皆さん一度は筋トレのことを調べたときに、筋肉を慣れさせないために種目を変更しろとかいわれたことありませんか?
筋肉の慣れ、筋トレの刺激の種類は長い間ずっといわれ続けてきたことです。今回は筋トレの慣れについて科学的な部分から解説したいと思います。
例えば大胸筋にしたらベンチプレス9setよりもベンチプレス3set、インクラインプレス3set、ダンベルフライ3setのほうがなんとなく良さそうな気がしませんか?筋トレメニュー紹介すると種目変更はせずにしばらくこのメニューを続けるべきなんですかとか、停滞期の抜け方とか調べたらまず間違いなく筋肉の慣れという単語が出てきます。
確かに科学的な研究でも慣れのようなものがある可能性は示されています。例えばこの2014年の研究、この研究では週に2回12週間下半身トレーニングを行いました。被験者はずっとスクワットを行うグループとスクワット、デッドリフトランジ、レッグプレスの4種類を行うグループです。
この2つのグループに加えて扱う重量を毎回変更するグループとずっと固定させるグループとに分けました。つまり合計4つのグループに分けられます。その結果、筋力アップ効果に差があり最も効果的だったのは同じ重量で異なる4つの種目を行ったグループでした。
つまり、色々な種目をやるのは効果的です。しかし、筋肥大効果についてどのグループも有意な差が無かったのが大きなところです。
日本ではあまり聞きなじみのないトレーニングルーティンにマッスルコンフュージョンというものがあります。直訳すると筋肉の混乱です。このトレーニングプログラムは頻繁にトレーニング種目を変えることで筋肉を慣れさせないというものです。例えば月曜日ベンチプレスやったら、火曜はダンベルプレス、水曜はフライみたいな感じです
これについて2019年にブラッドシェーンフェルド博士の研究がこの効果について示しています。この研究では固定エクササイズグループとコンピューターでランダムに表示される種目を行ってエクササイズを頻繁に変更する2つのグループに分けられました。研究期間は8週間で週に4回トレーニングを行いました。
その結果、どちらのグループも筋力、筋肥大効果ともに有意な差はありませんでした。
ただし、種目を頻繁に変えていたグループは有意なモチベーションの増加がありました。つまり筋トレに対して意欲的だったということです。
これを見るとマッスルコンフュージョンのように頻繁に種目を変えることはデメリットなくモチベーションをあげられる可能性があります。
しかしこれについてフィットネス科学研究所理事であり運動科学分野でも最も影響力のあるjournaの査読者のひとりでもあるメンノヘムルズ博士はこの研究を深く掘り下げてくれています。
この研究の著者はこの研究は調査結果の統計的な優位性が十分に示せていない可能性を認めています。
ここで両方のグループの絶対的な変化を見てみると固定運動グループが全体的に優れた効果を示しています。そしてこれはほんの少しではありません。パーセンテージについては大腿直筋で頻繁に種目を変えていたグループの3.5倍、他の二つの大腿四頭筋の頭では1.5倍効果が高かったということです。
そして体脂肪が減っているにもかかわらずより多くの体重を獲得しています。
そしてこの研究の一番とも言っていい問題点はプログレッシブオーバーロードです。筋力の向上も固定グループのほうが高いですが、この差はもっと開く可能性があります。
この研究では被験者にプログレッシブオーバーロードを可能な限り迅速に行う支持が出ていませんでした。研究者のコメントでは「被験者は研究期間中、毎回同じ回数で限界に達していました」と話されています。
つまり、8週間という研究期間中ずっと同じ回数で潰れていたということです。これは不自然ですよね。
そしてこの筋トレの種目を変えない、種目を固定させることの一番のメリットはプログレッシブオーバーロードの計画のやりやすさです。
つまりこの研究では固定エクササイズの一番のメリットであるプログレッシブオーバーロードのやりやすさが殺されていると言っても過言ではありません。
皆さんのように毎回目標を決めて取り組んでいる場合は固定エクササイズはもっと大きな利益をもたらすでしょう
さらにはトレーニングの種目を毎回変えることは筋肉の損傷につながります。筋トレ種目をいつもやってるメニューと変えたみたとき、次の日いつもより強い筋肉痛が来たりします。僕も経験ありますけど、
こうなったときに「あ、慣れてない刺激が入ったから筋肉がたくさん傷ついてるんだ。」と考えます。確かにそうですがそれは筋肥大には繋がりません。
