筋トレのセット数が5倍になったことが大きな原因なはずです。
全体のセット数は同じで高頻度にしたら筋肉が回復できなかったという説得力のある証拠はありません。
よく筋肉が回復するのは筋トレ後2日ほどかかるといわれるため、連続して同一筋肉を鍛えてはいけない、回復できないから成長しないように思う人も多いでしょう。しかしこれはおかしくないですか?筋トレ頻度が2倍になれば1日でかかるダメージは半分になるため例えばBro-splitのように1日で20set大胸筋を鍛えた人と高頻度トレで1日3setしかやっていない人で回復にかかる時間が同じ2日だと思いますか?
筋肉の損傷=回復に〇日というのは普通に考えたらおかしいですよね。
筋肉の回復には48時間かかるとか、高頻度=低頻度よりも回復できないというのは1日のセット数や強度などの筋トレに関わる変数、トレーニーそれぞれの筋トレルーティンの違いなどをすべて無視した考え方であり、ほとんど参考にならないように見えます。
そもそも実際の研究で高頻度のほうが筋肉を成長させられることが明らかになっています。つまりこれは筋肉が回復できており、成長できることを裏付けています。
非常に多くの人が誤解していますが筋肉の回復において筋トレ頻度よりもカロリーやタンパク質摂取量が十分であったり、睡眠がしっかりとれているかなど栄養摂取や筋トレ以外の生活のほうが圧倒的に重要です。
さらに先ほどの筋トレの回復についての最新のレビューペーパーではほとんどのトレーニーが回復について誤解していることを示しています。筋肉や神経の回復についてオーバートレーニングの問題は持久力トレーニングなどで起こることであり、ウエイトトレーニングでは回復の問題はかなり起こりづらいことが示されています。
ウエイトトレーニングは3分休憩して30秒間持ち上げているように休んでいる時間よりも運動している時間がはるかに短いため、マラソン等の運動よりも体にかかる負担は非常に小さく、多くのエネルギーを必要とはしません。
つまり、回復については筋トレ頻度自体が問題になることはほとんどありませんし、当然のように高頻度は回復できないという可能性も非常に低いため、全身トレーニングをしている人はそういった回復に関する情報は多く目にすると思いますが心配する必要は一切ありません。マクロバランスやカロリー摂取量などの栄養素を最適化したり、睡眠などのほうが大事です。
加えていくつかの研究では高頻度のほうが回復できる可能性を示しています。
2003年の研究のように週に2回のトレーニンググループよりも全身トレーニングのほうが回復能力が高いことがわかっています。
加えて2019年の研究では全身トレーニングを行った被験者はスプリットトレーニングよりも筋肉痛を感じることなく研究期間を終わらせることができたことを示しており、研究者はセットを分割させる高頻度トレーニングのほうが筋肉の損傷が小さいことを支持しています。
これらの情報はほぼ逆といってもいいほどの迷信です。高頻度の全身トレーニングは上級者ほど最適であり、回復も余裕ででき、まだ証拠が十分ではありませんが、研究データでは高頻度のほうが回復できる可能性を見つけています。
そもそも回復できなかったら高頻度トレーニングのほうが筋肉を成長させられるというデータになるわけがありません。高頻度トレーニングを否定する多くの情報には信頼性が乏しいものがほとんどです。研究データに示されている通り、多くの人にとって高頻度の全身トレーニングのほうが筋肉をより成長させられるはずです。