筋肉には肩や腕、背中などいろいろな筋肉がありますが最も人気なのは大胸筋だと思います。特に男性にとってはこの筋肉を鍛えて厚みを作ることは理想であり、この筋肉を鍛えてない人はかなり少ないんじゃないでしょうか。
しかし、人気の部位だからこそ大胸筋の内側など情報の真偽がはっきりしないものも多く存在し正しい鍛え方ができている人はそう多くありません。この動画では科学的な文献、そして博士のインタビューなどを参考におすすめの大胸筋の鍛え方について紹介します。
多くの人の大胸筋トレーニングのやり方が変わる動画ですので是非最後まで見ていってください。
最初に解剖学的な大胸筋の筋肉の働きについて紹介します。この動画の内容を理解していても解剖学的な動きを知らなけらば情報をトレーニングにいかせられなくなってしまいますので必ずどんな動きが必要なのかは理解しておく必要があります。
大胸筋には3つに分けられることが多いです。大きく分けると2つではありますが胸骨から伸びているsternalheadは広いため、ある部分は上から下にある部分は真横に伸びているためこの部分を中部と下部に分けることもあります。大胸筋の上部は腕の付け根から鎖骨に向かっています。下から上に伸びていることからもわかる通り、腕を下から上に持ち上げる運動がこの筋繊維にとって最も適した運動です。肩の屈曲という腕を上に持ち上げる運動で強く活性化します。中部は真横に伸びている筋繊維であるため真横に伸ばした腕を閉じるような運動、そして下部は上から下であるため大胸筋上部とは逆、上から下にウエイトを引っ張るようにすると大胸筋下部の筋繊維に理想的な動きであり、強く働きます。
意外と重要なのが大胸筋上部と下部の運動は逆に近いことです。上部は腕を上にあげることで強く刺激されますが下部は反対に腕を下に下げることで活性化されることです。当たり前ですがこれが結構動画の途中で重要になるので忘れないでください。
もう一つ重要で、大胸筋について昔からある解剖学的な情報としてこの筋肉の内側と外側についてです。よくある情報としては収縮部分で内側は成長するからプレートを挟んだプレスだったり、フライで大胸筋内側が筋肥大すると言われています。なのでダンベルフライやケーブルのフライで収縮部分を重点的にやる人が多くいます。
確かに内側と外側は外見的にもあるように見えます。人によっては全体的に成長している人もいれば内側はあまりなくて外側だけ大きいなどいますし、実際に内側の鍛え方について相談をもらうこともあります。
この大胸筋の内側と外側の鍛え分けができるのかの情報について、フィットネスの科学者であるmenno henselmans博士はインタビューで答えています。
確かに実際に筋肉の外側と内側の筋肥大効果や筋肉の活性化が異なることを示す研究がいくつかあるようです。
例えば2021年の5月に発表された研究では筋肉の局所性が存在する可能性を示しています。この研究では被験者をレッグエクステンションとスミスマシンスクワットの2つのグループに分けて下半身トレーニングを行わせました。その結果、驚くことにスミスマシンのスクワットグループは外側広筋の中央部分のみを有意に成長させました。
このように筋肉の局所性を実現させた研究はまだ数は少ないですがいくつか見つかっています。しかしながら、この研究ではなぜスミスマシンのスクワットが外側広筋の中央部分のみを成長させたかは不明であり、博士も言っていた通り、局所性を実現させた研究のほとんどはハムストリングスや大腿四頭筋などの下半身の筋肉です。
博士はインタビューで言っていたように局所性というのはハムストリングスのような筋繊維が長い部位で起こることであり大胸筋のような筋肉が短い部位は内側外側で大きな差はないと話してます。
加えて収縮が内側と当たり前のようにいわれてきましたが、先ほどの研究は可動域ではなくレッグエクステンションとスミスマシンスクワットで局所性が見つかりました。つまり、内側,外側を狙う方法も実際はよくわかっていません。博士はインタビューで追加して答えていますが「収縮部分は内側」という人のほとんどは単純にパンプが欲しいだけだと答えています。
そのため、内側についての情報をまとめると今の科学的なデータを見ると基本的には内側外側は無理です。ただ、下半身のような筋肉が長い部位ではいくつかは研究データが見つかっているので可能性は0ではないのは事実ですが、大胸筋といった上半身の筋肉は筋肉が短いため、内側外側は鍛え分けができないと考えたほうが圧倒的に自然です。そして、たとえ局所性があったとしても可動域のうちどの部分が内側に効いてるかは不明であるためみなさんに出来ることは少ないでしょう。
