肩にある三角筋は非常に巨大な筋肉であり、外見にとって重要で人気も高い部位の一つでもありますが実際のところ筋肉の解剖学的な運動やトレーニングに関する科学的なデータを知らずに非効率的なトレーニングをしている人も少なくありません。
この記事では最新の科学的なデータやフィットネスの博士のインタビューなどを基に肩にある三角筋の鍛え方について紹介します。
肩には多くの筋肉がありますが、筋肉の外見としては三角筋が最も重要です。実は調査によると人間にある膨大な筋肉で上半身の中で最も大きいのはこの三角筋です。この筋肉は上腕三頭筋よりも50%大きく、上腕二頭筋よりも300%大きな部位です。筋肉はもともとのサイズが大きい部位のほうが肥大して外見に現れやすいため、この筋肉を鍛えると外見が大きく変わることは間違いありません。
肩関節にまたがる三角筋には前部と中部、後部があり、前部は体の前面、中部は側面、後部は背面にある筋肉です。肩関節にまたがり、3方向に筋繊維があるため、肩関節を使用して腕を動かすトレーニングのほとんどでこの筋肉は活動していますが、最も強力に働く運動は前部は肩関節の屈曲、中部は外転、後部は水平外転で最も強く働く傾向にあります。
この筋肉の特性としては筋肉痛になりにくく、2013年の調査では肩は非常に強い筋肉痛への耐性があり他の脚などの筋繊維よりもはるかに筋肉痛になりにくいことがわかっています。そのため三角筋中部に筋肉痛が来なくてもトレーニングの方法が悪いのだろうかとか、もっと鍛えないといけないのかと気にする必要はほとんどの人にはありません。
とはいえそもそも実際のところ筋肉痛DOMSは有酸素運動でもなることが確認されているため、この炎症が筋肉の成長に役立つという説得力のある証拠はありません。
この筋肉を鍛えると外見を変えることができます。特に肩幅を広く見せるようにすることができます。調査によると肩幅は鎖骨の長さで大体が決まり、18歳ほどで成長は止まるため肩を鍛えても鎖骨は伸ばすことはできませんが、鎖骨の端についている筋肉を鍛えることで肩幅を広く見せられることは間違いありません。
肩の筋肉について特に気を付けなければならないのは肩は非常にデリケートな関節、筋肉であることです。2011年の肩のインピンジメントについての研究ではウエイトトレーニングのケガの36%は肩で起こっていると報告されています。そのため、無理なトレーニングは挑戦せずに安全に筋トレをすることが長期間トレーニングすることができるカギになります。
三角筋前部は後ろから前にプッシュするような運動のほぼすべてで使用されます。そのため三角筋前部は大胸筋のトレーニングのほぼすべてで高いレベルで活性化されていますが、重要な運動は肩関節の屈曲であり、研究データによると屈曲は大胸筋上部よりも三角筋前部のほうがはるかに強いようです。
マイケルガンディル博士の調査ではボディビルダーの三角筋の前部はトレーニングをしない人の5倍のサイズがあり中部や後部よりもはるかに大きいことが示されています。加えてフィットネスの研究者であるmenno henselmans博士は前部のトレーニングは必要ない可能性が高いと話しています。
この理由は主に三角筋前部は大胸筋のプレストレーニングなどで強く活性化されているためです。
しかし、三角筋の前部のトレーニングを一切しないというのは理想的でない場合があります。確かに今まで前部も中部とかと同じくらいハードに鍛えてたという人は前部のほうがはるかに大きい可能性があります。しばらくの間、前部のトレーニングはやらなくていいでしょう。ただ、長い期間中部と後部に集中したトレーニングをやり続けているためある程度のバランスが出来上がっていると思います。
そういった人は前部が中部と後部と同じくらいのサイズだったり逆に遅れている可能性があります。もちろん中部や後部ほどはやらなくていいですが、前部のトレーニングを取り入れることを検討してみてください。
