背中には厚みと広がりがありますが、広がりを作る筋肉を成長させると背中が大きく見えて上半身の印象が大きく変わります。
この動画では背中の広がりを作るおすすめの種目と正しいやり方を科学的な証拠とともに紹介します。効率的に背中の筋肉を成長させたい人や科学が裏付けている証拠がしっかりあるトレーニングを知りたい人最近背中が成長しなくて悩んでる人はこの動画を見ることで安全に、尚且つ効果的な背中の鍛え方を知ることができます。
大胸筋は大きく分けるとクラビキュアーヘッドとスターナルヘッドの2つで構成されていますが背中にはかなり多くの筋肉があるため、各筋肉の解剖学的な運動を知らなければいけないのか、またはこれらの筋肉をを狙った種目を作らなければいけないのかと考える人もいると思いますが、実際ところ背中の筋肉はそれほど複雑ではありません。
背中を鍛えるときは基本的には広背筋,三角筋後部,僧帽筋、そして脊柱起立筋に分ければ十分です。この4つの筋肉の解剖学的な運動は他の背中の筋肉群のほとんどと重複しているため、この4つの筋肉を狙っていればおのずと背中の筋肉は肥大します。
背中の広がりを構築するときは広背筋というわきの下にある大きな筋肉を意識して鍛えることがおすすめです。背中の広がり、広背筋は肩関節の伸展、そして内転で強く働きます。
伸展は脇を閉じた状態で腕を前に出して上から下ろすような運動。内転は脇を開いて腕を横に出して下すような運動です。
そのため、背中の広がりは上から下に引っ張るような運動で強く活性化し、逆に厚みを作る筋肉は前から後ろに引っ張る運動で強く反応する傾向が非常に強いため、厚みと広がりの両方にとって理想的な種目はありません。
背中の広がりを構築するときはこの肩関節の伸展と内転に意識を向けて鍛えるのがおすすめです。
ラットプルダウンは最も基本的な広背筋の種目です。マシントレーニングであるため負荷を調節できるため初心者から上級者までの幅広いレベルに適したトレーニングです。特に筋トレ始めたての初心者の人の場合でもラットプルダウンでは軽い重量から内転を使ったトレーニングをすることができるため初心者のひとや軽い重量でプルを行いたい人にもおすすめの種目です。
ラットプルダウンのおすすめのやり方を紹介します。まずはグリップ、バーを持つ手です。
このグリップについては個人によってある程度の差はあると考えていますが、シンプルなフォームが最も広背筋には適していると考えています。ラットプルダウンのグリップについて調べた代表的な科学的な研究を紹介します。
2002年のラットプルダウンのグリップを調べた研究ではクローズグリップ、回外グリップ、回内グリップのワイドグリップで体の前にバーをもっていくラットプルダウン、そして同じく回内グリップのワイドグリップで首の後ろにバーを引っ張るトレーニングで比較しました。
その結果、ワイドグリップで体の前に引っ張るラットプルダウンが広背筋の活動が最も高いことがわかりました。他の3つにはほとんど差がありませんでした。
加えて2010年の研究では回内グリップと回外グリップでそれぞれナローとワイド、合計4種類の手幅で広背筋の筋電図分析をしました。その結果、ナローもワイドも回内グリップのほうが広背筋の筋活動が強く、手幅についてはワイドもナローも広背筋の活性化に違いはありませんでした。
科学的な研究を見るとラットプルダウンは体の前にプルを行い、肩幅の1.0~1.5倍程度のグリップで回内グリップを使うと広背筋の筋活動を最大限に活性化できる可能性があります。
これらのグリップに加えてラットプルダウンマシンにはMAGグリップというものも存在しています。科学的なデータがほとんどないため確かなものではありませんがおそらく一般的なグリップと効果はほとんど変わらないと思います。
グリップをニュートラルグリップにしたり手幅をかなり狭くすると脇が閉じやすくなり伸展運動に近くなりますが、ラットプルダウンのような種目は脇を開いて内転運動に近くしたほうが活性化が高まる傾向にあります。違和感がなければ回内グリップのものがいいでしょう。
さらに広背筋の筋活動を高める方法として体を反らすと広背筋の活性化が高まることを示した研究があります。バスキーたちのEMG研究ではラットプルダウンの時に45度背中を反らせると広背筋の筋活動が11%上昇したことを示しています。
