ベンチプレスは最も重要なトレーニングのひとつです。
今回はスポーツ科学の博士号を持ち、パワーリフティングの世界記録を3つ持っていた。グレッグ博士の記事を参考にベンチプレスを伸ばすフォームとコツについて科学的な証拠から3つ紹介します。特にベンチプレス100kgいきたいけどなかなかいけないって人はこの動画でベンチプレスの停滞期を打破してくれればと思います。
まずは解剖学的にベンチプレスがどの筋肉を活性化するかです。ベンチプレスで主に使用される筋肉は大胸筋です。腕を開いた状態から閉じた状態にすることは大胸筋が役割を果たします。
そして、肘を曲げた状態から伸ばすことで肘の伸展により上腕三頭筋も収縮します。さらに、肩関節の水平内転だけでなく屈曲も使うため大胸筋上部や三角筋前部も非常にアクティブになります。中部や下部のみのトレーニングと考えている人が多いですが科学的な筋電図分析によると大胸筋上部も強く活性化させます。
ベンチプレスでは大胸筋,上腕三頭筋,三角筋前部の3つが主にアクティブになります。間違いなくベンチプレスは大胸筋トレーニングの中で最強のトレーニングのひとつだと思います。
バスキーたちのEMG研究では測定した種目の中で最も高い大胸筋の筋活動を示していてアメリカ運動評議会ACEの筋電図分析でもバーベルベンチプレスは最高の値を示しています。
大胸筋の発達にとって非常にいい種目であるのは間違いなく、複数の研究でベンチプレスの強さと大胸筋のサイズに相関関係が示されていることはベンチプレスの大胸筋への影響を考えるとごく自然なことです。
加えてダンベルプレスよりも重量設定が非常に簡単です。
ダンベルの場合、ジムにあるダンベルの種類によって重量調整がかなり制限されます。例えばダンベルプレス20kgできたから次は22.5kgに挑戦したいなと思ってもジムや家にその重量のダンベルが無ければ不可能です。しかし、バーベルの場合はほとんどのジムで2.5kgずつは重量設定ができます。これにより、ローディング計画が立てやすく1RM計算が非常にやりやすいです。
そのため、大胸筋の発達にはベンチプレスの重量を伸ばすことがかなりの近道だと考えます。
科学的にベンチプレスを伸ばす方法について紹介します。
ひとつ目はバーパスを改善することです。つまりバーベルの軌道です。これは最も多いミスと言ってもいいでしょう。多くの人がベンチプレスを行うときこの軌道をあまり意識していないか、ベンチプレスの重量が上がりにくい軌道にされていることがよくあります。ほとんどがまっすぐ持ち上げるかアーチを描くようにバーを動かします。デッドリフトやスクワットではまっすぐウエイトを持ち上げることが重要であるためベンチプレスでも同じことをしようとします。
しかし、ベンチプレスを持ち上げるときに重力と垂直にウエイトを持ち上げるのは逆効果です。フロントレイズの動きを思い出してください。ベンチプレスではブリッジを使うため肩関節は円を描くように動かしたり重力に垂直に上げようとするのはモーメントアームが長くなることを意味します。分からない人のために簡単に言うとまっすぐ持ち上げようとするとベンチプレスのバーと肩の距離がどんどん離れていることがわかります。
これは自分のカラダの近くでウエイトを扱うよりもより遠くで持ち上げようとする方が同じ重量でもかなりきついのと同じです。
まっすぐ上げようとするとモーメントアームは長くなりあなたの体からバーがどんどん離れるため同じ重量でも重く感じます。
トーマスマクマフリン博士が公開したbench press more nowというベンチプレスガイドを見てみましょう。彼は膨大のベンチプレスリフターを調査してベンチプレスのバーの軌道について調べました。その中でベンチプレスが停滞するリフターや伸び続けるエリートリフター、そして初心者のベンチプレスを見てある傾向に気づきました。
初心者はまっすぐ上げていますがエリートレベルになるにつれてプレスの軌道のスタートが鋭角であることがわかると思います。
トーマスマクマフリン博士はベンチプレスが向上し続けるリフターはバーを顔に向かって押してからまっすぐ上げていることを発見しました。これはモーメントアームが長くなることを防ぎ上手く力が使える位置でベンチプレスを行い続けていることを意味します。対するまっすぐ持ち上げるリフターはモーメントアームが長くなり実際には体がからどんどん遠くなって行くことを意味します。
これを踏まえてbench press more nowでは一般的な考え方である、まずはまっすぐバーを持ち上げてから顔の前に持っていくのではなく、まずは顔の前にもっていってからまっすぐプレスすることを推奨しています。
ベンチプレスで伸び悩んでる人はまっすぐとか円を描くようにあげるのではなく肩関節の屈曲を使ってまずは斜めに持ち上げることを意識してみてください。
