筋トレ頻度や1週間のルーティンは多くのトレーニーが関心を持つトピックです。胸の日,背中の日など1つの部位を集中的にやるルーティンや大胸筋や上腕三頭筋などのプッシュマッスルを1日で行うもの、上半身と下半身で分けるものなど様々ですが最新の科学はそういった部位ごとに分けるトレーニングルーティンよりも全身トレーニングのほうがトレーニング効果が高い可能性を示しています。
この動画ではそんな全身トレーニングのメリットと絶対に失敗しないメニューの構築法について紹介します。筋トレ効果をもっと上げたい人や筋トレ時間を有効活用したい人、主観ではなく科学的な裏付けがしっかりとあるトレーニングルーティンを組みたいという人にこの動画は最適です。
まず最初は全身トレーニングがなぜ最強のトレーニングルーティンであるかについて科学的な根拠を基に紹介します。
全身トレーニングの最も大きな利点は筋肥大効果が高い、つまり分割法よりも筋肉が成長するということです。
筋トレの頻度と筋肥大効果についてのレビュー研究ではボリュームが等しければ週に1回だろうが6回だろうが高頻度も低頻度も変わらないことを示しています。ボリュームというのはウエイトをどれくらい持ち上げたかの数字です。100kgのベンチプレスを5回上げれば500kgとなります。
つまり持ち上げた回数や重量が同じなら筋トレ頻度は筋肥大効果に強い影響をもたらさないということです。
これを見ると筋トレ頻度は関係ないかと思うかもしれませんが実際は違います。現実的には筋トレ頻度が違うのにボリュームが同じはずがなく、筋トレ頻度が高いほどトレーニングボリュームは高くなるため筋肥大効果も高くなります。
フィットネスの科学者であるエリックヘルムズ博士によると多くの人は筋肉の合成シグナルのために高頻度で鍛えるようにしていました。筋トレ経験の豊富なリフターは筋肉が合成される期間が短く、何度もそのスイッチを入れるためです。
これは実際に理にかなっていますが、実際に研究によって強い影響があると示されたものではありません。筋肉の合成反応の影響はほとんどないでしょう。
全身トレーニングの最も大きなメリットはボリュームを分散できることです。ベンチプレス5setなら1日でやるよりも5日1setずつやったほうが筋肥大効果は高いというものです。これは同じ部位をたくさんやったほうが疲労によりパフォーマンスが低下するからです。つまり、1日1setならほぼ全員が5setすべて自分の最高のパフォーマンスができると思います。しかし、1日で5setやる場合は2set目以降重量や回数が疲労によってどんどん落ちていくことになります。
胸の日など1部位を集中的にやるトレーニングルーティンはこの傾向がとても強く、1日の最後の種目にいたってはほとんどの人は最高のパフォーマンスの半分もできないため同じ1setでも質が悪いことを意味します。
つまりこれはボリュームが減っている証拠であるため、科学的なデータにある通り筋肥大効果も減っていることになります。全身トレーニングのメリットは高頻度でトレーニングができるため、ボリュームを分割できることです。
2021年の筋肉の回復とオーバートレーニングについての研究を分析したレビューペーパーでは筋トレの疲労には局所性が強いことを示しています。つまり、ベンチプレスの後にダンベルフライよりもベンチプレスの後にカールトレーニングをやったほうが同じ合計2種目同じセットでもベンチプレスでは上腕二頭筋はほとんど使用されていないため疲労によるボリューム低下が起こらず、ベンチプレスとカールの両方で最高に近いパフォーマンスを発揮できます。
つまり、1日の合計20setだとしても大胸筋20setよりも大胸筋4set,背中4set,下半身4set,腕4setのほうがボリューム低下がかなり抑えられることになります。
2018年の研究では週5回の全身トレーニングと大胸筋の日など1日で集中的に特定の部位を行うスプリットトレーニングで比較を行いました。
この研究はお互いのグループのセット数や種目、強度は全く同じでした。
研究結果を見ると、筋力の増加については変わらない部位もありますが、右の3つ、筋肥大効果については測定したすべての部位で青の全身トレーニンググループのほうが筋肥大効果がはるかに高いことがわかります。その差は測定した部位のすべてで2倍近くのものです。
加えて2015年のブラッドシェーンフェルド博士による研究では週3回の全身トレーニングとブロスプリットトレーニングで比較したところ測定したすべての部位で全身トレーニンググループのほうが有意に高く、大腿四頭筋は3倍以上の差がありました。
このように全身トレーニングのように高頻度で筋肉を鍛えたほうが筋肥大効果は高い傾向にあります。もちろん1つの部位を集中的にやっておらず、プッシュプルレッグルーティンで各筋肉週2回やってる人もブロスプリットトレーニングほど顕著ではありませんが、ボリューム低下が強いため全身トレーニングのほうが筋肥大効果は高いです。
