今回は科学的なアプローチによって大胸筋の鍛え方の動画です。大胸筋トレーニングはほぼすべての人がやっていますが非効率的なトレーニングをしてる人が山ほどいます。この動画では実際に学位のある博士の意見や科学的な研究を用いて大胸筋を発達させる方法について解説します。
大胸筋は解剖学的に2つの部位に分けることができます。ひとつは鎖骨にまたがるclavicular head(クラビキュアーヘッド)と胸骨にまたがるsternal head(スターナルヘッド)があります。
基本的にはこの2つでクラビキュアーヘッドは大胸筋上部と考えることができます。しかし、スターナルヘッドはかなり広い筋肉であるため中部と下部にも分けることができます。例えばスターナルヘッドの真ん中あたりはほぼ横に伸びていますが下の方は上から下に伸びていることがわかります。
大胸筋の筋繊維全てが肩関節につながっているため大胸筋の運動は肩関節を使って腕を動かすのが主な動きです。筋線維の方向から大胸筋上部は下から上に走っているため腕を上に上げる肩関節の屈曲に関与し、中部は水平内転、下部は肩関節の内転に特に関与します。
しかしながら、全ての筋線維が横方向への力に関与するため大胸筋の最も重要な運動は水平内転です。腕を開いた状態から閉じた状態にしていなければ大胸筋は関与しません。そのため、フロントレイズでは肩の屈曲はあっても腕を閉じているムーブメントが無いため大胸筋上部はあまり刺激されません。
スポーツ生理学の博士号を持つmike israetel博士によると大胸筋トレーニングには重要な3つの種目があります。トレーニングでは少なくともこの3種類を含める必要があるようです。
彼によると大胸筋トレーニングで必要になるのは水平なベンチでのプレスである水平プレス。大胸筋上部を狙うインクラインプレス。そして、最後にアイソレーションです。
大胸筋は3つに分けられるのになぜ下部の種目が無いのかという人もいるでしょう。
これは下部と中部が結局1つの領域を分けているだけであるため筋活動が近いためだと思います。
例えばプレストレーニングでベンチ台の角度を徐々に上げていき大胸筋の活動を調べた研究があります。
この研究ではベンチ台の角度0~60度にかけて大胸筋の中部と下部の筋活動がほとんど同じであることを示しています。そのため、下部はアンバランスが出るまでは水平プレスで中部と下部を一緒に鍛えているという感覚でいいと思います。
しかし、上部はそういうわけにはいきません。解剖学的には別の筋肉であるため同じ大胸筋と言えど上部は上部のトレーニングが必要です。大胸筋トレーニングで必要なのは中部と後部であるスターナルヘッドを強く刺激する水平プレス。そして、クラビキュアーヘッド、大胸筋上部を狙うインクラインプレス。
最後に上腕三頭筋を使わずに鍛えるアイソレーションを少なくとも1週間に1種目ずつ取り入れる必要があります。
彼が行っていた通りこの3種を均等にやらなければいけないわけではありません。大胸筋上部がもっと欲しいからそこを重点的にやりたい人はインクラインプレスをたくさんやるのもありですし。他の2種をたくさんやってインクラインプレスを少しだけやるのも問題ありません。少なくとも1種目あればいいです。
おすすめの種目と最もよくある大胸筋トレーニングの間違いを紹介します。水平プレスおすすめの種目はバーベルベンチプレスです。バスキーの筋電図分析、そしてアメリカの運動評議会の筋電図分析でも最も高い大胸筋の筋活動を示しています。
複数の研究で大胸筋のサイズとベンチプレスの強さに相関関係があることがわかっています。間違いなくベンチプレスの重量を伸ばすことは大胸筋のサイズに貢献してくれます。ダンベルのプレスでも大胸筋の筋活動はほとんど変わりません。しかしダンベルと違うところはローディングのやりやすさ、つまり重量を細かく設定しやすいところです。これにより、重量も向上しやすい可能性があります。
ベンチプレスのグリップとしてはワイドが非常に好まれています。これはワイドグリップにすることで大胸筋の筋活動が高いと考えられているのと重い重量を扱えるためです。しかしながら、グリップ幅と筋活動には研究によってバラバラです。確かにワイドにすることでナローよりも高い大胸筋の活動を確認した研究もあれば2017年の研究のようにワイド,ミドル,ナローで大胸筋,上腕三頭筋,上腕二頭筋,三角筋前部,広背筋の筋活動を調べた研究では上腕二頭筋以外の部位ではどのグリップでも有意な変化はなかったことを示しているためワイドグリップが大胸筋にとっていいかは定かではありません。
しかし、ワイドグリップには可動域の減少とケガのリスクの増加があります。
2007年の調査では肩幅の1.5倍よりも広いグリップにすると肩のケガのリスクが増加することを示しています。ワイドだとボトムの時に手と肩の距離が離れるため肩のケガにつながります。
さらに可動域の減少も筋肥大にとってデメリットになる可能性があります。科学的に狭い可動域よりも広い可動域のほうが筋肥大効果が高いことを認めています。そのため、筋電図では同じ結果でも可動域の広いほうが筋肥大にとって効果的です。
これらを踏まえてグレッグナッコル博士はベンチプレスのグリップ幅において筋肥大目的ならば肩幅の1.5倍、バーベルのこのラインに小指をかけるくらいが上手くいくと紹介しています。
そのため、ベンチプレスではあまりワイドにさせずにボトムで肘とグリップが90度になる手幅を探しましょう。
