腕は非常に目立つ筋肉のひとつでもあり、多くのトレーニーが鍛えている部位でもありますが、最新の研究でほとんどの人が取り入れていた種目が実は筋肥大効果が高くなかったと判明したことも少なくありません。
この記事では腕にある代表的な上腕二頭筋,上腕三頭筋,前腕の3つ筋肉を鍛えるおすすめ種目とその正しいやり方、そして科学的な根拠とともに紹介します。
上腕二頭筋は正面にある腕の筋肉であり、内側にある短頭と外側にある長頭の2つで構成されています。この筋肉は肘関節と肩関節、手首の関節にまたがる3関節筋です。肘関節の屈曲という肘を曲げる運動が最も重要であり短頭と長頭の2つを活性化しますが、長頭のみが肩関節に関係し、屈曲という腕を真っすぐ上にあげる運動に関係します。そして、短頭は手首を外側に回転させることでも働きます。
上腕二頭筋は3関節筋ですが、フィットネスの科学的な権威であるブラッドシェーンフェルド博士によると腕が体のすぐ横にあるカールが上腕二頭筋の短頭と長頭をバランスよく鍛えると話しており、フィットネス研究所の理事であるmenno henselmans博士によると多くの人は上腕二頭筋のピークなどを心配する前に腕が体の横にあるカールに固執するべきであると話します。
そのため、上腕二頭筋のバランスがかなり悪く、長頭だけ小さいとか、短頭だけ小さいという場合を除いてほとんどの人にとっては長頭狙いや短頭狙いなどを作らず、上腕二頭筋全体を活性化してくれる腕が体のすぐ横にあるカールトレーニングをたくさん行うのが上腕二頭筋を最も効率よく構築する方法です。
しかし、一般的なフリーウエイトのカールにはかなり大きな問題があります。それは上腕二頭筋のストレッチ不足です。直立した状態でのフリーウエイトの上腕二頭筋のカールはスタートポジションでのストレッチが全くありません。これは上腕二頭筋は肘関節の屈曲であり、人間の体は関節を軸にした円運動であるため上腕二頭筋をストレッチさせるためにはスタートポジションである程度横向きの力がかかっている必要があるからです。フリーウエイトは一貫して垂直に下向きであるため上腕二頭筋の負荷はスタートポジションでダンベルを一切何も持っていない状態とほとんど変わらないからです。
現代の科学は筋肉をストレッチさせるポジションがあるかどうかで筋肉の成長が大幅に変わることを認めています。
基本的にはストレッチと可動域が同じなら筋肥大効果は同じです。ラットプルダウンとバーベルカールを調べた研究でも上腕二頭筋の成長率はほぼ同じであることが示されています。
そのため、このトレーニング中にストレッチポジションを制限したり、筋肉を強くストレッチさせられない種目を率先して選ぶことは筋肉の成長が半減するといっても過言ではありません。
2021年の9月で行われた研究ではプリチャーカールで上半分の収縮部分と下半分のストレッチ部分の2つで被験者を分けたところ、上腕二頭筋と上腕筋のサイズはストレッチ部分を行ったグループのほうが約3倍筋肥大していることがわかりました。(8.9と3.4%)
その1か月後に出た可動域と筋肥大についての研究をまとめたレビューペーパーではストレッチさせる部分が可動域にあると筋トレ効果はより高まり、最悪でも同じであることを示しています。
理由としてはまだはっきりしていませんが、筋肉がストレッチしている時こそが筋肉に最も負荷がかかっているポイントであることが考えられています。例えばスクワットでは一番深くしゃがんでから持ち上げるときが最もつらく、ベンチプレスだとある程度バーが持ち上がった状態よりもバーを大胸筋にタッチさせてから持ち上げるのが一番しんどいと感じるはずです。
上腕二頭筋のトレーニングで最強種目はマシンに背を向けたケーブルカールです。上腕二頭筋のカールは一般的にはフリーウエイトですが、ほとんどのフリーウエイトは上腕二頭筋にストレッチがかけられません。
ケーブルは負荷の向きを自由に調節できるためフリーウエイトでは不可能な上腕二頭筋のストレッチをかけることができます。
ケーブルの高さを上にすると横方向の力は強くなりますがカール中、腕にケーブルが当たってしまうので気を付けましょう。高さとしてはその人の腕の長さなど個人差によって変わるため実際に色んな高さでやってみてストレッチが感じやすく、カール中に違和感のない高さを推奨しますが、膝かふくらはぎの位置がほとんどの人には適してると思います。
そして、ケーブルから1mほど離れて行いましょう。これはあまりにも近すぎるとスタートポジションでケーブルのウエイトプレートが接触して負荷が無くなります。非常に重要なポイントは腕とケーブルマシンの角度です。スタートポジションで肩から手までの直線を引きます。そのあと、手からケーブルまでの直線を引きます。