収縮部分が内側という人もいますが、科学的なデータに基づいた鍛え方ではなく、ただパンプして大きく見えてるだけにすぎません。最新の科学的なレビューでは広い可動域とストレッチポジションが筋肥大に重要と示されているため、内側は収縮という情報を信じて収縮部分を集中してやるとストレッチと可動域を殺すことになります。これは筋肥大効果が大きく低下するため内側外側どころか大胸筋自体が成長しなくなります。
そのため、大胸筋を鍛えるときは上部,中部,下部の3つだけ意識すればいいです。
大胸筋中部は筋繊維が真横の方向に伸びているため肩関節の水平内転で主に活性化されています。大胸筋すべてはある程度下から伸びていたり上から伸びたりしていますが、横方向に走っているため水平内転のように腕を肩の高さに持ち上げて内側に閉じることで大胸筋全体が活性化されます。
この部位を重点的に鍛えたいときはフラットのギロチンベンチプレスだったりマシンのフライであったり、腕を上げたり下げたりせずに横方向の運動に集中すると上部や下部に逃げるのを防ぎます。
大胸筋上部も中部同様、横方向に伸びていますがわきの下くらいの鎖骨に伸びてもいる筋肉であるため水平内転に加えて肩関節の屈曲をすることで大胸筋上部の活動は強くなります。大胸筋上部の筋肉の活動とベンチ代の角度を調べた研究ではベンチ代の角度0度よりも角度をつけることで大胸筋上部の活動が強くなっていることがわかります。
大胸筋上部の活動は肩関節の屈曲によって強くなるため角度をつけることでプレス運動に屈曲が追加されます。加えてベンチプレスの手幅との関係を調べた研究ではナローグリップにすることで大胸筋上部の活動が強くなったことを示す研究もあります。これはナローにすることでベンチプレスのスタート位置がより下方向になるため肩関節の屈曲が強くなるためです。
ほかにもリバースグリップにすることで大胸筋上部の筋活動が増えたことを示す研究もありますがすべては肩関節の屈曲動作が加わることによる影響です。
大胸筋下部については腕を上から下におろす内転動作によって活性化されます。下に引っ張るケーブルのクロスオーバーだったりディップスのような下にプッシュする運動でアクティブになります。Bret Contrares博士の筋電図分析ではディップスが大胸筋下部を最も大胸筋下部を刺激することが示されています。また、中部と下部は完全に分かれているわけではないため筋肉の活動も似る傾向にあります。大胸筋下部のためにデクラインプレスをする人も多いですが科学的な筋電図分析によるとベンチ台の角度0度と-15度のベンチプレスでは大胸筋下部の活動が変わらなかったことを示しています。そのため、フラットなベンチプレスでも大胸筋下部は十分に成長してくれる人も少なくありません。
スポーツサイエンティストのmike israetel博士は大胸筋トレーニングにはフラットな角度のついていない水平プレスと、フライのようなアイソレーション種目、そして大胸筋上部を狙ったインクライン種目を筋トレメニューの中に取り入れるべきであると主張しています。
ただし、menno henselmans博士は大胸筋上部を狙ったり下部を狙ったりするのは大胸筋の発達において非効率的な場合があると話しています。
大胸筋3種目あったら多くの人は上部,中部,下部をそれぞれ1種目ずつ作りますがそれは大胸筋トレーニングで特定の部位を狙うことによるデメリットを理解していません。menno henselmans博士はクライアントに大胸筋トレーニングのほとんどは水平タイプのトレーニングをやってもらっていると話しています。
実はベンチ代に角度をつけてプレスを行ったり上部狙い、下部狙いをすることにはデメリットがあります。それは狙った部位以外の筋肉の大幅な活性化の低下です。博士がインタビューで言っているのはインクラインプレスは大胸筋上部を鍛えているというよりも下部を鍛えていないという言い方のほうが正しいと話します。
例えばベンチ台の角度と大胸筋3つの部位の活性化を調べた研究では30度までは角度が強くなるにつれて大胸筋上部の活動が強くなることを示しています。しかし同時に中部や下部も大幅に低下しています。ベンチ角度30度の時、上部の活動はピークですが下部と中部は半分近くの数値になっています。
この時、上部の活動が何倍にもなっていればいいですが数値を見ると元の数値から10~20%程度しか増えていません。
その他の研究でもインクラインのベンチプレスはフラットなものよりも5%程度しか大胸筋上部の活動率を増加できないことが示されています。