次のベンチプレスのポイントはより重い重量で持ち上げることです。回数と筋肥大の研究では一貫して高重量トレーニングのほうが筋力アップに効果的であることを示しています。2~4repの高重量トレーニングと10~12repの高回数トレーニングでは筋力アップ効果については高重量トレーニングの方が優位に高いことを示しています。
加えて2014年のブラッドシェーンフェルド博士の研究では筋トレ経験の豊富なリフターに10repの高回数トレーニングと3repの高重量低回数トレーニングで比較しました。被験者が行ったボリュームは同じであったにもかかわらず筋力アップ効果は高重量グループのほうが優位でした。
その差は20%以上も違い高重量のほうが効果的に筋力を上げられることを認めています。
これは高重量トレーニングのほうが多くのモーターユニットを動員できる為です。
軽い重量でベンチプレスをたくさんやっている人は筋肥大にとっては効果的ですが筋力アップに関しては遠回りです。ベンチプレストレーニングでは10rep以上の高回数トレーニングは避けて2~8repの範囲で行うことを推奨します。
そして高頻度でやってベンチプレスを出来るだけたくさんやるのも重要なポイントです。例えば週に2回ベンチプレスをしている場合は週に3回,4回に頻度を増やしましょう。これは何かの練習の頻度を増やすのと同じでベンチプレスのテクニックをより効率的に学習することにつながります。
Grease the Grooveの発案者でもあるパーベル氏は「強さはスキルである」と話すようにベンチプレスやスクワットなどの重量の向上もテクニックのひとつと考えています。
その証拠に2017年のメタアナリシスでは週に5セット未満の被験者がベンチプレスのボリュームを5~9セットに増やすと筋力の向上が約16%速くなることを示しています。
さらには高頻度トレーニングメニューのメリットと同じで頻度を増やすと強度も上がります。例えば1回3setのベンチプレスを週に2回行うよりも1回2setを週に3回行ったほうが疲労による重量低下が無いため低頻度よりも重い重量,沢山の回数を扱えるようになります。
最後は頻繁に扱う重量を変更することです。この方法は筋トレ初心者のひとにとってはあまり効果がありませんが100kg近くで停滞している人には非常に効果的です。
2002年の研究では被験者にLPグループとして1~4週間を8rep,4~8週間を6rep,9~12週間に4rep実行するグループと、DUPグループとして月曜日8rep 水曜日6rep 金曜日4repのグループで比較したところベンチプレスの増加率はLPが+14.4%,DUPが+28.8%でした。
例えばずっと5repのベンチプレスに固執するよりも3rep,8repのようにある程度回数をばらけさせると効果的です。
曜日 | 目的 | rep | set | RPE |
月 | 筋力 | 80~90% 4rep | 3set | 8 |
水 | 筋肥大 | 70~75% 8rep | 5set | 7 |
金 | 計測 | 90~95% 2rep | 1set | 9 |
おすすめのベンチプレスメニューとして週に3回、ベンチプレスを行うことをおすすめします。
まず一日目は筋力アップトレーニングです。1RMの80~90%を4rep、3set行います。RPE8で2回分余力を残して終わらせます。
次は筋肥大目的のトレーニングです。1RMの70~75%を8rep 5set行います。RPE7で比較的限界から遠く余力を残して終わらせることを推奨します。筋力アップトレーニングでは特に疲労管理が重要になります。Grease the Grooveメソッドのように効率よくテクニックを学習するためには限界から遠目にリフトを終わらせてボリュームを確保することが推奨されています。
世界的な権威でもあるブラッドシェーンフェルド博士によると基本的にトレーニングで限界までやることのメリットはないようです。
このセッションではボリュームを確保するために、そして次のベンチプレス,次の種目で疲労を残さないためにも限界からある程度離れてリフトを終わらせます。
最終日は自分の筋力を測ります。1RMの90~95%を2rep、1setで行います。なぜ1repじゃないかというとこれも疲労管理です。
1repでは潰れるか持ち上げられるかしかなく、その中間がありません。2repなら1rep目が上がった時点でこれ次はムリだなと思ったやめることができます。
例えばこれで90kgが2rep上がったら次回の筋力を測るベンチプレスの日では92.5kgを2repしてみましょう。筋力アップの日と筋肥大目的の日の重量の追加は必須ではないので行けそうならくらいの間隔でいいです。
重量をしっかり扱うためにも動的ストレッチなどのウォームアップを忘れないでください。このメニュー中に関節が痛くなったり体の疲労感が抜けなくなったりしたら潔くトレーニングを休みましょう。
その状態でトレーニングしてもおそらく重量は上がらないからです。ケガなくやり続けるためにも適切なフォームでのトレーニングや限界の手前でトレーニングを終わらせてリスクが低い選択をしましょう。