この2つの線が真っすぐ一直線に近ければ近いほどフリーウエイトのカールと同じく上腕二頭筋のストレッチは弱くなります。必ず角度がついて腕の方向に対して横方向の力が無くてはいけません。これが非常に重要なポイントです。
ケーブルのカールはダンベルやバーベルのものよりも扱える重量が半分程度になりますが、これは筋肉にとって重要な場所でしっかり負荷がかかっていることを意味します。ストレッチがあるかないかであなたの上腕二頭筋の成長率は間違いなく変わるはずです。
前腕は上半身にある筋肉の中で最も露出する頻度が高く、目立つ部位の一つです。この部位は筋肉の数が非常に多く、おおよそ20以上の筋肉が存在しているためそれぞれの筋肉の名前や動きを理解してトレーニングしなければいけないのかと思う人もいるかもしれませんが、実はその必要はありません。
前腕の筋肉には前部と後部があり、前部は手のひら側、後部は手の甲側です。前腕は基本的には手首と指の関節にまたがっており、前部は手首と指を内側に閉じる運動で、後部はその逆、手首と指を開くような運動です。しかし、後部の腕橈骨筋という非常に大きな筋肉だけが肘関節の屈曲に関係する筋肉です。
後部に関係する指を開くような運動は一般的なウエイトトレーニングでは実現できないため後部を鍛えるときは手首と肘関節の運動に頼るしかありません。
前腕の筋肉はよく握力に結び付けられることがあり、確かにウエイトトレーニングや握力トレーニングなど、何かを握るときに前腕は活性化されます。
2004年の研究ではベンチプレスなどの前腕のアイソレーショントレーニングなしでも前腕の筋肉が成長している可能性を見つけましたが何かを握る運動は前部のみです。
さらに、前腕の外見としても後部は前部よりもはるかに目立ちやすく、腕橈骨筋は前腕の印象の大部分を決めるため前腕トレーニングではまず後部のトレーニングを優先させるのが最善だと考えます。
前腕のおすすめ種目はリバースグリップのケーブルカールです。まず腕橈骨筋は肘関節にまたがるため、上腕二頭筋のトレーニングとほとんど変わりません。ただし上腕二頭筋と前腕の鍛え方の違いはグリップです。2009年の腕橈骨筋の働きについての文献ではこの筋肉が手のひらを下にした回内グリップでのカールに最も強く働くことを示しています。
そのため、前腕の後部を狙うときは上腕二頭筋のケーブルカールを逆手で行うのがいいでしょう。
基本的には上腕二頭筋のケーブルカールと重要なポイントはほとんど同じですが、前腕の筋肉特有のポイントがあります。
例えばこのリバースグリップのカールとこのカール、どちらが前腕にとって効果的でしょうか。正解は後者。なぜならフィニッシュで手首を伸展させているため後部により強い負荷がかかります。
ケーブルカールでもこれを再現しましょう。フィニッシュでは手首を伸展させて後部を収縮させます。スタートでは手首を曲げるとさらに強いストレッチが入ります。実はこれをすることで手首の伸展により後部がより強く活性化するのはもちろん握力もかなり使うため前腕の前部のトレーニングにもなります。
今まで鍛えていなかった人は最後に数セットやるだけでもいいのでこのトレーニングを加えると前腕の筋肉がはるかに発達しやすくなります。
上腕三頭筋は人間の上腕の60~70%ほどの体積を占めるため、この筋肉を鍛えることが太く筋肉質な腕を作る効率的な道でもあります。この筋肉は3つの頭があり、外側頭、内側頭、長頭があります。
上腕三頭筋の運動で最も重要なのは肘を伸ばす肘関節の伸展であり上腕二頭筋と同様、上腕三頭筋のトレーニングではこの運動が必ず入っている必要があります。この運動で上腕三頭筋のすべての筋肉が活性化されますが長頭のみ肘だけではなく肩関節にも関わる2関節筋であり、腕を真っすぐしたにおろす肩関節の伸展に関係します。
上腕三頭筋のトレーニングではこの長頭のみが肩関節の伸展に関わっているということが非常に重要になります。
上腕三頭筋にはプレストレーニング問題があり、
2020年にこの問題について調べた研究が発表されました。この研究ではベンチプレスとオーバーヘッドトライセプスエクステンションのトレーニングの組み合わせによって上腕三頭筋がどう成長するのかを調べました。
研究対象者は18~35歳の男性50人で週に2回のトレーニングを10週間行い、4つのグループに分割します。
ひとつはベンチプレスのみを行うグループ、二つ目はオーバーヘッドのトライセプスエクステンションのみを行うグループ、もう二つは両方のトレーニングを行い、ベンチプレスを最初にやるグループとトライセプスエクステンションを先にやるグループに分けます。
まず、上腕三頭筋のサイズはベンチプレスのみと比べてオーバーヘッドのトライセプスエクステンショングループは2倍の上腕三頭筋の成長を経験しました。これを見ると上腕三頭筋の成長にはプレストレーニングはあまり効果的ではないことが予想できます。
