上腕二頭筋のトレーニングを行っている人は多いですが、上腕二頭筋トレーニングほど間違った鍛え方が流行している筋肉はないと思います。Youtuberやトレーナーが推奨してるトレーニングが実は筋肥大にとって非常に非効率的な鍛え方だったというものも多いです。今回は科学的な根拠を基に上腕二頭筋の正しい鍛え方を紹介します。
上腕二頭筋はその名の通り2つの筋肉から構成されています。短頭と長頭です。2つに共通している運動は肘関節の屈曲であり、最も重要な上腕二頭筋トレーニングの運動は肘を曲げるカール動作です。
加えて長頭は肩関節にもまたがる筋肉であるため肩関節の屈曲にも関与します。例えばlow to highのケーブルフライの時に大胸筋よりも上腕二頭筋が疲れるという人もいると思いますがそれは上腕二頭筋の長頭が大胸筋上部や三角筋前部と同じく肩関節の屈曲に関わるためです。
そして短頭は手首の回外に関与します。ダンベルカールで手首をひねることで上腕二頭筋の短頭を刺激を集中させることができます。
上腕二頭筋には2つの頭があるため上腕二頭筋のバランスを保つためにはトレーニングでは基本的に長頭を刺激する種目、短頭を刺激する種目の2つを取り入れる必要があります。
2009年の上腕二頭筋についての筋電図分析ではダンベルカール中の肩の位置に注目しました。
ひとつは標準的なカールのよりも腕が体の後ろにあるインクラインダンベルカール。そしてもうひとつは腕が体の前にあるダンベルプリチャーカール。この2つのバリエーションでEMG分析を行いました。
結果としてインクラインダンベルカールのように腕が体の後ろにあるトレーニングは上腕二頭筋の長頭が強くストレッチするポジションにあり可動域全体で上腕二頭筋の長頭が活発でした。しかし、プリチャーカールでは肩の屈曲がすでに行われた状態でのカールであるためスタートから上腕二頭筋の長頭が収縮した状態でした。
そのため上腕二頭筋の長頭の活動が抑えられてその分短頭が活動的であることを示しています。
加えて短頭を強く刺激する方法としてはダンベルでの手首の回外があります。2008年の研究ではカール動作中に手首の回外を加えることが上腕二頭筋の短頭を強調させる有効な方法であることを示しています。
世界的なフィットネスの科学的権威であるブラッドシェーンフェルド博士によると上腕二頭筋トレーニングではインクラインカールのような腕が体の後ろにある上腕二頭筋トレーニング、そしてプリチャーカールのような腕がカラダにある上腕二頭筋トレーニングもしくはダンベルカールのように手首の回外を使う上腕二頭筋トレーニングをバランスよく取り入れる必要があると紹介しています。
加えてブラッドシェーンフェルド博士によるとバーベルカールのような腕が体の側面にあるトレーニングは上腕二頭筋の2つの頭をバランスよく鍛えるようです。上腕二頭筋トレーニングにあまり時間をかけたくない人は腕が体の横に配置されるトレーニングを採用しましょう。
上腕二頭筋おすすめの種目を紹介します。
まずは上腕二頭筋の両方の頭を刺激してくれる種目。おすすめはEZバーカールです。2018年の筋電図分析ではダンベルカール、バーベルカールよりもEZバーカールのほうがわずかに上腕二頭筋、前腕の腕橈骨筋の筋活動が強いことが報告されています。
EZバーカールのメリットはこれに加えてバーベルよりもグリップが快適であるため手首の固い人でも安全にトレーニングができます。ダンベルカールと違い重量も非常に追加しやすいため細かいローディングが可能です。
次は長頭狙いの種目、おすすめはベイジアンカールです。インクラインダンベルカールではスタートポジションでは負荷がありません。ベイジアンカールはスタート部分、ストレッチポジションで上腕二頭筋を引っ張る負荷が存在するためより強いストレッチを生み出します。
そして短頭狙いの種目、これは手首の回外を使う種目または腕を体の前面に配置するカールがあります。
手首の回外を使う場合はダンベルカール、腕を前面に置くカールではマシンのプリチャーカールをおすすめします。しかし、両方を満たしている短頭狙いのおすすめの種目はコンセントレーションカールです。
バスキーたちの筋電図分析、アメリカの運動評議会の筋電図分析ではコンセントレーションカールが一貫して上腕二頭筋の筋活動が最も高いことを示しています。フィニッシュでは手首の回外を使って短頭を強調させましょう。