次はインクラインプレス。おすすめはダンベルプレスです。先ほど言った通りバーベルとダンベルの違いはほとんどありません。しかしながら、バーベルは重量設定のやりやすさがありますがダンベルにはダンベルのメリットがあります。ダンベルは広い可動域をもたらすことです。先ほど言った通り可動域の増加は筋肥大にとって重要な要素です。バーベルの場合可動域はバーが体に当たる位置で止まりますがダンベルの場合もっと下に下げることができます。
加えて最初の大胸筋の解剖学の説明の時に大胸筋上部は腕を上に上げる肩関節の屈曲に関わると紹介しました。この運動は脇を開くと非常にやりづらくなります。バーベルにするとグリップは真横なので脇が開きやすくなりますがダンベルの場合はグリップが非常に快適であるため脇が閉じやすく肩関節の屈曲が簡単になります。インクラインプレスではグリップを少し傾けて行うと非常に効果的です。
そしてベンチ台の角度について、大胸筋上部の活性化についてこちらの筋電図分析ではベンチ台の角度44度が最も高い大胸筋上部の筋活動を示しています。しかしながら、最近の筋電図分析ではインクラインプレスのベンチ角度30度が大胸筋上部の筋活動が最もアクティブであることを示しています。しかし30度では大胸筋中部と下部の筋活動が大幅に低下しています。
インドのフィットネス研究所の理事で論文の査読をしているmennno博士によるとインクラインプレスの最も多いミスは中部と下部を無視することだと話しています。この研究では大胸筋全体を活性化させて上部も強く刺激するためには15度が最も効果的であることを示しています。
大胸筋のトレーニングとしてインクラインプレスを行う場合、おすすめの角度は15~30度です。
次はアイソレーション。最も一般的なのはダンベルフライですがこの種目はおすすめしません。バスキーたちのemg研究ではダンベルフライは大胸筋の筋活動が非常に弱いことを示していて、アメリカの運動評議会の研究でもインクラインのダンベルフライ非常に弱い大胸筋の筋活動を示しています。
これはダンベルフライは重力に対して円運動であるため強度曲線が非常に不安定であるためだと考えられます。フィニッシュの部分では大胸筋の活動は非常に弱く大胸筋が強く刺激されるのは可動域の一部だけです。
アイソレーションのおすすめはマシンやケーブルを使うことです。同じ筋電図分析ではペックデックマシンやケーブルクロスオーバーはダンベルやバーベルのプレスに近い筋肉の活動を示しています。これはダンベルフライのような欠点が無く可動域全体で負荷が強く入るため大胸筋が高いレベルでアクティブになります。
大胸筋トレーニングで最も多い間違いはパーシャルレップです。特にダンベルプレスでの筋肉のストレッチについてはスタートで筋肉を十分伸ばしてからプレスを行っている人はほとんどいません。
スタートについてはベンチプレスは大胸筋にバーベルがつくまで降ろして、ダンベルではバーベルよりも下におろすべきです。大胸筋と同じ、もしくはそれよりもダンベルをおろして大胸筋を伸ばしましょう。ホントに多いのがかなり重いダンベルをもってほとんど下げていないトレーニング。
先ほどの可動域のレビュー研究では追加して可動域の中でストレッチが強いトレーニングの方が筋肥大効果が高い可能性を認めています。プリチャーカールでストレッチをかけないほうがはるかに重い重量を持てるのと同じようにダンベルプレスでも重い重量を持つためにストレッチを無くす人がとんでもなく多いです。しかし、ストレッチを無視することは大胸筋トレーニングの効果が大きく低下することは間違いありません。そして、フィニッシュでは肘のロックを行います。
ベンチプレスのフィニッシュでは大胸筋はほとんど上腕三頭筋の運動と考えてる人が多いですが、このようなポイントは科学的には存在が確認されていません。これが当てはまるのは肩幅よりナローでやってる人のみですので普通の人はしっかり最後までプレスを行いましょう。
肘のロックについてはケガするという情報がありますがこれについては科学的根拠がありませんので迷信と考えていいでしょう。
あなたが適切な重量と適切なフォームで普通にトレーニングしていれば肘のロックで関節が壊れる可能性はゼロに近いでしょう。
mike israetel博士の推奨では大胸筋のトレーニングは1週間で12~20setを推奨しています。そして非常にレベルの高い人でない限り週に2~3回がほとんどの人に適していると紹介しています。
しかし、ジェームスクリガー博士のボリュームバイブルによると筋トレ経験者の場合、各筋肉あたりの1回のトレーニングは6~8setで最大になるようです。そのため、大胸筋のトレーニングを20setやる場合、週に2回トレーニングする場合は1日あたり10setとなります。
トレーニングというのは1日で沢山やればやるほど疲れてきます。これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが非常に重要なことです。例えばベンチプレスを20set同じ日にやる場合は1set目が10repできたとして最後の20set目は何回できるでしょう。同じ筋肉をトレーニングすればするほど1setあたりの質というのは悪くなるため高頻度で分割してる人と低頻度で分割している人とでは同じ20setでも大きな差がでます。
そのため、20setやる場合は週に3回以上分割して大胸筋はトレーニングするべきです。1週間で大量のボリュームをやらない場合は週に2回でも問題ありません。ジェームスクリガー博士は週に2回の頻度でしか大胸筋を鍛えられない人は時間的な効率を考えると1週間で12~16setの範囲で抑えるのが最適と紹介しています。1日で同じ部位を8set以上にやってもそこまで効果は受けられないようです。