しかしながら、上腕三頭筋の外側頭のみに注目するとオーバーヘッドのトライセプスエクステンションはベンチプレストレーニングよりも成長率がはるかに小さいことがわかりました。
ただし、上腕三頭筋の長頭ではこれと逆の現象が発生し、トライセプスエクステンションのみのグループはベンチプレスだけのグループよりもはるかに高い成長率を達成しました。
上腕二頭筋は肩関節の影響が小さく、例えばカールトレーニングをやらずに逆手の懸垂ばかりしていると上腕二頭筋の短頭だけがどんどん成長するということは多くの人には起こりにくいことが考えられます。しかし、上腕三頭筋は肩関節の役割が非常に大きく、伸展を使わない種目は外側頭のみを強く活性化させ、伸展を使う種目は長頭を強く働かせます。
つまり、ベンチプレスなどのプレストレーニングだけでは長頭はあまり成長しない可能性が高いため、上腕三頭筋トレーニングはプレスに加えて肩関節の伸展を使った種目を入れるのがいいでしょう。
上腕三頭筋の長頭おすすめの種目はオーバーヘッドトライセプスエクステンションです。
2022年の7月に公開された最新の研究では上腕三頭筋の種目の中で最も人気の一つであるケーブルプッシュダウンよりもオーバーヘッドのトライセプスエクステンションのほうが上腕三頭筋がより成長したことを示しています。
その差はプッシュダウンが+14%であり、オーバーヘッドが+20%です。
トライセプスエクステンションはいろいろなやり方がありますがオーバーヘッドでトレーニングすることが最適です。頭の後ろでストレッチをかけることで、肩関節の伸展が加えられます。
トライセプスエクステンションで最も多いミスは上腕二頭筋のカールと同じようにストレッチ不足。これが正しいトライセプスエクステンション。そしてこれが間違ったトライセプスエクステンション。違いがわかりますか。
間違ったやり方はバーベルを頭の後ろに引きすぎてストレッチが弱くなっていることです。限界まで腕を後ろに下げると肘の角度が90度近くなります。上腕三頭筋は上腕二頭筋と向きが逆なだけの肘関節を中心にした円運動です。肘をできるだけ曲げるように負荷の向きを調節すると上腕三頭筋がストレッチします。
つまり腕を後ろに引きすぎて肘の角度が90度になると逆にストレッチが無くなります。
ストレッチが重要であることは先ほども話したため、フリーウエイトのキックバックには上腕三頭筋のストレッチはほとんどないことから、筋肉の成長にとって効果的ではないことがもう皆さん予想できると思います。
スタートでは頭の後ろにバーを配置することも重要ですが、出来るだけ上腕三頭筋のストレッチを感じる位置にしましょう。インクラインベンチを使って15度くらいに設定するとよりストレッチがかかりやすくなるのでおすすめです。ただし、人によっては角度をつけると肘が痛くなるという人もいるため注意してください。
最新の科学的なデータによると筋トレでは各部位何種目か取り入れることで筋肉の成長を促進できることを示しています。ただし、多すぎると逆効果になるため毎日違う種目をやるのも問題があります。パーカーフィットネスは各筋肉2~3種目がいいと考えています。
腕も同様に複数の種目で構成したほうがいいですが、実際のところ今年の4/6に公開された複数の研究をまとめたレビューペーパーでは、コンパウンドもアイソレーションも特定の条件下なら腕と脚の筋肥大効果に差はないことを示しています。
もちろんこの結論は全てに当てはまるわけではなく、欠点がいくつもありますが少なくともコンパウンドトレーニングでも結構強い負荷が腕に入っていると思います。
懸垂やベンチプレスも腕の種目の一つとしてコンパウンドトレーニング+腕のアイソレーション1種目というので十分なバリエーションが確保できていると思うので腕トレでケーブルカールとプリチャーカールのように大胸筋や背中ほどのバリエーションは必要ないと思います。
筋肉の成長としては高頻度のほうがVOLが高く成長する可能性が高いため出来るだけ筋トレするたびにこの3種目をやったほうが理想的です。ただし、他の上半身の筋肉のバランス的にも大胸筋や背中の半分くらいのセット数で十分でしょう。月,水,金は上腕三頭筋を鍛えて、火木土は上腕二頭筋を鍛えるというように交互にやるのがおすすめです。
2日に1回だと筋トレ不足のように感じる人もいるかもしれませんが、トレーニングでしっかりストレッチをかけていたりコンパウンドを十分なボリュームでやっている限り2日1回で筋トレ不足ということはありません。
ストレッチの弱い種目は捨ててこの3種目を正しく、筋肉にストレッチがかかるように行えていれば腕の筋肉は間違いなく今までよりも成長するはずです。