三角筋の前部トレーニングではフロントレイズよりもオーバーヘッドプレスのような形態のトレーニングを強く推奨します。フロントレイズは三角筋の前部をあまり活性化してくれません。バスキーたちのEMG分析によるとフロントレイズはベンチプレス、そしてダンベルサイドレイズよりも前部の活性化が低いことがわかります。
まず一般的なフロントレイズの問題点は可動域が狭いこと。ほとんどの人はフロントレイズで顔の前あたりで腕を上げることをやめます。しかし、人間の肩の屈曲は180度あり、実際は頭の上まで上げる必要があります。
オーバーヘッドプレスではかなり高いレベルで三角筋の前部を活性化出来ることがわかります。同じくバスキーのEMG研究ではミリタリープレスが最も高い値を示しており、フロントレイズの1.6倍以上の筋活動を示しています。
オーバーヘッドプレスの重要なポイントは不安定な状態で行うことです。肩はスタビライザー的な役割が強く、安定性を保つために強く活性化される可能性があります。これによって三角筋の前部だけでなく中部や後部もかなり高いレベルで活性化され、効率的に肩全体を成長させられます。
トレーニングで不安定な状態になることは非常に簡単です。まずひとつ目はフリーウエイトにすること。
フリーウエイトとスミスマシンでのベンチプレスを調べた研究では、フリーウエイトベンチプレスのほうが三角筋中部の活動が約2倍であることがわかりました。
そのため、マシンのショルダープレスよりもフリーウエイトのショルダープレスのほうが安定性のために肩全体の筋肉がより強く働く可能性があります。
そしてもう一つ不安定にする方法は立ち上がること。立ち上がってショルダープレスをすることで座った状態よりも不安定になります。2013年の研究では立った状態でショルダープレスを行うことで前部は+8%,中部は+15%,後部は+24%筋活動が高くなったことがわかりました。
不安定にすることで前部には大きなメリットはありませんが中部と後部の筋肉の活動が大幅に上がります。
2020年の研究によるとオーバーヘッドプレスはサイドレイズと非常に近い三角筋中部の活性化を示しており、肩の全体を強く活性化してくれる可能性が非常に高いです。前部を鍛えるときは立ち上がってフリーウエイトでのオーバーヘッドプレスをするのがおすすめです。
まずは無理せず軽い重量からスタートさせましょう。
三角筋の中部は肩を上にあげる屈曲などにも関わりますが最も重要なのは真っすぐ横に腕を上げる外転運動です。
三角筋の中部を鍛える種目として代表的なのはサイドレイズとアップライトロウのような種目、どちらも外転を使った三角筋の中部種目ですがサイドレイズのような運動の種目を推奨します。それは三角筋中部に負荷を集中させるテクニックがアップライトロウには使えないためです。
ひとつ目のテクニックは腕を真っすぐ横に出すこと。
2020年の筋電図分析ではボディビルダーにサイドレイズを行わせたところ、肘を曲げたり腕を前に出すと三角筋中部ではなく前部が大幅に活動的になるようです。
これは普通に考えてみれば当たり前のことです。腕を前に出すことでフロントレイズに近くなります。
そして肘を曲げることでもダンベルが前に出やすく可動域も狭くなりやすいです。肘を曲げると自分の大胸筋の位置までしか上がりません。
肩の運動について調べた古い筋電図分析では腕を前に出すことのメリットとデメリットが示されています。肘を曲げたりやや前に出すことで肩関節のストレスが軽減されます。しかし、それと同時に中部の活動は大幅に落ちることも記載されています。
バスキーの2000年に行われたサイドレイズ中の肘の角度と三角筋中部のEMG分析でも60度以上、肘を曲げているほど三角筋中部の活動が大幅に弱くなっていることがわかります。肘をロックするほど伸ばす必要はありませんが、軽く曲げるくらいにしましょう。もちろん肘を伸ばしてもフロントレイズみたいに腕を前に出していたら意味がありません。
アップライトロウでは必ず肘が曲がること。そしてバーベルが体に当たらないように腕を少しだけ前に出さなければならないこと。この2つからサイドレイズほど三角筋中部をあまり活性化できず、中部よりも前部を鍛えている可能性が高いです。さらにインピンジメントのリスクもサイドレイズと比べて高いため個人差がありますが怪我のリスクもあります。
