パンプアップ。筋トレしてる人全員聞いたことがあるでしょう。あなたがウエイトを持ち上げているとき生理学的な多くの現象が起こります。自分の筋肉が一回り大きくなることで達成感を得る人もいるでしょう。
「おしゃべりは後にしてくれ、パンプが冷めちまう」という言葉がボディビルダーの名言のひとつともなって紹介されています。まぁただこれは出典は不明で実際にこの言葉を英語で発してる映像はないため、おそらく日本で独自に作られた言葉である可能性が高いです。
話しがそれましたが2017年のレビュー研究でもパンプの筋肥大にとっての価値というのが認められています。
実際にYoutube上でも10分でパンプするメニューとか肩をパンパンにする筋トレメニューとか、パンパンにパンプすることがいいコトと思ってる人も多いですし、このパンプアップをメニューの最後にしっかり行ってから自分のトレーニングメニューを終える人もおおいです。しかし、このパンプアップについて認識はほとんど間違っています。
フィットネスの常識、特に日本のトレーニングの常識となっているパンプアップについて科学的に解説します。
まずは筋トレの刺激の種類についてよくトレーナーやYoutuberが停滞期が来たら筋トレの刺激の種類を変えろと言うと思います。ベンチプレスで停滞してたらストレッチ重視のダンベルフライだったり、筋トレの刺激の種類といえばほとんどがこの3つです。
ひとつは機械的緊張、これはウエイトを持ち上げることです。もうひとつはストレッチで特に起こりやすい筋肉の損傷、そして代謝ストレス。これはパンプのことだと思ってください。
2010年のブラッドシェーンフェルド博士の研究では筋肉の成長にとって重要なのは先ほど紹介したこの3つであることが示されています。これにより機械的緊張狙いのミッドレンジ種目、筋肉の損傷狙いのストレッチ種目、代謝ストレス、パンプ狙いのコントラクト種目の3つに分けてメニューを構築するPOF法というのも考え出されました。
しかし、ブラッドシェーンフェルド博士の2010年の研究から10年以上立っている今、この研究で示されていることは覆されたのか、もしくはより信頼性が高くなったのかどっちだと思いますか?
実は前者です。この2010年。筋肥大にとって重要な刺激の種類は3つでないことがわかりました。
研究の著者でもあるブラッドシェーンフェルド博士はインタビューでこの研究で示した筋肥大の3つのメカニズムは間違っていることを認めています。
そのため、一旦この3つが筋肉の成長に重要であるという情報は一回忘れてください。こうなるとパンプアップ、代謝ストレスは重要なのでしょうか。
この代謝ストレスについて科学的な権威でもあるmenno博士の講義動画があります。(動画を見なくても記事の内容を見ればいいです)
HIITは多くの筋肉の損傷と代謝ストレスを誘発することがわかっています。例えばタバタプロトコルやったら体の筋肉のどこかしらが疲労でパンプし、上がらなくなる経験をしたことがある人も多いでしょう。
しかし、HIITの筋肥大効果はごくわずかです。筋トレ始めたばかり、運動ほとんどしたことない人だったらHIITによりちょっとだけ筋肉が成長する可能性がありますがほとんどの人にとってはゼロです。つまり簡単に言うとめっちゃパンプするけど筋肥大はしないってことです。ってことはパンプアップって効果ないって考えられますよね。
ただ、まだ結論を出さないでください。パンプが全く筋肥大に影響しないわけではありません。
このHIITの筋肥大効果についての原因は動画でも言っていた通り機械的緊張不足ということです。ここからインターバルの話になります。
一昔前のボディビルダーが話していたパンプを狙うトレーニングは筋肥大、インターバルを長くとって高重量を狙う種目は筋力アップといわれていましたがこれは実は違います。インターバルについては科学的にある程度の結論が出ています。科学的なレビューでは長いインターバルのほうが多くの回数やボリュームをこなせるため筋肉の成長にも筋力の発達にも優れていることが示されています。
まずブラッドシェーンフェルド博士の研究によって定義された従来の筋肥大モデルは次の通り。そしてmenno博士が考えた新しい筋肥大モデルはこの通りです。
筋トレ初心者の人にはちょっと難しい話になってしまいましたがめちゃくちゃ簡単に言うと筋肥大にめっちゃ大事なのは機械的緊張です。まずはこれを最優先にしてトレーニングするべきです。
そして、このボリュームがほとんど同じ場合はパンプがあった方が勝ちます。つまり機械的緊張を最優先させて代謝ストレスを狙いましょう。
このパンプが悪影響になるときはパンプを機械的緊張よりも優先させた場合です。よくYoutubeにある10分で背中がパンパンになる筋トレメニューとか、肩のジャイアントセットで肩をパンパンにする短時間で鍛えたり、同じ筋肉群を連続でやってパンプさせるみたいな動画がありますがハッキリ言ってやる価値はありません。
代謝ストレス、パンプアップの科学的なレビューでも代謝ストレスは筋肥大の主要なメカニズムではなくあくまでも二次的なものであることを示しています。
つまり時短メニュー、ジャイアントセットみたいなのってインターバルほとんどないですよね。ショルダープレスやってサイドレイズとか。筋肉の成長はほとんどなく、時間の無駄なのでやらないことをおすすめします。
これは機械的緊張を犠牲にしてパンプを求めているからです。HIITと似たようなメニューです。ナチュラルの人がこのメニューで筋肉が成長する可能性はかなり低いです。強いパンプはあるので達成感はあるかもしれませんが短期的なものです。
筋トレ最大の勘違いともいえるのは痛みを成長の指標にすることです。追い込みの辛さだったりストレッチで筋肉が痛む感覚、筋肉がパンプしたときの筋肉の疲労感。No Pain No Gainは筋トレには当てはまりません。menno博士の投稿でいいなと思った言葉があります。No Pain No Problemです。
最も最適なのは機械的緊張も重視しつつパンプも両立させることです。この両立は実は可能です。機械的緊張かつパンプ狙うトレーニングはインターバルをしっかり摂る、かつ高回数でやることです。
みなさんの体感的にも高回数でやったほうがパンプが強いことを感じると思います。あとは収縮感が強いトレーニングもパンプを感じやすい傾向にあります。
筋トレで大胸筋トレーニングをするとしたらベンチプレスなどの高重量で低回数のトレーニングを行います。これは機械的緊張は強いですが代謝ストレスは強くありません。大胸筋の最後の種目でケーブルフライを高回数でやります。しっかりと収縮させてて行います。高回数トレーニングでもボリュームが最優先であることを忘れないでください。そのため、高重量ベンチプレスと同じくしっかりインターバルをとります。
そしてボリュームと同じくらい重要なのは可動域。筋肥大のための重要なポイントは広い可動域とボリュームです。そのため、よくある収縮部分だけをやったケーブルフライも避けるべきです。
筋トレの常識として未だにパンプアップが重視されている理由は科学的な研究を一切見ない人間たちに筋肉の成長には痛みが必要だということを刷り込まれ続けているからです。追い込みやパンプ、疲労感をゴールにしないでください。
短時間でパンプさせるトレーニングメニューのような機械的緊張を削ってパンプを重視したら本末転倒です。絶対に真似しないでください。