今回は背中の厚みを鍛える種目について科学的なデータを基に紹介します。背中トレーニングをしている人は多いですがスポーツサイエンティストのmike israetel博士の記事に「地球上の約5%だけが優れた技術を使っている」と書かれているように間違った鍛え方が非常に多い部位でもあります。
効率的に背中の厚みを作りたい人や科学的な証拠、根拠があるトレーニングをしたいといった効率重視のトレーニーの人には非常におすすめの動画です。
背中にはかなり多くの筋肉がありますが、背中の厚みといわれたら3つの筋肉を意識して鍛えましょう。
フィットネスの科学者であるmenno henselmans博士によると背中の広がりは広背筋、厚みは三角筋後部,僧帽筋,脊柱起立筋に分けて鍛えることを推奨しています。
厚みを作る筋肉については三角筋後部は肩関節の伸展と腕を横に開く水平外転、僧帽筋には上部と中部,下部の3つがありますが上部は肩をすくませる肩甲骨の挙上、中部はベンチプレスの時のように肩甲骨を寄せる内転、下部は内転に加えて肩甲骨を下に下げる下制に働きます。僧帽筋は3つの部位がありますが実際に背中の厚みに関係するのは僧帽筋の中部と下部のみであるため厚みを作るとき、上部の解剖学的な動きはあまり重要ではありません。
最後の脊柱起立筋は背中を反らせるような脊椎を伸展させる運動で活性化されます。
mike israetel博士によると背中を鍛えるときは広がり,つまり広背筋を主に狙う種目である垂直プルと僧帽筋などの厚みに貢献してくれる筋肉を狙う種目の水平プル、この2つが必要であると話しています。
これはそれぞれの筋肉の解剖学的な役割を考えると、広背筋は上から下に引っ張る運動に主に活性化されるが、厚みを作る筋肉は前から後ろに引っ張る運動で活性化される傾向があるためです。ラットプルダウンなどのトレーニングは上から下に引っ張るため背中の広がりは構築できますが、前から後ろに引っ張る運動は非常に小さいため厚みに関わる筋肉を強いレベルで活性化できません。
つまり、どっちかを優先させたらもう片方の活動は弱くなる可能性が高いため厚みと広がりの両方にとって最高な種目はありません。なので背中のトレーニングメニューでは厚み用の種目と広がり用の種目が必要になります。
厚みを作るためには純粋に前から後ろに引っ張るということを忘れないでください。多くのことがこの非常に簡単なことを分かっているにも関わらずトレーニングで反映できずにいます。
科学的な筋電図分析によるとリバースのマシンフライがダントツで僧帽筋の中部を活性化されており、下部の値を見ても上位3つもリバースのマシンフライであることがわかります。加えて、三角筋後部もリバースのマシンフライが最大の値であり、他の筋電図分析でも同様の結果が得られています。
この種目は完全な水平外転であるため三角筋の後部と僧帽筋の中部と下部にとっては理想的な運動です。マシンであるためフリーウエイトと違い、一定の緊張が筋肉にかかるため筋肉の活性化が強くなります。
加えて、リバースフライマシンの研究では一般的な手のひらを下に向ける回内グリップよりも手のひらを向かい合わせにするニュートラルグリップのほうが三角筋の中部と後部の活性化が高いことがわかっています。
これは中部と後部が働く肩を外側に回転させる運動がニュートラルグリップには加えられたためだと研究者たちは考えています。しかし、ニュートラルグリップのポジションを握るとやや外側からのスタートになりマシンの設計上可動域が狭くなるため注意しましょう。
フィニッシュでは胸を張るように肩甲骨を寄せて僧帽筋を収縮させるようにすると背中の厚みの筋肉が鍛えられます。ただし、この種目の問題点は脊柱起立筋を全く働かせることができないということです。この運動に脊椎の伸展はないのでこの種目で鍛えられるのは三角筋後部と僧帽筋だけです。
間違ったやり方としては筋肉のストレッチを弱くすること。上腕二頭筋トレーニングではよく肘は伸ばし切らず筋肉に負荷を残す鍛え方が推奨されますが、これは科学的なデータを見ると筋肉の成長を大きく制限します。
筋肥大にはストレッチと広い可動域が重要であることを科学は示しているため、リバースのマシンフライでもあえて中途半端なところで止めてストレッチをなくすと筋肉の成長は大きく制限されます。トレーニングではしっかりと腕を閉じることで筋肉が伸ばされます。
ストレッチと可動域を広げる方法としてケーブルのリーバスフライも非常におすすめです。
背中の厚みを鍛えるときはロウトレーニングが最も代表的であり、テクニックを使うことで脊柱起立筋も鍛えることができます。アメリカの運動評議会の筋電図分析でもロウトレーニングは僧帽筋中部を懸垂やラットプルトレーニングよりもはるかに強く活性化することがわかります。
フリーウエイトのロウにはバーベルとダンベルがありますがバーベルのほうがおすすめです。ひとつは2.5kg刻みで細かい重量設定ができて自分に合った重量を扱うことができること。これにより今日は40kgが5回できたから次は42.5kgを上げてみるといったようにプログレッシブオーバーロード計画を立てることができます。
もうひとつは脇が開きやすいこと。バーベルのロウには回内グリップが一般的ですが逆手で行う人もいますしダンベルのロウはニュートラルグリップで行う人がほとんどです。しかし、背中の厚みを作るためには回内グリップを推奨します。
