ダンベルでできる上腕二頭筋トレーニングといえばどんなものを想像しますか。多くの人はダンベルカールですが、この種目には大きなデメリットがあり、筋肉の成長にとって理想的とは言えないことを科学的なデータは示しています。
しかし、このダンベルカールを少し違ったやり方をするだけで上腕二頭筋の成長率は大幅に増えます。この動画ではダンベルトレーニングとしては最強のシシーカールについて科学的なメリットと正しいやり方を紹介します。
まずはフリーウエイトの上腕二頭筋トレーニングの抱える問題とシシーカールのメリットについて紹介します。
最初は上腕二頭筋の解剖学的な話をします。上腕二頭筋は内側にある短頭と外側にある長頭で構成されています。2つに共通している運動は肘関節の屈曲であり腕を曲げる運動で上腕二頭筋は収縮し、多くの成長因子を受け取ります。
加えて長頭は肩関節にもまたがる筋肉であるため肘を曲げる運動に加えて肩関節の屈曲に関係します。フロントレイズのような腕を上にあげる運動でも上腕二頭筋の長頭はある程度活性化されています。
しかし、肩関節の上腕二頭筋への影響はあまり高くありません。インクラインカールのように肩関節の伸展が行われていて腕が体の後ろにあるカールも、プリチャーカールのように腕が前にあるカールでも上腕二頭筋の2つ頭に大きな筋肉の活性化の差はなく、研究データは多くの人は上腕二頭筋のピークなどを心配する前に腕が体の横にあるカールに固執するべき可能性が高いことを示しています。
そのため、腕が体の横にあるカール、いわゆる一般的なカールです。この上腕二頭筋全体を活性化させる種目をたくさんやったほうが効率的な筋肥大を達成します。
しかし、ダンベルカールやバーベルカールなどフリーウエイト全般のトレーニングは筋肉の成長にとって非常に不利な要素があり、筋肉の成長にとって理想的とは言えません。
それはストレッチ不足です。例えばフリーウエイトのカール、スタートポジションで肘は伸ばしていても上腕二頭筋はストレッチしているでしょうか。実際はスタートポジションでのストレッチは非常に弱いです。これは上腕二頭筋は肘関節の屈曲であり、人間の体は関節を軸にした円運動であるため上腕二頭筋をストレッチさせるためにはある程度横向きの力がかかっている必要があるからです。フリーウエイトは一貫して垂直に下向きであるため、スタートポジションで理想的な負荷の向きと実際かかる負荷が垂直になるため物理的な負荷は何も持っていない状態とほとんど変わりません。
筋肉の成長にとってはストレッチによって筋肉が伸びているかどうかで筋肉の成長率が大きく変わることを大量の科学的なデータは裏付けています。2019年のシステマティックレビューによるとスタートポジションのような筋肉が伸びている部分で負荷をかけるリフトはほぼ3倍の筋肥大効果を得ることが示されています。
実際、2021年の9月に行われた研究では同じ可動域で片腕の上腕二頭筋カールトレーニングを実行させました。片方のグループはストレッチポジションのみのカールを行い、もう片方は収縮部分のみのトレーニングを行いました。研究期間後、収縮部分のみのトレーニングを行ったグループは上腕二頭筋と上腕筋のサイズが平均3.4%増加していました。一方ストレッチポジションのみを行ったグループは平均して筋肉のサイズが+8.9%増加していました。
上腕二頭筋、特にフリーウエイトのカールの多くは上腕二頭筋が伸びているときに負荷がありません。
このストレッチを入れるためにプリチャーカールがあります。これは確かにスタートポジションで腕の向きに対して横方向に負荷がかかるため筋肉を効果的に伸ばします。しかしこれは家トレの人には設備的に難しいところがありますし、上腕二頭筋の負荷はウエイトが肘の真上に来た段階でゼロになるため可動域を狭くする可能性があります。
さらに腕を前に出すと肩の屈曲によって上腕二頭筋がわずかに収縮してストレッチを弱める可能性があります。
シシーカールは簡単に言うとプリチャーカールの可動域の縮小というデメリットを消したカールです。ダンベルカールのように直立して腕を限界まで曲げてみてください。ダンベルを持たずに素手でOKです。限界まで曲げてみると140度ほどしか腕が曲がらないことがわかります。これは自分の上腕二頭筋が収縮部分で邪魔になるからです。
シシーカールはこの限界ポジションを地面と垂直にしたカールのことです。限界の140度あたりが地面と垂直になり丁度負荷が0になるためになるため可動域全体で重力による負荷がかかります。加えてスタートポジションで腕に対してやや横向きの負荷がかかるため筋繊維に対するストレッチもあります。
そのためこの種目は一般的なフリーウエイトカールよりもはるかに筋肉の成長を促す可能性があります。
シシーカールのメリットが分かってもらったところで実際のフォームについて紹介します。最初はシシースクワットのように膝を曲げて体をやや傾けます。傾けすぎるとカールの最後のほうで負荷が無くなってしまうため30度くらいにします。
そしてその姿勢を維持しながらカールをします。非常に重要なポイントとしては腕の角度です。必ずカールをしてる間ずっと体の横から離さないようにしましょう。インクラインカールのように体が傾いていても腕が地面に対して垂直なってしまうとストレッチはゼロになり一般的なフリーウエイトカールと同様に筋肉の成長率が大きく下がります。
重力によって腕が後ろに下がってしまいやすいですがグッと耐えて体の横から離さないようにしましょう。
カールの時はバーベルだと肘を伸ばした時にバーが当たってストレッチが止まってしまうのでダンベルでやるのが理想です。必ず肘は伸ばし切ってストレッチさせましょう。上腕二頭筋のトレーニングではほかの部位と違って肘を伸ばし切らずに中途半端な位置で止める人が非常に多いですがそれはストレッチを殺して筋肉の成長も殺しているようなものです。
体を後ろに傾けるのが難しいという人はインクラインベンチで90度の直角に座る角度から30度程度背もたれを倒してカールすると姿勢維持に気を取られる必要がありません。
そしてカール中に腕が後ろに下がってしまうという人はアームブラスターというものを使うと腕が後ろに下がることを抑えてくれます。直立したときのカールなどではほとんど役に立ちませんがこういった場合アームブラスターが役に立ちます。
扱う重量としては軽めをおすすめします。重いダンベルはウエイト部分が巨大であるためストレッチ部分でバーベルのようにウエイト部分が体に当たってしまうこと。そして重量が重いとアームブラスターなど腕が後ろに下がらないように助けるアイテムがないと耐えられず腕が後ろに下がってしまうからです。
ストレッチ部分は最も筋肉に緊張がかかるポジションであるため、ストレッチのあるカールをすると普通のダンベルカールよりも扱える重量は半分程度になります。これはプリチャーカールでストレッチをさせないほうがはるかに重い重量を扱えることからも想像できます。20kgのダンベルを扱おうがストレッチをなくせば20kg分の負荷はかかっていません。
まずは筋トレ経験者でも5kgくらいのダンベルからスタートさせましょう。
間違ったフォームとしては何度も話していますが肘を伸ばさずストレッチを殺すことと腕がが後ろに下がってしまうこと。あとは頑張って持ち上げようとしたときに背中の角度が崩れてしまうこと。
フォームの維持がとても重要で崩れやすいため軽い重量でフォームを意識しながらウエイトを持ち上げましょう。難しい人は最初片手でダンベルを持ってもう片方で体を支えながらやるとやりやすいかもしれません。