間違ったやり方としては何度も話したように肘を曲げることと腕を前に出すこと。サイドレイズでは窮屈に感じるかもしれませんが、出来るだけ横から腕を出すことが大事です。そして気を付けなければいけないのは腕を持ち上げる高さ。
肩の外転中の腕の高さと三角筋中部の活動について調べた研究では三角筋中部は外転の60~180度までが筋肉の活動が高いようです。そのため、ウエイトをあまり持ち上げていないと三角筋中部が眠ったままの場所でトレーニングしていることになります。常識的に多くの人は90度程度で止めますがそれは非常にもったいないです。出来るだけ腕を上にあげるようにしましょう。
menno henselmans博士は中部のためにバタフライサイドレイズという種目を考案しています。これは三角筋中部にとって非常に理にかなっています。
三角筋の後部は腕を後ろに引く運動のほぼすべてで活動していますが、三角筋後部で最も重要な運動は水平外転です。背中は伸展や内転にも密接に関係しているのは明らかですが後部についてはこの水平外転で最も強く活動します。そのため、懸垂やラットプルダウンよりもロウトレーニングのほうがこの筋肉は多くの刺激を受け取ります。
研究データを見るとリバースフライのような腕を真横に開く運動が三角筋後部にとっては非常に効果的です。この運動は水平外転が100%の運動であるため三角筋後部を強く活性化させるのは理にかなっています。
さらには三角筋の中部もこの運動で非常にアクティブであることが示されています。研究によるとダンベルのサイドレイズに非常に近い値がリバースフライでも示されているためこの運動は肩にとってもそして背中にとっても非常に優れた種目です。
水平外転を使うときは上から下に引っ張ったり下から上に引っ張っても水平外転が弱くなってしまうため出来るだけ真横に腕を開くようにしましょう。これをすれば負荷のほとんどが三角筋後部に入ります。
リバースフライのグリップについて調べた研究では手のひらを下にした回内グリップよりも縦にしたニュートラルグリップのほうが三角筋の中部と後部の活動が強いことがわかりました。
しかし、必ずしもニュートラルグリップにしなければいけないとは思いません。上昇率はわずかであるため、こういった場合は研究結果よりも個人差を優先させたほうが多くの人にはメリットがあると思います。
この研究を分析したBrad Schoenfeld博士もニュートラルグリップのほうにわずかな利点を見つけたが、回内グリップで大きな筋肉の反応を示した被験者もいたようです。もちろんニュートラルグリップでもいいですが、回内グリップのほうがストレッチが感じやすかったり三角筋後部に効いてる感じがするという人はそちらでも構いません。
三角筋の基本的な鍛え方を紹介しましたが、すべてのトレーニーの人に知ってほしいことについて紹介します。それは筋繊維へのストレッチです。筋肉の成長には筋繊維を伸ばすことが何よりも重要であることを示す研究データが大量に出ています。
皆さんの実感としてもストレッチの負荷がない種目よりもストレッチの負荷が強い種目のほうが扱える重量は下がると思います。これはストレッチポジションが筋肉に最も負荷がかかるポイントであるためです。
逆にこのストレッチがない種目は筋肉の成長にとっては理想的ではないと考えられています。
例えばサイドレイズが三角筋中部にとって最適ですが、フリーウエイトのサイドレイズは筋肉の成長にとって理想的ではない可能性があります。ダンベルのサイドレイズではスタートポジションで真下に物理的な負荷がかかるため三角筋中部にストレッチをほとんどかけることができません。この時点で三角筋中部の疲労感や効いている感覚を感じる人は少ないと思います。フリーウエイトサイドレイズの強度曲線はストレッチポジションで負荷がゼロで筋肉が収縮していくにつれて負荷が上昇して腕が真横に開いたときに最大になります。
この強度曲線は上腕二頭筋のダンベルのカールと同じであり、こういった種目は筋肥大効果があまり高くないことが研究データによって示されています。そのため、肩のトレーニングではストレッチをかけたほうが成長する可能性が非常に高くなります。