先ほどのマシンフライでも紹介した通り三角筋後部や僧帽筋は肩関節の水平外転で強く活性化されます。そのため、脇を開いたほうが水平外転に近くなるため厚みの筋肉を成長しやすくなります。逆手でのロウやニュートラルグリップの場合はどのような運動に近くなるでしょうか。これは脇が閉じることで肩関節の伸展運動に近くなります。これは背中の厚みではなく広がりの広背筋の運動です。
ロウでは地面から垂直に引っ張るのが理想ではありますが脇が閉じることで伸展運動の曲線に近くなります。これは広背筋に負荷が逃げ、厚みにとって理想的ではありませんし広背筋にとってもロウは理想的ではないためどっちにも中途半端になります。
一度やってみるとわかりますが逆手でやるほうが肩関節の伸展に近くなっていると思います。
そのため、脇が開きやすい回内グリップのロウが最もおすすめです。手幅についてはワイドにしたほうが水平外転に近くはなりますが可動域とストレッチポジションが減るため肩幅と同じもしくはそれより少し広いくらいの幅を推奨します。
フォームとしてはmike israetel博士の推奨するロウがおすすめです。これはスタートで背中の筋肉をストレッチさせて脊椎を丸めます。スタートでは頭がおしりと同じ高さ、もしくはそれよりも下にあり、背中が少し山のように盛り上がっていることが重要です。そして、バーベルを引っ張るのと同時に脊椎を伸展させて上半身を持ち上げます。
簡単なイメージとしてはシンプルに引っ張るロウと脊椎を伸展させる運動を合わせたトレーニング法、これなら背中の厚みすべての筋肉に対して強いストレッチと収縮を入れることで筋肉を活性化します。腰も丸まりやすく、これによってケガをしやすいため注意しましょう。mike israetel博士のフォームのように動かすのは背中の上部のみで下腹部は動かさないように固定させます。やってもらったらわかりますがストレッチと脊柱起立筋への負荷を意識したこのフォームは重い重量は必要ありません。ロウだと多くの人が片方20kgずつのウエイトプレートを付けてトレーニングしていますが見たらわかる通り片方5kg程度で十分です。
重量は落ちますがストレッチにより筋肉は構築しやすく、脊柱起立筋も働くため背中の厚み全体が活性化されます。まずはフォームを意識しながらトレーニングしましょう。
ロウは取り入れている人が多い種目ではありますが、非常に間違ったフォームが多い鍛え方です。皆さん一度は背中を起こしながらウエイトを引っ張ってる人を見たことがある人も多いでしょう。
しかし、考えてみてください。このフォームは背中の厚みの筋肉を構築できるでしょうか。最初にも話した通り背中の厚みは前から後ろに引っ張ることで活性化されます。この運動がどんな動きをしているか正しく見てみると斜めに引っ張っていることがわかります。
まずこれをすると僧帽筋の上部に負荷が逃げます。僧帽筋の上部はシュラッグやデッドリフトなどの上から下に引っ張る運動で強く活性化するため当然のことです。加えて斜めに引っ張るとスタートポジションで僧帽筋は少しだけ収縮した状態から始まるためストレッチはなくなります。
実際多くの人のロウは体を上げながら行っており、背中の厚みというよりも僧帽筋の上部に負荷が大きく逃げています。なぜならそれはシュラッグのようなロウであるからです。バーベルのロウに限らず体を持ち上げた状態のダンベルロウでも同じことが言えます。
ロウではスタートで地面と上半身を平行にして筋肉にストレッチをしっかりとかけてから引っ張りましょう。これができていないと筋肉の成長は大きく制限されます。
シーテッドロウは水平プルの中で最もストレッチをかけることができる種目です。基本的にバーベルのロウはウエイトが地面とタッチしたら終了であるためどれだけ可動域を広くしても脚の位置までしかウエイトを下して筋肉をストレッチさせることができません。
シーテッドロウの場合自分の柔軟性の上限までストレッチをかけることができるため筋肉を効率よく構築できる可能性があります。
シーテッドロウは一般的にはナローグリップで行われていますが、これよりもワイドなグリップであったり回内グリップを推奨します。
理由は先ほど言った通り、脇を閉じれば肩関節の伸展になるため厚みの筋肉への負荷は減ります。
2005年の筋電図分析ではシーテッドロウはバーベルのベントオーバーロウよりも広背筋の活動が強いことを示しています。これはシーテッドロウのほうがバーベルのロウよりも肩関節の伸展が強いためです。しかしながら、僧帽筋中部の活動を見てみるとバーベルのベントオーバーロウのほうが活動は強いことがわかります。これはシーテッドロウよりも脇が開いて肩関節の水平外転が強いためだと考えられます。
そのため、シーテッドロウは一般的なナローでニュートラルグリップよりもワイドグリップだったり回内グリップで引っ張ることを推奨します。これにより厚みを鍛える筋肉にフォーカスできます。
間違ったフォームとして、これはバーベルのベントオーバーロウにもかなり多いですが背中を収縮させたまま引っ張ること。シーテッドロウでよく見かけますがこのようなフォームでストレッチをなくしていること。なぜこのようなフォームが多いのかは不明ですが、これは科学的なデータからもわかる通り筋肉の成長を大きく制限します。
ベントオーバーロウのフォームを見たらわかる通りスタートでは肩は前に出ていることが大事、これが後ろに下がっていると僧帽筋は全くストレッチされていません。スタートでは肩が前に出て、背中を開いてからフィニッシュで肩を後ろに下げて収縮させます。