おそらく1つの部位を集中的にやっている人は同じセット数をやっていたとしても全身トレーニングで鍛えてる人の6割程度のボリュームしかありません。つまり、筋肥大効果もそれくらい低くなります。
そして全身トレーニングは効率的に筋肉を成長させるだけでなく脂肪も燃焼させます。
ジムストパニ博士は全身トレーニングは遺伝子を活性化させて多くの脂肪を燃焼させるように促すと話しています。
2016年の研究では最低2年の筋トレ経験のある男子ラグビー選手を対象に全身トレーニングとスプリットトレーニングを行わせました。結果として除脂肪体重はスプリットトレーニンググループは平均して+0.4%だったのに対し、全身トレーニンググループは+1.1%で2倍以上の差がありました。そして体脂肪の量はスプリットトレーニンググループは-2.1%だったのに対し、全身トレーニンググループは-5.7%でこれも2倍以上の差がありました。
これは博士が言うように遺伝子の活性化なのか単純に先ほどの筋肥大効果の部分でも話した通りウエイトをたくさん持ち上げられたことによってより多くのカロリーを使用した影響なのか、強い証拠はありませんが少なくとも全身トレーニングが脂肪燃焼効果が低いということはなく、全身トレーニングのほうが分割トレーニングよりも効果は同じもしくはそれよりも高いでしょう。
全身トレーニングは分割法よりも時間がかかるとよく言われますが実際それは真逆です。かなり短い時間でトレーニングを終わらせられます。
途中でも話した通り筋トレの疲労には局所性が強く1日で同じ部位をやるよりも違う部位を鍛えたほうが疲労が少ないです。簡単な例としてスクワットの後にレッグエクステンションを行うとします。これは2種目とも同じ大腿四頭筋狙いの種目です。スクワットが終わった後、ほとんど休憩なしでレッグエクステンションを高いパフォーマンスでこなせるでしょうか。
まず不可能です。これは同じ部位であるため種目が違うといえど数分の休憩が最低でも必要になります。ではスクワットの後、ダンベルサイドレイズの場合はどうでしょうか。これは鍛える部位が違うためレッグエクステンションほど休憩はいらないことがわかります。つまり全身トレーニングは種目間の休憩がほとんどいらないため、筋トレ時間が短くなります。
さらには大胸筋を集中的にやる場合、使いたいマシンやエリアが先に使用されている場合待つしかありませんが、全身トレーニングならプレスは今空いてないから先に背中のラットプルダウンをやろというように柔軟にトレーニング環境に適応することができ、無駄な待ち時間やインターバルがありません。
忙しい人には最適です。
これは全身トレーニングに一番ある誤解というよりも偏見に近い考えです。全身トレーニングみたいな高頻度トレーニングって回復間に合わなくね?とよく言われます。多分全身トレーニングを今やってますって人も知り合いの人などに言われたことがある人も多いんじゃないでしょうか。
しかし、実際偏見といったように高頻度ほど回復できないというのは強い科学的な根拠があるわけではありません。
2003年の研究のように週に2回のトレーニンググループよりも全身トレーニングのほうが回復能力が高いことがわかっています。
加えて2019年の研究では全身トレーニングを行った被験者はスプリットトレーニングよりも筋肉痛を感じることなく研究期間を終わらせることができたことを示しています。
そして、2022年の1月に公開された最新の研究では常識自体が間違ってる可能性があることを示しています。
筋トレ経験のある被験者に週1回と週2回の筋トレ頻度で分けました。その結果、筋肉痛などのオーバートレーニングの数値では週1回トレーニンググループのほうが有意に高いことがわかりました。つまり、週1回グループのほうがオーバートレーニングの数値が高く、回復プロセスに問題がありました。
これは高頻度トレーニングの研究ではありませんが、研究者たちは「トレーニングを分割することによって回復プロセスにメリットがある」と示しています。
つまり筋肉の回復というのはオフが何日あるかよりもセット数をどれだけ分割できたほうがメリットがあります。ということは高頻度トレって回復間に合わなくねというのは逆であり、低頻度ほど一気にひとつの部位をたくさんのボリュームで行い、傷つけるため回復に問題がある可能性があります。
そもそも高頻度トレーニングで回復の問題をあげる人の多くはセット数が減っていることを無視しています。週に1回から5回になれば頻度は5倍ですが1日当たりのセット数は1/5になります。一回のトレーニングセッションで受けるダメージもかなり少なくなるため、回復時間が週に1回,2回と低頻度で1回でたくさんのセットを行う人と同じわけがありません。
これらの大きなメリットを見ると全身トレーニングが最強のトレーニングルーティンであることがわかります。効率的に筋肥大したい、脂肪を落としたい、効率にこだわる人は全身トレーニングを推奨します。