もう一つのポイントとして背中になかなか効かせられないという人も特に初心者のひとには多いと思います。上腕二頭筋などは筋肉を見ながらトレーニングすることができますが背中は基本的にはトレーニング中に見ることができません。
2009年の研究ではトレーニング初心者のひとはラットプルダウンエクササイズで背中よりも肘の屈曲筋、つまり上腕二頭筋などの肘を曲げるときに収縮する筋肉に頼ってしまうことが多いようです。この改善策として広背筋を触りながらプルをすることで筋肉の活性化が高まったことを示しています。
背中の筋肉を意識できない人はケーブルマシンを使ってシングルアームのラットプルダウンをしながら休んでいる方の手で広背筋を触りながらやると広背筋にしっかり刺激を入れることができます。トレーニング前のウォームアップや背中のトレーニングが苦手な人はこの種目をやると効果的です。
懸垂は最も原始的な運動ではありますが広背筋にとって非常に優れた種目です。アシストマシンなどが無ければ自重であったり、かなり高負荷のトレーニングであるため、筋トレ初心者のひとや体重がかなり重い人にはあまり向かない種目だとは思います。
しかし、複数の研究でラットプルダウンよりも懸垂トレーニングのほうが筋活性が高い可能性を示しています。
2013年の研究では懸垂とラットプルダウンでは広背筋にとっては筋肉の活性化に違いが無かったことを示していますが脊柱起立筋や上腕二頭筋といった他の引っ張る筋肉は懸垂の方がアクティブにできることを示しています。
パーカーフィットネスはラットプルダウンよりも懸垂のほうが好きです。ひとつ目は先ほど話したように多くの筋肉を活性化できることもありますが、そのほかにも2つあります。
ひとつ目はローディングが非常にやりやすいところです。加重懸垂のローディング計画では2.5kgずつ重量を増やしています。例えば20kgの加重懸垂が上がったら次回は22.5kgという感じです。ラットプルダウンマシンでは重量が完全に固定されているため2.5kgといったように細かい設定だったり個人に合わせた重量設定ができません。
初心者のうちは筋力は伸びやすいためあまり気にならないかもしれませんが中級者以上になるとこれは大きなデメリットになります。バーベルのベンチプレスと同様に細かく重量を追加できる種目がおすすめです。
もうひとつは懸垂はチートを使いづらいということです。ラットプルダウンでは背中を後ろにそらすといいといいましたが多くの人がやっているミスはこの反らす動作が完全にチートのレベルになっていることです。特に素早くラットプルダウンをしようとすると気づかずに背中を反らす運動で重量を持ち上げている場合があります。懸垂の場合は体の勢いなどチートが非常に使いづらいため、高重量を扱うときに自分の筋力を正確に測ることができます。
特に60kgの負荷が限界だったけど62.5kgでやってみるといった自分の筋力に挑戦する種目ではこのチート行為に頼りやすくなります。普通のラットプルダウンでは正しくやれているけど自分が持ち上げられるギリギリの重量や回数に挑戦するとなった途端にフォームが崩れることも珍しくありません。
グリップについてはラットプルダウンと同じくグリップで大きな差はありませんが、回内グリップで肩幅よりもやや広い程度がいいと思います。
懸垂のグリップについて調べた研究では4種類どのグリップでも広背筋にとって差はありませんでしたが僧帽筋の活動は回内グリップのほうが優れていたことを示しています。
広背筋を成長させるためにはプログレッシブオーバーロードも重要であるため自分の筋力を図ってそれを超える努力が必要です。最も重要な種目であるためメイン種目と呼んでいますが重量の追加のやりやすさ、そしてチートの使いづらさから懸垂を推奨しています。
必ず1週間のうち1回は懸垂を一番最初にやる日を作って重量や回数を記録しましょう。
ラットプレイヤーはフィットネスの科学者であるmenno henselmans博士が推奨する伸展を使った種目です。先ほどのラットプルダウン、懸垂ともに肩関節の内転を使った種目であり、広背筋を鍛える種目として紹介される種目はほとんどが内転です。
