前腕は良く見過ごされがちな筋肉の一つです。特にTシャツを着ているときに実際に露出しているのは上半身では前腕と首くらいであるため一般的には大胸筋や背中よりもはるかに目立ちやすく人の目に触れるケースが多い筋肉です。
そのため、この筋肉を理解して鍛えることで外見に大きな違いを生み出すのは間違いありません。
この記事ではそんな前腕について科学的なデータを基に正しい鍛え方を紹介します。
前腕の筋肉は背中の筋肉群と似ており、非常に多く、おおよそ20以上の筋肉が存在しているためそれぞれの筋肉の名前や動きを理解してトレーニングしなければいけないのかと思う人もいるかもしれませが、その必要はなく前腕の筋肉が働く運動はそこまで多くないため前腕の筋肉の大まかな解剖学的な知識だったりどんな運動で前腕が働くかを覚えておく程度でほとんどの人にとっては十分です。
前腕の筋肉は肩の三角筋のように前部と後部があり、前部は手のひらと同じ面にある筋肉群、後部は手の甲と同じ面にある筋肉です。
前腕の筋肉のほとんどは指と手首の関節にまたがっているため、この関節を使った運動で主に使用されます。前部は指と手首の関節を内側に曲げる屈曲、後部はこの逆で指と手首を開くような伸展運動です。後部にある腕橈骨筋という前腕の中でも非常に大きな筋肉は前腕の中でも肘関節に関わる筋肉であるため、上腕二頭筋のカールトレーニングなどでも活性化されています。
前腕の解剖学的な知識で重要になるのは前部と後部があり、前部は指と手首を内側に閉じる運動、後部は指と手首を外側に開くような運動。後部にある腕橈骨筋は、カールのように肘関節を曲げる運動でも働くということです。
前腕の鍛え方の説明の前にそもそも前腕は鍛える必要があるのかについて解説します。これは腹筋はスクワットなどの高重量のコンパウンドトレーニングで使用されているから鍛える必要があるのかというものに似ています。前腕の筋肉は指を閉じる運動に関係しているため、このことから前腕はバーベルを握ったりするトレーニングでも活動していることが考えられます。
実際2015年の調査によると握力と前腕の筋肉のサイズには正の相関関係がみられ、握力が強い被験者ほど前腕の筋肉が大きい傾向にあるようです。
そのため、バーベルやダンベルを握ったりするだけで筋肉は強く活性化されている可能性は確かにあります。
2004年の研究によると高校野球選手を対象に12週間トレーニングを実行させました。ひとつのグループは被験者にはベンチプレス、スクワット、デッドリフトをはじめとした前腕を狙った種目がない一般的な全身トレーニングを週に3日実行させて、もう一つのグループはこの全身トレーニングメニューに加えて前腕のアイソレーショントレーニングを追加させます。
その結果、前腕のアイソレーショントレーニングがなかったグループでも前腕の筋力は成長しておりすべての測定値で増加が確認されました。筋肉量は測定されませんでしたが、筋力と筋肉量には強い関係性があるため、筋力の増加は筋肉が成長している可能性が非常に高いことを示します。
しかしながら、前腕のアイソレーショントレーニングを追加させたグループはより筋力が成長しており、前腕トレーニングなしのグループよりもすべての測定値で大幅な前腕の力の向上を示しています。
そのため、腹筋はスクワットなどの高重量コンパウンドトレーニングで成長する可能性は極めて低いことが考えられますが、前腕の筋肉は直接的にトレーニングしなくても筋肉がある程度は構築できる可能性があります。とはいってもそれが最適ではなく、筋肉の成長は前腕を直接鍛えたほうが筋肉の成長率は大きく変わります。
つまり、トレーニングの時間は限られているため筋トレするときは大胸筋などの筋肉を優先させたい。前腕を鍛えている暇がない、時間がないという人は前腕を鍛えなくても筋肉が落ちるということはほとんどありませんし、増えてる可能性も十分にあります。特に懸垂などの引っ張る運動で強く働くでしょう。
しかし、気を付けてほしいことはコンパウンドトレーニング中に握力を補助するアクセサリーを頻繁に使用してトレーニングを行っている場合は前腕の活動はほとんどなくなる可能性が高く、前腕トレーニングをしないと筋肉が成長しない可能性があることに注意しましょう。
そういった人の場合や前腕をもっと成長させたいという人は前腕のアイソレーショントレーニングが必要になります。
前腕のおすすめの鍛え方としてはまず前部について、これは先ほど話したように指と手首を曲げる運動に強く関係するため握力を鍛えるとこの筋肉は成長します。そのため、握力トレーニングといわれる種目のほとんどは握力を向上させ、前腕の前部にとって非常に効果的です。