つまり、博士の言いたいことを簡単に言うと上部の活動をちょっと増やすために下部と中部が大幅に落ちているためメリットよりもデメリットのほうが強くなります。先ほど紹介したインクラインプレスは大胸筋上部を鍛えているというよりも下部を鍛えていないという表現が適切というのは上部の活動率の上昇よりも下部の低下のほうが大きいからです。
なので結局のところ上部を狙ったり下部を狙って大胸筋を全体的に発達させるよりも、水平のフライやプレスを集中的にやったほうが大胸筋全体が活性化されているため筋肥大にとって効率的であるということです。もちろんセットのすべてを水平のプレスにする必要はありませんがインクラインのプレスなどは必要最低限にしてメニューの大部分は水平内転のみを使ったトレーニングにしましょう。
そしてもう一つ筋肉の成長にとって超重要な大胸筋トレーニングの可動域について、menno henselmans博士はダンベルのベンチプレスをかなり重い重量で上げている人のフォームを見てみると肘が体と同じ高さになったら終了していて多くの人は広い可動域でトレーニングしておらず重量を落としてもっとウエイトを下に下げたほうが筋肉が成長する可能性が高いと話します。
mike israetel博士も本当に大きな大胸筋が欲しいならエゴは捨てて重量を落として大胸筋をストレッチさせるべきだと話しています。これは先ほど話した通り膨大な科学的データをまとめた最新のレビュー研究で紹介したような筋肥大には広い可動域がストレッチと示されているため重量を減らして広い可動域でプレスを行うことは非常に理にかなっています。
確かに30kgとか40kgでダンベルプレスを行っている人のフォームを見てみるとしっかりしたまで下げている人は非常に少ないです。すべてのトレーニングではできるだけウエイトを下に下げましょう。肘が体よりも下になってダンベルが自分の大胸筋と同じ高さにくるまで下げてストレッチします。このやり方だと多くの人にとっては20kg程度のダンベルで十分です。重量ではなく可動域を優先させたほうが筋肥大効果は間違いなく高くなります。
大胸筋のおすすめの筋トレメニューの組み方について紹介します。セット数は1週間で15set以上行うのがおすすめです。大胸筋を集中的に鍛えたい人は30set程度行うことを意識してみてください。ただし、初心者の人はそんなにセット数は必要ないので週に5~10setあれば筋肥大効果は最大になります。
頻度については最新の科学が頻度が高いほど成長する可能性が高くなると示されているため、できるだけ高頻度で大胸筋は鍛えるのがおすすめです。大胸筋のような大きな筋肉は回復に数日かかるなどとよく言われますがそれは科学的なデータに基づいた情報ではありません。最新の回復についての研究は高頻度でトレーニングすることでボリュームが分割されるため低頻度よりも回復能力が高いことを示しています。高頻度=回復できない、この筋肉はダメージが深刻だから毎日筋トレしてはいけないというのは正しくないと思います。
大胸筋を鍛えるときはメニューの大部分を水平のプレスやフライを採用しましょう。総合的にみるとフラットベンチを使ったり傾斜を使わず水平内転に絞ったトレーニングのほうが大胸筋を効率的に発達させます。結局のところ筋繊維が上に向かっていたり、下に向かっていたりありますが筋繊維は横方向に伸びているため水平内転でも十分に刺激されているからです。
ただし、現在進行形で大胸筋上部や下部が成長していなくて筋肉のアンバランスを感じている人は足りていない部位を狙った種目が必要になりますし、すべての種目を水平内転のみのものにする必要は僕もないと思います。
特定の部位を狙う時のポイントとしてはベンチ角度を少し変えるだけにしましょう。インクラインプレスを例にするとこの研究でベンチ角度15度では大胸筋の筋活動は全体的にまとまっていることがわかります。なので上部が足りないと思う人はベンチ台をほんの少し上げたくらいの角度でトレーニングをすると中部や下部を損なうことなく上部の活動をフラットベンチプレス以上に上昇させることができます。ケーブルクロスオーバーでも下すぎる位置や高すぎる位置からスタートさせずに自分の大胸筋と同じ高さ。もしくは下部や上部を狙いたい人はそれよりも10cmくらい高低差をつける程度から始めて肩の屈曲や内転は少しだけの方がおすすめです。
具体的な目安として8割程度は角度のない水平内転に集中したトレーニングを選びましょう。プレスでもフライでも構いません。ただ、menno henselmans博士も言っていますがダンベルのフライは人間の動きと抵抗曲線が一致していません。上部ではほとんど負荷がないのは皆さんわかると思います。なのでフライの場合はケーブルやマシンが最も理想的です。