2022年の4月1日に新しいレビュー研究が発表されました。この研究によると筋トレでいろんな種目をやるいわゆるマッスルコンフュージョンと筋肥大,筋力アップの関係性について調べました。
この研究によると運動にバリエーションを持たせることは筋肉の成長をいくらか増やしてくれるが、その種類が多すぎると効果を大きく落とすことが示されています。つまり、筋トレの種目の種類が1種類だけ、腕立て伏せだけよりも例えばケーブルフライなどのバリエーションを加えたほうが筋肉の成長を促進できるということではありますが、例えばこれに加えてスミスマシンのプレスやディップス、ダンベルフライなどあまりにも種類が多すぎると逆に筋肉の成長を妨げるということです。
ラットプレイヤーのような違った運動で筋肉を鍛えることは筋肉の成長を促進させる可能性があります。部位にもよりますが筋トレでは各部位2~3種目を推奨しています。
menno henselmans博士も自身の記事で広背筋を鍛えるときは内転と伸展を使った2種類を取り入れるべきであることを示しています。
2013年の研究では広背筋には肩関節の内転よりも伸展のほうが活性化できる可能性があるようです。
この伸展はロウで主に使用される運動ですがロウトレーニングのほとんどは広い可動域で肩関節の伸展ができていません。例えばこのロウトレーニングを見てください。肩関節の内転範囲は頭の上から脚まで、ほぼ180度ですがロウトレーニングでは90度程度しか可動域がありません。
ほとんどのロウはこれにより現在の科学が筋肥大のために重要と認めているlong muscle position、つまり広背筋についてはストレッチポジションが無くなってしまうことになります。ブラッドシェーンフェルド博士も自身のSNSで、ストレッチへの効果が近年かなり見直されていることに加えてストレッチの信頼性を認める研究が今後もどんどん出てくるだろうと話しています。
デッドリフトでも同じくスタートでは広背筋のストレッチは全くなくスタートからフィニッシュまで見ても肩関節の伸展はほぼないためこの運動では広背筋はほとんど活性化されていません。
ラットプレイヤーではこの肩関節の伸展を完全な範囲で行うことができます。ケーブルのスタートポイントから1m程度離れて距離を作ります。
スタートでは水泳選手の飛び込みのように上半身と腕を一直線にさせます。この状態のまま引っ張るとケーブルが顔に当たって負荷がなくなってしまうため、肩関節の伸展を使って腕を引っ張るのと同時に正座のように上半身を起こします。
そのまま、肘を軽く曲げた状態をキープしながら腕が最低でも体よりも後ろにくるまで引っ張ります。フィニッシュではデッドリフトのフィニッシュのように胸を張って背中を後ろに下げます。
内転種目は内転に、伸展種目は伸展にフォーカスした運動をするべきです。そのため、ラットプルダウンなどでは回内グリップで脇を開いたほうが広背筋が活性化される可能性がありますがラットプレイヤーのような伸展種目では逆に脇を閉じたほうが筋肉が活性化される可能性があります。
ラットプレイヤーでは回内グリップのストレートバーよりもロープを使ってニュートラルグリップで引っ張ったほうが伸展により近づくため背中の広がりを構築してくれます。
10~20kgくらいの重量でフォームを意識してトレーニングしましょう。フォームが非常に重要であるため重量を記録して挑戦する種目には向いていません。ケーブルを引っ張ったらゆっくりと戻していくのがおすすめです。
トレーニングには広い可動域とストレッチが重要と認められているため、どんなに難しくても必ずこの二つは守りましょう。ラットプルダウンや懸垂で肘を伸ばし切らずに中途半端な位置で止めて背中をストレッチさせていなかったり、十分に体を持ち上げていない人が非常に多いです。
ラットプレイヤーでも、これは立った状態でやっている人に非常に多いですが顔の前で止めてストレッチをなくしている人もかなり多いため注意しましょう。
これらの運動ではたとえ100kg上がろうが筋肥大効果は大きく制限されていることに注意しましょう。
背中はストレッチさせて十分に収縮させるように意識するだけで筋肉は大幅に成長しやすくなります。これができていないトレーニングは最大限の努力で最小限の効果を生み出します。このチャンネルの視聴者の方は絶対にならないようにしてください。