とはいっても筋肉の成長には筋繊維が伸びたり縮んだりすることが重要であるため、何かを握ってその状態を維持するというよりはリストカールのようなトレーニングがおすすめです。ダンベルを握って手首を曲げるというよりも指関節の屈曲も行うためにスタートで指先にダンベルを置いて転がしながら手首を曲げると前部の筋肉により集中させることができます。
しかし、前腕は前部よりも後部のトレーニングを重視して行うことがおすすめです。ひとつ目は前部よりも後部のほうが腕橈骨筋により筋肉の凹凸が出やすく、外見的にも重要であること。もう一つはコンパウンドトレーニングで使用されている前腕の筋肉のほとんどは前部であること。後部は指や手首を開いたりする運動で活性化されますが、コンパウンドトレーニングでは前部が働く握力を使う運動がほとんどであり後部が強く活性化される運動はありません。
そのため、前腕の後部は直接的にトレーニングしないと前部よりもはるかに成長しにくい可能性があります。
後部は手首や指の関節だけでなく肘関節にもまたがる筋肉であり、腕橈骨筋は非常に巨大な筋肉です。指関節の伸展はなかなか一般的な筋トレ器具で行うことは非常に難しいため肘関節の伸展と手首の伸展で鍛えるのがおすすめです。
代表的な種目は回内グリップのカールでこの運動は前腕の中でも特に腕橈骨筋にフォーカスしたトレーニングです。一般的に上腕二頭筋のカールトレーニングでは手のひらを上にした回外グリップで行いますが、バーの持ち方を変えるだけでウエイトの負荷を上腕二頭筋から腕橈骨筋にシフトすることができます。
人間の生体力学上、回内グリップにすることで上腕二頭筋は非常に不利な位置になりトレーニング中の活動は大きく落ちてその分腕橈骨筋の支配率が高くなります。前腕を鍛えるとき、バーの握りは回内グリップで持ちましょう。さらにおすすめとして親指を握りこむように持つのではなくサムレスグリップで親指を上に引っ掛けるように持つのがいいです。
そして、カールのフィニッシュで手首を伸展させる運動を加えることで腕橈骨筋だけでなく前腕の後部にある筋肉も全体的に鍛えることができます。この手首の伸展がないとトレーニングは腕橈骨筋のみに負荷が集中して前腕の後部全体は活性化できません。
前腕は前部と後部があり、指と手首を曲げる運動と伸ばす運動に関わり、後部の中で非常に目立つ腕橈骨筋は肘関節の屈曲に関わります。基本的には前腕は筋トレしなくても筋肉が落ちることはなく、前部に関しては握力を使ってウエイトを持ち上げる意識さえあれば直接的に鍛えなくても成長する可能性が高いです。
しかし、前腕を直接的に鍛えたほうがはるかに成長する可能性が高く、特に後部はほとんどのコンパウンドトレーニングであまり強く活性化されていません。そして、後部にある腕橈骨筋は非常に大きな筋肉であり、この筋肉が前腕の中で最も目立つ筋肉だと思います。
つまり、前腕トレーニングでは後部、そして腕橈骨筋を優先して鍛えたほうがいいでしょう。
現代の科学は筋肉の成長には広い可動域とストレッチが重要であることを示しているため、この2つ、特にストレッチを無視して筋肉を鍛えるのは非常に愚かです。
フリーウエイトのリバースグリップカールはスタートポジションでのストレッチがないためケーブルでのカールや環境的にフリーウエイトしかできない人はプリチャーカールのリバースグリップカールを推奨します。
しっかりと肘を伸ばしてストレッチをかけましょう。ストレッチの時に手首を曲げるとさらに効果的です。
トレーニングの順番としては前腕は多くのトレーニングに関わる筋肉であるため、すべての種目が終了した後に取り入れるのがおすすめです。前腕は成長させたいけど大胸筋とか背中のほうをとりあえず優先させたいという人は前腕はトレーニングの最後にリバースグリップのカールをすればOKです。
セット数としてはほとんどの人にとって10~15setくらいが他の部位を優先させつつ前腕も十分に成長させることができるセット数だと考えます。しかし、基本的には筋肉は筋トレをやればやるほど成長する傾向にあるため、前腕を優先的に鍛えたい人は30set,40setやるのもいいと思います。
トレーニング頻度としては筋肉は高頻度であるほうが筋肥大しやすく、逆に週に1~2回と低頻度であるほど効果が落ちることを研究データは示しているためジムに行く度に、筋トレをするたびに前腕は3set程度でいいので鍛えるのが一番おすすめです。
筋トレの回数については、前腕は強度よりもボリュームを優先させたほうがいいでしょう。低回数で高重量ほど筋力は伸びやすい傾向にありますが前腕の筋力やサイズの向上はベンチプレスや懸垂などの重量にはあまり強い関係性がみられないためボリュームを優先させて10rep以上の高回数でトレーニングすることをおすすめします。
さらっと言いましたがストレッチと広い可動域によって筋肥大効果は何倍にもなるので肘を伸ばし切らずに中途半端なストレッチを筋肉にかけないようにしましょう。