上腕二頭筋の筋活動を爆発的に成長させるおすすめの鍛え方を紹介します。バスキーたちのEMG研究では高重量ネガティブトレーニングを使うことで上腕二頭筋の筋活動が40%増加したことを示しています。このトレーニングでは普段よりも20~30%重い重量を設定してフリーハンドの助けを借りてダンベルを上げます。そのあとダンベルを持つ腕でゆっくりと降ろします。
バスキーたちのEMG分析ではコンセントレーションカールで高重量ネガティブトレーニングの効果が確認されましたがパーカーフィットネスはコンセントレーションカールで高重量ネガティブトレーニングはおすすめしません。
なぜならフリーハンドの力を借りるとき助ける方の腕も上腕二頭筋の力を使うからです。これによりインターバル中に片方の腕が回復できず次のセットでのパフォーマンス低下につながります。
おすすめはマシンのコンセントレーションカール。フリーウエイトでは強度曲線が非常に不安定なことから多くの筋電図分析で最悪に近い筋活動を示しています。さらには高重量を扱うときはマシンをおすすめします。このトレーニングで重要なのはポジティブ動作でのみチートや助けを借りることです。フリーウエイトのカールでこの鍛え方をやる場合、ポジティブ動作だけのはずが可動域全体で体の勢いを使う可能性が高いからです。
マシンコンセントレーションカールではポジティブ動作のみカラダの勢いを使ってネガティブ動作ではゆっくりとウエイトを降ろします。しかし注意点としてこれは上腕二頭筋が伸び悩んでる人に効果的であり全てのトレーニングでこれを使用すると逆効果になる可能性が高いようです。
カールトレーニングはチートとパーシャルレップが世界で一番多いトレーニングだと思います。
筋トレ初心者っぽい人でもEZバーカールで両方に10kgもプレートを付けてカールをしているのをよく見かけます。このトレーニングでは上腕二頭筋はほとんど活動していません。上腕二頭筋トレーニングで重要なのは肘の屈曲です。このトレーニングはスタートからフィニッシュまで肘の角度が全く変わってないことがわかります。多くの人がやっているこんなバイセプスカールは三角筋前部の力を使っているだけです。肘を曲げたフロントレイズをしているだけです。
そして正しいカールは腕以外は動きません。間違ったカールでは上半身の勢いを使ってウエイトを持ち上げています。エゴを優先させるトレーニングでは上腕二頭筋は成長しません。
基本的に重量としてはある程度の筋トレ経験がある人でも片方5kg程度のウエイトで十分です。僕の言ってるジムでも初心者中級者くらいかなって人でも片方10kgのプレートを扱っています。しかし、ほとんどは肘の角度は変わらずにカラダの勢いと肩の屈曲で上げているだけです。
そして上腕二頭筋トレーニングは間違った鍛え方がいいコトと教えられています。代表的なのは「上腕二頭筋トレーニングではストレッチを敢えてかけずに負荷を残す」という鍛え方。これをすることで重い重量が扱えるため動画映えになる。そしてTUTが伸びてパンプが強くなるため、科学的な証拠を全く意識しないボディビルダーたちはこのやり方を推奨します。しかしこの鍛え方は効率的ではないというのが科学的に裏付けられています。
まずこれをすることで可動域の減少とストレッチが無くなります。非常に最近のメタ分析では広い可動域+ストレッチが筋肥大にとって重要なコトが認められています。そのため、負荷残すという鍛え方は重要と認められている広い可動域とストレッチを殺してそこまで重要ではない代謝ストレスを優先させている筋肥大にとって最悪に近い鍛え方と言ってもいいでしょう。
2021年9月の非常に最近の研究ではプリチャーカールの収縮部分のみを行うグループよりもストレッチ部分のみを行うグループのほうが3倍も筋肥大していました。ストレッチを無くすことが筋肥大効果を大きく損なうのがわかります。
ストレッチから逃げて中途半端な位置でカールを止めるととかなり重い重量を扱えます。しかしそれはただの承認欲求を優先させたエゴリフトですし上腕二頭筋が成長するのに果てしない時間がかかります。重量は落として負荷はしっかり抜けるくらいストレッチさせることが科学的研究で明らかになっています。