ベンチプレスで大胸筋に効かせる。懸垂で広背筋に効かせる。スクワットで大腿四頭筋に効かせる。バイセプスカールで上腕二頭筋に効かせる。ダンベルサイドレイズで肩に効かせる
トレーニングでは対象の筋肉に効かせることにまずは集中。効かせないと筋肉に刺激が入らないといわれてきた人も多いでしょう
しかし、間違った効かせ方をすると筋トレ効果が上がるどころか、筋肥大にとって非効率的なことをご存知ですか。科学は当たり前のように言われてきたこの効かせる、トレーニング中に筋肉を意識して動かしてトレーニングするマインドマッスルコネクションについて疑問視しています。
この記事ではマインドマッスルコネクションについて科学的な根拠とともにメリットとデメリット、そして正しいマインドマッスルコネクションの使い方について紹介します。
マインドマッスルコネクション、筋肉を意識して鍛えることのメリットは筋肉をより活性化できる可能性があるためです。emg研究によるとスクワットや腕立て伏せ、ヒップスラストなど中に大腿四頭筋、殿筋、大胸筋を意識して行った場合、意識した対象の筋肉の筋活動が増加していることを示しています。
さらには2018年の研究では負荷の低いベンチプレスで筋肉を意識することで筋活動を増加させることを示しています。大胸筋に集中した場合は大胸筋、上腕三頭筋に集中した場合は上腕三頭筋の活性化が向上しました。
加えて2018年のブラッドシェーンフェルド博士の研究では30人の大学生にバイセプスカール中に上腕二頭筋、レッグエクステンション中に大腿四頭筋を意識するマインドマッスルコネクショングループと筋肉を意識せずにウエイトを持ち上げるグループで比較しました。
結果として上腕二頭筋は筋肉のサイズがマインドマッスルコネクションナシのグループと比較して2倍に増えていましたが大腿四頭筋のサイズは変わりませんでした。
これについて彼は考えられる理由として上半身のほうが下半身よりもより細かい作業に適しているためだと説明しています。例えば手で文字を書くことは簡単ですが脚で文字を書くのは非常に難しいです。上半身のほうが器用であるため、これは効かせやすさにも影響します。さらには研究対象者が筋トレ経験のない被験者が対象であったため筋トレ経験のない人よりも下半身の筋肉を意識することがありません。
筋トレ経験の豊富な被験者なら脚の筋肉を意識することになれているため大腿四頭筋マインドマッスルコネクションの効果を受け取れると考えます。
ボディビルダーなどターゲットの筋肉に集中したトレーニングすると運動中に強い収縮を感じることができるといいます。実際に、それを裏付ける証拠があるので明確に間違っていることではありません。
しかし、愚直にトレーニング中に効かせることを意識すると筋トレ効果を妨げる可能性があります。
マインドマッスルコネクションには否定的な意見も多くあります。ひとつ目はそもそもウエイトを持ち上げていること自体で筋肉は高いレベルで活性化されているということです。
加えてマインドマッスルコネクションの問題点は全ての状況で筋肉の活性化が増えるというわけではないということ。そして一番大きいのはほぼ一貫してパフォーマンスが低下することです。
先ほどの軽い重量でのベンチプレスの研究ではリフティングテンポも変えていました。ゆっくり運動させるときはマインドマッスルコネクションの筋肉の活性化が確認されましたが素早く持ち上げるときはマインドマッスルコネクションの筋肉の活性化効果というのは確認されませんでした。
さらに面白いことに素早く持ち上げるベンチプレスはマインドマッスルコネクションを使ってゆっくりベンチプレスを持ち上げるよりも筋肉の活性化が高いことを示しています。
加えて2020年の研究ではこの研究では背中トレーニングで背中から引っ張ることを指示されたグループは最初の2repまでは広背筋の筋活動がかなり上昇しましたが、それ以降は効果が無く筋肉を意識しないグループとセット全体を通して筋肉の活性化に差が無かったことを示しています。
そして一番の問題点は、マインドマッスルコネクションはパフォーマンスを低下させます。15年間のパフォーマンスについてのレビュー研究ではスポーツパフォーマンスやバランス耐久性など力の生成においてほぼすべてでマインドマッスルコネクションを使わないEFのほうがマインドマッスルコネクションを使うIFよりも高いことを示しています。
大胸筋を意識しながら行うベンチプレスよりもウエイトを持ち上げることを意識したベンチプレスのほうがおそらくほとんどの人にとって高いパフォーマンスを発揮します。これは腕や脚の筋肉を感じながら野球選手がボールを投げたりやサッカー選手がボールを蹴ったりしないのと同じことです。
最大のパフォーマンスをするためには敢えて筋肉を意識しないことが重要です。
話した通りマインドマッスルコネクションのメリットは特定の状況で筋肉を活性化させる可能性があるということです。逆にデメリットとしてパフォーマンスの低下が示されています。
ここでおすすめのマインドマッスルコネクションの使い方を紹介します。
専門家の意見としてフィットネスの科学的な権威の方たちの意見を参考にすると軽い重量の時はマインドマッスルコネクションが効果的であるようです。menno hanselman博士によると1RMの50%以下の軽い重量の時は筋肉を活性化できるようです。
しかし、高重量、エリックヘルムズ博士によると1RMの80%以上のコンパウンドトレーニングでマインドマッスルコネクションを使用しても効果はなく逆にパフォーマンス低下によって筋力の成長にとって非効率的であるようです。
大胸筋上部を狙ったナローグリップのフラットベンチプレスのようなマインドマッスルコネクションを使うことが推奨されている種目は例外として少なくとも筋力アップを狙う種目ではマインドマッスルコネクションは逆効果である可能性が高そうです。高重量を扱ったり爆発的にウエイトを持ち上げる筋力ベースのトレーニングではマインドマッスルコネクションの筋肉の活性化もあまり効果は期待できません。加えてパフォーマンスが低下することで筋力の向上を妨げます。
懸垂が伸び悩んでいたりベンチプレス、スクワットが停滞している人はフォームを固めて上げることだけに集中して一度対象の筋肉を意識することをやめて見ることを推奨します。
そして、ダンベルカールやサイドレイズなどのアイソレーション種目では対象の筋肉を意識することがおすすめです。筋肉の活性化はもちろんですがフォームの強制があります。初心者のひとに多いですがマインドマッスルコネクションをやめて持ち上げることに意識を集中させると体の勢いを使い始めます。対象の筋肉を意識することでチートを抑制することができます。
微妙なラインなのはベンチプレスなど筋力を伸ばしてプログレッシブオーバーロードを満たすような種目ではなくベンチプレスの後のインクラインダンベルプレスのようなコンパウンドの種目です。これについてはパーカーフィットネスの推奨としてはコンパウンドトレーニングの場合マインドマッスルコネクションは必要ないと考えています。
20rep以上のコンパウンドトレーニング出ない限りメインの種目以外でも8~12repのコンパウンドトレーニングではマインドマッスルコネクションは使わずにフォームを固めてウエイトを持ち上げることを推奨します。
しかし、トレーニング初心者の方の場合、フォームがまだできていないためウエイトを持ち上げることに集中するとフォームの崩壊や経験者ほど対象の筋肉を動かすことになれていないため意識しないと筋肉が活性化できない場合があります。逆に筋トレ経験の豊富な人は意識しなくとも十分に筋肉を活性化できます。そういう初心者のひとの場合はコンパウンドトレーニングといえどマインドマッスルコネクションを使う必要があります。