筋トレのボリューム、これは筋肥大、そして筋力アップに一番影響すると言ってもいいくらいの非常に重要な要素です。今回はその筋トレボリュームを上げる方法としてPAPについての新しい研究が2021年の5月にjournal of conditioning reserchに記載されました。
PAPというのはPost-activation Potentiationの略です。直訳すると活性化後の増強効果です。
このPAPの効果が受けられるのはパワーリフター、そしてある程度のトレーニング経験がある上級者です。この人たちがPAPをやるとウエイトを持ち上げられる回数を増やしてボリュームを上げることができ、結果として筋肥大効果と筋力アップ効果を大幅に上げることができます。
この動画ではそんな筋トレ回数を増やすPAPについてと正しいやり方を科学的に解説します。
PAPがどんなものか分からない人に説明するためにまずは最新の研究を紹介します。
この研究ではトレーニング経験のある被験者にスクワットをしてもらいます。メニューは1RMの70%を4setです。ただし、片方のグループは4set行う前に1RMの90%のスクワットを1セット行いました。
その結果、メニューを行う前に1RMの90%を行ったグループのほうが4setの間でウエイトを持ち上げた回数が優位に高いことがわかりました。その差はこのグラフを見たらわかる通りです。
細かい数字として事前に高重量のスクワットを行ったグループは平均でボリュームが1600kg、行わなかったグルプは1379kgであり、16%も事前に高重量スクワットを行ったグループのほうがボリュームが多いことがわかりました。これはもちろん90%で行ったセットを除いたボリュームです。
PAPとはこのことです。トレーニングの前に高重量のウエイトを持ち上げておくことでパフォーマンスを向上させます。PAPの原因ははっきりしていませんが最も有力なものとして神経生理学的なメカニズムであると考えられています。スクワットだとしたら70kgを持ち上げる前に90kgを扱っておくことで神経系が興奮し、パフォーマンスを高めます。
このPAPはウエイトリフティングだけでなくスポーツパフォーマンスにも効果的です。PAPを使用することでその後のジャンプ力を高めたりすることができます。
例えば2008年の研究では陸上競技選手を対象にしてPAPを行った結果、ジャンプ力が大きく向上したことを示しています。
ここで記事を読むのをやめるのは絶対おすすめしません。PAPについての研究は他にもたくさんされていますが重要なポイントがいくつもあります。
まず回復時間、普通高重量のスクワットした後重量とか回数落ちるけどなーと思う人もいるでしょう。PAPの効果は沢山の研究で見つかっていますが高重量で1setだけやるのをPAPセットをここでは言います。このPAPセットと実際のメニューとの間はかなり空ける必要があります。
2007年のラグビー選手を対象にした研究では休憩時間が短い場合はパフォーマンスの改善は全くなく、寧ろPAPセットのせいでパフォーマンスが低下することが示されています。
PAPのインターバルについては未だに矛盾が多く、決定的な時間は出ていません。目安ですがこの簡単なレビュー研究ではPAPセットから実際のメニューに入るまでに8~12分がのインターバルをとる必要があることを示しています。めちゃくちゃ多いですよね。
しかしこれはトレーニング経験やどんな種目を行うかなどにかなり影響します。PAPは最初に話した通り研究でトレーニング経験があったり強度が高い人に特に効果が出るものであることが示されています。
そのため、種目全般を考えると3~12分が妥当だと思います。これは高重量のスクワットと低重量のスクワットでは必要なインターバルが変わるためです。傾向として高強度のトレーニングの時にはPAPセットの後は長いインターバルが必要で逆に低重量のトレーニングの時はPAPセットは短くても十分です。とはいっても3分は最低でも必要ですが。
PAP効果を出す目に必要なPAPセットの重量についてもPAPのレビュー研究では矛盾があり残念ながら明確な重量は決められないことがわかっています。しかし、研究の大部分は高重量を扱っているため高重量を扱うのが無難でしょう。
先ほどとは違うレビュー研究では軽い重量では神経系の興奮状態を上げるためには不十分であることが考えられています。目安としては1RMの80%以上は必要です。
おすすめとしてはPAPやった後に8分間のインターバルをとります。おすすめの重量は1RMの90%で計算上この重量は4rep程度はできます。しかし、やりすぎるとそれで疲れてしまいその後のボリュームに大きくかかわって来るので1~2rep、RPEは7くらいがおすすめです。8分間スクワットをエリアを占領するわけにはいきませんから、インターバル中に有酸素運動のウォームアップや動的ストレッチをやると時間を有効的に利用できると思います。