それは不必要な筋肉の損傷であり、2018年の研究では筋肉の損傷は筋肥大のための主要なものではないことが示されています。さらに2016年の研究では短期的、中期的には筋肉の損傷は筋肉の成長とは完全に無関係であることが示されています。
「いつもより筋肉痛が来る→筋肥大」というわけではない
つまり、いつもの違う種目をやってみて筋肉痛がいつもより来た場合、慣れていない刺激によって筋肉がいつもより損傷したこと、これは事実です。ただしだからもっと筋肥大する。これは間違いです。寧ろ過度の筋肉の損傷は回復時間を延長させて筋肥大に悪影響を及ぼします。
これら踏まえてメンノヘムルズ博士はトレーニングに多様性を持たせることは有害である可能性が高い、そして彼のフェイスブックでは「マッスルコンフュージョンのように頻繁に刺激を変えることでトレーニングプログラムに慣れることなく、より筋肥大するという考えは完全に間違っている」と話しています。
さらには彼の意見を引用させながら僕の意見を言わせてもらうと、筋肉の慣れや人間の向上性ホメオスタシスなどの言葉が良く紹介されます。問題はほとんどの情報発信者がそれがあたかも悪いように伝えている点です。
僕が言いたいのはそもそも慣れが悪いと思っている考え方自体が間違い。トレーニングしているすべての人が目指すべきなのは順応。つまり一種の慣れであるということです。ウエイトを持ち上げることの物理的ストレスに慣れること、適応することによって筋肥大は大きくなります。
2017年の研究ではトレーニング経験が豊富になるにつれて筋肉の損傷はすくなくなり、その後の筋肉痛は小さくなることを示しています。これは体の適応です。
トレーニングを変更することは効果的です。問題は変更の頻度です。実際に最初に紹介した研究では異なる種目を行うことで多くのモーターユニットなどを刺激することができると示されています。そのため、僕も研究のようにスクワットのみをずっとやるよりもレッグプレスやデッドリフト、レッグエクステンションを使用したほうが効果的であると考えます。
ただ、みなさんスクワットしかやってない人はいますか?大胸筋でベンチプレスしかやってない人はいますか?おそらく多くの人が各筋肉2~3種類は少なくとも種目を取り入れていると思います。
僕が言いたいのは基本的にはそれで十分ということです。
筋トレの慣れというのは悪い言葉ではありませんし、寧ろ皆さんの目標になるものです。頻繁にトレーニングメニュー、種目を変えると筋肉がそのストレスに適応できず成長する機会を失います。この2019年の研究では4つの種目を回転させることでマッスルコンフュージョンを再現した脚はそうでないもう片方の脚よりも筋肥大できなかったことを示しています。
基本的にはトレーニングは一貫性が重要、同じメニューをやり続けることです。
筋トレメニューを変えるタイミングとしては2か月毎くらいのタイミングでいいでしょう。ただし、Mennoヘムルズ博士も言っている通り種目を変更することは事前に設定したり計画に入れるべきではないと話しています。
種目を変えるタイミングは停滞してからだったり問題が起きてからのタイミングでいいです。逆に停滞するのを予防するためだったり過度に筋肉の慣れを恐れてに頻繁にメニューを変えると逆効果である可能性が高いです。
何度も言いますが慣れは悪いものではありません。慣れることによって筋肥大します。ある程度の一貫性は必ず必要です。特にメイン種目は停滞したり何か問題が起こらない限りは一貫して同じ種目を取り入れることをお勧めします。
さらに初心者の人は中上級者よりもっと一貫性が重要になります。そもそも体がウエイトによるストレスに適応してないので筋肉痛がかなり来たりします。もちろん筋肉痛が強く来ることは悪いことです。なので筋肉痛だけではありませんが早く体が適応するためにも一貫したトレーニングプログラムで行いましょう。
初心者の人はBIG3を一日でやる全身トレーニングメニューをしばらく続けるのでいいと思います。
各部位数種類のトレーニングを一貫して行うことです。沢山の種目をやると多くの神経系を動員できて、追加のメリットがありますが、多すぎると体が適応する機会を失います。大事なのはこのバランスです。おすすめとしては大胸筋や背中のような大きな筋肉は3~5種類程度、上腕二頭筋や肩のような小さな部位の種目は1~3種目です。
筋トレメニューを紹介した時にずっとこのメニューのままでいいのかなと不安になる人も多いと思います。しかし、筋トレメニューを固定させることは全く悪いものではありません。