最後にレベル別のおすすめの頻度を紹介します。高頻度のほうが筋肥大できる可能性が高いのは事実ですが自分のレベルにあった頻度をおすすめします。まずは筋トレ初心者の人の場合は各筋肉、週に2回のトレーニングを推奨します。
筋トレ初心者は全身法、上級者は分割といわれますが実際は完全に逆です。上級者のほうが筋肥大のために多くのボリュームが必要になるため全身法でセットの質を上げてボリュームを追加するほうが理にかなっています。
そして、初心者の人は体が適応していないので筋肉痛が起こりやすいため、上級者ほど頻繁に鍛える必要はありません。筋肉痛中に筋トレをしてもデメリットがないことは科学が示していますが痛みによってパフォーマンスが下がるので効率は下がります。筋トレ経験の浅い人は3setでも筋肉痛は来る場合が多いので3日に1回筋トレをするくらいで十分です。
初心者は多くのボリュームを必要としません。大体各筋肉5~10setやれば筋肥大効果は最大になるため、各筋肉3~5setの全身トレーニングを週2回やれば十分です。
中級者以上,上級者の人は週に5回の全身トレーニングを推奨します。初心者ほど簡単には筋肉は成長しないため、多くのボリュームが必要になります。高頻度の全身トレーニングはすべてのセットが高品質であるため同じ20setといわれても胸の日などのブロスプリットトレーニングや大胸筋,肩,上腕三頭筋を一度にやる週1~2回の低頻度トレーニングよりもはるかに多いボリュームがあり、筋トレ効果も大きくなります。
サンプルメニューとしてフリーウエイトをメインにした、こんなメニューを紹介します。おすすめとしては腕の筋肉とのバランスのためにコンパウンドトレーニングを多めにやることを推奨します。このメニューを軸にいろいろアレンジしてみてください。
ベンチプレス 5set
懸垂 5set
スクワット 5set
ダンベルサイドレイズ3set
トライセプスエクステンション3set
ダンベルカール3set
全身トレーニングは自分なりにアレンジできるのも魅力です。例えば僕の場合ですがベンチプレス,懸垂のコンパウンドトレーニングとバーベルのスクワットを一緒にやると疲労感がかなりきついのでベンチプレスと懸垂をやる日は大腿四頭筋種目はスクワットではなくレッグエクステンションを行っています。
ポイントとしては同一筋肉群を連続して鍛えないことです。例えばベンチプレスの後に上腕三頭筋をやるとベンチプレスの疲労が影響するため2~3種目は離してベンチプレスの後に上腕三頭筋を十分休ませるようにしましょう。背中でも同じことが言えます。
最後に全身トレーニングについてよくある相談について回答したいと思います。
1つ目のよくある質問は追い込み感についてです。今までブロスプリットトレーニングをやってて最近全身法に変更させたんですが筋肉の疲労感がかなり少なく、成長するか不安というものです。筋トレ初心者から中級者くらいの人から良くもらう相談です。
まず筋肉は追い込み感がなくても成長します。第一に科学的なデータを見るとパンプや筋肉の疲労は明らかに過大評価されています。おそらくこれらの刺激は筋トレの数少ない達成感のひとつであるため多くの人がこれを求めてしまったんだと思いますが、パンプと筋肉の疲労感というのは筋肥大にはあまり影響しません。むしろ強いパンプや疲労感がある筋トレ法のほとんどはボリュームを犠牲にしている傾向があるため逆効果である可能性もあります。
追い込みやパンプ中毒になってもあまりメリットはないため筋トレが終わったときに筋肉がどれだけ張っているかや痛みがあるかは気にしなくて大丈夫です。
2つ目は全身法に変えたら疲れやすくなったんですがどうすればいいでしょうかというものです。まずトレーニングには適応があるため、トレーニングルーティンを変更させると疲れやすくなる可能性が高いです。これは分割法から全身法にした人もですが例えば僕が全身法から分割法にしても同じことが言えます。
そのため、全身法に変えたら疲労感が強いというのはある意味仕方ないことです。
僕も全身法に変えた当初は疲労感が強く関節が痛むときもありました。しかし、ルーティンを続けていけばほとんどの人はその問題がなくなります。僕も今は全くないです。
最近全身法に変えたけどしんどいという人はまず頻度は固定させて1日当たりのセット数を減らしましょう。例えばまずはベンチプレスと懸垂,スクワットの3種目を3setずつから始めて疲労感が弱くなってきたら5setにしたり腕や肩のトレーニングを追加するようにすれば1か月もあれば適応できて問題なく全身トレーニングが出来ると思います。
もちろん疲労感を少なくするためにはあえて余力を残してトレーニングを終わらせたり、疲労感の強いフリーウエイトの高重量コンパウンドトレーニングは大量にやらないようにすることも非常に重要です。
効率を意識してトレーニング、ボディメイクをしたい人は全身トレーニングを強く推奨します。