そして、三角筋後部のリバースフライマシンでも腕が体の正面に来た段階の90度ほどで負荷が無くなります。しかし、水平外転の角度は180度であるため明らかにこの種目、そしてダンベルのリアレイズではストレッチ不足になってしまいます。
肩のトレーニングでは必ずストレッチを意識しましょう。前部のオーバーヘッドプレスではしっかりウエイトを下まで下げて三角筋前部を伸ばしましょう。一般的なオーバーヘッドプレスよりもアーノルドプレスにすることでよりダンベルを下まで下げることができます。これにより筋肉の成長効果も大きくなるはずです。
中部のトレーニングではケーブルを使うとストレッチ不足が改善できます。しかし、あまりにもケーブルのスタートが下すぎると横方向の力が無くなってしまうため、大体膝のあたりに設置しましょう。
後部では肩の柔軟体操のように腕をできるだけクロスさせるようにします。マシンではなくケーブルを使うとよりストレッチポジションが広がり、三角筋後部が伸びるようになります。
大げさではなく研究データからもストレッチアリとナシでは何倍も筋トレ効果が変わっていることも珍しくないため多くの人がまだ意識できていないストレッチを入れることで肩のサイズは大きな差が出ることは間違いありません。
肩の筋トレメニューとしてはまず、三角筋それぞれのバランス、特に前部について。この筋肉は少し前の前部中部後部を同じだけやるという鍛え方をしていた人は前部のほうが中部や後部よりも明らかにデカい可能性がかなり高いです。
そういった人はとりあえず前部のトレーニングは不要でしょう。
しかし、半年以上前部はやらずに中部や後部を集中的にやってきた人は前部に中部や後部が追いついた可能性が十分あります。肩のバランスに違和感がない場合はそのまま続けていけばOKですが、前部が遅れる人も出てくる場合があるため自分の肩にそういった感覚がある人は前部のトレーニングもやったほうがいいでしょう。
ただし、間違いなく中部や後部よりはやる必要はありません。大体1週間で5setほど前部のトレーニングを行えば十分です。大胸筋トレーニングでもかなり活動しているため、前部の種目をやらなくても成長することを忘れないでください。
オーバーヘッドプレスを週に1~2回行うのが多くの人にとってベストだと思います。筋電図分析を見るとわかる通りこの種目は前部だけでなく中部など肩全体をかなり高いレベルで活性化させます。
そして中部と後部は成長のために多くのトレーニングが必要になります。特に前部と違い後部は背中トレーニングで十分とは考えにくいです。おすすめとしては1週間で15set以上を推奨します。
頻度としては筋肉は高頻度であるほど成長しやすいことを科学的なデータは示しています。肩トレのテクニックとしてパーカーフィットネスは高頻度の全身トレーニングを強く推奨していますが、三角筋の後部と前部は大胸筋、背中トレーニングでも強く活性化されているため、大胸筋のベンチプレスの後にオーバーヘッドプレスをしたり、懸垂の後にリバースのマシンフライをしたり同一筋肉を連続して鍛えるのはおすすめしません。ベンチプレスをした後にレッグエクステンションをしてからオーバーヘッドプレスをすればレッグエクステンションの間に肩は休憩できるのでボリュームの低下を最小限にすることができます。
筋トレの回数に関しては科学的なデータは同じボリューム下なら高重量低回数も低重量高回数も筋肥大効果は変わらないことを示してはいますが、肩は最初にも話した通りケガしやすい関節でもあります。違和感がなければ高重量でも問題ありませんが基本的には低重量高回数のほうが関節にかかる負担も小さく安全であるためおすすめです。
オーバーヘッドプレスでは必ずバーベルやダンベルが自分の体にタッチするまで下に下げて筋繊維をストレッチさせます。サイドレイズでもケーブルにすることで入るこのストレッチという刺激がリアルに筋肉があまり成長しない人とメチャクチャ成長する人を分けることを忘れないでください。